“ゴルファー達はタイトリストに絶大な信頼を置いている。なぜなら、他の要素を犠牲にすることのなく最上質のアイアンを作っているからだ。“(タイトリスト マーケティングマネジャー ジョシュ・タルジ)

率直に話そう。2017年第二四半期、タイトリストは厳しい経営状況に追い込まれた。

クラブ売上は前年比で21%ダウン。917ドライバー発売後、最初に迎えたの春のことだ。

タイトリストの収益の柱であるボールの売上は、前年比で6.6%落ちている。これは新Pro V1の発売直後、数か月のことだ。

これは全て真実で、どれもタイトリストにとって良い話ではない。しかし、会社内の前向きな姿勢やファンの期待がなくなっている、というわけではない。

 

718シリーズ

片手で数えられない種類のアイアンセットを発売することで、タイトリストは第二四半期を忘れて、徐々に競合へ流れてしまったゴルファー達の注目をもう一度集めようとしている。

この大きなリリースを含む動きは、タイトリストが近いうちに重大な発表(間違いなく最も強固なアイアンのラインナップである718のカムバック、という可能性さえある)をしようとしていることを示している。

6つのモデル

私が予想した通り、タイトリスト718には6つのモデルが作られた。大黒柱であるAP1、AP2、T-MB、CB、MB、そこにAP3を新モデルとして加えた。これについては後で話そう。

718のラインナップ全体を通して、その安定性はまさに私達がタイトリストに期待するものであった。

誇張するわけではないが、タイトリストはスピードフォーム(アイアン内部に液状物質を入れて打音・打感を良くする技術)の類を採用していない(そもそもスピードフォームに大した効果はないが)。

タイトリストは競合メーカー同様、タングステンの使用を強調し過ぎている感はあるが、その価値は少なくとも定量的である。タングステンの使用については度々議論されるが、それは一般的に使用することを前提としたものである。

見ての通り、タイトリストは飛距離のニーズに対して正当なシェアを獲得している。ところが、ゴルファーの改善について言葉を濁すかのように、飛距離ニーズは、タイトリストの独特な味わいが正確性やグリーンをとらえる力を犠牲にしていないという安心感は与えてくれる。そしてそれは自分に合った718アイアンを探すために適切なフィッティングも必要だということも暗に含んでいるのだ。

 

“718シリーズは、ゴルファーがより安定したショットを打てるように、適切な打ち出し角や弾道、グリーンをとらえるコントロール性を維持しながらMOI(慣性モーメント)とボールスピードの最大化を目指して造られたクラブだ。アイアンはスコアリングクラブであり、番手を選んでピンに寄せるためのものだ。競合と同等もしくはそれ以上に飛ぶ718 AP1やAP3のような飛距離にフォーカスしたアイアンであっても、究極のゴールは飛距離の再現性である。良いアイアンショットを打つことに関しては、コントロール性のない飛距離には意味がない。”(タイトリストアイアン開発部門ディレクター マルニ・イネス)

 

これで、タイトリストの戦略に関してお分かりいただけただろう。では、各アイアンの特徴を見ていこう。

 

718 AP1

タイトリストは初級者向けアイアンを造っていないので、AP1をラインナップの中で最もやさしいアイアンとして位置づけている。

一番の変化は大きく進化したデザインだ。ロングアイアンは、より高い打ち出しを実現するため、重心位置を下部後方に移動した中空ボディ構造を特徴としている。ミドル、ショートアイアンは、より優れた弾道コントロールを目指し広いキャビティ―を設けている。

飛距離にこだわり、716 AP1 に比べてボールスピードを4.2km/h、飛距離を5.8ヤード伸ばしている。ただしこれは4番アイアンのデータでセット全体の数値ではない。

タイトリストらしくないことだが、ある意味ではスコア改善のために何をしたらいいか分からないような現代ゴルファーの要求に合わせているようにも見える。だからこそ718がどんなクラブなのかを表す今回の数値を楽しむべきだ。ただし、ボールを止める力が安定している点はしっかり着目してほしい。

718AP1の小売価格は、スチールシャフトで1本$125(8本セットで$999)、グラファイトシャフトでは1本$140ドル(8本セットで$1,199)で発売される。

 

718 AP3

タイトリストアイアンシリーズに、AP3が新しく加わった。AP1とAP2の中間に位置するAP3は、「AP1.5」と呼んでもいいほど、AP1とAP2両クラブの素晴らしい要素を受け継いだ新しいモデルである。

簡単な算数、AP1+AP2=AP3という式で表現できる。

 

“ベストセラーであり飛距離とやさしさを併せ持つ初級者向けのAP1と、ツアーで好まれるAP2のルックスと打感を組み合わせたAP3の発明は、幅広い層のゴルファーに役立つという意味で大きな進歩と言える。なぜ世界のベストプレーヤー達がタイトリストのアイアンを使っているか、この特徴が説明してくれる。”(ジョシュ・タルゲ)

