毎年、私たちはフロリダ州オーランドにある「オレンジ・カウンティ・コンベンション・センター(Orange County Convention Center)」を舞台に、PGAショーの取材をスタートさせる。
目的はシンプルだ。
ゴルフシーズンを前に、「これは面白い」「これは注目したい」と感じた製品を見つけ出し、その魅力を余すことなく伝えること。
時には完成度の高さに唸る製品もあれば、発想そのものに驚かされる個性的なアイテムに出会うこともある。
毎年恒例の「Best of Show」は、そうした数ある展示の中から、私たちが特に印象に残った製品をピックアップする企画だ。
それでは、2026年PGAショーで選ばれた注目製品を見ていこう。
アディダス「ULT365」ゴルフショーツ(ショートパンツ)
Best in Showに選ばれた理由:
注目すべきは、見た目ではなくウエストまわりの設計だ。
アディダスは、「ULT365」ショートパンツにおいて、従来よく使われてきたシリコン製の滑り止めに代わる、新しい生地テクノロジーを採用している。
この素材は、シャツをしっかりとホールドしながらも、シリコン特有の引っかかりや不快な粘着感がないのが特徴。
グリップ力とソフトな肌触りを両立させることで、プレー中の違和感を抑えている。
ゴルフショーツはすでに完成されたカテゴリー。そう思われがちだが、「ULT365」は、まだ改良の余地があることを示した一本だ。
Alma Mater「Beta Lite」
Best in Showに選ばれた理由:
「Beta Lite(ベータ ライト)」は、Alma Mater(アルマ・マター)の初代「Beta」で確立された高い機能設計を受け継ぎながら、 外観をより日常に馴染む方向へと整えたモデルだ。
競技用シューズとしての性能はそのままに、見た目はややカジュアル寄り。
ラウンドだけでなく、練習場や移動時にも違和感なく使えるバランス感覚が、この「Beta Lite」を“Best in Show”に押し上げた。
Birdilens 「AR glasses」
Best in Showに選ばれた理由:
『AR(拡張現実)技術』を用いたGPSゴルフグラスは、まだ発展途上の分野だ。
ただし、このカテゴリーが今後広がっていくことは、ほぼ間違いない。
Birdilens(バーディレンズ)は、その流れを先取りする形で登場した存在だ。
完成形と呼ぶには早いものの、「ゴルフ中に視線を切らず、必要な情報を得る」という発想は明確で、今後のゴルフ用デバイスの方向性を示している。
市場に続くであろう数多くのARグラスの中で、最初の一歩として提示された意義──
それ自体が、Best in Showに値すると言えるだろう。
Blue Tees 「Rainmaker」(ポータブル弾道計測器)
Best in Showに選ばれた理由:
Blue Tees(ブルーティーズ)「Rainmaker(レインメーカー)」は、同ジャンルの競合製品と比べても、作りの堅牢さとシステム全体の完成度が際立っている。
単体の計測機器としてだけでなく、距離計やアクセサリーなど、Blue Teesが展開する製品群と連動し、すべてを「GAME」アプリを軸に一元管理できる点は大きな強みだ。
測定データの安定性、アプリとの連携、操作性──
どれか一つが突出しているというより、実用面でのバランスが非常に整っている。
その積み重ねが、結果として高い実用性につながっている。
サブスクリプション制ではあるものの、日常的にデータ管理や練習の可視化を行うゴルファーにとっては、十分に納得できる内容だろう。
Caddy Splash「Divot Tee」
Best in Showに選ばれた理由:
派手な新機軸があるわけではない。
だが、このアイテムが評価された理由は、目的が明確だからだ。
Caddy Splash(キャディ・スプラッシュ)「Divot Tee(ディボット・ティー)」は、ハンドル付きのティー形状を採用することで、 グリーン上のボールマークを、芝の根を傷めにくい“正しい方法”で直しやすくしている。
使い方はシンプルだが、グリーンコンディションを守るという本質的な役割に、きちんと向き合った設計といえる。
今回の「Best of Show」受賞アイテムの中でも、最も手に取りやすい価格帯である点も、見逃せないポイントだ。
CHIP’d
Best in Showに選ばれた理由:
CHIP’d(チップド)は、パッティング練習の質そのものを高めることを狙ったトレーニングデバイスだ。
