ちょっとした“もしも”を想像してみよう。君がクラブメーカーのトップだったら──。
ヒット作の後継モデルをどう進化させるか、常に難しい決断を迫られる。
実際、PINGにとって「i230」は大成功のモデルだった。そしてその後継「i240」で、PINGはクラブを劇的に変えることなく、必要な部分だけを磨き上げるという道を選んだ。

果たしてそれは“最善の判断”だったのだろうか?

PING「i240」アイアン:ちょうど“中間”にいる存在
PINGはこれまで、ユーティリティアイアンのことを「クロスオーバー(混ざりあい)」と呼んできた(※今後この呼び方は変わるようだ)が、実はPINGのラインナップで真の“クロスオーバー”といえるのは、「i」シリーズのアイアンかもしれない。
一方で、「i2」シリーズは「i5」のような「競技志向(上級者向け)飛び系」アイアンよりもコンパクトで、寛容性は控えめ。弾道は低く、ロフトも寝ている。
そしてその「i5」も、「G」シリーズのような「スコア改善型(初・中級者向け)」アイアンと比べると、やや小ぶりで、やさしさや弾道の高さは抑えられている。
「『i230』は、私たちにとって非常に重要なアイアンだった」とPINGプロダクトデザインディレクターのライアン・ストッケ氏はMyGolfSpyに語っている。
「『Blueprint(ブループリント)』シリーズよりはヘッドサイズが大きいが、ツアーと一般ゴルファーの間をもっとも幅広くカバーした“クロスオーバー的存在”だった。」

そう考えると、「i240」は「i530」(あるいは、今年後半に登場予定の後継モデル)と相性が良さそうに思える。
しかしPINGは、「i240」を「Blueprint」シリーズの補完モデルとして位置づけている。
「この3つのアイアンのサイズは、それぞれに異なる弾道設計思想を体現している」とストッケ氏は語る。
「『Blueprint T』はもっとも低弾道で、ボールが低い角度で滑り込むように落ちる。『Blueprint S』はその中間、そして『i240』はもっとも高弾道で、落下角度も鋭角になる。」
ロフト角と低重心設計を考慮すると、「i240」はこの3モデルの中で最もスピン量が少ない仕様になると見られている。
またストッケ氏によれば、PINGのPGAツアー契約選手の3分の1、LPGAツアーでは半数の選手が「i230」または「i240」をキャディーバックに入れているという。

「これは、ロングアイアンを入れ替えるうえでの“最初の一歩”になるクラブだ。」
「この3モデル(Blueprint T/S/i240)がセットの中でしっかり機能するように、連携を重視して設計している。実際、コンボセットで使うゴルファーがかなり多くなると予想している。」
PING「i240」の進化ポイントとは?
これほど成功したクラブをモデルチェンジするとなれば、「下手にいじって壊さないこと」が最優先になる。もちろんPINGもその原則をしっかり意識している。
最も目立つ変化は、外観にある。ただし今回に関しては、その“壊さない”という方針が本当に守られたかと言えば、少し疑問が残る。
「i230」はキャビティバック構造ながら、PINGはその見た目を巧みに仕上げ、キャビティに見えないよう工夫されていた。
バッジがキャビティ部分をスマートに覆っており、見た目はブレードに近く、とてもクリーンだった。
それに対して「i240」は、決して後退したわけではないが、少なくとも“これまでの路線から少し外れた”印象がある。あるいは“ちょっと方向転換した”とも言えるだろう。
いずれにしても、新たに採用された多層構造の『ダンピングバッジ』によって、「i240」はキャビティバックそのもののルックスに仕上がっている。

「このバッジには非常に軽いABS樹脂を使っている」とストッケ氏。 「クロムメッキとカーボンファイバーを組み合わせることで、大幅な軽量化を実現している。」
全体として、今回のバッジは「i230」に比べて約10グラムの軽量化を実現。カーボンファイバーもその一部に貢献しているが、ストッケ氏によれば、主な役割は“見た目の演出”だという。
「i230」と同様、「i240」ではキャビティ内部からかなりの重量を削り、そのスペースには『エラストマー素材』を配置。
このエラストマーとバッジの組み合わせによって、打音は、とくに耳につくような高音域をしっかりと抑え、打感の軽さやチープさを感じさせない設計になっている。

