PXG「Allan(アラン)」は、『マルチマテリアル構造』を採用した精密ミルド(削り出し加工)、内部ポリマー、そしてPXG独自の『ピラミッドフェースミーリング』を搭載した最新モデルだ。


・PXG「Allan(アラン)」は、ブランド初となる『ゼロトルク設計』を搭載。

・発売日は8月23日、価格は449.99ドル。

・その斬新さゆえに、きっと賛否を巻き起こす存在になるだろう。


いまや、新しいクラブにゴルファーが怒るのは日常茶飯事だ。

「アイアンの形が気に入らない」と文句を言い、「Ventus(ヴェンタス)」が純正なのに『Velocore(ヴェロコア)』仕様じゃないと不満をぶつける。「2008年より価格が高いじゃないか」と声を荒げるのもお決まりの光景だ。

しかし、PXG「Allan」パターが投じた一石の前では、それらの不満も霞んで見える。


PXGデザイン要素

PXG「Allan」パターのトップアングル。白いアライメントラインと独自フレーム構造が特徴で、ターゲットに合わせやすい設計。

一見すると、PXG「Allan」は他のマレット型パターと大きな違いはないように見える。だが、その作り込みは「Battle Ready II(バトル・レディ・ツー)」シリーズに通じるものがある。

素材には『精密ミルド(削り出し加工)』を施した「6061アルミニウム」と「303ステンレススチール」を採用。前方のステンレス部分は「中空構造」で、「極薄フェース」が特徴だ。

この極薄フェースは、支えがなければインパクト時に打感も打音も非常に不快なものになってしまう。

それを解決するため、PXGはヘッド内部の空洞に『S CORポリマー』を充填し、インパクト時の打音を改善した。

その結果、このポリマーの追加は打音だけでなく、フェース全体での打点の均一性も高めることが分かった。

PXGの設計プランに対する評価は、派手な賛辞こそないものの、確かな効果を裏づけるものとなった。


PXG「Allan」パターのフェースとトップビュー。精密ミルド加工フェースと中央アライメントラインが、構えやすさと安定した転がりを実現。

スチールの代わりにポリマーを採用したことで、PXGはヘッド重量を外周部により多く配分できるようになった。結果としてMOI(慣性モーメント)が増し、パター全体の安定性が一段と向上している。


PXG「Allan」パターのソールクローズアップ。削り出し加工の細部とPXGロゴが際立ち、安定感と高い完成度を示すデザイン。

PXG「Allan」には、PXGが長年大切にしてきた『精密ミルド(削り出し加工)』へのこだわりも受け継がれている。セールスポイントとして大きく打ち出されることはないが、その加工精度は間違いなくトップクラスだ。

さらにPXGは、機能面では必須でないものの、デザイン性を高めるミルド要素を取り入れている。

たとえばアルミ製トップパーツ裏側のミルド加工リッジ(凹凸)。ホットロッドのボンネットに刻まれたルーバーを思わせる造形で、性能以上に見た目の魅力を引き立てている。


まだPXG「Allan(アラン)」に文句をつける段階じゃない……

PXG「Allan」パターのフェースとトップビュー。精密ミルド加工フェースと中央アライメントラインが、構えやすさと安定した転がりを実現。

ここまで“波風の立たない部分”に言及してきたのは、これからが本題だからだ。次は「Allan」のネックに注目してみよう。

あの独特なネックは、デザインを壊したものではなく、最初から狙って設計された形だ。確かに位置も形状も一般的ではないが、それこそがPXGの意図するところ。

先ほどの装飾的なミルド加工(削り出し加工)とは異なり、このネックシステムは見た目のためではなく、純粋に機能を追求して生まれたものなのだ。


PXG「Allan(アラン)」は『ゼロトルク設計』

PXG「Allan」パターを上から見た構え。白いアライメントラインが強調され、ターゲットに正確に合わせやすいデザイン。

「Allan」のネック形状と位置によって、シャフト軸はパターの重心のすぐ上に配置される。イメージしやすく言えば、シャフトがまっすぐヘッドまで伸びた線こそが、その軸だ。

この独自の設計によって、“トゥアップ(フェースが上を向く状態)”のトゥハング(フェースの傾き度合)が生まれ、さらにストローク中の『ゼロトルク』を実現。

結果としてフェースは開閉せず、インパクトでボールやターゲットラインに対してスクエアに戻しやすくなる。

どこかで耳にしたことがあるような『ゼロトルク設計』だと感じるかもしれない。


L.A.B.を避けては通れない

グリーン上に並ぶPXG「Allan」パターとL.A.B. Golf DF3パター。最新ゼロトルク設計とマレット型デザインを比較できるショット。

なぜPXG「Allan」が物議を醸すのか…、その答えはL.A.B. Golfにある。L.A.B.のパターも『ゼロトルク設計』を武器としており、最大の特徴は『Lie Angle Balanced(ライ・アングル・バランスト)設計』にある。

その効果の高さから、ここ数年でプロツアーはもちろん、アマチュアのバッグでも一気にシェアを拡大してきた。

ではPXGは、L.A.B. Golfの成功にあやかろうとしているのだろうか?