単なる距離感の反復ではなく、ストロークの再現性や安定性に踏み込む設計が特徴となっている。
現時点では、実機検証を通じて見極めるべき要素も残されているが、少なくとも「パッティング練習をどう変えられるか」という観点において、十分に注目に値する存在だ。
コブラゴルフ「3DP MB/X」アイアン
Best in Showに選ばれた理由:
コブラゴルフ「3DP MB/X」アイアンは、マッスルバックの外観からは想像しにくい「寛容性」を備えている点が、最大の特徴だ。
一般的にマッスルバックと聞くと、打点のシビアさや扱いづらさを連想しがちだが、このモデルは、実戦で使える安定感と操作性を高い次元で両立している。
それでいて、インパクト時の打感は非常にクリア。
競技志向者(上級者)が求める打感をしっかりと残しながら、「思った以上にミスを許してくれる」──そんな印象を与える1本だ。
Course Record
Best in Showに選ばれた理由:
Course Record(コース・レコード)は、
「ゴルフ中に本当に欲しい水分補給とは何か」を、かなり現実的に突き詰めたドリンクだ。
低糖質で飲みやすく、ラウンド中に負担になりにくい設計。
それでいて、集中力を維持しやすい適度なカフェイン量と、プレー中を想定した複数の機能性成分がバランスよく配合されている。
エナジードリンクほど強すぎず、スポーツドリンクほど単調でもない──
「プレーの流れを切らさない補給」という点で、非常に完成度が高い。
ゴルフシーンに限らず、ノンアルコール飲料カテゴリーの中でも、次の“定番”になっても不思議ではない存在だ。
Field Day Sporting Company
Best in Showに選ばれた理由:
Field Day Sporting Company(フィールド・デイ・スポーティング・カンパニー)は、
クラシックな佇まいと、現代的な設計思想、そして丁寧なものづくりを高い次元で融合させたブランドだ。
派手さで目を引くタイプではない。
だが、縫製、素材選び、仕立ての精度──
細部を見れば見るほど、完成度の高さが伝わってくる。
現在は、世界でも評価の高いゴルフクラブ約200施設で展開されており、その存在感は静かに、しかし確実に広がっている。
大量消費を前提としたアパレルとは対極にあるスタンス。
長く着続けることを前提に選ばれる一着という考え方が、このブランドの核だ。
GHOST Golf 「Masters Bag」
Best in Showに選ばれた理由:
GHOST Golf(ゴースト・ゴルフ)「Masters Bag(マスターズ・バッグ)」は、
マスターズ仕様の限定モデルにありがちな過剰さや手の届きにくさとは、一線を画す完成度を備えている。
派手さに振り切るのではなく、伝統的な色使いと現代的な素材選びを丁寧に融合。
いわば、“クラシックな気品と最新素材のバランス”が、このバッグの核だ。
カラーリングは落ち着きがあり、全体の調和も取れている。
さらに、細部に目を向けると、ゴルフの聖地を想起させるモチーフ──
ジョージア州を象徴するピーチや、アザレアへのオマージュといったさりげない演出が散りばめられている。
「シーズン開幕戦」を意識した特別感はありながら、使い手を選びすぎない完成度。
ここ数年のマスターズ関連バッグの中でも、非常にバランスの取れた仕上がりと言っていい。
GolfJoy Spica 3
Best in Showに選ばれた理由:
GolfJoy(ゴルフジョイ)「Spica 3(スピカ・スリー)」は、弾道測定器市場の常識を揺さぶる存在だ。
3カメラ構成を採用し、基準機として知られるForesight「GC Quad」に迫る精度をうたいながら、価格は約3,200ドルという現実的なラインに収められている。
この価格帯でここまでの計測性能を実現してくるとなると、もはや「個人用ローンチモニター=妥協の産物」という時代ではない。
むしろ、5,000ドル未満のパーソナル市場が一気に動き出す兆しすら感じさせる。
精度、構成、価格のバランス──
そのどれを取っても、現行市場に対して強いメッセージを放つ1台だ。
この領域を本格的に切り開けるかどうか。
GolfJoy 「Spica 3」は、その“分岐点”に立つモデルと言える。
Khalhon
Best in Showに選ばれた理由:
Khalhon(カルホン)は、ゴルフとストリート要素を組み合わせたブランドが増える中で、「品質」という一点で、はっきりと違いを示した存在だ。
