2017年のミウラ(三浦技研)のフェイスブックは、「移行中」というステータスだった。

これまでのミウラのこだわりは、常にフォージドブレード、高性能ウェッジ、キャビティバックであった。これにより上級者の間でカルト的な人気を博し、忠実なファン層を築き上げることに成功したため、あえてこれまでのやり方を変えようとはしなかった。

しかし他社ブランド(Epon、PXGなど)がカテゴリーの定義を曖昧にし、パフォーマンスの限界を押し上げるクラブを作るようになるにつれ、ミウラはそのトレンドに適応するためにポリシーの変更を余儀なくされた。

1957年に三浦勝弘氏により設立され、小さな家族経営で出発したミウラは、起業家のハワード・ミルスタイン氏の融資を受け、True Spec Golf社のCEOであったホイト・マギャリティ氏を北米事業のCEOとして迎え入れた。

2018年に入り、ミウラが目指す方向性や組織変更による商品への影響など、具体的な詳細が明らかになってきた。

 

第一弾リリース

ミウラは今年、3モデルのリリースを予定している。まずはMC‐501アイアン(小売価格各260ドル)で、3番~PWを発売する(右利き用のみ)。1957年のCBシリーズ以来、初めてデザインを一新し、自称である「モダンブレード」の名にふさわしい製品であることを立証しようとしている。

マギャリティ氏は言う。「ブレードモデルは、一般的には特定のスキルを備えたプレーヤーを対象としているが、三浦信栄氏(三浦技研の現代表者)はハンディキャップの枠を超えて多くのプレーヤーにアピールするアイアンにしたいと思っていた。」

従来のブレードアイアンは、比較的高い重心とバックフェースに質量を集中させることで、コントロール性能を高めていたが、それによって「やさしさ」が失われてしまう欠点があった。MC-501は決して初心者用クラブではないが、オフセンターに当たった時のパフォーマンスを改善しつつ、従来のマッスルバックアイアンの要素を維持するため、開発者はいくつかの措置を講じた。

フェース裏上部の肉厚な部分を削ることで、重量を20g減らし下部(ソール部分)に移動した。その結果ミウラのモデルの中で最長のブレード(それでも業界の標準よりコンパクトだが)となり、一般的に低スピンと高い打ち出しを実現すると言われる低重心のクラブが出来上がった。

このミウラのデザインは、「マッスルバックの見た目をしたキャビティバック」として認識されているようだが、私は、よりマッスルバックに近いと思う。MC-501には、ヒール・トゥやトップなどのミスショットにおいてウェイトを搭載したキャビティバックに期待される「やさしさ」が欠けている。これは、特にラフで顕著に表れる。しかしトップに限っては、重量配置が変わったことでかなり改善されるだろう。

私が個人的にテストした結果、MC-501の特徴はすぐに理解できた。辛うじてやさしさのあるマッスルバックアイアンだが、フェースの中心でヒットするのに苦労するような初心者向けではないようだ。Yグラインド(Yは開発者の三浦由貴氏のイニシャル)は、リーディングエッジがなだらかで、スティープアングル(鋭い入射角)のゴルファーには、ターフインタラクション(ボールの前にある芝を削り取ること)の向上が期待できる。

最終判断はおまかせするが、やはりMC-501はマッスルバックアイアンだといえる。フェイスアングルとスイングプレーンを変えることで、弾道に顕著な変化が生じるだろう。

つまりMC-501は、弾道をコントロールすることを好むプレーヤーに適したアイアンだが、基本的にトップする傾向にあるプレーヤーや、少し高めの打ち出しにも適している。

一般的なゴルファーは、MC-501のようなアイアンに走ってしまう傾向があると思う。寛容性がセールスポイントとして強調されているため、多くのゴルファーに適していると思われがちだ。しかしそれは誤解である。MC-501は、熟練者か上級レベルのアマチュア向けのニッチなクラブである。

ルックスの評価も意見が分かれそうだ。ミウラの支持者の中には、MB 001やベビーブレード、クラッシックなブレードスタイルに似ていないという理由でMC-501を好まない人もいるだろう。

あるいはトップラインの薄さや、かなりコンパクトなソールの「X型」というべきキャビティがダイナミックだと表現する者もいるかもしれない。ニッケルクロム・サテン仕上げはとても端正で、ヘッドはミウラの姫路工場でS25Cソフトカーボンスチールを鍛造している。

従来のミウラのブレードのようには見えないが、それこそがこのデザインの意図なのだ。

 

変化は・・・

MC-501は、10年以上前のミズノMP‐32アイアンを思い出させる。設計は同じではないが、どちらのクラブもマッスルバックのルックスを持ち、重量をソールに移動させることでキャビティバックの機能を持たせるという目的は同じだ。

MP‐32は、MP‐33やMP‐67を使いこなせないものの、似たルックスのクラブを求めるゴルファーに支持された。それと同様に、MC‐501はミウラのCB‐57やPP‐9003のようなクラブでの快適なプレーとともに、マッスルバックのような見た目を求める人に向いている。

変化は受け入れがたいが、避けられないものだ。三浦勝弘氏の2人の息子(新栄氏と由貴氏)は引き続きプロダクトデザインにおいて重要な役割を担い、より幅広いゴルファーから支持されるべく新しいデザインを生み出していく予定だ。この動きを、モダンで包括的なアプローチだと称賛する者もいれば、ミウラのルーツから離れ悪い方へ向かっていると批判する者もいるだろう。

これはミウラにとって大きな挑戦だ。伝統と歴史を尊重しながらも、高いハンディキャップのゴルファーを魅了するクラブを作るために前進する。この2つの微妙なバランスをうまく取らなくてはいけない。

ミウラの方向性の見直しは始まったばかりだ。あなたはどう思うだろうか。