今月は、スリクソン・クリーブランドにとって忙しい月になりそうだ。

ここ1ヵ月間で、クリーブランドから新モデルRTX-4 ウェッジ、スリクソンからウッドとアイアンが発売された。

 

いくつかの情報筋によると、アメリカ市場におけるスリクソンボールのマーケットシェア(販売個数ベース)は、過去数年間は4%ほどで横ばいだったが、今年7月には約8%という最高記録を叩き出した。中身を見ると、高価格帯ボール(ツアーレベル)ではなく、低価格帯ボールが大半だったという(「ボール業界において低価格帯は売上のボリュームゾーン」と言われるだけのことはある)。スリクソンのボールはイギリス、南アフリカ、オーストラリアなどの地域ではトップセラーだが、これらの地域は全体のほんの一部に過ぎない。

 

「我々は世界でメジャーブランドとして認識されているが、アメリカは例外だ。そこで競合ブランドより僅かでも低い価格設定にすることで、積極的にマーケットシェアを拡大していこうと考えている。」(スリクソン マーケティング部長 ブライアン・シェルケ氏)

Q STAR TOUR GOLF BALLS

「Q STAR TOUR」は低価格帯ボールと高いツアーボールとの橋渡し役として、ウレタンカバー、ツアーレベルの3ピース構造、1ダース29.99ドルという低価格を打ち出して2年前に発売されたボールだ。そして、2年ごとの発売サイクルを迎える今秋を前にマイナーチェンジを行った。

 

ゴルフ界一のベストバリュー

33.5~42.5m/s程の一般的なヘッドスピードを持つゴルファーに対し、ツアーレベルに近いボール性能を提供するのがQ STAR TOURだ。「価値」という点での比較対象(例えばSnell MTBボール)についてはいずれ触れる予定だが、スリクソンは初代Q STAR TOURの売上には満足しているものの、それを再び盛り上げようとしている。

 

また今回はこれまでのピュアホワイトに、ツアーイエローが加わっている。ウィルソンやヴォルビックのような輝く蛍光色ではないが、プレーの邪魔にならない色合いだ。

Q STAR TOUR GOLF BALLS

デザイン的には、ディンプルが前モデルの324個から338個に増えている。たった14個のディンプルがそれ程重要なのかと思われるだろうが、Q STAR TOURのディンプルはZ STARのそれと同じであり、空力特性の性能に優れ、風にも強い。

また、今回はコンプレッション(柔らかさを示す値で、少ないほど柔らかい)を75から72に変更され、柔らかいボールになっている。業界の常識では、柔らかいボールほどボールスピードは落ちると言われている。しかし、通常それはスピン量が少なければ和らぎ、そこに柔らかい打感がプラスされ、結果キャリーは増える。

 

SPINSKIN&レイヤー構造

新Q STAR TOURもまたスリクソンの3代目SpinSkinを特徴としており、Z STARにも採用されたコーティングが使用されている(初代Q STAR TOURは前世代のSpinSkinを採用)。SpinSkinは弾力性のあるコーティングで、スリクソンの説明によるとカバーとフェースの摩擦を高め、その結果グリーン周りやアプローチでのスピン性能を向上させるという。

スリクソンは言わずと知れた世界最大のゴムメーカーである住友ゴムの子会社だ。ブリヂストン同様、スリクソンも親会社のゴム技術をゴルフボール開発に生かしている。その成果として、「Energetic Gradient Growth Core」と呼ばれるものが生まれた。

Q STAR TOUR GOLF BALLS

また今回はこれまでのピュアホワイトに、ツアーイエローが加わっている。ウィルソンやヴォルビックのような輝く蛍光色ではないが、プレーの邪魔にならない色合いだ。

Q STAR TOURの特徴の一つに、内側が柔らかく外側が硬いゴム製の1層コアがある。ブリヂストンの「グラデーショナル・コア」は基本的にスリクソンと同じコンセプトで、平均的なヘッドスピードのゴルファーでもしっかりボールを「つぶす」ことができる。

