MyGolfSpyに新たな試みが始まる。
それは「ゴルフを語り尽くす場」をつくること。
毎週、ライター陣がゴルフ界の“ホットトピック”に挑む。
最新ギアの議論はもちろん、プロツアーの動向からアマチュアゴルフのあるある、そして19番ホールで交わされるような雑談まで──。読者が「思わず参加したくなる」ディスカッションをお届けする。記念すべき第1回のテーマは、タイムリーな「ライダーカップ」。
今週金曜の朝、ニューヨーク州ロングアイランドの名門「ベスページ・ブラック」でいよいよ開幕する。
すでにニューヨーカーはポストシーズン進出を決めたヤンキースタジアムからベスページへと熱い視線を移し、前哨戦はスタンドから始まっているといってもいい。今回スタートする“討論型連載企画”の開幕戦のテーマは、もちろん『ライダーカップ』。
「MyGolfSpy」シニアエディターのショーン・フェアホルムは「ヨーロッパが再び栄光をつかむ」と断言する。
一方、ゴルファーでありライター、さらにPGAプロフェッショナルとしての顔を持つブリタニー・オリザロウィッツは「アメリカがホームで勝つ」と応戦。
果たして勝利を手にするのはどちらか──。

もちろん、これは単なるパフォーマンスではない。
私たちは本気で「こうなる」と信じているのだ。
ちなみにショーンは“裏切り者”と呼ばれつつ、ライダーカップ週間はギネス(アイルランド製ビール)片手に過ごすらしい。
では本題に入る前に、舞台を整えるための基本情報を確認しておこう。
・ブックメーカーの最新オッズでは、アメリカが -145 で本命、ヨーロッパは +150 の挑戦者。とはいえ、アメリカが優勝候補に挙げられるのはいつものことだ(前回の自国開催では -200 に近い評価だった)。
・過去9大会のうち8回はホームチームが勝利。最後にホームが敗れたのは2012年、メディナでヨーロッパが奇跡の大逆転を果たした時まで遡る。
・直近5大会はいずれも5ポイント以上の差がついており、スリリングな接戦は影を潜め、一方的な展開が続いている。
・さらにヨーロッパは、過去11大会中8度の勝利を誇る。
──さあ、ゴングは鳴った。舞台は整った。
なぜアメリカ代表は今年のライダーカップで勝つのか
ブリタニー:ゴルフはチーム戦じゃない。だからこそ、ライダーカップは特別なの。
1人で大会を背負える選手なんていないけれど、世界No.1が味方にいるのは大きなアドバンテージよ。スコッティ・シェフラーが2025年にツアーで見せた支配力は、まさにチームUSAのムードを決定づける存在だと思うわ。しかも、ベン・グリフィン、サム・バーンズ、J.J.スポーンといった面々がシーズンを通して彼を追い、時には打ち破ってきた。
そんなライバルたちがいま一つのチームとして同じゴールを目指す──この結束が勝敗を分ける最大の武器になるはずよ。なぜヨーロッパ代表は今年のライダーカップで勝つのか
ショーン:ヨーロッパは今回、まさに“フルメンバー”で臨む。
4人のルーキーを抱え、ブルックス・ケプカ(Brooks Koepka)、ジョーダン・スピース(Jordan Spieth)、ダスティン・ジョンソン(Dustin Johnson) といった中心選手を欠くアメリカとは好対照だ。
伝統の主力は揃っており、そこに ルドビグ・オーベリ(Ludvig Åberg)、ロバート・マッキンタイア(Robert MacIntyre)、セップ・ストラカ(Sepp Straka) ら新世代が加わった。しかも彼らはすでにライダーカップの舞台を経験済み。若さと実績の両輪がチームに勢いをもたらすはずだ。「Data Golf」ランキングのトップ4のうち3人がヨーロッパ勢という事実も、その強さを裏付ける。
さらにその背後には、これまで以上に厚みのある選手層が控えており、歴代最強とも言える布陣が整った。なぜアメリカ代表はヨーロッパ代表よりも層が厚いのか
ブリタニー:このアメリカ代表が怖いのは、ルーキーでさえ戦力になること。
グリフィン、スポーン、そして地元の声援を背にするキャメロン・ヤング。彼らは“つなぎ役”なんかじゃなく、世界でもっとも勢いのある3人で、すでにPGAツアーで勝てることを証明済みよ。だからこそ、アメリカにはヨーロッパの堅実な中盤に対抗する意外性のある爆発力がある。層の厚さは申し分ない。
あとは、そのルーキーたちがライダーカップ独特の重圧に耐えられるかどうか──そこが勝負の分かれ目ね。なぜヨーロッパ代表はアメリカ代表よりも層が厚いのか
ショーン:確かに数字の上ではアメリカの方が層は厚い。世界ランキング13位以内に8人も抱えているんだからね。
でも、そんなことは毎回のことさ。ライダーカップを制するのは、“夏に一時的に好調な選手”じゃなく、修羅場をくぐってきた“経験”なんだ。メジャーチャンピオンの シェーン・ローリー(Shane Lowry) や ジャスティン・ローズ(Justin Rose) といったヨーロッパの実績組か、それとも J.J.スポーン(J.J. Spaun)、ベン・グリフィン(Ben Griffin)、ラッセル・ヘンリー(Russell Henley) のようなアメリカのチャレンジャーか?
