セブンドリーマーズのシャフトは、なぜ1,200ドルもするのだろうか?しかも、エントリーモデルで1,200ドルだ。

確かに高いが、これがセブンドリーマーズが得意とする分野なのだ。

 

セブンドリーマーズは1957年、スーパーレジン工業として誕生した。「世の中にないモノを創り出す」という経営理念を掲げ、業界に先がけて複合素材を開発し、航空宇宙産業へ応用したことで業績を上げた。 1970年代に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の成形加工でグローバルリーダーになり、1990年代には小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトに参画した。

セブンドリーマーズは航空宇宙工学の進歩から人々のライフスタイルまで、あらゆることに着目し、事業の手を広げている。快眠をサポートする医療機器や、全自動衣類折りたたみ機(AIが衣類の形を見分け、それぞれに応じたたたみ方をして、持ち主ごとに仕分けまでしてくれるという)までも手がけているのだ。この会社は、まさに「世の中にないモノを創り出す」会社だ。

2014年、セブンドリーマーズはプレミアムシャフトのマーケットに進出し、すぐに「世界で最も高価なゴルフシャフト」の称号を手に入れた。

どんなマーケットにも、高い値段をつけることで一般大衆を寄せ付けない商品が存在する。それはゴルフマーケットも例外ではない。PXGが出現するまでは、そのような商品はアジア(主に日本と韓国)で積極的に販売されていた。ホンマの BERES ファイブスターシリーズの24金メッキが施されたゴルフクラブは、フルセットで75,000ドルもする。

そんな商品に付けられた目玉の飛び出るような価格は、並んだゼロの数を気にせず「ジミー・チュウの靴を何足買おうか?」、「休みの度にベイル(全米屈指のスキーリゾート)でスキーをするのはもう時代遅れかな?」、といった類の悩みを持つ顧客を惹きつける。まったく、いかにも先進国らしい贅沢な悩みである。

いわゆるプレミアム商品とされているものの中にも、他と比べてさらに費用のかかる技術や製法が存在する。必ずしも価格の違いと同じだけ性能に差があるわけではないとはいえ、理論的には価格の上昇はパフォーマンスの向上につながる。いずれにしろ、いわゆる「プレミアム」や「エリート」を越えたところに、マーケットの最上級のセグメントが存在する。そこでは一般とは違うルールが働く。そこにいる消費者は、マーケットの大多数の動きに反する行動を取るのだ。

究極のプレミアムシャフト

実際のシャフト製造工程はここで私が説明するよりも複雑だが、簡単に説明しよう。一般的な製法は、芯金(マンドレル)の周りにプリプレグというカーボンシート(レジンとカーボンの複合材料)をさまざまな向きに巻きつけることから始まる。希望する重量やフレックス、シャフトの内寸・外寸に応じて、プリプレグの各パーツ(業界ではフラッグと呼ばれる)が特定のパターンでマンドレルに巻き付けられていく。

プリプレグの層を熱収縮テープで包み、約1気圧に設定したオーブンで焼いて硬化させる。シートを加熱するとレジンが接着剤となり層が結合する。オーブンから出した後、熱収縮テープを剥がすと表面には凸凹が残る。シャフトを真円にするために表面を磨くと、理論的には丸いシャフトができる。最後に、シャフトは塗装される。

プレミアム価格がついているものであっても量産品のシャフトは結局のところ、重量、フレックス、トルクにおいてスペックの公差の範囲内で製造される。公差がどの程度パフォーマンスに影響を与えるかについては多く議論されているが、ここでは言及しない。実際問題としては、公差を厳しく設定・管理するほど、製造コストは高くなる。

セブンドリーマーズが他社と違うのは、ユニークかつ独占的な製法を持っていることだ。これによって、優れた構造と性能を備えた比類ない一貫性を持つシャフトを実現できるという。

セブンドリーマーズではシャフトをオーブンで焼くのではなく、オートクレーブ(加圧装置)を使用する。オートクレーブの中で専用硬化型を用い(熱収縮テープは使用しない)、6~10気圧の高圧をかけて硬化することで余分なレジンを落とす。こうして硬化したシャフトは完全に丸く凹凸がない。よって研磨や塗装が必要ないので、見た目に派手さはないが設計通りのものができ上がる。一切塗装せず、シャフトは無垢のカーボンのまま「Seven Dreamers」のモノグラムとシリアル番号が付けられる。

それが未完成品に見えるとしたら、「シャフトは塗装されているもの」とメーカーによって刷り込まれているからだ。自社製品を差別化し、メディアの視聴者の注目を集めるために、シャフトにペイントをするのがメーカーの常套手段だ。

