MyGolfSpyに新たな試みが始まる。

それは「ゴルフを語り尽くす場」をつくること。

毎週、ライター陣がゴルフ界の“ホットトピック”に挑む。

最新ギアの議論はもちろん、プロツアーの動向からアマチュアゴルフのあるある、そして19番ホールで交わされるような雑談まで──。

読者が「思わず参加したくなる」ディスカッションをお届けする。

記念すべき第1回のテーマは、タイムリーな「ライダーカップ」。

今週金曜の朝、ニューヨーク州ロングアイランドの名門「ベスページ・ブラック」でいよいよ開幕する。

すでにニューヨーカーはポストシーズン進出を決めたヤンキースタジアムからベスページへと熱い視線を移し、前哨戦はスタンドから始まっているといってもいい。

今回スタートする“討論型連載企画”の開幕戦のテーマは、もちろん『ライダーカップ』。

「MyGolfSpy」シニアエディターのショーン・フェアホルムは「ヨーロッパが再び栄光をつかむ」と断言する。

一方、ゴルファーでありライター、さらにPGAプロフェッショナルとしての顔を持つブリタニー・オリザロウィッツは「アメリカがホームで勝つ」と応戦。

果たして勝利を手にするのはどちらか──。


ライダーカップ2025のトロフィーがヤンキースタジアムのフィールドに展示されている様子。背景には観客席と広告看板が見える。

もちろん、これは単なるパフォーマンスではない。

私たちは本気で「こうなる」と信じているのだ。

ちなみにショーンは“裏切り者”と呼ばれつつ、ライダーカップ週間はギネス(アイルランド製ビール)片手に過ごすらしい。

では本題に入る前に、舞台を整えるための基本情報を確認しておこう。


・ブックメーカーの最新オッズでは、アメリカが -145 で本命、ヨーロッパは +150 の挑戦者。とはいえ、アメリカが優勝候補に挙げられるのはいつものことだ(前回の自国開催では -200 に近い評価だった)。

・過去9大会のうち8回はホームチームが勝利。最後にホームが敗れたのは2012年、メディナでヨーロッパが奇跡の大逆転を果たした時まで遡る。

・直近5大会はいずれも5ポイント以上の差がついており、スリリングな接戦は影を潜め、一方的な展開が続いている。

・さらにヨーロッパは、過去11大会中8度の勝利を誇る。

──さあ、ゴングは鳴った。舞台は整った。


なぜアメリカ代表は今年のライダーカップで勝つのか

ブリタニー:ゴルフはチーム戦じゃない。だからこそ、ライダーカップは特別なの。

1人で大会を背負える選手なんていないけれど、世界No.1が味方にいるのは大きなアドバンテージよ。

スコッティ・シェフラーが2025年にツアーで見せた支配力は、まさにチームUSAのムードを決定づける存在だと思うわ。

しかも、ベン・グリフィン、サム・バーンズ、J.J.スポーンといった面々がシーズンを通して彼を追い、時には打ち破ってきた。

そんなライバルたちがいま一つのチームとして同じゴールを目指す──この結束が勝敗を分ける最大の武器になるはずよ。


なぜヨーロッパ代表は今年のライダーカップで勝つのか

ショーン:ヨーロッパは今回、まさに“フルメンバー”で臨む。

4人のルーキーを抱え、ブルックス・ケプカ(Brooks Koepka)、ジョーダン・スピース(Jordan Spieth)、ダスティン・ジョンソン(Dustin Johnson) といった中心選手を欠くアメリカとは好対照だ。

伝統の主力は揃っており、そこに ルドビグ・オーベリ(Ludvig Åberg)、ロバート・マッキンタイア(Robert MacIntyre)、セップ・ストラカ(Sepp Straka) ら新世代が加わった。

しかも彼らはすでにライダーカップの舞台を経験済み。若さと実績の両輪がチームに勢いをもたらすはずだ。

「Data Golf」ランキングのトップ4のうち3人がヨーロッパ勢という事実も、その強さを裏付ける。

さらにその背後には、これまで以上に厚みのある選手層が控えており、歴代最強とも言える布陣が整った。


なぜアメリカ代表はヨーロッパ代表よりも層が厚いのか

ブリタニー:このアメリカ代表が怖いのは、ルーキーでさえ戦力になること。

グリフィン、スポーン、そして地元の声援を背にするキャメロン・ヤング。

彼らは“つなぎ役”なんかじゃなく、世界でもっとも勢いのある3人で、すでにPGAツアーで勝てることを証明済みよ。

だからこそ、アメリカにはヨーロッパの堅実な中盤に対抗する意外性のある爆発力がある。層の厚さは申し分ない。

あとは、そのルーキーたちがライダーカップ独特の重圧に耐えられるかどうか──そこが勝負の分かれ目ね。


なぜヨーロッパ代表はアメリカ代表よりも層が厚いのか

ショーン:確かに数字の上ではアメリカの方が層は厚い。世界ランキング13位以内に8人も抱えているんだからね。

でも、そんなことは毎回のことさ。ライダーカップを制するのは、“夏に一時的に好調な選手”じゃなく、修羅場をくぐってきた“経験”なんだ。

メジャーチャンピオンの シェーン・ローリー(Shane Lowry) や ジャスティン・ローズ(Justin Rose) といったヨーロッパの実績組か、それとも J.J.スポーン(J.J. Spaun)、ベン・グリフィン(Ben Griffin)、ラッセル・ヘンリー(Russell Henley) のようなアメリカのチャレンジャーか?