さらに、削減できた重量はすべてヘッド周辺部に再配分されている。
この“周辺重量配分”に加えて、トゥ側の高比重ウエイト、そして軽量なバッジの組み合わせにより、セット全体のMOI(慣性モーメント)は約2.5%向上している。
「i240」のようなコンパクトなアイアンで、これは決して小さな変化ではない。
「これはヒール・トゥ方向のMOIにとって大きな進化だ。」とストッケ氏。 「ツアーでロングアイアンとして多く使われている理由のひとつが、まさにこの効果なんだ」
PINGは“良いもの”に手を加えすぎていないか?
最近のPINGアイアンを見ていて気づいた人も多いはず。昔に比べて、見た目が格段に良くなっている。
“見た目より性能”を貫いてきたPINGにとって、これはちょっとした革命といえる。
モデルの流れで見ると、「Blueprint T」から「Blueprint S」へのつながりはごく自然でスムーズだった。
「Blueprint S」から「i230」へ、さらに「i530」への移行も同様で、デザイン的にも“ひとつのファミリー”としてまとまりがあった。
新しい「i240」は、見た目としてまったく悪くはない。
ただし、「i230」よりも“やさしさ”を感じさせるルックスを追求した結果、PINGがこれまで築いてきた“スムーズなモデル間の流れ”からはやや外れてしまった印象がある。
このデザインの方向性を、その後継モデルと目される「i530」(おそらく「i540」)にどこまで引き継げるかは不透明だ。
というのも、「競技志向(上級者向け)飛び系」アイアンは中空構造の多層設計が基本。そこにブラックカーボンファイバーの要素をどう落とし込むのか。PINGの次の一手が注目される。
また、好みによって評価が分かれそうな変更点がもうひとつある。
今回の「i240」では、「Blueprint」シリーズの最新モデルと同様に、『MicroMax™グルーブテクノロジー』が採用されていない。
『MicroMax』は、フェースに細くて本数の多い溝を刻むことで、ラフからのスピン量を維持することを目的としたテクノロジーだ。

しかしPINGが得たフィードバックによれば、『MicroMax™グルーブ』はフェアウェイでは逆効果だった。
ラフではスピンを維持できるものの、フェアウェイからのショットではスピン量がむしろ減ってしまったのだ。
これは、ツアープロや上級者にとって問題となった。
というのも、彼らは150ヤード以内のアイアンショットのうち約70%をフェアウェイから打っている。
彼らにとって重要なのは、「すべてのライで安定したスピン」ではなく、「フェアウェイからのショットで最大限のスピンが得られること」だった。
「彼らはフェアウェイにいるとき、とにかくスピンを最大限にかけたいと考えている。それを実現するのが、ツアー選手に好まれている、やや広めの溝間隔なんだ。
今回の『i240』も、『Blueprint T』『Blueprint S』と同じ仕様になっている」とストッケ氏は語る。
PING「i240」:スペック・価格・発売情報
「i240」は前作と同様、「431ステンレススチールの鋳造構造」を採用している。 (ちなみに「Blueprint T」と「S」は「8620カーボン鋼の鍛造」、「i530」は「鍛造マレージング鋼フェース」を搭載)
また、「i240」には他モデルと同じく、濡れた芝でも安定した性能を発揮する『Hydropearl 2.0仕上げ』が施されている。
「i240」は、3番アイアンからピッチングウェッジまでに加えて、ギャップウェッジ(PINGではユーティリティウェッジ=UWと呼ぶ)もラインナップされている。
ライ角は、PING独自の全10色のカラーコードに対応し、右利き・左利き両方のモデルが用意されている。

日本モデルの詳細は「PING公式サイト」をチェック!
発売は、2025年9月4日(木)。
※下記はアメリカ仕様のスペック情報。
シャフトにも変更がある。
「i230」では標準スチールシャフトに「Dynamic Gold 105」が採用されていたが、新しい「i240」では、やや重量のある日本シャフトの「NS Pro Modus3 115」が標準装着される。
この「Modus3 115」は、人気の「Modus3 105」と比べて、弾道がやや低め・スピンもやや控えめ・そしてわずかに重い仕様とされている。
カーボンシャフトは、「PING Alta CB Blue」が標準装着。また、PINGらしく豊富な純正オプションシャフトも用意されている。
グリップは「Golf Pride 360 Tour Velvet」が標準仕様だ。

価格は、スチールシャフト仕様が1本あたり217ドル、カーボンシャフト仕様が232ドルに設定されている。
本日よりフィッティングおよび先行販売がスタート。店頭での販売開始は、7月17日を予定している。
詳しくは、PING公式サイトをチェック。
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