スコッティ・キャメロンがこの夏、限定モデルとして「Phantom Black(ファントム ブラック)」パターをリリースする。だが、注目すべきは“黒い”というルックスだけではない。
もちろん、「Tour Black」仕上げの美しさは際立っている。ステンレススチール部分に施された「ブラックPVDコーティング」と、艶を抑えた「ブラックアルマイト加工」のアルミニウムが絶妙に調和し、高級感を醸し出している。
ブラック仕上げのパターは、仕上げが光沢すぎると晴天時に反射して見づらくなることもあるが、「Phantom Black」はその心配がない。仕上げのバランスが絶妙で、日差しの中でも視認性を保つ。
つまり、スコッティ・キャメロンは今回の「Phantom Black」で、ブラック仕上げの“理想形”をカタチにしたといえるだろう。
この新しい仕上げだけで、「手に入れたくなる」と感じるゴルファーもいるはずだ。
これまで「Phantom」シリーズの形状は好みだったけれど、標準のシルバー仕上げが気に入らなかった人たちは、すでに注文を決めているかもしれない。たしかに、ブラック仕上げによって「Phantom Black」パターはより魅力的に見える。だが、もう少し深く掘り下げてみると分かるはずだ。
今回の限定モデルでキャメロンが施した変更は、単に“色を変えただけ”ではないということが。※プロ仕様に限りなく近い特別モデル

「Phantom Black」パターの最大の魅力は、すべてのモデルが“ツアーモデル”をベースにしている点にある。
最近、スコッティ・キャメロンのチームでツアープレーヤーを担当している人物と話す機会があったのだが、その内容は非常に興味深かった。
正直なところ、「ツアーパター」とは“Circle T”のロゴさえ入っていれば、それっぽく見えるものだと思っていた。もちろん、実際にはそれ以上の調整があることくらいは分かっていたが、想像以上に奥が深かった。
ツアープレーヤーがどのようにパターフィッティングを受けているか、その詳細についてここでは深く踏み込まない。というのも、それはまた別の機会に語るべき話だからだ。
とはいえ、興味深い発見があったのも事実。ある選手は、とにかく自分のストロークに合ったパターを求めるだけ。
一方で、ストロークの不安定な部分を理解し、それを改善することでパッティング全体をレベルアップさせようとする選手もいる。繰り返すが、それについてはまた別の機会に…。
「Phantom Black」に隠されたツアー仕様の変更点とは?

スコッティ・キャメロン「Phantom Black」パターには、“ただ黒くなっただけではない”もう一つの物語がある。それは、すべてのモデルがツアープレーヤーのフィードバックとフィッティングデータをもとに設計されているという点だ。
たとえば、「Phantom Black 5.5」に「トップライン(アライメントライン)」が入っているのは、既存モデルが「・(ドット)」だったにもかかわらず、あるツアープレーヤーが「ラインが欲しい」とリクエストしたから。
今回ラインナップされた4モデルすべてが、スコッティ・キャメロンの契約・非契約スタッフによるフィッティング結果をベースにしている。
誰がどのモデルに影響を与えたかの詳細は明かされていないが、それには契約上の理由もあるようだ。「誰がどのモデルに関わったのか?」気になる人は、コメント欄で自由に推測してみてほしい。

そして「Phantom Black」にまつわるもうひとつの重要なポイントは、この4モデルがツアープロの間で特に人気の高いモデルだということ。
ツアートラックに積まれている数あるパターの中でも、実際にプロのキャディーバッグに収まっていくのはこの4つが圧倒的に多い。もちろん、実際には選手ごとの細かな調整は加えられるが、“トラックからコースに最も多く出ていく”のがこのシリーズだ。
誤解のないように言っておくと、「Phantom Black」は正式な“ツアーパター”というわけではない。
だが、“ツアーパターのすぐ隣にいる存在”とは言える。あの「Circle T」ロゴが入っていれば、価格は750ドルでは済まず、数千ドルレベルになっていてもおかしくない。それでは、この4モデルをチェックしながら、誰がデザインに影響を与えたのか。ちょっと推理してみよう。
スコッティ・キャメロン「Phantom Black 5.5」

