誰も想像しなかったゴルフの新しい形がここにある。かつて、ゴルフがこれほど自由で新鮮に感じられる瞬間はなかった。

“ザ・ランチ・アット・ラグナ・ビーチ ”で出会ったのは、女性たちが築き上げたまったく新しいゴルフの世界。

プレーヤーとして、クリエイターとして、そしてプロやデザイナーとして、彼女たちは従来の枠を超えた“新しいゴルフ像”を描いていた。

正直なところ。「ブランド招待イベント(いわゆる“ブランド・トリップ”)」なんてものは、つややかな演出、作り笑顔、ずらりと並んだ製品を前に「世界を変える革新的なクラブです」なんて言葉が飛び交う、そんな舞台ばかりだと思っていた。

カリフォルニア行きの飛行機に乗った時点では、まさにそんな光景を想像していた。

実際に目にしたのは、予想とはまるで異なる光景だった。



本音を言うと、女子ゴルフウェアは、これまで決して輝かしい軌跡を残してきたわけではない。

選べるものといえば、兄の服のように無骨なポロシャツ、動きやすさよりドレスコードを優先したスコート、そしてテニスウェアを安易に流用したようなパステルカラーのドレスばかり。

ゴルフ歴の長い女性に聞けばきっと共感してくれるはずだ。「ふさわしい」ウェアを探すと、まるで“大叔母のクローゼットをひっくり返した”ような気分にさせられる、そんな笑えない話を誰もが持っている。

おしゃれ? ほど遠い。機能性? とてもそうは思えなかった。

でも今、その流れが変わろうとしている。

ブランド側もようやく気づき始めたのだ。私たち女性ゴルファーが「もう限界」と感じていることに…。

形だけの製品ではスコアは伸びないし、プレーからクラブハウスまで自信を持って楽しめるウェアにもならない。そんな当たり前のことを、やっと理解し始めている。

その変化の先頭に立っているのは、「アディダス」だ。

ラグナビーチで行われた “スリー・ストライプス・リトリート(アディダスが女性ゴルフの未来を一緒に考えるために開いた特別イベント)”は、よくあるブランドイベントとはまるで違っていた。

アスリート、デザイナー、クリエイター、普段は交わることのない人々が同じ場に集い、ただ製品を試すだけではなく、女性ゴルファーにも、後回しにされたような存在ではなく、真にプレーを高めるギアが必要だという考えを本気でぶつけ合う場になったのだ。

ここで交わされた対話は、女性だけでなくゴルフそのものを変えていく力を持っている。


ゴルフラウンド中にハイタッチを交わす2人の女性ゴルファー 仲間との絆を表すシーン

「Fit Check」10分コーデ対決

イベントは、ありきたりな“型”を壊す仕掛けから始まった。

ぎこちない自己紹介もなければ、決められたフォトセッションもない。

アディダスは私たちをチームに分けて、ゲームに見立てたコーディネートに関するマーケティング調査を行なった。

チームに渡されたのは、マネキンと最新の『Ultimate365(365日着られる究極のウェア)』シリーズ一式。アパレル、シューズ、ソックス、そしてバケットハット。

与えられたお題は「現実のシチュエーションに合わせて女の子をコーディネートせよ」というものだった。

9ホールのあとに友達の子どもの誕生日会? そのシーンにぴったりのスタイルがある。カップルラウンドのあとにブランチ? もちろんそのスタイルも用意できる。

「制限時間10分。全身コーディネート、スタート!」

遊び感覚に見えるかもしれない。けれど、実際はとても本質的だった。

わずかな時間で、アディダスのウェアがいかに幅広い表情を持つかがはっきりと見えてきた。

スコートは「お堅いゴルフ場専用」なんて枠には収まらない。ジョガーパンツは「アスレジャー(アスレチック&レジャー)用」だけに終わらない。プリーツだって、しっかり復活している。

そして何より、帽子を替えたり肩にセーターを羽織るだけで、ひとつのスタイルが別のパターンに変わる自由度の高さに驚かされた。



翌日は実際にコースへ。

“ザ・ランチ・アット・ラグナ・ビーチ”での9ホールは、ラグナ特有の急峻な谷間を行き来しながら進むコースレイアウトで、すぐそばの海から届く潮風が心を解き放ってくれる。

ここを拠点にする「ベアフットリーグ」は、その名のとおり裸足でゴルフを楽しむ集団。サーフタウンらしい自由な空気が満ちていて、雰囲気は徹底して“ゆるやか”。

太陽に照らされ、笑い声が響く、深刻さとは無縁のゴルフがここにはあった。

新しいウェアを身にまとい、思った以上にパットを決め、そして、18番の握手だけで終わらないつながりを築くことができた。


アディダスが見つけた答え

『Ultimate365』は、ハンガーにかかっている姿がいいだけじゃなかった。

「もっと動きやすく」「もっと私たちに合ったものを」と長年求めてきた女性ゴルファーの声を、ようやく形にした、そう思わせる仕上がりだった。

ここでラインナップをざっくり紹介してみよう。

ちなみに、「Ultimate365」=“365日着たくなる究極のゴルフウェア”を意味するシリーズ名。

「Go-To」=“いつでも頼れる万能ウェア”。「MC」=“コース内外で使えるハイブリッドシューズ”。


・Ultimate365 Gingham Skort(軽やか&バランスの良いギンガム柄スコート)

軽やかなストレッチ素材で、スイングも快適。ギンガム柄はクラシカルすぎず、ちょうどいいトレンド感。スポーティーだけど品を失わない“バランスの良さ”が光る。


・Ultimate365 Joggers(女性専用設計の快適ジョガー)