デザイン性だけを前面に押し出すのではなく、縫製の精度、素材の選び方、そしてスイング中の動きへの追従性まで丁寧に作り込まれている。
見た目と実用性のどちらかを犠牲にするのではなく、プレー中に着ることを前提とした完成度が評価された。
コラボレーションが増え、話題性だけで消えていく製品も少なくない中で、「実際に着て、動いて、違いが分かる」というアプローチは、決して多くない。
現在進行中とされるPAYNTR(ペインター)との協業も、この姿勢を踏まえれば、単なる話題作りでは終わらない可能性を感じさせる。
また、レディスラインについても“付け足し”の印象はない。
最初から女性のプレーシーンを想定した設計がなされており、縫製や仕立ての質感は、価格帯以上の完成度を感じさせる。
ローガン ウェッジ/オクトグリップ
Best in Showに選ばれた理由:
ローガン(Logan)のウェッジと、独自設計のグリップ 「オクトグリップ(Octogrip)」 は、派手さよりも実戦での使いやすさに軸を置いた組み合わせだ。
ウェッジ本体は、構えたときの見た目がすっきりしており、状況に応じた使い分けがしやすい汎用性を備えている。
一方で注目したいのが 「Octogrip」 の存在だ。
グリップ形状と素材設計によって、インパクト時に必要以上に力が入りにくい構成となっており、繊細な距離感やフェースコントロールが求められる場面で、その効果が生きてくる。
大手ブランドとは異なるアプローチながら、「なぜこの形なのか」「なぜこの感触なのか」が伝わってくる。
小規模メーカーならではの視点が、しっかりと形になったアイテムだ。
Motocaddy 「M7GPS」
Best in Showに選ばれた理由:
Motocaddy(モトキャディ)の主力モデル「M7 GPS」は、MyGolfSpyの『Most Wantedテスト』において、電動カートカテゴリーの中でも長年にわたり高い評価を積み重ねてきた存在だ。
今回のアップデートでは、視認性と操作性を高めたGPSスクリーンの刷新に加え、剛性と安定性を見直した新シャーシを採用。
そのほかにも細かな改良が積み重ねられ、完成度をさらに高めている。
注目すべきは、これだけのアップデートを施しながら、価格が据え置かれている点だろう。
使い勝手・機能性・信頼性という電動カートに求められる要素を、現実的な条件のままアップデートしてきた姿勢は評価に値する。
単なるモデルチェンジではなく、実戦での使いやすさを磨き続けてきた結果のアップデート──
それが「M7 GPS」がBest in Showに選ばれた理由だ。
NIKE Golf
Best of Showに選ばれた理由:
NIKE Golfは、単なる復活ではなく、「今のゴルフに合う形」で再び存在感を示してきた。
今回発表されたアパレルは、競技やラウンドでの動きやすさを前提にしながら、これまでのNIKE Golfには見られなかった洗練されたデザイン性と、はっきりとした個性を備えている。
トレンドを意識しつつも、ゴルフウェアとしての実用性を損なわない──そのバランス感覚が印象的だ。
年内にはシューズの展開も予定されており、NIKE Golfが再びゴルフ市場でどのポジションを築いていくのか、注目せずにはいられない。
PAYNTR「Reserve Classic Tour RS」
Best of Showに選ばれた理由:
ミン・ウー・リーの加入とともに登場した「Reserve Classic Tour RS(リザーブ・クラシック・ツアー・アールエス)」は、PAYNTR(ペインター)が築いてきた安定性と反発性を重視したパフォーマンス設計をそのままに、ツアーシューズとして落ち着いた印象のクラシックな外観を組み合わせたモデルだ。
見た目は端正だが、競技で求められる機能性は妥協していない。
ツアーレベルのパフォーマンスと履き心地を備えながら、180ドルという価格設定に収めてきた点も含め、現実的かつ完成度の高い1足として評価された。
Runner Golf
Best of Showに選ばれた理由:
Runner Golf(ランナー・ゴルフ)が提示してきたのは、「自分に合わせて作る」ことを前提にしたパター体験だ。
ロフト、ライ、重量配分などの調整幅が広く、フィッティングの各工程も理論と実打の両面から理解しやすい構成になっている。
単に選択肢が多いだけではなく、なぜそのセッティングになるのかが納得できる──その点が非常に印象的だった。
