私のような素人は、プロが使うものなど気にすべきではないことは分かっている。

しかし、素人の多くがプロの動向に左右されているのも事実だ。

近年、このような大衆の心の揺れや迷いから何らかの利益を得ているのがブリヂストンだ。契約プロが、直近のPGAトーナメント16大会で7回も優勝している。勝率は44%だ。

絶好調なツアー成績とダン・マーフィー(CEO)のカムバックが相まって、ブリヂストンは少し息を吹き返し、ブランドの方向性も見えてきた。

マーフィーがCEOの座に就いたのは昨年秋。ダウントレンドにあるボールの売上を回復させることと、停滞するゴルフ用品事業に新たな息吹をもたらすことが彼の使命だ。

好調なツアー結果が(タイガー・ウッズ、ブライソン・デシャンボー、マット・クーチャーらの華麗なる試合運びも)、ブリヂストンのボール売上に少しばかり貢献している。今日行われた新しい中価格帯のe12 SOFTとe12 SPEEDの発表が、新たな衝撃を与えるだろう。

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新ボールの登場で市場が再編成

e12の基本情報を紹介しよう。

3層構造で、カバーにはアイオノマー樹脂「サーリン」を採用。ブリヂストン独自のグラデーショナルコンプレッションコアが特徴だ。

良い打感を生むために中心部は柔らかく、飛距離が伸びるように外側に向かって徐々に硬さが増していく。これはあくまでも、ブリヂストンの新ボールであり、決して2年前に発売されたe6の後継ではない。

「12は6の2倍だから、e12はe6の2倍優れていると冗談を言っているが、この名称がついたのはそれが理由ではない」。そう話すのはブリヂストンのゴルフボールマーケティングマネージャーのエリオット・メロウ氏だ。

「e12は、このボールの製造を可能にした、12年間に及ぶボールフィッティングと収集データから名付けられた。そもそも、『ボールフィッティング』というアイデアを生み出したのはブリヂストンで、私たちは何百万というスイングの貴重なデータを収集してきた。これはまさに研究開発の金脈で、ブリヂストンに問題があることと、解決策の方向性を示してくれた」

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「分かったのは、e6は柔らかい打感を実現し、ドライバーの回転をコントロールできるすばらしい製品だということだ」とメロウ氏は話す。

「とはいえ、ボールを柔らかくしすぎてスピンを抑えすぎた結果、ボールスピードをある程度犠牲にしなければならなかったのは事実だ。しかし、コアの柔らかさは変えたくなかったので、ボールスピードは別の部分から得なければならないことがわかった」

それが、後に。ブリヂストンは、これを「アクティブアクセラレーションマントル」と呼んでいる。

「従来のゴルフボールには、エンジンが1つしかない。それが『コア』であり、スピードはそのコアから生まれる。新しいマントルには、より密度の高い化合物を使うことにしたのだが、その結果2つの副産物が生まれた。まず、2つめのエンジンが手に入ったこと。『ターボブースター』のようなもので、このおかげでボールスピードが増した。もう1つは、コアだけでスピードをあげずにすむため、柔らかさを損なわずに打感を改善できるようになったことだ」

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ブリヂストンは、これまでコンプレッションに関して多くを語ってこなかった。

それは、メーカーによってコンプレッションの測り方が違うからだという。

ブリヂストンは独自の測定方法で、e SOFTのコンプレッションが50、e12 SPEEDは75前後だとしている。どのような計測方法であれ、どちらもかなり柔らかいことは確かだ。

「e12の対象となるゴルファーは、間違いなく柔らかい打感を好む人だ。市場にはすでに打感の柔らかいボールが出回っているが、私たちは柔らかい打感に飛距離性能も加えたいのだ」

 

スピンとウレタンの薀蓄

e12に関してわかっているのは、3層構造でカバーにはサーリンが使用されていること。

サーリンの場合、ウレタン製のボールのようにはスピンがかからない。ティーショットではメリットになるが、グリーンに近づいたときには対応を考える必要がある。

とはいうものの、ブリヂストンのテスターたちは総じてe12のスピンに驚きの声をあげた、とメロウ氏は力説する。

「確かにe12はウレタンボールほどはスピンしないが、従来のサーリンボールよりもスピン量が多いのは間違いない。マントル層がしっかりしているので、ショートアイアンやウェッジで叩くとさらに摩擦が加わり、スピン量(RPM)が増える」

果たしてこのボールのスピンの魅力が、「スピン命でウレタンの硬いコアが大好きなゴルファーたち」に伝わるだろうか。

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ブリヂストンによれば、テスターたちは一様にe12のスピンに感動していたという。

とはいえ、サーリンのボールの割には、ということだが。それに、バックスピンをかけたからといって、ウレタンボールのようにグリーン周りでピタリと止まるというようなことはないようだ。

「ブリヂストンでは、品名は明かさずに音と振動だけで判断するブラインドフィールドテストを何回か行い、e12が最も打感の良いボールとして認知された。ウレタンボールよりもスピンが効くなどと言うつもりはないが、サーリンボールとの比較ならどのボールにも負けない」

