テーラーメイドのビッグニュースに熱中している間に、競合2社が非常に強力な第1四半期の財務報告書を発表した。キャロウェイとアクシネットの両社が、パンデミックの最中だった昨年第一四半期の数字を吹き飛ばすほど圧倒的に上回った。しかも、驚くことに両社共にパンデミック前の2019年をも上回る数字を報告している。

しかも、決して微増などではなく。

アクシネットは、第一四半期の売上高を5億8,100万ドルと報告している。これは2020年から42%、2019年から34%の増加に値する。一方、キャロウェイは6億5,200万ドルに達したと報告しており、第一四半期としては新記録だ。また、前年比(2020年)47%増、前々年比(2019年)でも26%の増加を記録した。

さらに、両社の報告した純利益も相当なものだ。

ゴルフビジネスが今かなりの盛り上がりを見せているのは紛れもない事実のようだ。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

アクシネット社 第一四半期財務報告

アクシネット社は、2020年No.1ゴルフ企業としての座をついに取り戻すことができた。コロナ下でも純利益は9,600万ドルに達し、昨年の下半期からの勢いは止む気配がない。

アクシネットの社長兼CEOであるデイビッド・マーハー氏は、同社の第1四半期の財務報告のプレスリリースで、次のように述べている。「当社は、ゴルフ用品やラウンドの需要が増したことを受け、非常に有望な2021年を切ることができた。全カテゴリーにおける売上の伸びは、当社の製品開発チームと、消費者の需要の増加に伴う当社のオペレーションチームによる功績だ。」

売上の多くを占めるのは、やはりタイトリストブランドのクラブとボールだ。クラブの売上高は、昨年の第一四半期と比較して67%増加の1億5,600万ドルを達成。高額な価格設定もあり、新 「TSi」メタルウッドとスコッティキャメロン「Phantom X」パターが同社の売上に火をつけることになった。ただし、「Vokey」ウェッジに関しては、第1四半期は減少。これは主に、この製品ラインが2年目に突入していたことが理由だろう。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

タイトリストのゴルフボールの売上高は、前年比で50%近く増加し、1億7,400万ドルを達成した。これには新「ProV1」が大きく貢献している。

さらに、同社ギアの売上高(バッグ、帽子、アクセサリー)は合計5,300万ドルで、昨年より22%増加。また、「FootJoy(フットジョイ)」の売上高は1億5,900万ドルで、こちらも22%増加という報告になっている。

エリア別に見ると、アメリカでの売上高は前年比46%増だった。日本と韓国の売上はそれぞれ50%と57%増加し、アクシネットがいわゆる“その他の国”と分類している地域では、61%の増加が見られた。

しかしヨーロッパは、第一四半期はまだロックダウンの最中だったこともあり、第一四半期は多少の成長はあったものの8%に留まった。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

利益と内訳

トップライン(売上)も目を見張るものがあるが、ボトムライン(純利益)は特に投資家を喜ばせる。同社は、第1四半期の純利益を8,500万ドルと計上している。これは驚くことに、2020年の900万ドルに対して855%ものアップになる。さらに、パンデミック前の2019年第一四半期に対しても144%の成長を遂げている。

また、アクシネットの第一四半期の EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)は1億3,500万ドルで、2020年と比べて145%アップ、2019年からは111%の増加。

他社同様に、同社も昨今のゴルフ人気の波に乗っていることが一目瞭然だ。新しいメタルウッドとボールは、確かに大きく売上に貢献した。数字で特定するのは難しいが、出張費や「PGAマーチャンダイズショー」にかかる経費がなかったことも、コスト削減につながったはずだ。アクシネットの販売費、一般管理費(マーケティング、旅費、接待、コミッション、プログラム、その他の間接費を含む)は、昨年に比べて今年は上がっている。しかし、実際42%の売上増加に対して、経費増加分は23,000ドルと抑えられている。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

