今や“ミニドライバー戦争”といっても過言ではないほど、このジャンルのモデルたちは群雄割拠の時代へと突入したが、その中で最も楽しみながら本気で取り組んでいるのがテーラーメイドかもしれない。
あの忘れ去られた「AeroBurner Mini(エアロバーナーミニ)」の時代(幸いにも短命に終わった)を経て、 テーラーメイドはミニドライバーというプラットフォームを、「ドライバーデザインのベスト盤」とも言えるシリーズとして再構築してきた。
その過程で、ギア好きの心をくすぐる“懐かしさ”のツボを的確に突いてきたのは、さすがの一言だ。

では、ここでテーラーメイドの“ミニドライバー進化の歴史”を一気に振り返ってみよう。
・「ORIGINAL ONE MINI(2019)」:テーラーメイド初のメタルウッド「ピッツバーグ・パーシモン」へのリスペクトを込めた1本。名前も形状もクラシックスタイルを踏襲しつつ、ミニドライバーを現代仕様に仕上げた最初の本格モデルとして登場した。
・「300 MINI DRIVER(2021)」:ゴルファーのタイプ別にモデルを分けるという、当時としては画期的だった「300シリーズ」から着想を得たモデル。現在のようなデータに基づいた設計ではなかったが、プレーヤープロファイルに応じたフィッティングという概念を導入したことで、ドライバー開発の方向性に新たな一石を投じた。
・「BRNR Mini Driver(2023・2024)」:懐かしさをとことんまで突き詰めた1本。銅色のアクセント、リバーシブル仕様のヘッドカバー、そして90年代後半の「BRNRシリーズ」を彷彿とさせるデザインなど、往年のファンの心をくすぐる仕上がりとなっている。
“誰も望んでいなかったけれど、登場したらみんな欲しくなった”そんな現代風に再構築された復刻モデルとして注目を集めた。
あとは、あの「バブルシャフト」があれば、言うことなしだったかもしれない。
これまでの流れを考えれば、今回の最新作「r7 QUAD MINI」が、2000年代を代表する名器のひとつに立ち返ったのは、ある意味必然と言えるだろう。

クラシックモデルの再構築
「r7 QUAD」がテーラーメイド史上もっとも象徴的なドライバーかどうかは意見が分かれるかもしれないが、ゴルフ史に名を残す一本であることは疑いようがない。
その伝統的なデザインをベースに、現代のテクノロジーを融合させたのが、今回登場した最新ミニドライバー「r7 QUAD MINI」だ。
305ccのコンパクトなヘッドに、初代「r7 QUAD」の特徴を受け継ぎながら、現在のテーラーメイドが持つ機能性が詰め込まれている。見た目はクラシックでも、性能は今どき。そんな一本に仕上がっている。
初代「r7 QUAD」は、テーラーメイドにとって大きな転機となったモデルで、同社が初めて『可変ウエイト』を採用し、新たな時代を切り開いたドライバーと言える。
そして今回登場した「r7 QUAD MINI」も、その系譜をしっかりと受け継いでいる。ヘッド後方に13g、前方に4gのウエイトをそれぞれ2個ずつ搭載。組み合わせ次第で6通りの弾道調整が可能になっている。
テーラーメイド「r7 QUAD MINI」ドライバーのウエイト設定

「r7 QUAD MINI」ドライバーのウエイト設定は、カスタマイズ性の高さが魅力。
さらに弾道を細かく調整したい人や、バランスを自分好みに仕上げたいゴルファーのために、追加ウエイトも用意されている。
最新テクノロジー搭載
現代仕様として、「r7 QUAD MINI」には、テーラーメイドの『ツイストフェース』、フェース下部の打点でも安定した結果をもたらす『スピードポケット』(特にフェアウェイから打つ際に効果的)、そして軽量化と構えたときのスッキリとした見た目を両立する『インフィニティ・カーボンクラウン』が採用されている。
要するに、これは“懐かしさだけ”を狙ったデザインではない。2004年の名場面集から飛び出してきたかのような見た目をしているが、中身はれっきとした最新テクノロジーだ。