 

「これによって、ティーショットで高い打ち出しと低スピンをキープしながら、ボールスピードも損なわずに済む。複数ピースのボールを打つ時と同じ状態になるということだ。4ピースボールにはもっと柔らかいコアが入っていて、ミドルコアが硬く、コアレイヤーはさらに硬い。」(シェルケ氏)

 

何が言いたいかというと、他社が多層構造を駆使するところを、スリクソン(やブリジストン)は部分によって硬さを変えた1層コアで仕上げるということだ。目的地は他社と同じだが、スリクソンは別のルートを通っていることになる。

Q STAR TOUR GOLF BALLS

ツアーレベルのパフォーマンス

Q STAR TOURのユニークなところは、柔らかい打感と低価格だ。それを実現するために、スリクソンはQ STAR TOURとPro V1(タイトリスト)、Chrome Soft(キャロウェイ)との比較テストを行った。

 

※下記のグラフは、ヘッドスピード38m/sと42.5m/sのゴルファーが打った時の平均飛距離を表している。

Q STAR TOUR GOLF BALLS

通常、メーカーが自社製品をテストして競合品より優れているというデータが出ない場合、その内容を開示することはないが、スリクソンも例外ではない。以下のデータからも分かるように、スリクソンは、私たちのようなアベレージゴルファーの飛距離、スピン性能、精度の観点から、戦略的にQ STAR TOURをPro V1とChrome Softの代替となるボールとして位置づけようとしている。

 

※下の表は、7番アイアンをヘッドスピード32.2m/sで打った時の精度を表している。

用語:LEFT-RIGHT DISPERSION(左右のばらつき )/DISTANCE CONTROL(距離のばらつき)/TOTAL SHOT AREA(着弾点の範囲)

SRIXON Q STAR TOUR GOLF BALLS

バリュー・プロポジション(提供価値)

スリクソンはボール市場では決して主力ブランドではないが、販売個数は確かに伸びてきている。売上を伸ばしたのが「低価格」という戦略だったとしても、大きな飛躍だ。Smart Business 101によると、スリクソンが現在置かれている状況は「腹を空かせた怪獣」と同じで、定期的なエサが必要だという。

つまり、この秋のボールフィッティングイベントでは、スリクソンの現場担当や営業マンが店やコースを廻り、販促活動に力を入れ続ける必要があるということだ。弾道計測サービスやブリヂストンのようなフィッティングはないが、その代わりにディスカッション形式やインタビュー形式のフィッティングを行い、ゴルファーに一番合うボールを見つけてくれるだろう。

Q STAR TOUR GOLF BALLS

社内テストや販促活動において、スリクソンがQ STAR TOURの比較対象をPro V1とChrome Softとしたのは偶然ではない。

ウレタンカバーを好み、さらにツアー性能を求めるヘッドスピードが33.5~42.5m/sの層、つまりPro V1やChrome Softを使う層をターゲットとしているからだ。たとえスリクソンがQ STAR TOURのほうが優れているというデータを示したとしても、私たちのようなアベレージゴルファーがその差を感じるのは難しい。ただ、少なくともスリクソンが頼みの綱にしている「約18ドル安い」という低価格設定は、Q STAR TOURの競争力になるのではないだろうか。

 

「高い商品は優れている、少なくともそうあるべきだ」という考えが消費者にあるのは間違いない。ところがその考えは、ここ3年程で台頭したD to C(メーカー直販)やコストコのPBであるカークランド現象により色あせつつある。一昔前に比べて、初心者から週末ゴルファーまで、誰もがあらゆる価格帯から商品を自由に選べるようになった。

 

選び方次第で、ツアーレベルもしくはそれに近い性能のボールを、1ダース30ドル以下で買える時代になった。オンラインでまとめ買いすれば、SnellやViceに負けない価格になる。1ダース29.99ドルのQ STAR TOURは、ボールをダースで買うゴルファーにとっては確かな価値があるだろう。

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