同社は昨年、コロナの前兆を見て最悪の事態に備えた。2020年第一四半期の終わりに、今後のロックダウンを乗り切るためのキャッシュが十分にあることを確認。今年、1億1,300万ドル強の現金および現金同等物が手元にあることを報告している(昨年は1億5,100万ドル)。さらに、ゴルフ経済が回復していることを示すもう1つのサインがある。48%以上にまで増加した売掛金だ。これは、小売業者やプロショップが在庫を抱えていることを示す。

2021年に向けて新しいアイアンが登場し、アメリカそして最終的にはヨーロッパがコロナ関連の制限から脱却する中、アクシネットが2019年の成績を超えられない理由は何もない。


キャロウェイ 第一四半期財務報告

前述のように、キャロウェイは第一四半期の売上高が6億5,200万ドルで、前年比47%の増加を達成。さらに同期純利益も2億7,200万ドルだと報告している。ただし、これには脚注がつく。これについては後で説明しよう

「当社のゴルフ用品事業は前例のない需要を経験し続けているが、ソフトグッズ事業(アパレルなど)とトップゴルフ事業は予想よりも早くパンデミックから回復している。当社の3つの事業セグメントは、現状に限らず今後数年間も期待できると確信している。」とCEPチップ・ブリューワー氏は述べている。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

「キャロウェイ」と「TopGolf(トップゴルフ)」は3月に正式に合併したため、同社の第一四半期の財務報告書には4週間分の「トップゴルフ」の収益が含まれている。この合併により、キャロウェイは「ゴルフ用品」、「アパレル&ギア」、「トップゴルフ」の3つの特定ビジネスカテゴリーを軸とするようになった。第一四半期のゴルフ用品の売上(クラブとボール)は3億7,700万ドルを超えた。その中でクラブの売上高は3億1,600万ドル(2020年第一四半期から26%増加)を占め、ボールの売上高は6,100万ドル近くに達した。ボールの売上高は昨年に比べて50%増加しているが、タイトリストの1億7,400万ドル(四半期)という数字からはまだ程遠いのが現実だ。

「アパレル&ギア」の第一四半期の売上高は合計1億8,200万ドル(21%増)。アパレルとギアの売上はほぼ均等で、9,500万ドルのアパレル(「キャロウェイブランド」、「TravisMathew(トラヴィスマシュー) 」、「Jack Wolfskin(ジャック・ウルフスキン)」)と8,700万ドルのギア(バッグ、手袋、アクセサリー)という数字がならんだ。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

エリア別では、アメリカでの売上高は昨年に比べて78%も伸び3億8,800万ドルを記録。アクシネットとは異なり、同社の日本での売上は7%減少した。ヨーロッパもアクシネット同様に売上は伸び悩んだが、12%の成長を遂げている。「その他の国」とするエリアでの売上高は64%の増加だった。





利益と内訳

先ほど、同社の純利益2億7,200万ドルに脚注が付くと述べたことは覚えているだろうか。この数字は、必要な会計操作による理論上の利益というのが本当だ。キャロウェイの第一四半期の営業利益は、7,600万ドルと素晴らしい。その他は、「トップゴルフ」との合併によるものだ。キャロウェイはすでに「トップゴルフ」の株式の14%を所有しており、同社がトップゴルフのすべての債務を引き受けたら、合併契約自体は25億ドル近くの価値になった。

取引の結果、キャロウェイの14%の株式の価値は2億5,300万ドル増加し、評価額に計上する必要があった。第一四半期の報告書では、現金以外の利益として記されている。そのため、書面上の利益に過ぎないのだが、同社はそれに対して税金を払わなくてはならない。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

セグメント別では、第一四半期の「ゴルフ用品」の利益は約8,500万ドル。これは昨年と比較して45%の増加、パンデミック前の2019年以前の数値と比較しても20%成長している。「アパレル&ギア、その他」の利益は合計約2,050万ドルで、2019年から7%減少したが、対前年では640%近くの上昇だ。

また、「トップゴルフ」を4ヶ月所有したことにより、9,200万ドル以上の売上と、400万ドル近くの利益がもたらされた。

これらすべてを合計すると、1億900万ドル以上になる。これは、「Jack Wolfskin」と「OGIO (オジオ)」の買収に関連する資産の清算、「トップゴルフ」との合併に関連する1,700万ドルの取引コストなど、さまざまなコストで相殺される。

