最初は、今年のテーラーメイドはブラックフライデー向けの目玉を出さないのかと思った。
毎年早々とクリスマス飾りを始める家みたいに、もう“年末モード”へ移行したのかと勘違いしたほどだ。実際、先週発表されたのは 「TP5」のコレクターズエディションと、雪男モチーフのスパイダーヘッドカバー。
この流れだけ見ると、「今年はホリデー寄りのキャンペーンでいくのかな?」と感じていた。でも本命は別にあった。
ショッピングシーズンの開幕に合わせて投入されたのは、ゼロトルク設計で人気の「Spider 5K-ZT」を黒で仕上げた“Black”バージョンだ。
テーラーメイドは「Spider ZT Black」をシリーズの拡張として位置づけているが、実際は“シングルライン仕様が限定で店頭にも並ぶ”という形。つまり、今日すぐに手にできる可能性があるということだ。
希少性はひとまず置いておくとして、このモデルはゼロトルク設計で評価の高い「Spider 5K-ZT」を、黒というテーマで再構築した興味深いバージョンだ。ただ、その解釈には少し驚かされる部分もある。
見た目としては、元の「5K-ZT」 に上手く黒の世界観を纏わせた印象で、所有欲を刺激する出来栄え。
ただ一方で、「なぜこの色を残したのか?」と疑問に思う細部もあり、デザイン面で完全な“オールブラック”とは言い切れない。
テーラーメイド「Spider ZT Black」|黒で統一したトップと3本アライメント
上の写真は、アドレス時に見た「Spider 5K-ZT」の標準モデル。原点を押さえたうえで、ここから新作「Spider ZT Black」を見ていこう。
アドレスした瞬間、「Spider ZT Black」はまったく新しい表情を見せる。
トップは黒一色。そのうえ前方のアライメントラインは3本へと増え、視覚的なガイドが強調された。このラインは、フェースに対して直角方向に刻まれた溝と自然に重なり、構えた瞬間にボールを“枠に収める”感覚が生まれる。
黒の中に浮き上がるライン設計で、狙うポイントが明確になる。つまり、このパターは視線を迷わせない。フォーカスすべき場所が、最初から一つに定まっている。
3本ラインがしっくりこない人には、黒仕上げの1本ライン仕様も用意されている。どちらも完成度は高いが、自分は “3本ラインの視覚効果” に惹かれる。
テーラーメイド「Spider ZT Black」|スペック一覧(米国仕様)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 素材 | ステンレス×アルミニウム |
| インサート | 「Black PureRoll」 |
| 長さ | 33 / 34 / 35(標準)|36 / 38(CB) |
| 重量 | 370g(標準)|395g(CB) |
| ロフト / ライ | 3° / 70° |
| トウハング | Toe Up |
| 利き手 | 右 / 左 |
| シャフト | KBS CT(標準)|KBS Custom Graphite(CB) |
| グリップ | SuperStroke Pistol 1.0 他 |
「Spider ZT Black」|“ほぼ黒”で仕上げた美学
この「Spider ZT Black」で一番意外なのは、“完全な漆黒”ではないことだ。
通常、ブラックアウト仕様といえば細部まで黒に染め上げるのがセオリー。天板もソールもロゴも、徹底して黒で統一する──そんな仕上げが多い。
だが今回テーラーメイドが選んだのは、あえての“ほぼ黒”という方向性。細部に色味を残すことで、スパイダーシリーズらしさをわずかに“生かした”デザインになっている。引用されている映画のセリフがぴったりだ。
「“ほぼ死んでる”のと“完全に死んでる”のは全然違う。ほぼ死んでるってことは、まだ少し生きてるってことさ。」まさに今回の「Spider ZT Black」は、“完全な黒”ではなく“生きたすこし黒じゃない”。
金属部分もインサートも黒で統一されているものの、「Spider ZT Black」には意図的に“黒以外”が残されている。
先の引用になぞらえるなら、「『Spider ZT Black』は“完全な黒”ではなく“ほぼ黒”。その差は見た目以上に大きい。」
まず白いアライメントライン。視認性を優先するなら黒より白に軍配が上がるし、ここは納得の選択。
ソールのロゴも白になっていて、ここは“黒に塗れたはずなのに残した”領域。そして一番特徴的なのは、シリーズカラーの“青”がそのまま残されていること。ソールプレートにも、ヘッドカバーにも青が強く残る。
おそらくテーラーメイドは、この青を「Spider 5K-ZT」シリーズの“識別色”として維持したのだろう。
完全黒にしなかったのは、ブランドらしさを失わないための意図的なデザインだと考えられる。
正直、一番腑に落ちないのが青いヘッドカバーだ。
ブラックアウトを狙うなら、こここそ黒に仕上げるべきポイント。黒いカバーなら黒シャフトや黒パーツとの一体感が生まれ、完成度は一段上がったはずだ。
そして問題が大きく見える理由は、テーラーメイドが“ヘッドカバーの名手”だから。スパイダーシリーズの歴代カバーは完成度が高く、ギア好きに刺さるデザインばかりだ。
例えば昨年のハロウィン限定「Midnight Howl Spider」。本体の出来も良かったが、付属のヘッドカバーは“パター以上に欲しくなる”レベルの仕上がりだった。
だからこそ今回、「Spider ZT Black」で青を残した判断には首をかしげる。ブラックアウトなら、最後までやりきってほしかった。
(名字が Wolfe なんだから、あの限定モデルは買っとくべきだったな……)
今回の「Spider ZT Black」が単なるシリーズ追加だと考えるなら、既存のヘッドカバーを使う判断自体は理解できる。
でも、ブラックモデルに合わせた特別仕様のカバーを作るチャンスだったのも事実。テーラーメイドなら、そこまで踏み込んだ“黒の世界観”を見せてほしかった。テーラーメイド「Spider ZT Black」|発売情報(米国)
テーラーメイドの“黒いスパイダー”を狙うなら、「Spider ZT Black」はすでにオンラインで購入できる。店舗にも近いうちに入る見込みだ。
ただし販売ルートはモデルで変わる。
3本ライン仕様→公式オンライン限定。1本ライン仕様→オンライン+店頭で限定数量。
今回は限定モデルほどの希少性ではないが、通常の「Spider 5K-ZT」ほど潤沢でもないライン。
欲しい人は、早めに公式オンラインをチェックしておくべきだ。
※海外先行で登場した「Spider ZT Black」だが、日本でも11月頃に発売される可能性がある。シリーズの人気を考えると、国内でも注目を集める1本になるだろう。




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