今週の新製品発表ラッシュに本間ゴルフも参戦してきた。なんといってもPGAショーの開催週だ。

アメリカでデザインされたこのTR20ドライバーとアイアンは、業界を震撼させるものではないかもしれないが、アメリカでの存在感を強めたい本間ゴルフが投入した最新兵器であることは間違いない。

日本を拠点とする本間ゴルフは2億6千万ドルから2億7千万ドル規模のビジネスを世界で展開しているが、アメリカはわずか2千万ドルにすぎない。

規模拡大のため、本間ゴルフが作ったのがアメリカ拠点のプロダクトデザインチームで、TR20はチーム初のラインナップとなる。

TR20はグローバルに発売されるが、このシリーズは明らかにアメリカのツアープレーヤー/競技ゴルファーに向けて作られたものだ。

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本間ゴルフが目指すもの

「ここは本間ゴルフがもっと積極的に攻めたいところだ」と、本間ゴルフの製品部門グローバル統括責任者、クリス・マッギンリー氏。

「アメリカや英国、欧州市場において我々が求めるのは、日本の伝統を尊重しつつ、ほんの少し西洋的で、ほんの少し性能重視の製品なんだ」。

タイトリストでの20年間でゴルフ用品への確かな目を培ったマッギンリー氏。そしてテーラーメイドに11年間首脳陣として携わった代表のジョン・カワジャ氏。

本間ゴルフをアメリカ市場に浸透させるには絶好の布陣だ。

本間ゴルフはアメリカでの認知度を上げるため、昨秋、フィッティングセンターと小売店、ツアー本部の機能を兼ねるホンマハウスをカールスバッドにオープンした。

また、オーランドにある「リユニオン・ゴルフリゾート」にホンマ・エクスペリエンス・フィッティングセンターをオープン、さらにハワイとブリティッシュコロンビアにもフィッティングセンターを作る予定だ。

これだけの投資をしたからには、TR20の成功が本間ゴルフにとってどれほど重要であるかは明らかだ。


 

TR20ドライバー

TR20のTRとは『Tour Release==ツアーリリース』の意で、わかりにくい名前だった「T//World 747」シリーズの後継になる。TR20ドライバーのヘッドサイズは440ccと460ccの2種類だ。

「440ccはサカタ7と呼ばれている」とマッギンリー氏。「ジャスティン・ローズと取り組み始めた時、彼のために数多くの通名を考えたんだが、彼が数字の7が好きだというので、彼のドライバーはみなホーゼルに「サカタ7」と記されているよ」。

興味深いことに、ローズは現在460ccモデルを使用している。「そのほうが結果が出たというだけのこと」とマッギンリー氏。

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TR20で本当に語るべきはウエイト。正確にいうと、どこにウエイトがありどこにないかだ。ドライバーのフレームはチタンだがボディのほとんどにはカーボンファイバーが使われている。

「我々ほどカーボン素材を使っているところは他にない」とマッギンリー氏。「おかげでクラウンから14g、ソールから20g、さらにフェースからも2g重量を落とすことができた」。

きっとその余剰重量はなかなかの高機能なスライディングウエイトに配分されると思うだろうが、その代わりに本間ゴルフが採用したのは2010年っぽい可変ソールウエイトのセットだ。

「スライディングウエイトシステムの重量可変効率はかなり低いが」とマッギンリー氏。「このドライバーの重量可変効率は非常に高い」。

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TR20には9gのウエイトがひとつ、3gが2つ付属している。それぞれをどこに配するかで、高慣性モーメントや低スピン、ドローバイアスなど好みの設定ができる。

「最初の製品ということもあり、他社のように3種類のドライバーを創ることが賢明だとは思えなかったが」とマッギンリー氏。「ひとつのヘッドでもウエイトを調整することでそれぞれの弾道を得られるようにできた」。

この可変ウエイト(別売りで15gまでのウエイトを用意)と、本間ゴルフ特有かつ非直感的なアジャスタブルホーゼルのおかげで、TR20は事実上カスタムフィッティングを要する。

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「これでフィッターの夢が叶う」とマッギンリー氏。「このドライバーのあらゆる潜在能力を引き出すことができるわけだから。昨今、これが高性能の道具を売る方法、まずフィッティングありきなのだ」。



 

本気のVIZARD(ヴィザード)シャフト

本間ゴルフは「Vizard=ヴィザード(仮面)」と名付けたオリジナルのカーボンシャフトを製造している。

これをどうせ本物のシャフトの代用品、安っぽい自社ブランドだろうと思っているならそれは大違いだ。

「もちろん自社工場で作るより、シャフトメーカーから買ってドライバーに挿すほうがずっとコストを抑えられる」とマッギンリー氏。

「しかし我々は東レコンポジット社の非常に高品質で高強度のファイバーを使用し、製造を日本でおこなっている。フジクラや三菱などのシャフトメーカーは、これは非難ではないが、自社の高品質シャフトは日本で作って、他社との企画シャフトは中国で製造するものなのでね」。

