「ゲームチェンジャー」「ブレークスルー」「大化けしそうな注目株」「今年もこのシーズンがやってきた」……。

PGAショーには、このような宣伝文句があふれかえっている。

米国フロリダ州オーランドで年に1回開催される、主催者曰く「ゴルフ業界を代表する」イベントでは、毎年何千もの製品が展示される。

中には斬新で売れそうなアイテムもかなりある(ただし、それも減少傾向だ)が、そのうち9割は決まって姿を消す。

アイデアが良くても何か問題があれば、試作品が大量生産ラインに乗ることなく、消費者の話題に乗ることもない。

製品化されたとしても、5分間だけ業界の話題になった後、新しい目玉商品の多くは失速して死に絶え、消えていく。

 

特別なリスト

今年のリストを作るにあたって考慮したのは、製品の寿命とパラダイムシフトの可能性だ。「注目株」といっても、その多くは昔の製品の使い回しにすぎない。

それをしっかりと理解しよう。

このリストにある製品は、イノベーションにあふれたものには見えないかもしれないし、どれも現状を変えるものではないだろう(中には変えるものもあるしれないが)。

そのかわり、半年後も店頭に並んでいることはほぼ間違いない。

早速2019年PGAショーで私が選んだ注目アイテムを紹介しよう。(なお、紹介する順番に大意はない)

 

フジクラ VENTUSシャフト

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VENTUS(ヴェンタス)はメーカー希望小売価格が350ドルで、フジクラの他のモデルよりも値段が高い。

大手シャフトメーカーの新製品発表でいつも期待するのが材料やテクノロジーに関する情報だが、VENTUSの「VeloCore」(ヴェロコア)は超高弾性炭素繊維ピッチ70tカーボンを使用しており(40tカーボンも使われている)、期待通りだ。

それにしてもシャフトというのは、細かい話が尽きない。

参考になるかどうかわからないが、ピッチ70は低スピンモデルでよく利用されているT1100素材よりも150%硬く、初代VENTUSはチップ(先端)部分が非常に硬いのが特徴だった。

フジクラは、このシャフトを低スピン中弾道として売り出している。

現状としては、フジクラが自社開発したシャフト挙動解析システム「ENSO(エンソ)」を利用した研究の成果が出始めている。

フジクラによれば、VENTUSはオフセンターヒット時にヘッドを安定した状態に保つことができるという。

また、VENTUSが「MOIブースター」のようなものとして機能するとフジクラは説明する。

オフセンターヒットでも捻じれをうまく抑えることで、ボールスピードを維持するというのだ。メリットは左右のバラツキが少なくなり、低スピンになって、ボールスピードが上がることだ。

シャフトの話は眉唾物が多いが、実際にフィッティングしてみてVENTUSの性能は期待どおりだった。いや、それ以上だった。

 

帰ってきたブリヂストンのボールフィッティング

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ブリヂストンはきっと、新しいE12のことや、どのような経緯でタイガー・ウッズがナイキとの契約終了直後からブリヂストンのボールを使っていたかについて話したいに違いないと思っていたが、PGAショーで出てきたブリヂストンの話題はボールフィッティングの復活だった。

その昔、ブリヂストンはボールフィッティングのリーダーだった。

しかし、前CEOエンジェル・イラガンによってボールフィッティングは忘れ去られた。おそらく、ゴルフ市場でブリヂストンを最も差別化できる点であったにもかかわらずだ。

PGAショーでの再開したブリヂストンのボールフィッティングは、「なるほど」と思うような改善がなされている。以前のボールフィッティングでは、ドライバーだけが対象だった。

最新のプロセスでは、アイアンとスコアリングクラブも対象になっている。

タイミングも完璧だった。最近PGAツアーで勝利が続き、タイガーのボール(TOUR B XS)も成功した。ボールフィッティングの復活は、ゴルファーにとってもブリヂストンとしても良いこと尽くめだ。

 

タイトリスト 蛍光イエローのプロV1

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ここで注目すべきは、イエローのPro V1が市場全体の「イエローボール」を盛り上げることができるかどうかだ。

一般ゴルファーは、ツアープロのマネをしたがる。ゴルフボールの約80%がいまだにホワイトなのも、それが理由だ。その状況が少しは変わる可能性があるだろうか。

フェニックス・オープンでは、バッバ・ワトソンがイエローのPro V1xを使った。

これがタイトリストの利益を生み出し、さらには業界全体でカラーボールのシェアを伸ばすことになるだろうか。

そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。

2019年,PGAショー,ゴルフ

ブリヂストンもTOUR B XSのイエローを発売する予定であり、マスターズのパー3コンテストでタイガーが使ってくれることを願っている。

 

