LIVゴルフに反対する大きな理由のひとつは明白だ。プロゴルフという舞台は、それを分断してしまうほどの規模や熱狂を持ち合わせていない。
ファンの集中力は短くなる一方で、ゴルフ観戦そのものの人気も決して盤石ではない。そこに才能を二分する構造を持ち込めば、成長の芽を摘むだけになってしまう。結局のところ、ファンの注目が集まるのはメジャーと限られたPGAツアーのビッグイベントだけ。その外側にある試合は、残念ながらほとんどの人に見向きもされていない。
こうした流れが生んだのは、LIV所属選手たちの皮肉な現実だ。

かつて華やかな舞台で強烈な個性を放っていた面々が、いまや静かな舞台でひっそりプレーするだけ。
メジャーに出られたとしても、ほとんど爪痕を残せない…、そんな姿が目立つようになっている。理由はさまざまだ。大金、気力の薄れ、ケガ、年齢…あるいは他の何か。
いずれにせよ、彼らは表舞台から消えつつある。ゴルフという競技にとって、彼らがいた方が確実に盛り上がるだけに惜しい話だ。ここでは、そんな“忘れられたLIVスター7人”を取り上げる。それぞれの項目には、なぜ苦戦しているのかを浮き彫りにする「ストローク・ゲインド」のデータも添えている。
1. ダスティン・ジョンソン|栄光から急落した元世界No.1

「フロリダ・パンサーズ」の「NHLスタンレーカップ」優勝を一緒に祝えたのは、ダスティン・ジョンソンにとって数少ない喜びのひとつかもしれない。
なぜなら、彼自身が“意味あるトロフィー”を掲げる姿は、当分お目にかかれそうにないからだ。4年前、ダスティン・ジョンソンは「Data Golf」で堂々の世界1位。2020年のマスターズを制し、キャリアでも屈指の充実ぶりを誇っていた。
それが今や、世界ランクは150位の外。直近8つのメジャーで6度も予選落ちし、LIVの舞台ですら存在感を示せない。
もちろん理由はわかる。41歳という年齢、大金を手にした安心感、家族との時間、そしてすでにメジャー2勝を含む輝かしい実績。
それにしても、ここまで一気に転落するとは…、まさに奈落に落ちたような急降下だ。
2. キャメロン・スミス|栄光から一転、存在感を失った全英王者

この名前が挙がるのは、本当にやるせない。正直、このリストの中で一番心に刺さる存在だ。
2022年、キャメロン・スミスは「全英オープン」を劇的に制覇。世界トップ5に名を連ね、圧倒的な飛距離ではなくショートゲームで勝負を決める、そのスタイルはゴルフファンを魅了した。
時間をかけてトップに登り詰めた努力家でもあり、闘志むき出しのプレースタイルは危うさと華やかさを併せ持ち、見ていて実に痛快な選手だった。あの輝きからわずか3年。キャメロン・スミスはいまや記憶の片隅に追いやられつつある。
直近4つのメジャーはすべて予選落ち。LIVでトップ20がやっとという現状は、世界ランク換算で70位前後に過ぎない。ダスティン・ジョンソンより9歳若いとはいえ、ここしばらくは未来の可能性を感じさせるプレーが見えない。
むしろ、淡々と義務的に試合に出ているようにさえ思えてしまう。3. ブルックス・ケプカ|メジャーの怪物が沈黙、キャリア最大の低迷期

LIV移籍後に、2023年「全米プロゴルフ選手権」を勝ち取ったブルックス・ケプカ。しかし、その後のメジャーでは9大会連続でトップ10に入れずにいる。
かつてはメジャーになると必ず上位に顔を出していた男が、いまや大舞台で沈黙を続けている。誰がこんな姿を想像しただろうか。
もともとケプカはツアーを週ごとに支配するタイプではなかった。
だが、ここ3年間のプレーぶりは、2016年に台頭して以来もっとも低調だ。「Data Golf」のランキングで72位に沈む現状は寂しい限り。メジャーで存在感を失った今、ケプカを話題にする理由さえ薄れている。
35歳になったばかりとはいえ、まだ燃料は残っているはず。ゴルフ界は、彼に再び火が灯ることを願っている。
4. フィル・ミケルソン|最年長メジャー覇者から迷走と失墜へ

