USGAの適合ボールリストに「Tour Edge(ツアーエッジ)」の名が登場した。

どうやら同社も、数多くのメーカーがひしめくゴルフボール市場に挑もうとしているようだ。

果たして本格参入となるのか、それとも一歩を踏み出したに過ぎないのか──今後の展開が気になるところだ。

名前はやはり「Tour Edge Exotics(ツアーエッジ・エキゾティクス)」。その響きだけでも、同社がゴルフボール市場に本腰を入れようとしていることが伝わってくる。

USGAのリストは毎度のことながら情報が限られている。だが、その中から見えてきたのは次のポイントだ。

気になる点がいくつかある。ひとつは、今回のボールに使われているのが“いつものTour Edgeロゴ”ではないこと。

公式サイトにボール自体の情報はまだ見当たらないものの、新しいロゴはあちこちで確認できる。

これが単なるイメージチェンジにすぎないのか、それともブランド全体を刷新する大きな動きなのか──その真意はまだベールに包まれている。

いずれにせよ、Tour Edgeには“Cracker Barrelの二の舞”にならないことを祈るばかりだ。

※「Cracker Barrel」=アメリカの大手レストランチェーン 「Cracker Barrel Old Country Store」だが、過去にCracker Barrelがロゴ変更で失敗した事例がある…。

注目すべきは、「3P-1C(3ピース・1コア)」という記載だ。これはウレタンカバー採用の可能性を強く示している。

もちろん例外はあり、キャロウェイ「ERC Soft」のように同じ構造でアイオノマーを使ったモデルもある。だが、そうしたケースはかなりレアだ。

さらに「318ディンプル」のカバー仕様を考えると、Tour Edgeが製造を「Foremost」に託した可能性が高い。おそらくこれは、Tour Edgeの歴史の中で初めてとなるゴルフボールになるだろう。


「Foremost」とは?──知っておきたい“隠れた名工場”

補足しておくと、『Foremost(フォーモースト/正式名:Foremost Golf Manufacturing)』は台湾にあるゴルフボール工場で、「Maxfli(マックスフライ)」、「Vice(ヴァイス)」、「Wilson(ウィルソン)」、「OnCore(オンコア)」といったウレタンボールを手掛けている。

さらにテーラーメイドの一部モデルもここで生産されているのだ。

Foremost製ボールはテストでも上位の評価を獲得し、品質面ではタイトリストに次ぐ存在といっても過言ではない。ゴルファーからの信頼も厚く、その実力は折り紙付きだ。


スピン性能の目安とは?──「Spin Rating」を読み解く

「スピンレーティング(L-M)」という表記が示すのは、ざっくり言えば“ドライバーでは低スピン、ショートゲームでは中スピン”という傾向だ。

※「Spin Rating(スピンレーティング)」 とは、ボールのスピン性能を大まかに示す指標のこと。USGAのリストでは「L-M(ロー・ミディアム)」のように記載されている。

ただし注意したいのは、この数値はメーカーの裁量で決められるため、必ずしも現実と一致しているとは限らないということ。

ウレタンカバー採用という事実だけで、ショートアイアンでは一定のスピン性能が期待できそうだが、その他の指標については話半分で見るくらいがちょうどいい。

Tour Edgeに直接確認を取ったところ、返ってきたのはUSGAリストより少しだけ踏み込んだ情報だった。

それでもひとつ確かなのは──同社が「キャストウレタンカバー」を採用した3ピースボールの発売を予定している、という事実だ。

「キャストウレタン」というキーワードが出た時点で、答えはほぼ確定だろう。Tour Edgeの「Exotics」ゴルフボールは、Foremost製である可能性が極めて高い。


ツアー実績が生む“即効の信頼性”とは?

Tour Edgeは「チャンピオンズツアー」で強い存在感を放っており、「PGAツアー」ほど厳しい壁に阻まれることなくボールを投入できそうだ。

もちろんツアーによって注目度は異なるが、仮にどこかのツアーでボールが使われ、さらに勝利につながれば、その瞬間に競合ブランドに対して一歩リードできる。

例外は「Maxfli」だ(ベン・グリフィンやレクシー・トンプソンが使用)。

しかし、それ以外のDTC(直販)ブランドのボールは、正直なところ、同伴ラウンドで一番のギアマニアしか気づかないのが現実だ。


Tour Edgeのボールは“必要”か、それとも“なくても困らない存在”か?

「もうゴルフボールは十分にあるのでは?」──そう感じるのも無理はない。

USGAのリストには毎月新しいボールが加わり、直近ではその数1,300種類以上。これだけあれば、市場のニーズは一通り満たされているように思える。

それでも各メーカーは次々と新モデルを投入してきた。そして今度はTour Edgeの番だ。止まる理由など、どこにもない。

いまやコブラ(COBRA)とピン(PING)を除けば、主要ブランドのほとんどがゴルフボールを含めた“フルバッグ”を揃えている。多くは2種類以上のボールまで用意し、ラインアップに隙がない。

Tour Edgeがボールを投入する意味はそこにある。必ずしも必須ではないが、「クラブからボールまで全て揃う、完全なブランド」としての存在感を確立したいのだろう。


価格はいくらになるのか?

Tour Edgeにとって、ゴルフボール市場での“値付け”は大きな壁となる。Foremost製なら確かに1ダース50ドルの価値はある──むしろそれ以上払っても損をするボールは山ほどある。

だが問題は「価格の魅力」が薄いこと。すでに「Maxfli」や「Vice」が35ドル前後で高評価を得ている以上、その差をどう埋めるかが最大の課題になる。

仮にTour Edgeの目的が“利益より知名度”だとしても、ゴルフボールはブランドを広めるにはうってつけの商材だ。おそらく「Tour Edge Exotics」ボールの価格は1ダース約40ドル。

しばらくはDTC(直販)限定で販売し、ブランド力と販売実績を積み上げたあとに、小売へと展開──そんなシナリオが濃厚だ。

果たして40ドルという価格設定がゴルファーの心を動かし、継続的な購入につながるのか──その答えは、これから明らかになるだろう。


まだある!──Tour Edgeが仕掛ける次の一手

Tour Edge「Exotics」シリーズのゴルフボール。白地に「TOUR EDGE」と「EXOTICS」のロゴが印字され、ディンプル構造が鮮明に写されている。

「値ごろなモデルを揃えてこそ、本物のボールメーカーだろう?」──そんな声に応えるように、USGAのリストには「Tour Edge Hot Launch」ゴルフボールの名も並んでいた。

「Hot Launch」といえばTour Edgeの低価格シリーズ。今回のボールも例に漏れず2ピース構造で、カバーはおそらくアイオノマー。まさに“廉価版の王道”といえる仕様だ。


あなたの意見を聞かせてほしい

Tour Edgeがついにゴルフボール市場へ参入──あなたはこの動きをどう受け止めるだろう?

そして新モデルが店頭に並んだとき、実際に手に取って試してみたいと思うだろうか?