L.A.B. Golf(ラブ・ゴルフ)はアメリカで急成長しているパターブランドだが、日本ではまだあまりなじみがないかもしれない。
しかし、2025年の『Most Wantedゼロトルクパター』で栄冠を手にしたのは、このL.A.B. Golfの「OZ.1i」だった。そして、今や人気となったゼロトルクパターを世に広めた最初のメーカーこそ、L.A.B. Golf。言わば、「ゼロトルクパターのパイオニア=L.A.B. Golf」 なのだ。
「聞いたことがないブランドだから」とスルーするのはもったいない。
さて──どんなパターなのか、気になってきただろう?
では、本題に入ろう…。
L.A.B. Golfが大胆な一手を打ってきた。これまでの常識を覆す、センターシャフトではない新パター「OZ.1i HS」をリリース。モデル名の“HS”は“ヒールシャフト”の略だ。
L.A.B.といえば『ライ・アングル・バランス』(パターの自動補正機能のようなもの)というイメージが強いが、果たしてこれはその技術を手放したということなのか――?
もちろん、L.A.B.が『ライ・アングル・バランス』を手放したわけではない。
ただし、ヒールシャフトへとホーゼル位置を移したことで、同社はこの技術を新しい角度から再構築する必要があった。
ソールには従来同様たくさんのウエイトが並ぶが、その配置パターンは初代「OZ.1i」とは大きく変化している。本題の新モデルを紹介する前に――。
そもそもL.A.B. Golfの『ライ・アングル・バランス』パターは、なぜ他のゼロトルクパターと一線を画す存在なのか? ここで少し復習しておこう。
「ゼロトルク」ではない ─ ライ・アングル・バランスパターの真実

「L.A.B.のパターはトルクがゼロ」――そう誤解しているゴルファーは少なくない。
だが実際には、適度なトルクが存在しており、その力があるからこそストローク中にフェースが自然とスクエアに戻る。
もし完全にゼロトルクなら、パターヘッドは360度どの角度で止めても同じようにバランスを保ってしまうはずだ。
★補足:パターにおける「トルク」とは、ストローク中にヘッドが回転しようとする力のことを指す。
ゼロトルク=「まったく回転しない」という意味ではなく、ヘッドがスクエアに戻るよう最適化されたトルクを持っているのがL.A.B. Golfの特徴だ。
このバランスがあるからこそ、インパクト時にフェースを目標に正しく合わせやすくなる。
L.A.B.が行っているのは、あくまで特定のライ角で最適なトルク特性を実現するバランス設計。だからこそ、ライ角が変わればバランスも変わり、その都度ウエイト調整が必要になる。

ちょっとした裏話:L.A.B. Golfのパターは、例外なくすべて手作業でバランス調整されている。1本たりとも例外はない。
工場から送り出されるパターは、すべて正しくバランスが取られた状態でプレーヤーの手に届く。
グリップやシャフトの個体差、製造過程で生じるわずかな誤差も、職人の手によって丁寧に微調整されているのだ。そのため、L.A.B. Golfのパターは注文してから手元に届くまでに時間がかかる。
既製品を少し調整して箱に入れるだけ──そんな単純な作業ではない。1本のパターが工場を出るまでに、複数のスタッフの手を経て、丹念に仕上げられているのだ。
バランス調整、品質チェック、注文内容の確認、そして出荷。
そのすべての工程に人の手が入り、1本1本が正しく作られていることをL.A.B. Golfは保証している。
いよいよ本題 ─ 新モデル「OZ.1i HS」へ

少し『ライ・アングル・バランス』の話に寄り道したが、新モデル「OZ.1i HS」を語る上で避けて通れないポイントなので触れておこう。
シャフトの挿入位置を変えるだけで、ヘッドのバランスは大きく変わってしまうのだ。
感覚的に理解したい人は、ペンを手に取ってみてほしい。真ん中を持てば両端が釣り合っているが、端を持つと反対側が重さで落ちようとする。
「支点の違い」がバランスにどう影響するか、一瞬で体感できるはずだ。
ペンの例でわかるように、支点が変わればバランスの取り方もまったく別物になる。
つまり、ネック位置をヒール寄りに動かした「OZ.1i HS」を『ライ・アングル・バランス』に仕上げるには、従来とは異なる全く新しいウエイト配分が必要になったというわけだ。
進化を支える新構造 ─ HSライザーシステム