「Phantom Black 5.5」に施されたツアー仕様の変更点は、主にアライメントの調整に関するものだ。
先ほど触れたように、標準モデルで採用されていたトップライン上のドットは、短めのラインに置き換えられている。
だが、それ以上に注目すべきは、キャビティ後方のフランジ部分に「Phantom 7」に似た「アライメントレール」が追加された点だ。

この「5.5」は、「Phantomシリーズ」の中でもっともブレード型に近いマレットパター。
従来のドットのみのアライメントでは、視線は自然とフェース前方へと導かれ、プレーヤーの意識はパターの“ブレード的な顔つき”に集中しやすくなる。とはいえ、後方のウイングも視界に入るため、マレット形状のメリットも損なわれない絶妙なデザインといえる。
それが、このキャビティラインの追加によって、アドレス時の印象が大きく変わる。パターの中央を基準に、はっきりとしたラインで狙いを定められるようになるのだ。
もちろん、前方の短いラインを使ってターゲットに合わせることもできるが、多くのツアープレーヤーは、フェース中央を把握するためにトップラインやドットだけを見て構えるという。
ヘッドの形状やラインを利用してアライメントを調整するケースが多いというわけだ。
スコッティ・キャメロン「Phantom Black 7」

「Phantom Black 7」に施されたツアー仕様の変更は、一見すると控えめに見える。「5.5」と同様、トップブレード上のドットはラインに変更されており、これがまず目に入る変更点だ。
しかし、実はもうひとつ。あまり目立たないが重要な違いがある。それがシャフトの仕様変更だ。

標準仕様の「Phantom 7」には、センター寄りに一度だけ曲がったミッドベンドシャフトが採用されている。
一方、「Phantom Black 7」ではダブルベントシャフトに変更されており、これは構えたときに「プランバーネック(クランクネック)」のように見えるよう設計されている。
あるツアープレーヤーが、プランバーネックのブレードパターからマレットへ乗り換えようとしていたのだが、構えたときの見え方は変えたくないという希望があった。
そこで、ヘッドとネックのラインが視覚的に一直線になるように設計されたこのダブルベントが生まれた。これにより、ターゲットに対してスクエアに構えられている感覚を得られるのだ。

もちろん、プランバーネック付きの「Phantom 7.2」も選択肢としてはあったが、そちらはトゥハング(フェースの開閉)が強すぎる。
このダブルベントシャフトは、プランバーネックのような“構えたときの安心感”を持たせつつ、フェースバランス設計を維持しているのがポイントだ。
スコッティ・キャメロン「Phantom Black 9.2R」

「Phantom Black 9.2R」には、“009スタイル”のネックが採用されている。
キャメロンの「009」に馴染みのない人のために補足すると、これは“ツアー専用・幻のブレード形状”として知られる、伝説的な存在だ。「009」のネックは、一般的なプランバーネックよりもわずかに短く、ヒール寄りに取り付けられているのが特徴。
とはいえ、「Phantom Black 9.2R」が“009マレット”そのものかと聞かれれば、おそらくそうではない。
だが、コレクターたちがこのモデルに飛びつくことは間違いないだろう。

ツアー仕様の調整は、ネック部分だけにとどまらない。
モデル名にある「R」は、標準の「Phantom 9」に比べてエッジ全体が丸みを帯びていることを示している。
このエッジの丸み、そしてサイトライン(目標ライン)を短くする狙いは、構えたときの視線をフェース前方に集めることにある。
というのも、鋭いエッジには視線が留まりやすく、丸みのあるエッジは自然と視線が流れていくという効果がある。
そのため、パターによってはトップエッジをスクエアに仕上げたり、逆に丸く仕上げたりするのは、すべて視覚的な意識の誘導をコントロールするためなのだ。
もし「Newport 2」よりも「Newport」の方がパッティングしやすいと感じるなら、それはより丸みを帯びた後方形状が視線を引きすぎないことが関係しているのかもしれない。