 

市場の観点から、AP3はクリス・ニッケル(MyGolfSpyのライター)がまさに昨日フォージドディスタンスのカテゴリーで説明したことに当てはまるだろう。ここでの問題はAP3が鍛造ではないことだが、この説明に当てはまるほとんどのアイアンと同じで、今私たちが話題にしているのは、コンパクトなデザインの中にもやさしさがある、ということだ。

PGXか、テーラーメイドP790を考えてみて欲しい。あるクラブに見た目は似ているが、使ってみれば別物である。これがAP3の目的とするところだ。

タイトリストによると、AP3はプレミアムC16の開発から得た教訓を、これまでで最長かつ最速の上級者向けアイアンに取り入れている。

AP3は上手いゴルファーに好まれるコンパクトな形状を特徴としつつ、(残念なことに)私のようなアマチュアが必要とする打ちやすさも備え持っている。

 

AP3のスピードは、薄く支えられていないL字フェースの中空ボディから生まれる。各ロング、ミドルアイアンのヘッドに内臓された約85グラムのタングステンの効果により慣性モーメントが増え、フェース全体を通してボールスピードを維持するのに役に立っている。

716 AP2と比較して、ボールスピードで2.4km/h、飛距離で6.4ヤード伸びているが、これも4番アイアンだけのデータだ。

AP3は飛距離とヘッドスピードの伸びを可能にしたアイアンだが、タイトリストによると、飛距離の伸びはグリーンを捉えるのに必要なスピン量を犠牲にして生み出されるものではなく、またそれが強調してもし過ぎることはない重要性でもあるので、細かい部分だけを手短にまとめるのは止めよう。その細かい説明が、この記事を通して訴え続けていることでもある。

718AP3の小売価格は、スチールシャフトで1本につき$162.50(セットで$1,299)、グラファイトシャフトで1本$187.50(セットで$1,499)で販売される。

 

718 AP2

多かれ少なかれ、AP2から何を得られるかはもうお分かりだろう。それはAP2が安さで勝つという意味ではなく、実際のところは、タイトリストが良い製品を作ることが出来るのは2年サイクルで改良を行う必要があるからであって、ゴルファーを混乱させたいわけではないのだ。

718バージョンは、高強度スチールフェースの薄い鍛造ボディを特徴としている。重心位置(CG)の改善と共に若干の飛距離が伸びるように設計されており、特にロングアイアンではミスショット時に優れたパフォーマンスを見せる。

AP2ではツアー好みのルックスや特有の打感を味わえるが、リーディングエッジの変更により、より効果的な芝との相互作用が得られる。

審美的な改善の他に特に目立った変化はないのだが、興味がある読者のために、AP2の飛距離に関する宣伝文句を述べておこう。前モデルに比べてボールスピードで1.6km/h、飛距離で2.4ヤード伸びている。アイアンはスコアリングクラブであり、AP2にはコントロール性、正確性、転がらずグリーンをとらえる力が必要だ。

718 AP2の小売価格は、スチールシャフトで1本$162.50(セットで$1,299)、グラファイトで1本$187.50(セットで$1,499)で販売される。

 

718 T-MB

フルセットに欠かせない実用的なクラブ、T-MBはフォージドディスタンスカテゴリーに位置付けられるだろう。あまり重要視する必要はないかもしれないが、AP3のようにタイトリストのモダンマッスルとして宣伝されているため、T-MBは比較的コンパクトな造りで、泡状物質を入れない中空ボディ構造と特徴としている。トゥに置いた93.9グラムのタングステンにより理想的な打ち出しや安定性を実現してくれる。

AP2でもそうだが、タイトリストは重心位置を進化させることで、セットを通して最善に近い打ち出しの数値が出るよう改善した。そして、716T-Mに比べてボールスピードで0.53m/s、飛距離では1.1ヤードの改善が見られた。これはただ高く打ち上げ、遠くに飛ばすだけでなく、積極的なプレーヤーならピンフラッグを狙えるくらいの「止まる力」を持つ柔らかい着弾のことも示している。

718T-MBの小売価格は、スチールルシャフト1本$249(セットで$1,999)、グラファイトシャフト1本$275(セット$2,199)で販売予定。

 

718 CB

タイトリストの商品の中でも古典的な上級者向けキャビティバック、718 CBはモダンテイスト以上に仕上がっている。その理由はタングステンだ。その言葉は現代の決まり文句のようだが、ウェートを設置することでスチール構造だけでは不可能な打ち出しや打ちやすさを実現できる。

決定的な改良を超えて、AP2から何が得られるか多かれ少なかれお分かりいただけただろう。重心位置の高さを改良したことも、古典的なキャビティバックのルックスを損なう事なく各ロフト角で適正な弾道を実現することに繋がっている。

飛距離に関する宣伝はここでは見られないが、718 CBは弾道コントロールとショット精度、この二つを完全に決めてくれる。

718CBの小売価格はスチールシャフトで1本162.50(セットで$1,2999)、グラファイトで$187.50(セットで$1,499)で販売予定。

 

718 MB

タイトリストのアイアンとは、一体何だろうか?ブレードタイプではないアイアン?