「OZ.1i HS」に関して、L.A.B. Golfは一般的な「ホーゼル」という表現を使わない。彼らがそう呼ぶのは「ライザー」。シャフトを接合するための独自パーツだ。
一見すると呼び方に違和感があるかもしれないが、その役割を知れば納得できるだろう。
『ライ・アングル・バランス』を成立させるには、ライ角が異なるシャフトでも、その基部が常にパターヘッド上の同じ一点を指す必要がある。その基準点は、他社のパターのように「重心の真上」とは限らない。
ただ、理解しやすい目安としては、重心位置をイメージするとわかりやすいだろう。
イメージしてみてほしい。
70度のライ角では、シャフトはちょうど狙った基準点を指している。
ところがライ角を72度に変えると、先端はヒール寄りを指し、68度に下げれば今度はトウ側へとずれてしまう。

シャフトの先端が常に正しい基準点を指すように、L.A.B. Golfは長さの異なるライザー(ホーゼル)を組み込んでいる。
アップライトなライ角には長いライザー(ホーゼル)が働き、シャフトをヒール寄りからセンター方向へ。
逆にフラットなライ角には短いライザーが用いられ、同じように調整が行われる仕組みだ。
機能的に見れば、ライザーはホーゼルと同じで、シャフトとヘッドをつなぐ役割を果たしている。
だが決定的に違うのは、ライ角ごとに専用の長さを持つライザーが用意されている点だ。
当然、ライザー(ホーゼル)の長さが変われば『ライ・アングル・バランス』の調整方法も変わってくる。
なるほど──そう考えると、「OZ.1i HS」のバランス設計が、従来のセンターシャフト版「OZ.1i」と大きく異なるのも当然だろう。
なぜヒールシャフトのパターを作るのか?

では、なぜL.A.B. Golfはここまで手間をかけて「OZ.1i」を進化させたのか?
その理由を探ってみよう。
私の推測だが、今回の新モデル開発には「L.A.B.らしさを残しつつ、より伝統的な見た目に近づけたい」という狙いがあるのではないだろうか。
これまでのL.A.B. Golfのセンターシャフトパターは、性能こそ抜群だが、見た目が独特すぎて敬遠するゴルファーも少なくなかった。
L.A.B.の技術がどれほど優れていようと関係ない。「センターシャフトは使わない」――そう決めているゴルファーは一定数いるのだ。

こうして完成した「OZ.1i HS」は、L.A.B. Golfのアシスト系テクノロジーを余すことなく備えつつ、見た目はぐっと伝統的になった。
「73.3%もクラシックに見える」と冗談を言いたくなるほどだが、初代版と比べればその違いは一目瞭然だ。
「OZ.1i HS」を目にすれば、L.A.B. Golf特有のユニークな形状は健在だ。
それでも、新しいシャフト位置と中央部分がすっきりとしたヘッド形状のおかげで、伝統的な小型ラウンドマレットらしいルックスに仕上がっている。独特すぎるデザインゆえにL.A.B.のパターを敬遠していたゴルファーにとって、「OZ.1i HS」のルックスはきっと受け入れやすいはずだ。
フィッティングから実際の転がりまで ─ 「OZ.1i HS」を体感する

数週間前、オレゴン州クレスウェルにあるL.A.B. Golfの本社を訪ね、新モデル「OZ.1i HS」のフィッティングを受けてきた。
もしこのあたりを訪れる機会があるなら、ぜひ立ち寄ってみるべきだ。アメリカ・オレゴン州にある「バンドン・デューンズ」でのゴルフ旅に1日追加して、ユージーン(アメリカ合衆国オレゴン州にある都市)の南までドライブすれば足を運べる。
パターのバランスを左右するのはライ角だ。だからこそ、自分に合ったライ角でフィッティングすることが何よりも大切になる。
実際にフィッティングを受けて驚いたのは、無料のリモートフィッティングで算出されたライ角と、対面での結果がまったく同じだったことだ。
つまり、リモートのビデオフィッティングでもしっかりとした数値が得られる、という証明になった。