全体として、「Phantom Black 9.2R」はブレードパターを使っていたゴルファーがマレットに挑戦するには最適な1本といえるだろう。
おそらくこのモデルが真っ先に売り切れるのではないかと予想している。というのも、「009」という存在は、キャメロン・コレクターにとって特別な意味を持つからだ。
スコッティ・キャメロン「Phantom Black 11」

「Phantom 11」は、見た目の完成度が非常に高いヘッドだ。
「Phantomシリーズ」の標準モデルの中でも、個人的にはこれが一番好きかもしれない。それでも、正直言って購入したいとは思わなかった。
ヘッド形状そのものは気に入っているのだが、矢印型のアライメントラインがどうにも好みに合わなかった。構えたときに気が散ってしまうのだ。
その点、「Phantom Black 11」に採用された2本の平行ラインは見事な改善と言える。視覚的にすっきりしており、集中力を妨げない。

この2本のラインの間隔が絶妙で、個人的には完璧に近いと感じている。
1本ラインよりも視認性は高いが、3本ラインや間隔の広すぎるラインほど“主張しすぎる”ことがない。
さらに、白い2本のラインの間に見えるボディカラーの部分が、ボールにラインを入れて構えるタイプのゴルファーにとっては、そのラインとピタリと重なる設計になっている。
ルーティンの中でアライメントを重視するプレーヤーにとっては、大きなプラスだ。
見た目の話をすると、この新しいアライメントはパターのやや角ばった全体形状にもよくなじんでおり、従来の矢印型ラインよりも統一感がある。
ミルド加工されたヘッドのラインとも自然に調和していて、仕上がりとしても非常に美しい。
スコッティ・キャメロン「Phantom Black」パターについての総括

今回の「Phantom Black」は、非常に興味深いリリースだと感じている。
特に印象的なのは、ツアープレーヤーがどのようにパターのフィッティングを受けているか、その一端を垣間見られる点だ。フィッターの仕事は並大抵ではない。
プレーヤーがパッティング中に“どう見えていて、どう感じているのか”という感覚的な部分を汲み取りながら、弱点を補い、強みを引き出すパターを形にしていく。
これはまさに、感性と経験の極みのような作業だ。
今回の「Phantom Black」4モデルは、ツアープレーヤーが実際に使っている無数のバリエーションの中の、ほんの一部にすぎない。
ツアーの世界は、わずかな差が明暗を分ける極限の戦い。パッティングがほんの少しでも良くなれば、それは大きなアドバンテージになる。
彼らのようなトップアスリートは、1打ごとに大きな賞金が動く世界で生きている。
その中で、フィッターは「1打でも多く沈める」。つまり“稼げる”側にバランスを傾けるための調整を追求しているのだ。
そして「Phantom Black」は、そんな世界の一端を、私たち一般ゴルファーにも見せてくれるモデル。
言い換えれば、ツアーレベルのフィッティングノウハウが詰まった“現場の道具”の一部を体感できるラインナップとも言えるだろう。

「Phantom Black」パターには、チェーンリンク(鎖状)フェースミーリングが施されている。
打感は、新しい「Studio Style」シリーズほどソフトではないが、心地よい“弾き”と“やわらかさ”のバランスが取れた仕上がりになっている。
日本仕様:数量限定スコッティ・キャメロン「Phantom Black(ファントム ブラック)」パターの詳細は、タイトリストホームページより。
2025年7月25日より発売。
※公式オンラインショップでは2025年7月16日先行発売。
※下記はアメリカ仕様の情報。
価格は$750ドルで、7月25日より「一部のタイトリスト正規取扱店」で世界同時発売される予定だ。
運が良ければ、あなたの地元のショップでも出会えるかもしれない。ただし、気になるなら迷っている暇はない。おそらく、すぐに店頭から姿を消すことになるだろう。
確実に手に入れたいなら、発売日前にショップへ問い合わせておくことをおすすめする。
「Phantom Black」シリーズをはじめ、スコッティ・キャメロンのその他のパターについての詳細は、ScottyCameron.com をチェックしてみてほしい。
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