僕は迷わない。この灼熱の舞台を何度も戦ってきた男たち──その経験こそが勝利を決めると信じている。
アメリカ代表の“隠れたXファクター”は誰だ?
ブリタニー:元・住宅ローン担当者から一転、ツアーで輝きを放つ存在へ──。
ベン・グリフィンはまさに今回の“Xファクター”ね。かつて庶民派のカントリークラブで40ドルのマックスフライをキャディバッグに入れてプレーしていた彼が、2025年にはすでに2勝を挙げ、トップ10入り11回。大舞台が自分にとってどれほど大きなチャンスかを理解していて、それを実力で証明できる選手よ。ヨーロッパ代表の“隠れたXファクター”は誰だ?
ショーン:ベン・グリフィンのサクセスストーリーは確かに面白いし、ニューヨークの観客が彼を熱烈に応援する姿も目に浮かぶ。
けれど、ヨーロッパで僕が注目しているのはスコットランドの ロバート・マッキンタイアだ。彼は職人気質のゴルフと飾らないキャラクターで、派手さこそないが、着実に世界ランキング20位まで駆け上がった。“ビッグショット・ボブ”の異名を持つ彼は、「全米オープン」で優勝目前まで迫った実績があり、大舞台でも一切ひるまない。
ティーからグリーンまでの安定度(ストロークス・ゲインド29位)とパッティング力(36位)を兼ね備えており、マッチプレーでは極めて頼れる存在になるだろう。アメリカ代表を後押しする“最大の追い風”は何か?
ブリタニー:私にとってカギを握るのは キーガン・ブラッドリー(Keegan Bradley)。
大学時代、私はセント・ジョーンズ大学(ベスページ・ブラックと同じニューヨーク州ロングアイランドにキャンパスを持つ)でゴルフ部にいて、彼とチームメイトだったの。私たちの“隠れた宝”は今回の舞台となる「ベスページ・ブラック」。月曜にコースがクローズしている時、管理人さんの好意で2番から12番ホールをこっそり回らせてもらった。キーガンはそのコースを愛し、プレーできることに心から喜んでいたわ。彼はいつだって周囲を鼓舞する存在。選手仲間も観客も自然と盛り上げ、相手が誰でも素晴らしいゴルフには敬意を払う。
そんな彼がチームにいるのは、まさに幸運そのもの。私は、このリーダーシップの力がライダーカップで勝敗を分けると信じているの。ヨーロッパ代表を後押しする“最大の強み”は何か?
ショーン:ローマ大会でのライダーカップ、あのとき ルーク・ドナルド(Luke Donald) は ザック・ジョンソン(Zach Johnson) を完全に上回っていた。
(それぞれ当時の欧州・米国チームのキャプテン)金曜と土曜のペアを固定せず、自在に組み替える采配は見事にハマり、ヨーロッパは序盤から主導権を握り、最後まで流れを渡さなかった。そして過去20年を振り返っても、ポール・マッギンリー(Paul McGinley) と並ぶ名キャプテンとして評価されるのがルーク・ドナルドだ。
今大会でも再びキャプテンとして指揮を執り、対するは初采配となる キーガン・ブラッドリー(Keegan Bradley)。豊富な経験と強力な布陣を手にするドナルドなら、勝利を呼び込むレシピを再び仕上げてくるはずだ。アメリカ代表は何ポイント差で勝つのか?
ブリタニー・オリザロウィッツ(Brittany Olizarowicz): 今回のライダーカップは大差にならないはず。ヨーロッパの上位陣の強さと中堅の安定感を考えれば、アメリカが独走する展開は想像できない。でも、最後はアメリカが僅差で逃げ切ると思う。私の予想は USA 15–13 Europe。
ヨーロッパ代表は何ポイント差で勝つのか?
ショーン・フェアホルム(Sean Fairholm): 僕も久々に接戦になると見ている。これまで一方的な展開が続いたけれど、熱狂的なホームの声援がアメリカを奮い立たせるはずだ。とはいえ、ヨーロッパにはその波を受け止められる選手層が揃っている。だから最終的には Europe 15.5–USA 12.5 と予想するよ。
トップ写真キャプション: 2025年ライダーカップ、熱戦の舞台はニューヨーク。(GETTY IMAGES/N.Y. Yankees)
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