僕は迷わない。この灼熱の舞台を何度も戦ってきた男たち──その経験こそが勝利を決めると信じている。


アメリカ代表の“隠れたXファクター”は誰だ?

ブリタニー:元・住宅ローン担当者から一転、ツアーで輝きを放つ存在へ──。

ベン・グリフィンはまさに今回の“Xファクター”ね。

かつて庶民派のカントリークラブで40ドルのマックスフライをキャディバッグに入れてプレーしていた彼が、2025年にはすでに2勝を挙げ、トップ10入り11回。

大舞台が自分にとってどれほど大きなチャンスかを理解していて、それを実力で証明できる選手よ。


ヨーロッパ代表の“隠れたXファクター”は誰だ?

ショーン:ベン・グリフィンのサクセスストーリーは確かに面白いし、ニューヨークの観客が彼を熱烈に応援する姿も目に浮かぶ。

けれど、ヨーロッパで僕が注目しているのはスコットランドの ロバート・マッキンタイアだ。

彼は職人気質のゴルフと飾らないキャラクターで、派手さこそないが、着実に世界ランキング20位まで駆け上がった。

“ビッグショット・ボブ”の異名を持つ彼は、「全米オープン」で優勝目前まで迫った実績があり、大舞台でも一切ひるまない。

ティーからグリーンまでの安定度(ストロークス・ゲインド29位)とパッティング力(36位)を兼ね備えており、マッチプレーでは極めて頼れる存在になるだろう。


アメリカ代表を後押しする“最大の追い風”は何か?

ブリタニー:私にとってカギを握るのは キーガン・ブラッドリー(Keegan Bradley)。

大学時代、私はセント・ジョーンズ大学(ベスページ・ブラックと同じニューヨーク州ロングアイランドにキャンパスを持つ)でゴルフ部にいて、彼とチームメイトだったの。

私たちの“隠れた宝”は今回の舞台となる「ベスページ・ブラック」。

月曜にコースがクローズしている時、管理人さんの好意で2番から12番ホールをこっそり回らせてもらった。

キーガンはそのコースを愛し、プレーできることに心から喜んでいたわ。

彼はいつだって周囲を鼓舞する存在。選手仲間も観客も自然と盛り上げ、相手が誰でも素晴らしいゴルフには敬意を払う。

そんな彼がチームにいるのは、まさに幸運そのもの。私は、このリーダーシップの力がライダーカップで勝敗を分けると信じているの。


ヨーロッパ代表を後押しする“最大の強み”は何か?

ショーン:ローマ大会でのライダーカップ、あのとき ルーク・ドナルド(Luke Donald) は ザック・ジョンソン(Zach Johnson) を完全に上回っていた。

(それぞれ当時の欧州・米国チームのキャプテン)金曜と土曜のペアを固定せず、自在に組み替える采配は見事にハマり、ヨーロッパは序盤から主導権を握り、最後まで流れを渡さなかった。

そして過去20年を振り返っても、ポール・マッギンリー(Paul McGinley) と並ぶ名キャプテンとして評価されるのがルーク・ドナルドだ。

今大会でも再びキャプテンとして指揮を執り、対するは初采配となる キーガン・ブラッドリー(Keegan Bradley)。

豊富な経験と強力な布陣を手にするドナルドなら、勝利を呼び込むレシピを再び仕上げてくるはずだ。


アメリカ代表は何ポイント差で勝つのか?

ブリタニー・オリザロウィッツ(Brittany Olizarowicz): 今回のライダーカップは大差にならないはず。ヨーロッパの上位陣の強さと中堅の安定感を考えれば、アメリカが独走する展開は想像できない。でも、最後はアメリカが僅差で逃げ切ると思う。私の予想は USA 15–13 Europe。


ヨーロッパ代表は何ポイント差で勝つのか?

ショーン・フェアホルム(Sean Fairholm): 僕も久々に接戦になると見ている。これまで一方的な展開が続いたけれど、熱狂的なホームの声援がアメリカを奮い立たせるはずだ。とはいえ、ヨーロッパにはその波を受け止められる選手層が揃っている。だから最終的には Europe 15.5–USA 12.5 と予想するよ。

トップ写真キャプション: 2025年ライダーカップ、熱戦の舞台はニューヨーク。(GETTY IMAGES/N.Y. Yankees)