次に試したのは、豊富に用意されたシャフトのバリエーション。
この工程こそ、対面フィッティングの真価が発揮される場面だった。
もちろんL.A.B. Golfの公式サイトでもシャフトの特徴は丁寧に説明されているが、やはり実際に打ち比べて感触を確かめられるのは大きなメリットだ。
フィッティングで判明したもうひとつの面白いポイントは、「自分にはシャフトの傾きが0度のパターが合う」という結果だった。
正直これは予想外だった。なぜなら、いま愛用している「DF3」はシャフトが2度前方に傾いていて、さらに「1.5度のPress Grip」を組み合わせているからだ。
シャフトの傾きを0度にしたことで、アドレスがぐっと自然な形になった。そのうえで、自分が愛用している「Super Stroke 2.0」グリップを装着できたのも大きな収穫だった。

「OZ.1i HS」の通常仕様はブラックだが、カスタムならカラーオプションが豊富に揃っている。
実は最初に希望したのはパープル。しかし残念ながら、その願いは叶わなかった(もしかすると限定カラーで復活するかもしれないが)。
そこで気持ちを切り替え、最終的に選んだのはブルー。
しかも不思議なことに、その色に決めたのはアライメントデザインを選んだ後のことだった。
無限に広がるアライメントのバリエーション

「OZ.1i HS」でも、L.A.B. Golfらしく豊富なアライメントラインのバリエーションが用意されている。
トップラインとキャビティ、それぞれに複数のデザインがあり、自由に組み合わせて自分好みの仕様にできるのが魅力だ。
豆知識:アライメントのデザインは、すべてレーザーで刻印されている。
そう、L.A.B. Golfのパターには“レーザービーム”が使われているのだ。
私が選んだのは、クラシックなシボレーの「カマロSS」のボンネットを連想させる太めのレーシングストライプ。
トップとキャビティの両方に同じラインを入れることで、視線が自然につながるシームレスなアライメントに仕上げた。
シャフト位置が中央から外れたことで、アライメントラインの見え方が大きく変わった。
2本の太いラインが並ぶことで、その間に自然と細いラインが浮かび上がるデザインになっていて、とても気に入っている。全体の雰囲気も、これまで以上に伝統的なルックスに仕上がっている。
ラインの中央にできたスペースを見ているうちに、ふと“前歯のすきっ歯”を連想してしまった。
そこから勝手に、このアライメントシステムを「ストレイハン方式」と名付けたのだ。
そうなれば、もうカラーはブルー×ホワイトしかあり得ない──そう直感した。
👉 「Strahan(ストレイハン)」は、すきっ歯がトレードマークの元NFL選手 マイケル・ストレイハン を指しています。
実戦での答え ─ 初代「OZ.1i」と打ち比べて

名前こそ共通し、どちらも『ライ・アングル・バランス』を搭載しているが、「OZ.1i」と「OZ.1i HS」は実際にはまったく別物のパターだ。
最大の違いはシャフト位置。そして、その配置変更が他の部分にも大きな差を生んでいる。どちらも試したが、正直に言えば私は片方のほうがしっくりきて、パッティングの結果も明らかに良かった。
率直に言おう。「OZ.1i HS」は、初代「OZ.1i」よりも打感が良く、パフォーマンス面でも上をいく。
たしかに「OZ.1i」は2025年の『Most Wantedゼロトルクパター』に輝いた実績がある。その評価はもちろん称賛に値する。
それでもなお、私は「OZ.1i HS」のほうが完成度の高いパターだと断言したい。
どうしてそんな大げさなことを言うのか、って思うだろう?
まず大きな違いは、シャフトを中央から外したことでアライメントが大幅に改善された点だ。
シャフトに邪魔されず、一直線に続くアライメントラインを構築できるようになり、構えやすさが格段に増した。
実際に試してみても、この効果は想像以上に大きかった。