PXG「Allan」パター用ブラックヘッドカバー。全面にPXGロゴがデザインされ、高級感と存在感を放つアクセサリー。

PXG「Allan」を目にした瞬間真っ先に思ったのは、「これはL.A.B. Golfが黙っていないだろう」ということだった。

L.A.B.が怒るのも当然だ。独特な形状のパターが“特別な存在”だと認められるまで、彼らは長い時間をかけて戦ってきた。

ようやく市場に根を下ろし始めた矢先に、大手ブランドが登場し、潜在的な顧客を奪いに来たように映るのだから。


PXG「Allan」パターを横から見たサイドビュー。ネック形状とマレット型ヘッドの厚みが際立ち、安定感のあるシルエットを確認できる。

一方で、こう考えることもできる。PXGのような大手がL.A.B. Golfにインスパイアされたデザインを取り入れたという事実こそ、L.A.B.がパターデザインにおいて革命を起こした証拠だ。

凡庸なアイデアは決して真似されない。真に優れたアイデアだからこそ、多くのメーカーが追随するのである。

PING「Anser(アンサー)」に着想を得たパターを数え上げるだけでも、一日がかりになるだろう。

PXGが「Allan」を発売することがL.A.B. Golfにとっては苛立たしいのは理解できるが、それは同時に“正当な評価”でもあると思う。


もしかするとPXG「Allan」がダメなパターかもしれない(実際はそんなことはない)

PXG「Allan」パターのフェースクローズアップ。精密ミルド加工フェースとPXGロゴが映えるデザインで、打感と転がり性能を強調。

もし「Allan」がひどいパターだったら、これほどの論争はすぐに収束しただろう。残念ながら、このパターは驚くほど素晴らしいのだ。

実際にコースでPXG「Allan」を試したところ、狙ったパットのほとんどを決めることができた。外したのはスピードやラインの読み違いによるもので、ボールが意図しない方向に転がったことは一度もない。

過去にL.A.B. Golfのパターを使っていた経験もあり、『ゼロトルク設計』の「Allan」にはすぐに馴染めた。スイング感覚は「DF3」と「Allan」で非常に近く、違和感なく扱える仕上がりだ。


PXG「Allan」パターを真上から見たアドレスビュー。太い中央ラインとブラック×シルバーのコントラストが構えやすさを強調するデザイン。

「Allan」は、ボール後方に構えたときの収まりが実に自然だ。アルミ製トップと長めのサイトラインによってネックが視界からすっと消え、ターゲットへのアライメントは驚くほど簡単。狙いに迷いを感じることは一度もなかった。

インパクトの打感はやや抑え気味で、センターを外したかどうかが分かりにくい。ただ、それでもボールは常にターゲット方向へ転がっていったのが印象的だ。

個人的な好みを言えば、打感についてはL.A.B. Golf「DF3」に軍配を上げたい。


PXG「Allan」パターのソールデザイン。大きなPXGロゴと精密ミルド加工が際立つ高性能マレット型モデル。

さらに小さなボーナス機能として、「Allan」のソールにはミルド加工(削り出し加工)で施された細かな溝状ラインがあり、「Pick-Up Pocket」を使えばボールを拾い上げることもできる。

もっとも、この機能を活用する機会は多くないだろう。


PXG「Allan(アラン)」パター 総評

PXG「Allan」パターのトップビュー。精密ミルド加工フェースと中央アライメントラインが際立つマレット型デザイン。

PXG「Allan」は、間違いなく同社史上最高傑作のパターと呼べる仕上がりだ。

『Most Wanted(性能テスト&ランキング)』を受賞した「Battle Ready Bat Attack(バトル・レディ・バット・アタック)」さえも凌ぐ完成度で、「Allan」の実力は疑う余地がない。

では、この「Allan」がL.A.B. Golfからユーザーを奪うのか?

その可能性はあるが、L.A.B.が築いた独自のポジションを揺るがすまでには至らないかもしれない。

奇抜ともいえる形状ながら、市場で他の追随を許さない性能を発揮しているのがL.A.B.の強みだからだ。

何より、伝統的な「8802」を愛してきたフィル・ミケルソンでさえ、現在はL.A.B. Golfのパターを手にしている。その事実が、両ブランドの存在価値を物語っている。


PXG「Allan」パターのピストル型グリップ。PXGロゴ入りブラックデザインで、握りやすさと安定したストロークを実現。

PXG「Allan」は、L.A.B. Golfへの“入り口”になる存在かもしれない。PXGファンの多くは「ゼロトルク設計」を知らないまま「Allan」を試すだろう。

だが一度そのテクノロジーを体感すれば、安心感とともにL.A.B. Golfの世界にも興味を持ち始めるはずだ。

とはいえ、実際に「Allan」から離れたいと思う人がどれほどいるだろうか。繰り返すが、このモデルは確かに完成度の高い一本なのだ。

PXG「Allan」や他のPXGパターについては、PXG.comでさらに詳しく知ることができる。


FAQ: PXG「Allan(アラン)」パター

Q: PXG「Allan(アラン)」にはどのシャフトが搭載されていますか?

今回試した「Allan」にはPXG独自の「M16」パターシャフトが装着されていた。カーボンとスチールを組み合わせた構造で、通常のスチールシャフトよりも26%高い剛性を実現。PXGのロボットテストでは、従来のスチールに比べて37%も高い精度を示したという。


Q: PXG「Allan(アラン)」の名称は誰に由来していますか?

「Allan」は、PXG創業者ボブ・パーソンズの弟の名前に由来している。彼は2020年に癌との闘病の末、この世を去った。 なお、ロックバンド「Alan Parsons Project」のアラン・パーソンズとは別人物だ。


Q: 他のメーカーもゼロトルクパターを出しますか?

おそらく間違いないだろう。ゼロトルク設計は実際に効果があり、今もっとも注目を集めているカテゴリーのひとつ。他ブランドからの参入も時間の問題だ。


Q: PXG「Allan」がセールになることはありますか?

その可能性はある。PXGは不定期でセールを行うほか、現役・元軍人や退役軍人、さらに消防士や警察官などを対象とした「PXG for Heroes(PXGフォー・ヒーローズ)」プログラムを通じて特別割引を提供している。