・テーラーメイドは新作「ミルドグラインド 3(MG3)」でウェッジカテゴリーでの勢いをキープしようとしている

・新デザインは、既存のフェース面だけメッキ加工がない『RAW(ロウ=ノンメッキ)フェーステクノロジー』と『ミルドグラインド』に加え「見た目」の良さが融合

・価格は180ドル。発売日は9月3日(※日本発売は9月4日)


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私が最初に手にしたウェッジはテーラーメイドだった。「RACブラック」の52度、56度、60度で、当時は標準の番手間ロフトを手にし、これらを一年使った後クリーブランドに変更したが、それ以来テーラーメイドは使っていない。

ウェッジの世界において、クリーブランドのブランド力は偉大だった。ボーケイが唯一、「スピングルーブ」に着手していたが、注目すべきブランドといえばこの2つというのが常識だったのだ。

それからというもの、ボーケイが文句なしの「No.1ブランド」となり、クリーブランドとキャロウェイは2番手を争う状態に。我々が何年も行っているテストでは、彼らと互角に戦えるいくつものモデルはあったが、現実は市場の大半がこの3メーカーで成り立ってきた。

そんな中で、テーラーメイドがウェッジ市場で相対的に成功していないのは、努力が足りないからではない。需要も少なく技術革新が乏しいウェッジ市場において、テーラーメイドは精一杯の努力をしてきた。溝のテクノロジーもたくさんある。

フェースを取り替えられる「TP xFT」ウェッジは、ちょっとやりすぎ感があったが、時代を先取りしていた。そして最近では、製造上の「一貫性」を高めるために、『ミルドソールグラインド』を活用しているのだ。


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プロもアマも同じように対応する

全体的に見ると、テーラーメイドの取り組みの多くは、PGAツアーのプロのニーズに応えるためのものだった。これはテーラーメイドが何よりもまず「ツアーブランド」であることを考えれば理解できるが、ツアーブランドであっても、いつかはアベレージゴルファーが欲しいと思う製品を創り出す必要があるのだ。

そんな中、テーラーメイドは「MG2」シリーズで、順調に前に進み始めていた。確かに、クラブに「TW」の文字を刻印できるなら気にする必要もないが、『RAWフェーステクノロジー』ではそういうわけにはいかない。

メリットの背景にある「事実」は往々にしてちゃんと伝わらないものだが、ゴルファーが求めているものは「スピン性能」で、これに異論を唱える人はいないだろう。大切なことは、テーラーメイドはついに打開策を見つけたということ。

テーラーメイドは、ウェッジ市場で最速の成長を遂げているメーカーで、自らほぼゼロからスタートしたことを認めてはいるが、ともかく成長していることには変わりないだろう。

テーラーメイドがすぐにボーケイに挑むということはないだろうが、私の知る限り、テーラーメイドはウェッジカテゴリーで勢いを増している。国によっては、テーラーメイドはウェッジ部門でトップか2位になっており、これは「MG2」の功績だ。今回、テーラーメイドは「MG3」のユーザーが増えることを期待しているのだ。


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テーラーメイド「MG3」ウェッジのデザイン

テーラーメイド「MG3」のデザインのほぼ全ての要素は、同社のビル・プライス氏が言う「ウェッジは一つしかない」という現実を物語っている。あまり使われない中級者向けのウェッジもあるが、ポイントは、あらゆるメーカーの主力ウェッジは、「ハンディキャップ20台」までの幅広い層のゴルファーに訴求する必要があるということだ。

言うまでもなく、こうした幅広い層に支持されるウェッジを創ることは簡単ではない。

アベレージゴルファーにとって、ウェッジに求めることはほぼ「スピン」の一言に尽きる。そして幸いなことにプライス氏によれば、テーラーメイド「MG3」には「スピンサイクル」という設定があるという。


「RAW(ロウ=ノンメッキ)フェース」について

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テーラーメイドの「スピン」に関する話は、特許取得済みの『RAWフェーステクノロジー』からスタートするべきだろう。確かに「RAWフェース」や「ロウウェッジ」に関する誤解は多く、これまでテーラーメイドはこれらについて踏み込んで説明することはなかった。

そして上記のごとき説明不足とその他多くの“都市伝説”により、「ロウウェッジ」は錆びが生じ、その「錆でスピンが増す」という理由でロウウェッジを購入するゴルファーが数多くいるという事実がある。

ではここで(今一度)クリアにしておこう。


「RAWフェース」のメリットは2つあるということを理解することが大切だ。まず、第一にフェースだけ仕上げが施されていないので、他の部分は、それなりに見た目が良い状態をキープしながら使用できるということ。

ゴルファーには、ひどく錆びたウェッジが好きという人もいるし、適正に仕上げが施された綺麗なクラブが好きという人もいる。見方によるが、「RAWフェース」は、両者が好きな部分を良いとこ取りしているとも言えるだろう。