さらに調整後のEBITDAが1億2,800万ドルで、昨年より115%の増加と報告している。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

第一四半期財務報告書から読み取る

ゴルフ用品のブームについては、あちらこちらで話題になっている 。「Golf Datatech(ゴルフデータテック)」の報告によると、業界全体のゴルフ用品のセールスは、昨年より72%増加し、2019年と比較しても49%増と著しい。これにより、過去最高の第一四半期を記録し、三四半期連続で過去最高の売上を達成した。

キャロウェイもアクシネットも(その他のゴルフメーカーも)、2019年のパンデミック前の販売ペースをはるかに上回っている。古いことわざに“日の照るうちに干し草をつくれ”というものがあるが、今はタイガーブーム以来、最高に照り付けている。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

両社とも投資ガイダンスは提供していないが、2021年は今後も上昇傾向のようだ。アクシネットは、年間18億から 18億7,000万ドルの範囲の売上高を見込んでいる。キャロウェイは具体的な予測を出していないが、同社は従来のビジネス(トップゴルフを除く)の売上高とEBIDTAが2019年を超えると予想している。加えて、新しいトップゴルフ事業も同様に上昇するだろうと見込んでいる。

そして、万が一の為にキャロウェイは7億1,300万ドルの現金と利用可能なクレジットを手元に備えている。

さらに世界的なサプライチェーンの問題は、両社にも潜んでいる。アクシネットによると、第一四半期のサプライチェーンの混乱により、さまざまな原材料が不足し、運送コストがかさんだとのこと。一方キャロウェイは、サプライチェーンやロジスティクス、人手の確保に課題が残っているが、予想される需要に対応すべく万全の準備を整えていると自負している。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

そして、両社の株価は好調な市場を反映している。キャロウェイ株は今朝、 1株あたり32.58ドルの始値で取引を開始した。1年前は 11.50ドルだった。アクシネット株は本日 1株あたり51.35ドルの始値を付けたが、昨年の今頃は27.12ドルだった。


「トップゴルフ」の裏話

明らかに、「トップゴルフ」の合併はキャロウェイにとって今年大きな出来事だった。前述のように、トップゴルフの4週間の売上げは9,200万ドル。同社のトップライン(売上)は、過去5年間で着実に成長し、年間20%近く伸びている。しかし不思議なことに、収益はやや抑え気味だ。SECファイリングによると、トップゴルフは実質的にはまだ利益を上げていないという。

同社はコンスタントに拡大と再投資を繰り返していたため、最悪の状態というわけではない。実際、第一四半期に2つの新施設(フロリダ州レイクマークとニューメキシコ州アルバカーキ)をオープンさせ、今期にはさらに3施設(カリフォルニア州サンノゼ、テキサス州ウェイコ、ジョージア州ビュフォード)がオープンした。 今年はさらに8箇所オープンする予定だ。


アクシネット,キャロウェイ,ゴルフ,ゴルフクラブ

コロナの影響下、多くの施設で入場制限があるものの、世界中のすべてのトップゴルフが現在営業している。キャロウェイは、予約なしの客足が伸び続けており、小~中規模のイベントビジネスも回復していると報告している。

全体像としては、「トップゴルフ事業」はキャロウェイをまったく新しい域に押し上げるだろう。「トップゴルフ事業」の年間予測収益は簡単に10億ドルを超える。キャロウェイ自体は2019年に17億ドルを超えており、新体制のキャロウェイは来年までに30億ドルを達成する可能性があることは想像に難くない。

アクシネットは、「No.1ゴルフ企業」として何年も君臨してきた。しかし、2019年にはそのタイトルをキャロウェイに譲ることになったが、2020年にそれを取り戻した。しかしキャロウェイに「トップゴルフ」が加わったことで、大きな市場の変化や買収がなければ、将来的にキャロウェイに挑戦することは難しくなるのは間違いない。