実際に2本を並べて打ち比べてみてわかったのは、初代「OZ.1i」では結局シャフトより前の部分しかターゲットとして使っていなかった、ということ。
シャフトの後方にもラインは入っているのに、正直まったく意識していなかったのだ。
「OZ.1i HS」では、ヘッド全体にラインが貫かれているので、パター全体をターゲットにまっすぐ合わせられるようになった。
使い始め特有の高揚感かもしれないが、この“ストレイハン・アライメント”はまさに“狙って構えて打つだけ”というシンプルで直感的な感覚を味わわせてくれる。
「OZ.1i HS」では、浅くてスクエアなトップエッジが狙いやすさを高めている。
初代「OZ.1i」の幅広いトップ部分に比べ、細身のトップエッジの方がターゲットにスクエアを合わせやすく、アドレス時の安心感につながった。
加えて、「HS」モデルではフェース固定用のスクリューがソール側に移されたことで、アドレス時に視界を邪魔するキャビティの切り欠きがなくなった。
その結果、構えたときの見え方がすっきりし、集中しやすくなっている。

「OZ.1i HS」が初代を上回るもうひとつのポイントは、インパクトでの打感だ。
このフィーリングの違いは、2つのモデルのヘッド形状における設計上の違いが影響していると感じている。
どちらもステンレススチール製インサートを搭載しているが、「OZ.1i HS」のフェースは打感がよりホットで、打点位置のフィードバックも明確だ。
私はつい打点がセンターから外れることがあるのだが、「OZ.1i HS」ではヒールかトウか、どこで当たったかがすぐにわかる。
一方、初代「OZ.1i」の打感はやや抑え気味で、インパクトの手応えも 明確さに欠ける印象 だった。もちろん、打感の好みは人それぞれだ。
私とは逆に、初代の落ち着いたフィーリングを好む人がいても不思議ではないし、それでいいのだ。

シャフト位置を除けば、「OZ.1i」の2モデルの違いをひとつに断定するのはなかなか難しい。
というのも、今回試したパターはシャフト自体も異なり、ひとつは2度のプレス仕様、もうひとつは0度。加えて、グリップまでもが異なる構成だったからだ。
最終的に言えるのはシンプルだ。「OZ.1i HS」はバッグの中、そして初代「OZ.1i」はガレージ行き。おまけにパープルの「DF3」までガレージでふてくされている。
結論:L.A.B. Golf「OZ.1i HS」は間違いなく優れた1本

おそらく皆さんと同じように、私も「OZ.1i HS」を手にする前からリーク写真を目にしていた。
その時の率直な印象を言えば、「ふーん、シャフトをヒールに動かしただけでしょ?」といった程度。新モデルへの期待感は正直あまり高くなかったのだ。
ところが、いまの気持ちはまったく逆だ。
「シャフトをヒールに移した! それがとんでもなく大きな意味を持つんだ!」

初代「OZ.1i」を気に入って使っているなら、そのまま愛用すればいい。
壊れていないものをわざわざ直す必要はないからだ。
ただし、初代を試して「いまひとつ合わなかった」と感じた人には、このヒールシャフト版「OZ.1i HS」をぜひ打ってみてほしい。
これまでとはまったく違う、新しい体験が待っているはずだ。
「OZ.1i HS」を実際に使ってみて強く感じたのは、L.A.B. Golfが決して過去の成功に安住していないということだ。常に新しいアイデアを探り、挑戦を続けている。
その姿勢こそが、このブランドの魅力であり──次にどんな一手を打ってくるのか、今から楽しみで仕方ない。
──もちろん、次こそはパープルで登場してくれることを願っている。
「OZ.1i HS」は、公式サイトLabGolf.comから通常モデルとカスタムモデルを注文できる。
自分だけの一本を手に入れるチャンスだ。
日本公式サイト:LAB Golf(ラブ・ゴルフ)
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