タイトリストの主張によると、718 MBは純粋なゴルファー向けだという。すなわち、薄いトップラインや幅の狭いソール、最小限に抑えたオフセット、全体的にコンパクトなデザインのことを言う。操作性と弾道コントロールは?やさしさは?これらは、多少あるがそれほどではない。

これはほとんどのマッスルバックアイアンに共通する特性で、718 MBも忠実にそれに従っているといえる。

718 MBの小売価格は、スチールシャフトで$162.50(セットで$1,299)、グラファイトシャフト$187.50(セットで$1,499)で販売予定。

 

スペック

スペックを見ると、AP1とAP3はストロングロフトが目立つ。43°PWまでで区切られた21°の4番アイアンとと2本のギャップウェッジ(48°と53°)では、グリーンを捉える力を妥協することなく実現できる飛距離の階段は必ずしも一定ではない。しかし、ロフト角は単なる数字で、めったに完全な性能を示すものではない。
確かに恐ろしいことではあるが、ボールの弾道を見るまで最終判断はとっておこう。

 

シャフト

AP1とAP3、そしてAP2のストックシャフトはTrue Temper’s AMTシリーズ(赤-AP1、黒-AP3、ツアーホワイト-AP2)が使用されている。タイトリストがAMTを使うのは、AP2で素晴らしい結果が出たため、APライナップの全てに使用することになった。

シャフト概念に精通してないゴルファー向けに説明すると、伝統的なシャフトセットでは、通常全シャフトの重量が同じに作られている。一方、AMT(ascending mass technologyの略)シャフトの重量は、ロングアイアンからショートアイアンに行くにつれて3グラムずつ重くなる。軽めのロングアイアン用シャフトは高い打ち出し角と速いヘッドスピードを生み出し、重いショートアイアン用シャフトは、コントロール性を高める。

その他のストックシャフトオプションには、Project X PXi(T-MB)や、Project-X LZ(CB)、標準のProject X (MB)が含まれる。タイトリストは、他のどこよりも魅力的なシャフトの選択肢を提供し続けていて、718ラインナップでもそれは変えていない。追加オプションのいくつかは、追加料金なしで販売されている。

 

最後に

718ラインナップは、タイトリストの成功を左右するかどうか、というのは少し大げさかもしれないが、718のリリースは、転機を利用できるいいタイミングでもある。このラインは、新AP3を含むことで、説得力があり、見た目の美しさも改善されたラインナップである。しかしこれまでと違い、現実では厳しい競争が待っている。

現在のNo.1はキャロウェイが掴んでおり、次の契機が必要と感じたらいつでも、Apexの次のラグジュアリーラインを出せる準備が出来ている。テーラーメイドは力強く、美的に喜ばせてくれるラインナップをここ数年で出しているし、ミズノはツアーにおいて少し再生を図っていた時期に、MP-18シリーズを打ち出す準備が出来ていた。PXGはプレミアム市場で存在感を放ち続けている。

 

私は、718ラインナップはタイトリストファンの共鳴を得られるだろうと信じている。もしタイトリストがかなりのマーケットシェアを得たら、範囲を拡大して競合メーカーを跳ね除けなければならないくらいだ。

でも、それは決して簡単ではない。

タイトリストが挑戦的なのは、他社が行うような計測器から得る数字のためだけに設計していないことだ。正確なアングル、グリーンを捉える力、正しいフィッティングや素晴らしいパフォーマンスに必要な主な要素は、あと5ヤード遠くに飛ばすといった類のアピールでは示すことができない。もしあるショットが5ヤード先に飛ぶのを見たら、これでもうそのクラブはSold!だ。平均的なゴルファーは、低い(良い)スコアを示すストロークゲインドや測定指標など、考えてはいない。Epicのように、ただただボールを遠くに飛ばすだけだ。

この現実から、もしタイトリストが現状維持から脱出しようとするなら、なぜ飛距離よりも、安定して高く飛び、打感が柔らかいことがスコアを良くすることにつながるのか、飛距離だけにこだわるゴルファーにうまく説明できる腕のいいフィッターにもっと頼らなければならないだろう。

繰り返すが、これは簡単なことではない。

新タイトリスト718アイアンは、9月1日からフィッティングを開始、9月29日から世界中で販売される。