ボールとゴルファーの相性について、ブリヂストンはヘッドスピードの違いで判断する。e12 SPEEDはヘッドスピードが47m/s以上、e12 SOFTはそれ未満が対象だ。

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ボールフィッティングの復活

以前にも伝えたが、ブリヂストンはボールフィッティングを再開するという。

独自のグリーンでのボールフィッティングプログラムは、過去12年間にわたり35万人を超えるゴルファーのフィッティングを行った実績がある。

しかし、この2年間は中断し、ブリヂストンのウェブサイトにあるボールフィッティングツール、もしくはB-Fitボールフィッティングアプリで代用された。

「これらのツールはボールフィッティングのエッセンスを散りばめたもので、すでに200万人以上のゴルファーが利用している。しかしながら、実際のフィッティングのようにアドバイスできるわけではなし。ダン・マーフィーが戻ってきたので、この草の根的な取組みも復活させ、直接ゴルファーの皆さんのフィッティングをしたいと考えている。これまでの経験では、ブリヂストンのボールを打つと、ゴルファー10人のうち7人はパフォーマンスが向上した」

このプログラムはいくつか大きな機能を追加したのち、今春再開される予定だ。

やり方は以前と同じで、まずは自分のボールとドライバーを使い、パフォーマンスの基準を知る。それから、ブリヂストンのボールを使い、結果を比較する。

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「『クラブはフィッティングなんてできるのか?』という意見もあった。その点は我々もよくわかっていて、ショートアイアンで今使っているボールとブリヂストンのボールを比較できるプログラムも加えようと考えている。また、ゴルファーの技術レベルやこちらの施設の状況にもよるが、ショートゲームのスピンテストも開始する予定だ」

ブリヂストンのボールフィッティングイベントの多くはグリーンでの使用を想定したもので、各地域の販売店で予定が組まれる。

それよりも規模の大きいデモンストレーションのイベントでも、ボールフィッティングを試すことができる。そのようなイベントでは、ブリヂストンのツアートレーラーが巡回する場合もあるので、見かけたらチャンスだ。

 

価格・ポジショニングと結論

野球で16打数7安打なら打率0.437で名バッターと言えるが、ゴルフ業界(特にブリヂストンの場合)それだけでは成果を上げられない。

契約プロの数が他社よりも少なく、しかも大勢のプロと戦わなければならないからだ。ツアー優勝をアピールするのは、戦略としては間違っていない。

ミネラルウォーターのメーカーがプレスリリースを出したら、世間は何事かと思うだろう。しかし、ブリヂストンは業界第4位のボールメーカーなので、多少騒ぎ立ててもいいはずだ。

「我々は契約プロたちと何度もボールテストを繰り返してきた。特にこの1年半はハードに取り組んでいる。選手たちの仕上がりを確認することは重要だ。試合で新しいクラブやシャフトを使うなら、ブリヂストンのボールでベストな試合運びができるように調整する必要があるからだ」

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メロウの話では、研究開発にはウッズとデシャンボーが深く関わっており、そのおかげで、新しいTOUR Bが2020年初めにはリリースできそうだという。ウッズが試作品を試打したとき、「来週までに間に合わせてほしい、今すぐにでも使いたい」と言ったという。

「ブリヂストンが現在取り組んでいるのは、ゴルフボールというカテゴリーを変えるテクノロジーだ。糸巻きコアからソリッドコア、素材はバラタからウレタンへ変わっていった。このレベルの技術革新が現在ブリヂストンで起きている。2020年が待ち遠しくてたまらない」

話をe12に戻すが、現在ブリヂストンは商品ラインナップの再編成中だ。

先にも触れたが、e6 SOFT/e6 SPEEDは廃番にはならず、価格を1ダース26.99ドルから21ドルに下げる。e12 SOFT/e12 SPEEDはブリヂストンの新モデルとしてリリースされ、1ダース29.99ドルになる予定だ。

「e12は、これまでブリヂストンが30ドルという価格帯に投入してきたボールのなかでも、イノベーションと言える。我々は、アクティブアクセラレーションマントルを旗艦テクノロジーと考えている。ゴルフ業界ではツアーボールに新しいテクノロジーを導入し、時間をかけて一般市場に浸透させていくのが一般的だ。我々は、ディスタンス系ボールカテゴリーに再挑戦することにしたのだ。」

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それは素晴らしいことだ。しかし彼らを待っているのは、スリクソンのウレタン3ピースボールQ-SRAR TOUR(29.99ドル)との激しい競争だ。

「その価格帯には高性能なボールが他にもあるが、ターゲットが若干異なる。e12のユーザーはボールフィッティングの重要性や、ツアーボールは誰もが上手く使えるボールではないということを良く理解している」

ブリヂストンはソフトボールが好まれる傾向にも対応し、e12 SOFTも用意している。色はホワイトに加え、マットグリーン、マットレッド、マットイエローがある。なお、e12 SPEEDはホワイトのみの予定だ。

店頭販売は2月15日に始まる。