ようやく出た“本物”のジョガー。通気性が良く、ウエストもズレない。テーパードなのに窮屈さはなく、シルエットはきれい。メンズの流用ではなく、最初から女性のために作られた一本。


・Go-To Pleated Shorts(モダンフィットのプリーツショーツ)

モダンなプリーツショーツ。腰回りはすっきり、ラインを崩さずにトレンドのオーバーサイズ感をプラス。シャープさと動きやすさを両立。


・Go-To Layer Sweatshirt(羽のように軽い万能スウェット)

とにかく羽のように軽い。重ね着しても邪魔にならず、気づけば手放せなくなる。きっと「それどこの?」と聞かれる一枚。


・MC Zoysia Shoes(スパイクレスなのに抜群のグリップ力)

スパイクレスなのに抜群のグリップ。リサイクル素材を使ったアッパーは高級感があり、クラシックなウィングチップ風でも足への負担なし。信頼できる一足で、私の定番に決定。


・Retrocross 25s(街でも履けるクロスオーバーシューズ)

今回の“伏兵”。スニーカーの見た目で、しっかりしたゴルフ性能。コースから街まで違和感なく履ける万能シューズ(雨の日以外なら)。


ゴルフイベントで履かれた白いゴルフシューズ コーディネートやファッション性を強調したスタイル

本当の価値は“対話”にあった

「スリー・ストライプス・リトリート」の真価は、何よりも“対話”にあった。

アディダスは開発者を並べて「最新モデルです」と語らせるだけではなかった。

実際に着用する私たち女性がその場でフィードバックを伝え、質問を投げかけ、製品をカタログ以上の深さで理解できる。そんな双方向の場が用意されていた。

「昔は業界の慣習に従って、女性には膝丈スカートを用意していた。でも求められていたのは違った。もっとスポーティーに。もっとフェミニンに。強さを感じながら美しく見えること。その声に応えるために私たちは挑戦した。裾丈も、シルエットも、選択肢もすべてを見直した」 ── ジェニー・コー(アディダスゴルフ デザインディレクター)

何度も出てきたキーワードは「選択肢」。

それは宣伝文句ではなく、長い間私たちが心から待ち望んでいたものとして語られていた。

正直、これまでのゴルフウェアには“選べる自由”なんてなかった。丈は長すぎる、形は箱のように野暮ったい、どれも似たり寄ったり。

でも今は違う。

1ホール目でずり上がらないスコート、締めつけるべきところは締め、余計な圧迫はないジョガー、そして「伝統かモダンか」「快適か性能か」を選ばせないシューズ。

「私たちが作っているのは、ただの“おしゃれ着”じゃない。ゴルファーはアスリート。あなたたちもアスリートだ。本当に必要なのはパフォーマンス、そしてそれを引き出す自信。それを形にするのが、私たちの役割なんだ。」

LPGA2勝のローズ・チャンもまた、言葉を濁すことなく語った。

「自信こそすべて。女の子らしさの飾りなんていらない。私が欲しいのは“自分らしさ”を感じられるスポーティーさ。ゴルフを始めた頃は選択肢がなくて、仕方なくボーイッシュな格好をしていただけ。

望んでいたのは、シンプルで強さのある服。アディダスに女子の契約選手がいなかった当時、やっと本当に欲しかったものを手にできるチャンスだった。見た目が良ければ、プレーだって良くなる。」

その最後の一言が、特に胸に響いた。

「見た目が良ければ、プレーも良くなる。」

これはただのウェア発表会ではなかった。

女性ゴルファーが「何を求めているのか」を真正面から問われ、そしてアディダスが“その答え”を差し出してくれたのだ。



ゴルフに生まれた新しい基準 ─ その先にある次のステージへ

帰りの空港で思い返したのは、ただ「フィットする服に出会えた」という喜びではない。

“裸足リーグ”のコースで機能するシューズを試せたことでもない。

何より大きかったのは──ゴルフの世界で女性がようやく「主役の席についた」という実感だった。

もはや“後回しの存在”でも、“ピンクにして小さくまとめたカテゴリ”でもない。

アスリートとして、デザイナーとして、クリエイターとして、そしてリーダーとして。女性がプロダクトを内側から動かす力を持ったのだ。

もちろんアディダスも完璧じゃない。完璧なブランドなんてない。それでも、今この瞬間、彼らは確かに耳を傾け、行動している。

「裾を短くしてほしい」という声に応え、二つの顔を持つ服を生み出し、ゴルフが保守的すぎた現実を認めた上で伝統を守りながら進化できることを証明しようとしている。

「スリー・ストライプス・リトリート」は単なるウェアイベントじゃなかった。そこにあったのは“つながり”。

ホープ・バーネット、ケイリン・ヘンダーソン、サラ・ウィンター、カーリー・シューメイカー、アマヤ・アシル、タニア・タレ、そしてローズ・チャン、彼女たちと肩を並べて気づいた。

これこそがゴルフの未来を広げる姿だと。

誰もが同じ服を着ているわけじゃない。プレースタイルだって違う。

それでも共通しているのは、「もっと良いものを求め、ゴルフにはそれを叶える価値がある」と信じていること。

だからこそ、この物語はMyGolfSpyで語られる。

女性を真剣に受け止め、誠実さと意図を持ってデザインする。そのとき得られるものは、アディダスの成功だけじゃない。

それは、ゴルフそのものの勝利だ。


女性ゴルファーたちが集合写真を撮るゴルフイベントの様子 背景に山々が広がる屋外コース 2025年

今回の旅を細部まで支えてくれたテイラー・タイナーとカーリー・マクギリスに、心から感謝を。

まさに「抜け目なし」の素晴らしい仕事だった。