そして何より、完成したパターは打感が良く、ストローク中の安心感もしっかりある。パター選びに「フィッティング」という視点を本気で取り入れたいゴルファーにとって、強く記憶に残る存在だ。
Shot Scope「LM1」
Best of Showに選ばれた理由:
理由を説明する必要がない、という評価そのものが「LM1」の立ち位置を物語っている。
弾道計測に必要な要素をシンプルにまとめつつ、実用性と価格のバランスを高い次元で成立させてきた点は、すでに多くのゴルファーが理解しているところだろう。
“使える弾道計測器”として、余計な装飾や過剰な機能に振り回されない──その割り切りが、このモデルの強みでもある。
Best of Showに選ばれた理由は、説明よりも先に「納得」が来る。
それが「LM1」だ。
Sierra Madre
Best of Showに選ばれた理由:
「女性向けゴルフアパレル」が、ようやく“ゴルフのための服”として成立した──そう感じさせる存在だ。
約20年ゴルフを続けてきた中で、女性ゴルファー向けとして作られながら、どこか妥協を感じるアパレルは少なくなかった。
Sierra Madre(シエラ・マドレ)が違うのは、ブランドの立ち上げからデザインまで、すべてを女性の視点で完結させている点にある。
トップスは動きを妨げず、短すぎないバランス。
スコートのポケットは実用性を備えながら、シルエットを崩さない設計。
カラーは華やかだが幼くならず、素材もシーズンをまたいで使える。
「女性用だから」ではなく、ゴルフをする女性のために考え抜かれている。
その積み重ねが、Best of Showにふさわしい完成度につながっている。
TITE eyewear
Best of Showに選ばれた理由:
芝の色味を際立たせるレンズ設計は、コース上での視認性を高め、ライン読みや距離感の把握をサポートする。
さらに、可動式テンプルによる調整機構によって、プレー中でも安定したフィット感を保ちやすい点も評価ポイントだ。
キャップの上から着用した際にズレを抑えるトップ部のシリコンストリップなど、細部までゴルファーの使用シーンを想定した作りも印象的。
サングラスに求められる「見え方」と「装着安定性」を、実用性重視でまとめ上げた一本と言える。
Vice Golf「VG103」フォージドアイアン
Best of Showに選ばれた理由:
その意外性にある。
大胆なカラーや個性的なカスタムで知られるバイス・ゴルフが、ここまで削ぎ落とした造形のアイアンを出してきた──その事実だけでも十分に印象的だ。
「VG103」は、余計な装飾を排した極めてクリーンなヘッド形状を持ち、構えた瞬間にブレードアイアンらしい緊張感が伝わってくる。
トップブレード、トゥからヒールにかけてのライン、バックフェースの処理まで、どこを取っても雑味がない。
初めて本格的なブレードを目にしたときの記憶と重なる──そう感じさせる完成度が、このモデルにはある。
「バイス=派手」という先入観を、良い意味で裏切る一本だ。
Vice Golf「Moon Rock」ゴルフボール
Best of Showに選ばれた理由:
その“存在感”だ。
PGAショーの会場でも、このボールをひと目見ようと足を止める来場者が後を絶たなかった。
生産数はわずか1,000ダース。
「Moon Rock」は、単なるカスタムプリントや限定カラーとは明らかに一線を画す仕上がりで、これまでの“デザイン系ゴルフボール”の枠には収まらない。
実用性だけを語るモデルではない。むしろ、コレクション性や話題性を含めて成立している一本だ。
実際に手に入れられるかどうかは別として、キャディバッグや棚に置いておくだけでも強烈な印象を残す──
それが「Moon Rock」というボールの価値だろう。
Vortex Optics レーザー距離計
Best of Showに選ばれた理由:
その技術的バックグラウンドにある。
Vortexは、もともと狩猟・タクティカル分野で高い評価を受けてきた光学機器メーカー。そのノウハウをゴルフ用レーザー距離計に持ち込んできた点が、まず興味深い。
特に印象的なのが、手ブレを抑えるスタビライゼーション機能。
計測時の視界が安定しにくいゴルファーでも、距離を正確に捉えやすい設計になっている。
加えて、生涯保証という大胆なサポート体制も見逃せない。
価格帯も極端に高騰しておらず、「高機能=高額」という固定観念を崩してきた。
派手さはないが、実戦で信頼できる道具──
そう言いたくなる完成度の高さが、このモデルをBest of Showに押し上げた。




Leave a Comment