ついにその時が来た。

タイトリスト「Pro V1x Left Dash(プロV1x レフトダッシュ)」の次世代モデルが、今週の「プロコア選手権2025」でPGAツアープレーヤーの手に渡った。

待ちに待った7年。ゴルファーなら、この“遅れてきた主役”の登場を心待ちにしていたはずだ。

タイトリストはまだ詳細を明かしていないが、行間を読むだけで、これから訪れる変化の気配を感じ取れる。


ティーアップされたタイトリスト「Pro V1x Left Dash」最新モデルのゴルフボール。芝の上に置かれた状態でディンプル構造が際立つ。

ニッチな存在から支持を得たボール

「Left Dash(レフトダッシュ)」の立ち位置を整理しておこう。

このモデルが初めて姿を見せたのは2018年、『カスタム・パフォーマンス・オプション(CPO)』としての登場だった。

当初から大量販売を狙うようなボールではなく、「Pro V1x(プロV1x)」の代わりになる存在でもない。むしろ、ごく限られたニーズに応えるための“特注ツール”といったほうが正しい。

フィッティングの観点では説明すべき要素がもう少しあるが、本質はシンプルだ。

ティーショットでできるだけ遠くに飛ばしたい。

その一点において「Left Dash」は圧倒的な強みを発揮する。

データが示す事実はシンプルだ。 タイトリストのフィッティングデータによれば、「Left Dash」が推奨される割合は全体のわずか6〜8%。つまり、10人に1人も選ばない“狭い層”をターゲットにしたボールだ。

そしてそれは、発売当初からタイトリスト自身が繰り返し強調してきた立ち位置でもある。

販売数もこの数字にほぼ連動している。ただし、その背景には別の要因もあるかもしれない。というのも、いまだに「Left Dash」の存在を知らないゴルファーが少なくないのだ。

タイトリストのゴルフボール製品管理ディレクター、フレデリック・ワデル氏はこう語る。

「『Pro V1(プロV1)』や『Pro V1x(プロV1x)』がツアーで圧倒的な支持を集めているのは、大多数のゴルファーにしっかりフィットするからです。ただし中には、“高弾道”や“低スピン”といった特別な条件を求めるゴルファーも存在します。」


タイトリスト「Pro V1x Left Dash」最新モデルのゴルフボール。夕暮れのフェアウェイでアイアンのフェース前に置かれた構図。

“十分”では足りないとき

タイトリストは、この後継モデルに4年という歳月をかけてきた。

――そう、実に4年。

製品管理ディレクターのフレデリック・ワデル氏は「何度も発売目前まで進めながら、そのたびに完成品を見送り、ゼロから作り直す決断をしてきた」と明かす。

ワデル氏は、こう振り返る。

「ゴール目前まで進みながら方向転換を余儀なくされたことが何度もありました。性能面では優れていた部分もありましたが、『Left Dash(レフトダッシュ)』本来のDNAから外れているとユーザーに感じられてしまったのです。」

要するに、数字では優れた試作品があっても、それは「Left Dash」ファンが求めるボールではなかった。だからこそ、開発チームは潔くお蔵入りにしたのだ。

実際、2年前の時点で「完成間近」と耳にしていた自分としては肩透かしを食らった気分だ。

今でも惜しい思いは残るが──2026年にはついにその姿を拝めそうだ。


ライバルたちの台頭

タイトリストが「Left Dash(レフトダッシュ)」の後継モデルに取り組んでいる間、ライバルたちは次々と動きを見せていた。

キャロウェイの「Chrome Tour Triple Diamond(クロムツアー トリプルダイヤモンド)」は、まさに「Left Dash」の存在があって生まれたモデルといえるし、小規模ブランドのDTCボール(直販ブランドボール)も初速アップとロングゲームでの低スピン化を進めている。

その一方で「Left Dash」は、2018年のツアーデビュー以来、一度も手が加えられていない。

主要メーカーの現行ラインナップの中で最も“息の長い”製品であり、それはオリジナルデザインの完成度を証明するものでもあれば、アップデートの遅さを示す事実でもある。

――おそらく、その両方だ。


期待できること

ツアーでの先行投入といういつもの流れのため、タイトリストは性能の詳細をまだ公表していない。ただし、いくつかは推測できる。

「Pro V1x(プロV1x)」の系譜にある以上、新モデルも『4ピース構造』に『デュアルコア』を搭載するだろうし、看板でもある“初速性能”を支えるため、コンプレッションは100前後に収まると見られる。

ポイントは、スピン量が現行の「Pro V1x」に対してどの位置づけになるかだ。

いまの「Pro V1x」は、そもそも「Left Dash」が登場した当時のモデルよりスピンが抑えられている。

新しい「Left Dash」はその関係を再定義するのか、それともさらに“低スピン領域”へ突き進むのか。

いずれにしても、「Left Dash」ファンが違いを感じ取れるだけの変化は必須だ。そうでなければ、登場の意味はない。


タイトリスト「Pro V1x Left Dash」最新モデルのパッケージ。シンプルな白箱に「Pro V1x」のロゴが入ったテスト用デザイン。

結論

市販スケジュールはまだ発表されていない。ただ、ツアー投入をオープンにしたという事実は、タイトリストが「ついに理想の形にたどり着いた」という自信の表れだろう。

通常の流れからすれば、新しい「Left Dash(レフトダッシュ)」が店頭に並ぶのは2026年以降になる可能性が高い。

長い間、このアップデートを待ち望んできたゴルファーにとっては忍耐の連続だった。

しかし、すでに“市場屈指の飛距離”を誇る性能に磨きをかけつつ、その特別なキャラクターを失っていないのであれば──待つ価値は十分にある。

あとは、ボーケイチームに「Slate Blue(スレートブルー)」仕上げのウェッジを復活させてもらえれば完璧だ。

結局のところ、「Left Dash(レフトダッシュ)」は“自分が何を必要としているのか”を明確に理解しているゴルファーのためのボール。

その哲学は新モデルでも変わらないはずだ。そして、それこそがコアなファンがこのボールを愛し続ける理由だ。


あなたの声を聞かせてほしい

あなたは現行の「Pro V1x Left Dash(プロV1x レフトダッシュ)」をプレーしたことがあるだろうか。

そして、その後継モデルの登場を楽しみにしているだろうか。