USGA(全米ゴルフ協会)が公表する「適合ドライバーリスト」。一見、ただのデータの羅列にしか見えないそのリストの中に、思いがけない“ドラマ”が潜んでいる。
そのひとつが本間ゴルフ(HONMA)の名前が語るストーリーだ。そこに刻まれているのは、ブランドの挑戦、そして理想と現実の狭間で揺れる真実。
このリストは、単に「ルールに適合したクラブの一覧」ではない。むしろそれは、メーカーの野望、戦略、そして夢の軌跡を静かに映し出す“舞台裏の記録”なのだ。
本間ゴルフ、その“静かな物語”
本間ゴルフ(HONMA)が北米市場という新たな戦いの場に挑み、「その本質を掴み取る」──あるいは、少なくとも確かな成果を残そうと動き出してから、もう数年が経った。
夢と現実、その狭間で続く戦いの足跡は、今も静かに刻まれている。
北米での再出発に向けて、本間ゴルフは名だたる業界の重鎮たちをチームに迎え入れた。
その中には、かつてテーラーメイドを率いたマーク・キングの姿もあった。だが、内部の声によれば、彼らの進言は届かなかった。
光を求めて集めた人材たちの言葉が、なぜか社内に吸い込まれるように消えていったのだ。
カリフォルニア州カルズバッドに誕生した「HONMA HOUSE」。北米での野心を象徴するそのショーケースは、きらびやかな幕開けとともに注目を集めた。
だが、その輝きは長くは続かなかった。まるでジェイ・Zの歌詞にある――“grand opening, grand closing” (盛大な開店、そして華々しい閉店)。
華やかなスタートと、あっけない終幕。
それは、本間ゴルフが追い求めた夢の儚さを物語っていた。
本間ゴルフ(HONMA)のクラブは、『Most Wantedアイアンテスト』などで高く評価され、その実力は確かだ。
だが、主力となる「TWシリーズ」は、期待されたような“熱狂”を巻き起こすには至らなかった。ギア好きならその名を知らぬ者はいない。
それでも、一般のゴルファーにとって“本間”はまだ遠い存在。
静かな実力と、届かぬ大衆の熱――そのギャップこそが、このブランドの物語をより深くしている。
それでも本間ゴルフは歩みを止めなかった。アメリカ市場に向け、堅実で確かなクラブを静かに作り続けている。
そして今、USGAの「適合ドライバーリスト」にその名が刻まれた新たなモデル。
それが示すのは、最新、もしくは間もなく姿を現す「TW777シリーズ」の存在だ。静かな炎は、まだ消えていない。
まだこの先に、さらなる展開が待っているのかもしれない。だが今確かなのは、本間ゴルフが2本の新ドライバーと、1本のミニドライバーを準備しているということだ。
その動きは静かだが、確実に次の章の幕が上がろうとしている。
「TW777」──静かに動き出した本間の中核モデル
モデル名に“末尾の数字や記号”がないことが示すのは、「TW777」が本間ゴルフにとって、2025年の“中核を担う”モデルであるということだ。
ロフト角は9度と10.5度。ソールには「TITANIUM CARBON」の刻印。チタンを融合したカーボン素材を思わせる文字が静かに輝く。強度と軽さ、その微妙なバランスを追い求めた設計だろう。
形状は派手さを抑えた“落ち着きのある進化系”。『ドロップソール』や『イナーシャジェネレーター』を思わせるデザインながら、あくまで控えめに、品よくまとめられている。
そして見逃せないのが、前後に配置された2つのウエイトシステムと、本間ならではの精密で多機能なホーゼル調整機能。細部にまで息づく「本間らしさ」が、再び存在感を放ち始めている。
「TW777 Max」──本間が示す“寛容性”の到達点
残念ながら、USGAのリストにはHONMA「TW777 Max」がどれほどの「K(寛容性)」を持つモデルなのか「10K」なのか、「9.5K」なのか──といった具体的な数値は記載されていない。
とはいえ、「TW777 Max」が本間ゴルフのラインナップの中で最も「寛容性」に優れたモデルであることは間違いないだろう。
標準モデルと同様、ソールには「TITANIUM CARBON」の刻印があり、チタンを融合したカーボン素材が採用されている。
また、前後2か所のウエイトシステムを搭載している点も共通だが、今回はヒールからトウ方向にウエイトを入れ替えできる“可変式デザイン”となっている。
注目すべきは、本間独自の設計によって、そのウエイトがヘッドの外周部、しかも極限まで後方に配置されていることだ。これにより、低重心かつ深重心の特性を生み、最大限の「寛容性」を引き出す設計となっている。
一見すると、トレーリングエッジに外周ウエイトがあるように見えるが、実際には「HONMA」ロゴが刻まれた大型ウエイトが配置され、重心をさらに低く深く押し下げる役割を果たしている。
ロフト角は9度、10.5度、12度の3種類が用意され、本間独自の調整機能付きホーゼルも採用されている。
「TW777 360Ti(mini)」──“最も大きなミニドライバー”、本間の新章
最後に紹介するのは、本間ゴルフが新たに挑む“ミニドライバー”の領域だ。
もし本間がこれまでの常識を覆すつもりがなく、単に型破りなネーミングをしているわけでもないなら、「TW777 360Ti」はその名のとおり、360ccヘッドにチタンフェースを採用したモデルと考えられる。
それが事実であれば、このクラブは市場で“最も大きなミニドライバー”となるだろう(キャロウェイに対抗するような存在だ)。
実際に打ってみなければ確かなことはわからないが、このモデルはフェアウェイからよりもティーショットでの使用を想定して設計されているようだ。
ミニドライバーというカテゴリーは、近年その存在感を増しており、360ccというやや大きめのヘッドサイズは、“安心感”を求めるゴルファーにとって魅力的な選択肢となりそうだ。
こうした設計思想は、ヘッド内部の構造にも表れている。「TW777 360Ti」は3つのウエイトポジションを備え、フロント、バック、そしてトゥに配置されている。
内部のウエイト設計によって最終的な特性は変わるかもしれないが、「低弾道・低スピン」から「高弾道・高スピン」、さらには「フェードバイアス」まで、幅広い調整が可能と考えられる。
特に、フェースの回転を抑えたい競技志向者(上級者)にとっては興味深い設計だろう。
他の「TW777」モデルと同様に、『可変式ホーゼル』の調整機能も搭載されている。
価格と発売時期──“Made in Japan”が貫く本間の矜持
価格や発売時期についてはまだ正式な発表がないが、1月の発売に向けて詳細が明らかになると見られている。
注目すべきは、今回の本間ゴルフ(HONMA)のドライバーが日本製であるという点だ。
本間は通常、自社製のシャフトを組み合わせており、それも同じく日本で生産されている。
プレミアムブランド全体で見ると、ゴルフクラブの価格帯はおおむね横並びになりがちだ。ただし、中国での製造を行っていない本間は、関税の影響を受けにくい立場にある。
それが実際の価格にどう反映されるかは、今のところ不明だ。
続報は入り次第お届けする。
あなたなら、どの「TW777」を選ぶ?
あなたは、この中に気になるモデルはあっただろうか?
驚いた部分や、試してみたいと思うHONMA「TW777」ドライバーはある?
市場に登場したとき、どんな評価を受けるのか楽しみだ。
本間ゴルフ「TW777シリーズ」は、2025年11月28日発売。
詳細は、「HONMA ホームページ」より。




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