TR20専用Vizardは50g、60gと70gを用意、それぞれ異なるしなり特性(剛性分布)を有する。

50gは先端が柔らかめのカウンターバランスで高打ち出し角が望める。

60gは硬い先端とマイルドな中央部でスピード重視、70gは先端を硬く手元側はマイルドにして操作性を高めている。

マッギンリー氏によると本間ゴルフには他社シャフトのフルラインナップもあるので、TR20には望みのシャフトを組むことが可能だ。

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TR20 VアイアンとTR20 Pアイアン

本間ゴルフについて何をどう思ったとしても、彼らのアイアンを見てオエっと思う者はいないはずだ。

本間ゴルフの新作アイアンは、ワンピースフォージドのTR20Vと飛距離重視のTR20Pの2種類。アイアンの基本に忠実にみえる。余計なものがなくシンプルで伝統的だ。

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TR20Vはしっかり打てるプレーヤー用のアイアンで、ロフト角は若干ストロングだが許容範囲。7番アイアンで32度、ピッチングウェッジは44度だ。

一方TR20PはVに比べるとやさしさ重視。少し厚めのトップラインとソールで構成されるポケットキャビティアイアンだ(PはPocketから)。

3つのパーツからなるヘッドに鍛造ボディで、薄いL型カップフェースとソールに配したタングステンウエイトにより低重心化がはかられている。

本間ゴルフはPを飛び系アイアンとも位置づけている。なのでロフト角は7番アイアンで31度、ピッチングウェッジは43度となっている。

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ストロングロフト化に対する意見がどうであれ、ここでマーベリックやSIMを引き合いに出すつもりはない。

「どちらのアイアンも今どきのストロングロフトだが」とマッギンリー氏。

「業界全体がそこから学んだのは、そういったロフト角でも最適な弾道を生み出さねばならないということ」。各アイアンの裏側には小さな本間ゴルフのマークがあしらわれている。

これは本間ゴルフのモグラで、マッギンリー氏曰く、本間ゴルフが紡いできた歴史に対してUSデザインチームが敬意を抱いている証拠なのだという。

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「60年代から70年代にかけて、本間ゴルフはアイアンの裏側に小さな丸いモグラのしるしをつけていた。我々は日本から受け継いだ伝統と感性をなにかしら残しておきたいと思ったんだ」。


 

価格、選択肢と総括

TR20ドライバーとアイアンは、本間ゴルフのフィッティング現場では2月、小売店では3月から入手可能。

440ccも460ccも本間ゴルフVizardシャフトとゴルフプライド社の本間ゴルフオリジナルグリップが純正となる。小売価格はいずれも649ドル。追加料金ありのシャフトもなしのシャフトもそれぞれ数多く取り揃えている。

TR20VアイアンもTR20Pアイアンもスチールは日本シャフトのモーダス3、カーボンはVizard TR20-85が純正。

本間ゴルフ曰く、Vizardは先端剛性の高いシャフトで、番手ごとにウエイト設計を最適化することでロングアイアンにおいてはスピードを、ショートアイアン以下では操作性を高めることが可能になったという。

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いずれのアイアンも小売価格はスチールで1本175ドル、カーボンは200ドル。

右利き用は2月3月の発売時に、左利き用も夏には用意できるということだ。

本間ゴルフは今年中にTRシリーズの全ラインナップを取り揃える予定。

ローズが現在使用しているマッスルバックは春に、フェアウェイウッドとハイブリッド、中空アイアンも秋までには出ると思われる。

TR20アイアンの価格は競合他社のプレミアムアイアンと同等。ドライバー649ドルは間違いなく高級の部類に入る。

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「フィッターのいる店に行き追加料金のかかるシャフトを挿したドライバーを買ったら、だいたい700ドル、なんなら800ドル払うことになるのが今どきの相場だろう」とマッギンリー氏。

本間ゴルフはVizardをカスタムシャフトに匹敵する高品質な製品と見なしており、同一条件で比べて649ドルなら、ずいぶんとお買い得じゃないかと思っているわけだ。

「我々はみな製品自体にもちろん自信を持っているが、本間ゴルフを薦める理由はそれだけではない」とマッギンリー氏。

「形の美しさに確かな性能、ブランドが長らく受け継いできたものが重要なのだ。ゴルファーたちに向かって飛ぶ飛ぶと喧伝するつもりはない。フィッティングに行ってなにが起こるか自分の目で確かめてほしい」。