セブンドリーマーズの製法が他社と本質的に違う点は、極めて厳しい公差でシャフトを生産できることではない。重量と安定性との間のトレードオフの関係を緩和できることだ。重くて堅いシャフトならどんな会社にでも作ることができる。それは、高級フレンチレストランのシェフがPB & J(ピーナッツバターとジャムのサンドイッチ)を作れるのと同じことだ。

しかしながら、低い打ち出しと低スピン性能を70g未満で、しかも十分な安定性と良い打感を維持しながら実現するにはコストがかかる。それも、法外なコストが。

 

試打の感想

私が普段使っているドライバーのシャフトは、重量75gの先調子のシャフトである(プロジェクトXハザーダス・ブラックや三菱レイヨンのディアマナホワイトボード、ディアマナアヒナを想像してほしい)。これより軽いと方向性が安定せず、これより重いとヘッドスピードが格段に落ちてしまう(通常は50m/sを超える)。今回、私が試したセブンドリーマーズTシリーズシャフトの重量は67gだが、もっと重いシャフトのように先端部に安定性があり、グラファイトデザインのAD-DI 7xのように手元側に少し柔軟性を感じることができた。

重量が軽くなれば、理論的にはヘッドスピードは上がるはずだ。しかし、私がForesight GC2(弾道測定器)から得た数値ではヘッドスピードに統計的に有意な差は見られず、一方で初速はいつもより1〜2 MPH(約0.45~0.89 m/s)速くなった。方向性については明らかな差はみられなかった。クラブの重量について、かなり敏感なゴルファーもいる。軽くするにしろ重くするにしろ、8~10g変えることでぴったりのシャフトが見つかるかもしれない。私が思うに、重いシャフトに変えるよりも軽いシャフトに変えるほうが簡単だ。

 

価格と販売状況

セブンドリーマーズではフレックスやキックポイントに応じて、28種類のシャフト(40~80g)を提供している。北米では、フィッティングを通してJ Global Design series(希望小売価格1,200ドル)を入手可能だ。

もし望むなら、あなたのスイングに合わせてカスタムされた、世界で唯一のオーダーメイドシャフトをセブンドリーマーズで作ることも可能だ。そのためには東京か大阪にあるラボに行って、2,500ドルを支払えばいい。

 

定量的魅力、定性的魅力

セブンドリーマーズの持つ魅力には、定量的側面と定性的側面がある。セブンドリーマーズのシャフトは材料も製法も全てが疑う余地なくプレミアムであり、提供されているたくさんのスペックから選ぶことができる。そしてそれは、ヘッドスピードの速いゴルファーだけのために用意されたものではない。他のシャフトメーカー(たとえば、三菱ケミカル、フジクラ)にも言えることではあるが、セブンドリーマーズ独自の製法が、長年業界をリードしてきたシャフトメーカーより優れている可能性は検討する価値がある。

私の個人的な試打において、セブンドリーマーズのシャフトは、他のプレミアムシャフトに匹敵する性能を発揮した。それどころか、総重量は軽くなっているのにより速い初速が得られたのだ。

究極のプレミアム製品の品質がどれだけ優れていようと、その事実だけでは、現実的な価値観をもつ消費者を納得させることはできない。しかし、価格をまったく重要視しない潜在的顧客にとっては別である(私たちのほとんどには関係のない話だが)。38,000ドルのテストーニの靴、500億ドルのヨット、ガルフストリームG-650(プライベートジェット)の購入が検討されるとき、皮肉なことに価格はほとんど考慮されない。

ブランドを買うことは、そのアイデンティティーに投資することである。つまりあなたの所有する製品が、ある尺度において世界最高だと気兼ねなく言えるというコミットメントだ。そこに他人の同意は必要ない。

 

セブンドリーマーズは、まだあまり知られていない。ギアオタクや長く業界に携わっている関係者でさえ、セブンドリーマーズが進化し続ける超高級プレミアムセグメントにおいて主流になれるかについて懐疑的だ。だが、セブンドリーマーズが北米マーケットへのディープな浸透を図るとしても、その価格を引き下げることも、製品やブランドの持つ排他性を軽んじるようなことも一切しないだろう。それは、セブンドリーマーズが持つ完璧なワイルドカードだ。

PGAツアーでは超高級プレミアムシャフトを使用するプロが増えている。もしその中の1人がセブンドリーマーズのシャフトで勝利した場合、セブンドリーマーズは大きな勢いを得ることになるだろう。実際に、シャール・シュワーツェルは今年のザ・プレーヤーズ・チャンピオンシップで、セブンドリーマーズを使用し2位タイを獲得している。2018年のウェルズファーゴ選手権で優勝したジェイソン・デイやジャスティン・ローズが使ったことで、TPTは世界的注目を集めた。

セブンドリーマーズは、第二のTPTになれるだろうか。

さて、あなたどうするだろう?

自分には関係ないとスルーするか、それとも試してみるか?