「r7 QUAD MINI」と他モデルの比較
「r7 QUAD MINI」は、305ccというヘッド体積でテーラーメイドの“ミニドライバー路線”のど真ん中に位置するモデル。前作「BRNR MINI」が306ccなので、ほぼ同サイズ。ティーショット向きの形状ながら、フェアウェイからのショットも完全には排除していない絶妙な設計だ。
比較のため、他モデルと見比べてみよう。
・PXG「シークレットウェポン」は300ccとやや小ぶり
・タイトリスト「GT280」はさらにコンパクトで、フェアウェイ向きの設計
・キャロウェイ「ELYTE MINI」は340ccと大型で、ティー専用に特化した仕様
テーラーメイドは今回も“中間路線”を選択。ミニドライバーをドライバーの代役にするもよし、場合によっては最もロフトの立ったフェアウェイウッドの代わりに入れることも可能。このあたりはゴルファーの使い方次第だ。

見た目が、とにかくカッコいい
見た目の面では、「r7 QUAD MINI」は初代モデルの雰囲気をしっかりと継承している。ミディアムグロスのブラッククラウンに、イエローとレッドのアクセント。ひと目で「r7 QUAD」とわかるデザインだ(ちなみに、初代にはさりげないカーボン織り模様はなかった)。
個人的には、トウ側に「TP」ロゴを入れてくれたら最高だったと思うが、そうなると“ツアーレベル”もしくはそれに準じたシャフトを標準装着する必要があっただろう。

そしてヘッドカバーも忘れてはならない。もはやテーラーメイドのミニドライバーではおなじみとなった仕様だが、今回もリバーシブル仕様を採用している。
「r7 QUAD MINI」の標準シャフト

純正シャフトは“Speeder”だが…、「r7 QUAD MINI」に標準装着されているのは、「フジクラ Speeder MD(ミニドライバー)」という名の専用シャフト。
テーラーメイドによると、このシャフトはスピン量を抑えつつ安定性を高めるという目的で開発され、重量も最適化されているという。ただし、この“Speeder”という名称には注意が必要だ。
決して悪いシャフトというわけではないが、「Speeder=高性能カスタムシャフト」とイメージしているなら、その期待は少し裏切られるかもしれない。
理屈の上では魅力的でも、実際のところはそこまででもない。
テーラーメイドは今でも、“Made for(=見た目だけ純正っぽいオリジナル仕様)”シャフトを採用している数少ない大手メーカーだ。そして今回の「Speeder MD」も、名前こそ“Speeder”だが、高級モデルとはまったく別物。
フジクラの本物の「Speeder」シリーズは基本的にメイド・イン・チャイナではなく、この点だけでも察しがつくだろう。もちろん、「Speeder MD」がまったく使えないとは言わない。でも、パフォーマンス重視で選ばれたというより、コストを抑えるための選択肢だった可能性が高いということは理解しておいた方がいい。
最終的なまとめ

「r7 QUAD MINI」は、単なる“復刻モデル”ではない。かつての名クラブを現代仕様へと再構築し、テーラーメイドの伝説的デザインをまとって登場した、まさに“ネオクラシック”。
初代「r7 QUAD」が持っていた魅力を受け継ぎながら、よりコンパクトで実戦的なモデルとして再定義された1本だ。弾道のバラつきを抑えたい人、ティーショット専用の予備クラブが欲しい人、あるいはちょっとクセのある“フェアウェイの切り札”を探している人にとっても、この「r7 QUAD MINI」は有力な選択肢。すでに“他メーカーが超えるべき基準”になりつつある。
スペック・価格・発売情報

いよいよ日本国内でも正式発売が決定。
テーラーメイド「r7 QUAD MINI」は、2025年6月6日より販売開始となる。かつての名器が、“今のゴルファー”のために再構築されて戻ってきた。
スペックは以下の通り:
ロフト角(°): 11.5 / 13.5
シャフト: Diamana SILVER TM55(Sフレックス)
グリップ: TM 2025 TV360 BK/BK(口径60、47.5g)
税込価格: 88,000円(税込)
ドライバーより扱いやすく、フェアウェイウッドより頼れる。そんな“第三の選択肢”として、新たなスタンダードを築く可能性を秘めた1本が、いよいよ日本のゴルファーの手に届く。
懐かしさに惹かれる人も、新しい武器を求める人も。「r7 QUAD MINI」は、次なる一歩を踏み出すためのクラブになってくれるはずだ。
詳しくは テーラーメイドホームページ をチェック。
※下記はアメリカのスペック
テーラーメイド「r7 QUAD MINI」ドライバーは、11.5度(右利き/左利き用)と13.5度(右利き用のみ)のロフト設定で展開されている。標準シャフトは「Fujikura Speeder MD(ミニドライバー専用)」、グリップは「Golf Pride Z-Grip」が装着されている。
標準シャフト長は43.75インチ。
販売価格は479.99ドルで、現在プレオーダー受付中。一般販売は5月1日から開始される予定だ。
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