二つ目のメリットは、「RAWフェース」そのものにある。念のため言っておくと、「錆」がスピンを生み出すわけではなく、「仕上げを施さない」ことの目的は、溝の形状になんらかの影響を与える可能性があるものをその溝の上に施さないということを意味する。

テーラーメイドでは、「MG3」ウェッジの『RAWフェーステクノロジー』のメリットを次のように表現している。


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一部のメーカーは、仕上げを考慮し溝のスペックを微調整しているが、多くのメーカーはそうではない。少なくとも仕上げをしないことで、溝が開発の意図通りの性能を発揮しないリスクを軽減することができるし、これは悪いことではない。

そして「錆」に関しては…「ボール」と「溝の間」に入ってしまうものは何であれ、「スピン性能」を低下させる可能性がある。錆自体は、おそらく良いものとは言えない。


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テーラーメイド「MG3」ウェッジ – テクノロジーを深掘り

「MG3」の他のテクノロジーの大半は、真新しいものではない。「弾道を最適化する重心の微調整」のようなことは、ウェッジ業界のほとんどが採用している。

そこで、テーラーメイドは、「重心位置を最適化」するために、「薄肉フェースパッド(ロフト角に応じて重量を戦略的に集めること)」と、「ホーゼル(ネック)」の長さも(ロフト角に応じて)番手毎に変えている。ロフトが立ったクラブの打ち出し角を高くし、ロフト角が寝たクラブの直進性を高め、よりボールが止まるようにデザインしている。

「MG3」のデザインにおいて、今回新しく、そして今までと違うのは『レイズドマイクロリブ』の採用だ。『レイズドマイクロリブテクノロジーは、溝の間にバー状の突起したことで、グリーン周りの繊細なアプローチで「スピン性能」を向上させる効果がある。

これは40ヤード程度のアプローチでの話だが、テーラーメイドによると、この『レイズドマイクロリブ』によりスピン量が200rpmほど増えるという。


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この距離で、200rpmのスピン増は決して小さくはないので非常に興味深い。と同時に、これまでにもこうしたタイプのテクノロジーは様々な形で生まれてきたことも分かっている。

以前のモデルでは、ほかの構造を追加することで「ウェッジ販売」という点では大きなメリットがあったが、コース上ではすぐに「摩耗」してしまい、結局は特に効果がなかったことも事実だ。

今のところテーラーメイド「MG3」ウェッジの『レイズドマイクロリブ』は注目の存在と言えるだろう。

またテーラーメイド「MG3」ウェッジは「8620スチールの鋳造」であることも伝えておきたい。耐久性が劣る代わりにソフトな鍛造に移行することなく「比較的ソフトな打感」をキープする上で、これは概ね最適な素材の選択と言えるし、ウェッジの「溝」にとっても大切なことだ。

そして名前の通り、テーラーメイド「MG3」ウェッジは『ミルドグラインドソール』を採用している。ツアープロのように頻繁にウェッジを交換しないなら、このテクノロジーの恩恵を直に感じることはないだろうが、「MG3」ウェッジのソールが、開発陣の意図したデザイン通りに製造ラインから出荷されることは確かだ。


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テーラーメイド「MG3」ウェッジ – 注目せずとも大切なこと

前述のトピックス以外は、それほど特筆する部分はなく、ゴルファーが無意識のレベルでしかわからないようなことだ。

気になったかも知れないのが、一本目の溝がリーディングエッジの近いところまで下がっているということ。これはトミー・フリートウッドの要望だったようだが、真っ先に目に留まるようなことではないだろう。

同様に、テーラーメイド「MG3」ウェッジのトゥ部分の「形状」が変わったことや、「ホーゼルの長さ」がスペック別に異なるということもほぼ気が付かないと思う。こうしたことは必ずしもパフォーマンスの向上につながるわけではない。

それよりも、「MG3」を独立したクラブと考えるのではなくアイアンセットの延長とする意図でシリーズが改良されている点の方がもっと重要だ。

これは、9番アイアンでもピッチングウェッジからでもセットの延長に溶け込むように、セッティングの流れを考慮しているということ。仮にこれが「Pシリーズ」のアイアンであれば、テーラーメイドもなおさら嬉しいと思うはずだ。

テーラーメイドの「MG3」ウェッジは、新しい「P790」アイアン同様、モダンでミニマリズムを意識している。これは非常に重要な変更点であり、「見た目」がよくなった理由こそ説明できなくても、ほぼ間違いなく気付くはずだ。


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テーラーメイド「MG3」ウェッジ – ロフト角/バウンス角/グラインドオプション

「MG3」には必要不可欠な「ロー」「ミッド」「ハイ」それぞれのバウンス角に加えて「タイガーグラインド」がある。

バウンス角はゴルファーの誰もが理解しているものではないので、テーラーメイドのプライス氏は「抵抗」という言葉で説明している。「ローバウンス」は、芝の「抵抗」が非常に小さくてヘッドが芝に入りやすく、また抜けやすい。