TPT アイアンシャフト

2019年,PGAショー

シャフトカテゴリーに彗星のごとく現れたTPT。

これまでもMyGolfSpyではその良い点と悪い点の両方を取り上げてきた。

TPTの話によると、破損の問題は解決し、2種類の新しいドライバーシャフト(ブライソン・デシャンボーが使用してきたものも含む)が今春には発売される予定だという。

良い話だが、今後旋風を巻き起こす可能性があると私が思うのは、これから発表されるグラファイトのアイアンシャフトだ(95gと120g)。

現実を見てみよう。ここ数年、市場にはツアー仕様のグラファイトが数多く登場しているにもかかわらず、どのブランドもPGAツアーのスチールの壁を破ることができない。

スチールファイバーを使っているマット・クーチャーがもう少しのところまできている。

新規参入のスイス企業は現在、他のグラファイトのアイアンシャフトメーカーが軒並み失敗してきた分野で成功しようと、渾身の一打を狙っている。

真面目なゴルファーであるブライソン・デシャンボーがグラファイトを利用しないのは、世界最高クラスのゴルファーがグラファイトを利用しないから、という理由が大きい。

今年はひょっとしたら、長くてゆっくりとした変化の始まりを目にすることになるかもしれない。難しいかもしれないが、その日がくると信じたい。

シャフトの価格を見ると、TPTは一般的なゴルファーの手が届かないところにある。

しかし、まずはツアーでグラファイトアイアンを利用してもらえば、一般のゴルファーにも浸透するのではないかという考え方はおもしろい。

ツアーで実力のある選手、少なくともヘッドスピードの速い選手に使ってもらえれば、グラファイトのアイアンシャフトの汚名を返上してくれるかもしれない。

そうすれば、UST(Recoil)やフジクラ(MCI、Pro、Vista Pro)、トゥルーテンパー(Catalyst)のようなメーカーが一般向け市場に参入できるだろう。

 

1人乗りカート

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いつかは、これまでのゴルフカートに代わるものが登場するだろう。

「そもそもゴルフは歩いてプレーするゲームだ」と考える人がいる一方で、1人乗りカートも進化している。ヨーロッパではすでにお馴染みのアイテムだ。

2輪のスケートボードタイプのカートは確かに楽しい。

しかし、誰でも利用できるものではない(事故が起こる)。バイクスタイルのデザインはPGAショーでもてはやされていたが、コースを傷め、白いパンツを汚す可能性があるのは気になる問題だ。

主流となるデザインは、ほぼ間違いなく4輪だろう。MyGolfSpyのスタッフは、エルウィーの製品に肩入れしているのだが、最終的に流行るのは現在の標準的なゴルフカートの小型版のようなモデルになるだろう。

手前味噌だが、私の言葉を再掲したい。「注目株といってもたいてい昔の製品の使い回しにすぎない」。

1人乗りカートの未来はまだ見えない。1人乗りカートが現在のカートに取って代わるためには、何らかの取り組みが必要になる。

経済面を考えると、1人乗りカート2台は2人乗りカート1台よりもコストがかかるため、簡単には導入できない。

小さなカート2台は通常のカート1台よりもスペースが必要なので、カート置き場も問題になるだろうし、消費電力の問題もある。

このような短所を補う1人乗りカートのメリットは、プレーのペースが速まること、ラウンドをするゴルファーが増えること、ラウンド後にレストランで過ごす時間が増えることだ。

 

タイトリスト CNCPTアイアン

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CNCPTの新しいアイアンについてどの程度話していいのか分からないが、画像も紹介され、飛距離が大幅に伸びたという噂もある。また、ほとんどのゴルフ専門サイトで、間もなく発売されると言われている。

2019 CNCPTラインは2モデルあり、どちらも限定生産で、通常のアイアンセットよりもはるかに金額が高い。超高級品といえばPXGだが、タイトリストにはかなわない。

では、なぜ私はこのアイアンについて話すのか。

これから発売されるタイトリストのアイアンは、新しいフェース素材と従来の素材を使用しているのが特徴だ。

そう考えると、新CNCPTアイアンは名が体を表していると言える。これはまさにコンセプト製品で、業界の誰もが造りたいと考えるタイプのクラブだ。

あくまでも「売らなければならない」ということを考えなくてもいい場合の話だが。

CNCPTには手が届かない私たちにとっても、このモデルが決して高嶺の花のままではないと感じるのは、イノベーションというものがほぼ間違いなく下へ下へと流れていくことを知っているからだ。

CNCPTで構築されたタイトリストの技術やアイデアが、ほとんどのゴルファーに手が届く普及品に使用されるのは時間の問題だろう。

 

オデッセイ STROKE LABパターシャフト

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このパターシャフトが、主流の仲間入りをする可能性を示すサインは山ほどある。

去年、BGTがStability Shaftを発表した。私がこれに心を奪われている間に、市場に最大級の影響を与えるべく準備を進めていたのがオデッセイのStroke Lab Shaftだ。

どちらのシャフトもパットの安定性向上を狙った商品だが、BGTには余分な重量が加わるものの、オデッセイのTempo Enhancing Designは加重することなく同様の安定性を実現できるという。

もちろん、重量が重要だと証明されればBGTに分がある。それはテーラーメイドの新Spider Xの標準シャフトに採用されているKBS C-Taperでも同じだ。

 

ブッシュネル PRO XE(計測器)

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Precision ProやTec Tec Tecのような新規参入企業が大幅値下げを敢行した結果、計測器分野で業界トップのブッシュネルの製品価格が相対的に200~300ドル高くなってしまうかもしれない。

Pro XEは549ドルなので、市場におけるプレミアム価格帯に入っているが、超過分の200~300ドルで標準機能と新機能を持つ別の新製品を買える。

Pro XEの最も魅力的な特徴は、ブッシュネルの新しいスロープアルゴリズム(勾配計算機能)だ。

飛距離の計算を単純な幾何学に頼るのではなく、気温と標高のデータを収集して飛距離の計算に加味するので、精度が大幅に改善されている。

それでも不安なら、Pro XEに付属しているBITE マグネチックマウント(磁気取付金具)を利用するといい。道具を使わずに、カートの横に取り付けることができる。

ブッシュネルはより多くのフィードバックを提供するためにジョルトテクノロジー(バイブレーション機能)も常にアップデートしているので、自信を持ってターゲットを設定できる。

 

ゴルフ用品市場に影響を与えるのは、どの新製品だろうか。