フィル・ミケルソンをリストに加えるかどうか、正直ためらった。
なぜなら、彼にはYouTubeでの存在感や、“おバカ発言”を連発する妙な才能があるからだ。とはいえ、ここで焦点にしているのは成績そのものではない。あくまで「露出度」という相対的な視点から見たときの話だ。
2021年の「全米プロゴルフ選手権」で優勝し、フィル・ミケルソンは世界の頂点に立った。
シーズン全体の内容は決して良くなかったのに、奇跡的な輝きを放ち、史上最年長メジャー王者として称賛を浴びたのだ。ところが翌年の2022年は、まさに“黒歴史”。数々の言動で自らの評価を傷つけてしまった。
そして2023年の「マスターズ」では、まさかの優勝争い?
いや、本当にあれは現実だったのか?と疑いたくなるほどの復活劇を演じてみせた。しかしそれ以降、彼は存在感を保つのに苦しんでいる。コース上では、直近10回のメジャーでトップ40入りすらなし。
コース外でも、一般のゴルフファンからの信頼を大きく失った。今ではX(旧Twitter)で政治的な持論を延々と展開するという“脳疲労”状態に陥っている。まあ、いかにも彼らしいが…。いずれにしても、もはや誰も以前のように彼のことを気にかけてはいない。
5. テイラー・グーチ|トップ30から姿を消した“忘れられた存在”

「ああ、いたな!」…そんな反応が返ってきそうなのがテイラー・グーチだ。
LIV移籍前までに彼は世界トップ30入りを果たし、着実にキャリアを築き上げていた。
ジョンソンやスミス、ケプカほどのスーパースターではなかったが、「ザ・ツアーチャンピオンシップ」の常連、そして「ライダーカップ」の候補に名を連ねるだけの堅実なプレーヤーだった。テイラー・グーチはいまや記憶の彼方。「Data Golf」のランキングでは100位圏外、直近2年のメジャー出場はわずか1回だけ。LIVで抜群の結果を残しているわけでもない。
結局のところ、大金を手にし、静かにゴルフ人生を切り替えてしまったのだ。
6. ルイ・ウェストヘーゼン|メジャー常連から“黄昏のLIV”へ

少し前の2021年のシーズン。ルイ・ウェストヘーゼンはメジャーで3度もトップ3に入り、「全米オープン」では優勝を逃したのが不思議なくらいだった。
その快進撃が、彼を「Data Golf」ランキング世界3位に押し上げた。
2021年を最後にツアーを離れたルイ・ウェストヘーゼン。
その後のメジャー成績は、WD(棄権)、60位タイ、予選落ち、予選落ち、WD、23位タイ、そして再び予選落ち。今ではランキングも100位圏外に沈んでいる。メジャーにほとんど顔を出さなくなった点はテイラー・グーチと同じ。
ただし、彼には“元王者”としての特権があり、「全英オープン」だけは60歳まで出場できる。もうすぐ43歳という年齢を考えれば、LIVをキャリアの終着点として選んだのは自然な選択だったのかもしれない。
イアン・ポールターやポール・ケーシー、セルヒオ・ガルシアらと同じく、夕陽に向かって歩みを進めている。7. ケビン・ナ|ツアー5勝の堅実派、いまや記憶の片隅へ

ラストは少し番外編のような存在だが、やはり名前を挙げるべき選手がいる。
LIV発足時、ケビン・ナは世界37位にランクされ、4大メジャーすべてに出場。2022年にはいくつかの試合でトップ25入りも果たしていた。
あれからケビン・ナはメジャーの舞台から姿を消し、LIVでも優勝争いに顔を出すことはない。世界ランキングは200位圏外まで落ち込み、存在感は薄れる一方だ。
それでも思い出してほしい。彼はツアー通算5勝を誇り、毎年のようにシード権を守り抜いた“職人肌”のプレーヤーだったのだ。
今のケビン・ナには、かつての安定感すらもう望めない。正直、この原稿を書くまで「まだ現役だったのか」とすっかり忘れていたほどだ。
彼の名前を見つけた瞬間、高校時代の同級生の古い写真を偶然目にしたような、不思議な懐かしさを覚えた。では、あなたはどう感じただろうか? この中から再び浮上できる選手はいるのか?
ぜひコメントで意見を聞かせてほしい。
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