新たに登場したトゥーロン「Small Batch Badlands(スモール バッチ バッドランズ)」限定パター。その誕生のきっかけは、ひとつの“地理”にあった。
いや、より正確に言えば、この「Badlands(バッドランズ)」という名は、まさに地理から生まれたものだ。
「Badlands」のセンターシャフトデザインは、現在ツアーや一般ゴルファーの間で高まるセンターシャフトパターの人気から生まれた。
注目を集める要因の多くは、ゼロトルク設計のセンターシャフトモデルの台頭にあるが、伝統的なセンターシャフトパターも同様に“いま”の流れに乗っている。25年1月、カパルアでの勝利を挙げた松山英樹も、使用していたのはセンターシャフトのブレードパターだった。プロの世界では“勝ち馬に乗る”のは常套手段。
結果として、今年は数多くのセンターシャフトパターがツアーで姿を見せている。
さて、名前の由来に話を戻そう。このパターはシャフトを中央に配置していることから、トゥーロンは「Badlands(バッドランズ)」と名付けた。
アメリカのちょうど中央に位置する地域──バッドランズにちなんでいるのだ。地理的な“アメリカの中心”と聞いて、カンザス周辺を思い浮かべた人もいるだろう。
実際、私もそう考えていた。もしそれが100年前の話なら、間違いではなかったのだが…。その後、アラスカが州に加わったことで、アメリカの“地理的中心”はカンザスからサウスダコタ州ベルフーシュへと移動した。
まさに「Badlands」の真っただ中である。トゥーロンの「Small Batch(スモール バッチ)」パターが登場するたびに、彼らは私の“公立学校の知識”をちょっとした形で補ってくれる。
『Into the Badlands』──神秘の名が生んだもうひとつの物語

ところで「Badlands(バッドランズ)」といえば、AMCで放送されていた『Into the Badlands』という海外ドラマを覚えている人もいるだろう。
ポストアポカリプス(文明崩壊後)の世界を舞台に、武術と西部劇の要素を掛け合わせた独特の作品だった。サウスダコタとはまったく関係ないが、主人公サニーは魅力的なキャラクターで、「Rotten Tomatoes(ロッテントマト=映画・ドラマの評価サイト)」のスコア84が示す通り、シーズン4まで続いてほしかった作品だ。サウスダコタの「Badlands」は、ドラマのような神秘性こそないかもしれない。
だが、実際に訪れれば、そこには確かに“魔法のような景観”が広がっている。この地域の名は、ラコタ族の言葉 “Mako Sica(マコシカ)”──直訳すれば「悪い土地」に由来している。
だが、その景観はまったく“悪い”どころか、米国でも屈指の迫力を誇る。試しに「Badlands South Dakota(バッドランズ サウス ダコタ)」で画像検索してみれば、その圧倒的な地形に息をのむはずだ。バッドランズの光景は、まるで異世界のようで、そこにゴルフコースの姿を見つけることはできない。だが写真を数分眺めるだけで、この地をラコタ族が何世紀にもわたり聖なる場所と考えてきた理由がすぐに理解できるだろう。
トゥーロン「Small Batch Badlands(スモール バッチ バッドランズ)」パター スペック詳細
・素材:316Lステンレススチール
・製法:CNCミルド(削り出し加工)
・仕上げ:チョコレートフィニッシュ
・フェース:ウルトラファイン・トリプルフライカット
・ロフト:3°
・ライ角:70°
・トゥハング:(フェースの傾き度合)30°
・重量:350g
・シャフト:クローム・ステップレススチール
・ヘッドカバー:スモールバッチ・レザー
・グリップ:トゥーロン・ピストル ミッドサイズ(サンセットオレンジ)
・生産数:75本限定
・価格:1,800ドル
トゥーロン、ついに“センター”を見つける

あらためて言うまでもないが、トゥーロン「Small Batch Badlands」はセンターシャフトのブレードパターだ。
多くのゴルファーは“センターシャフト=フェースバランス”と考えがちだが、このモデルは違う。ホーゼルの位置がわずかにヒール寄りに設計されており、その結果「Badlands」には30度のトゥハング(フェースの傾き度合)が与えられている。これにより、ストローク中に適度なフェースの回転が促されるのだ。写真で見るチョコレート仕上げは、まるで“味わいたくなる”ほど魅力的だ。
ゴールドのソールウエイトやフォント、そして“サルーンの扉”を思わせるキャビティ形状が、西部の雰囲気をより一層強めている。さらにソールに刻まれたサンダーバードのアイコンは、今もこの地を守り続けるラコタ族への敬意を示すものだ。ロレックス素材からの転換──「Badlands」に込められた意図

トゥーロン「Small Batch」パターに共通する“こだわり”のひとつが、素材にある。すべてのモデルに使用されているのは、ロレックスの腕時計にも採用される「904Lステンレススチール」だ。
高い耐食性を誇るこの合金は、時計だけでなくパターにとっても理想的な素材といえる。「Badlands」では、従来の「904L」から「316Lステンレススチール」へと素材を切り替えている。
チューダーやグランドセイコーといった高級時計メーカーも採用するこの素材を選んだ理由はただひとつ──よりソフトな打感を実現するためだ。
「316Lステンレススチール」に加え、新たに採用した『トリプル・フライカットフェースミーリング』を組み合わせることで、トゥーロンは理想の打感を実現した。ソフトさの中にわずかな“クリック感”が同居する、独特のフィーリングだ。
「『904L』と『316L』、その違いを本当に感じ取れるのか?」──そう聞かれれば、正直なところ即答はできない。
なぜなら、私が所有する「Small Batch」パターの数は、ロレックスやグランドセイコーの腕時計の数と同じだからだ。つまり、比較できるだけのサンプルは持ち合わせていない。──そう、つまり「ゼロ」である。
トゥーロン「Small Batch Badlands(スモール バッチ バッドランズ)」パター誕生

トゥーロン「Small Batch Badlands」パターは実に魅力的だ。
センターシャフト仕様で、価格は1,800ドル──ゆえに自分が手にすることはないだろう。それでも、心惹かれる一本であることに変わりはない。私の中で“限定パター”の理想像はまさにこれだ。
ヘッド形状はトゥーロン「Austin(オースティン)」に通じる部分を持ちながらも、独自性をしっかりと打ち出している。そしてリリースを重ねるごとに、トゥーロンはこの“さじ加減”を見事に体現しているのだ。このパターは、とにかく存在感が際立つ。キャディーバッグから「Badlands」を取り出せば、周囲の視線を集めるのは間違いない。
高級時計と同じように、このモデルを手にする動機のひとつは、“人に見てもらうための所有欲”にあるのだ。
1,800ドルという価格設定について、トゥーロンは一切の遠慮を見せない。
「Small Batch」パターは、大衆向けに作られたものではなく、例えるなら六桁のメルセデスGTと同じ存在だ。わずか75本という生産数を考えれば、誰もが手にできるモデルではない。だが、それでも私たち全員が“眺めて楽しむ”ことはできるのだ。「Toulon Small Batch Badlands」を手に入れたいなら、入手先は公式サイトだけ。
わずか75本の限定モデルゆえ、迷っている時間はない。
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