「ハイバウンス」は、それよりも20%ほど「抵抗」があるウェッジで、ザックリし難いというより、簡単にはザックリしない。

その他は一般的なことだ。


「MG3」の「ローバウンス(56、58、60度)」は、入射角がシャロー(浅い角度)なゴルファーや地面が硬いときに有効。ソールは若干ワイドで、トレーリングエッジがグラインドされ丸みもある。

一方、リーディングエッジは地面に近い設定になっており、芝に早めに、そしてスムーズに接触し、早めに抜けるように設計されている。

「スタンダードバウンス(46、50、52、54、56、58、60度)」は、良くあるタイプでどんな時でも使いこなせる。幅広いゴルファーにベストフィットするウェッジであることは間違いなく、何を買えば良いのか迷った時に買って間違いないウェッジでもある。

また今回、テーラーメイドは「MG3」のソール形状を若干変更し、よりソールをきかせるようにしている。1mm幅広になった他、丸みもあり、グリーン周りでの使い勝手を考慮しトレーリングエッジもグラインドされている。

「ハイバウンスウェッジ(52、54、56、58、60度)」は鋭角に打ち込むタイプや、地面が柔らかい時に有効。他のバウンス同様、(「MG2」に比べて)ワイドソールで丸みもあり、トレーリングエッジもグラインドされている。またリーディングエッジも、よりグラインドされている。

「TW(「タイガー・ウッズグラインド」のこと)」は56度のサンドウェッジと60度のロブウェッジがカスタム対応でラインナップしている。特徴は「デュアルソール」でヒール側のグラインドが“大きい”ということ。


スペック表では「ハイバウンス」となっているが、ヒールが削られているため、グリーン周りでフロップショット(ロブショット)を打ちたくて仕方ないゴルファーはフェースを開くことができる他、リーディングエッジもグラインドされており、タイトなライでも座りが良い。

間違いなく、テーラーメイドの中で最も多用性があるグラインドだが、リスクと隣り合わせのウェッジと言えるだろう。


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フィニッシュ(仕上げ)のオプション

テーラーメイド「MG3」ウェッジには、「サテン ロウ クローム」と「サテン ロウ ブラック」仕上げがラインナップ。両方の仕上げが、全てのロフト角/バウンス角の組み合わせで用意されているわけではなく、また左利き用もスペックによるので、後で後悔しない様にスペック表をチェックしておくべきだろう。


「MG3」ウェッジ – まだ足りないこと

「MG3」ウェッジは、これまでのテーラーメイドのクラブで一番「見た目」が良いと言っても言い過ぎではない。ウェッジになると、すべきであるはずのフィッティングをしないゴルファーにとって、これは非常に大きいセールスポイントだ。

だから、トゥの形状や、ボールの後方における「TW」グラインドの座りといったちょっとしたことでも胸が躍る。

「MG3」ウェッジにおけるテーラーメイドの弱点は、ウェッジカテゴリーにおける多くの挑戦者的ブランド同様、オプションが相対的に少ないことにある。ボーケイやキャロウェイは、「ロフト角」「バウンス角」「グラインド」の組み合わせが20以上だ。

「TM」シリーズの17スペックはそれには及ばないが、同社がウェッジカテゴリーの強豪メーカーではないことを考えると、この数字は見事と言える。


今回のラインナップで、ほとんどのゴルファーはもちろん、フィッティングをしないプレーヤー(繰り返しになるが、殆どのゴルファーは「フィッティング」を、しない)を網羅できると思うが、ニッチなゴルファーまでは対応していない。

バウンス角の数字自体は常に分かりやすいとは言えないが、テーラーメイドにおいて8度はローバウンスであり、グラインドオプション(4つ)はボーケイの8種類とキャロウェイの6種類に及ばない。

このようにウェッジカテゴリーにおいて、テーラーメイドにはまだやるべきことがあるが、逆にそれはチャンス。仮に「MG」シリーズが市場で成長し続けるのであれば、ほぼ間違いなくオプションが追加されるだろう。

また、同社の「MG3」ウェッジの販売予測は意欲的だ。新型コロナウイルスによるゴルフブームとシェア拡大の予測から、テーラーメイドのウェッジカテゴリーにおける期待はこれまで以上となっている。

だがその期待も、「SM9」が1月リリースの可能性が高いこと、キャロウェイも新作を出す準備を整えていること、そして市場が将来的には全く不確実であることで沈静化されるだろう。

自信に根拠などない。検討材料が増えることが成功を保証してくれるわけではない、テーラーメイドではウェッジカテゴリーで“強豪”になると信じているようだ。


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テーラーメイド「MG3」ウェッジ – 価格と発売時期

テーラーメイド「MG3」ウェッジの純正シャフトはトゥルー・テンパーの「Tour Issue S200(ツアーイシューS200)」。純正グリップはラムキンの「Crossline 360(クロスライン360)」で、価格は180ドルとなっている。

店頭発売スタートは9月3日だ。(※日本発売は9月4日)