7番アイアンで150ヤード、8番アイアンで140ヤード飛ぶなら、145ヤードのピンはどう攻める?

8番を強めに振ればショートのリスク、7番を抑えて打てばオーバーの不安…。

ゴルフの攻め方はひとつじゃない。けれど、アイアンの飛距離を自在にコントロールできるのは上級者の証。

もし本当に自分が“コントロールする側”になりたいなら、スイングを一から作り直す必要はない。ちょっとした工夫で飛距離を抑えるテクニックはいくつもある。ここでは、その実戦的な方法を紹介しよう。


ゴルフ練習場の芝生と距離表示板。50ヤード、150ヤード、200ヤードのマークが並ぶ広々とした練習風景。

👉ステップ1:基準となる「キャリーの飛距離」を把握する

ショットの飛距離をコントロールする練習を始める前に、まずは自分の「キャリーの飛距離」をしっかり把握しておこう。

この基準があることで、実際に行った工夫や調整が本当に距離を抑える効果につながっているのかを確かめることができる。


自分の「基準値」を出す方法:

基準を出す手順はシンプルだ。

・まず、各クラブでナイスショットを5球打ち、明らかなミスショットは除外してキャリーの平均を出す。

・その数値を必ずメモしておこう。キャリーは安定するが、ランは芝の状態や風で変わるからだ。

・これで自分の「本当のキャリーの飛距離」がわかり、すべての基準がここから始まる。


👉ステップ2:スイングを変えずにできる「4つの距離コントロール術」


① シャフト寄りに短く握る(キャリーを5〜8ヤード抑える簡単な方法)

クラブを短く握ると、実際の長さが変わるため、自然と回転量や初速が抑えられる。

このときは構えも少しボールに近づけるのがポイントだ。

特にウェッジやショートアイアンでは、キャリーが5〜8ヤード短くなるケースが多い。

ただし、ロングアイアンになるとショットの精度の影響が大きく、効果を感じにくいこともある。


ゴルフクラブを握る手元のクローズアップ。正しいグリップの形がわかる練習用イメージ。

② ロフト角をつける(フェースを開く)

アドレスでフェースを少し開いてから握ると、ロフト角が増えるため、ボールにはより大きなスピンがかかりやすくなる。

その結果、インパクト時の「ボール初速」は抑えられ、打ち出しは高くなり、「落下角度」もやわらかくなる。スイング自体は普段通りでOKだ。

ウェッジならキャリーが10〜25ヤードほど短くなり、ミドルアイアンでも一定の効果がある。

ポイントは、ほんのわずかなフェースの開きでも距離は大きく変わるということ。練習場で微調整しながら、自分に合ったコントロール幅をつかもう。


③ フェースを開いて、ターゲットよりわずかに左へ振る

フェースを開いたまま、ターゲットより少し左方向にスイングすると、効率的なインパクトではなく“かすめるような当たり”になる。

その結果、ボール初速は抑えられ、スピン量が増える。ただし、ヘッドスピードを落とす必要はない。

難しいのは、この感覚を毎回安定して再現すること。

とはいえ「フェースを開いて左に振る」という意識を持つだけでも、飛距離を抑えるのに役立つ場合がある。

特に、グリーン上でボールをしっかり止めたいときには効果的な方法だ。


赤いシャツを着たゴルファーがクラブを前に構え、フェースの向きを確認する練習シーン。背景は芝生と木々。

④ 正しいスリークォータースイング

「スイングを短くしても結局同じ距離が出てしまう」──そんな経験を持つ人は多い。

これは、打ち急いで初速が上がったり、フェースが立ったり、インパクトがクリーンになったりすることで起こる。

実際、多くのゴルファーにとってスイングの3/4以降は無駄が多く、むしろ“小さいスイング”の方が効率的になっているのだ。

おすすめは、リードアーム(左腕:右打ち想定で)が地面と平行になる位置を目安にして、そこからスムーズに振ること。

テンポを崩さなければ、キャリーは6〜10ヤードほど抑えられるはずだ。

もしまだフルショット並みに飛ぶなら、短く握る・フェースを少し開くなど、他の工夫と組み合わせれば確実に距離を落とせる。


👉実戦につながる練習場ドリル

距離コントロールを身につける本当のポイントは、練習方法を工夫し、それをコースで再現できるようにすることだ。

そのために大事なのは「ブロック練習」をやめること。ひとつの距離に50球打ち込むのではなく、実際のラウンドのように状況を変えながら練習してみよう。

私が長年続けているドリルを紹介しよう。まずレンジファインダーで正確な距離を測る。

そして、狙ったターゲットの数ヤード以内にボールを運べたら1ポイント獲得──こんなルールを加えると、ゲーム感覚で練習できるし、自分の上達度合いも把握しやすい。


準備手順

・ウェッジかショートアイアンを1本選ぶ。

・80ヤード、100ヤード、120ヤードといった具合に、3〜4つの距離をターゲットに設定する。

・練習場にある距離表示や、弾道測定器があれば活用するとより正確になる。


ラウンド1 ― 基準チェック

・それぞれのターゲットに向かって、普段通りのショットを1球ずつ打つ。

・キャリーの飛距離を計測し、あとで見返せるようにメモしておく。


ラウンド2 ― 短く握って打つ

・先ほどと同じショットを打つが、今度はシャフトの金属部分に近い位置まで短く握ってスイングする。

・平均してどれくらい距離が落ちるかを確認する(目安は5〜8ヤード)。


ラウンド3 ― フェースを少し開いて打つ

・フェースを少し開いて、同じ 距離別の段階的練習を繰り返す。

・キャリーがどれくらい落ちるか、スピン量や高さの変化をチェックする。


ラウンド4 ― スリークォータースイングで打つ

・同じターゲットを使い、トップをコンパクトに(リードアームが地面と平行になる位置まで)。

・通常のスイングと比べて、どれくらい飛距離が変化するかを記録する。


大事なのは、一度に変えるのは必ずひとつだけにすること。

短く握る、フェースを開く、バックスイングをコンパクトにする──どれでも構わないが、同時に混ぜるのはNGだ。

「成功率」「再現性」「打ちやすさ」、この3つのバランスが一番良い調整方法を探そう。

自分にとって最も信頼できる方法を見つければ、コースでも中間距離を自在に打ち分けられるようになる。


👉ミスの直し方

いろいろ試してもなかなか飛距離が落ちない?

そんなときに役立つチェックポイントをいくつか紹介しよう。

・スリークォータースイングでも結局フルショット並みに飛んでしまう:

 → インパクトで打ち急いだり、フェースを立てすぎているのが原因かもしれない。テンポをゆったり保つか、短く握る工夫を合わせてみよう。

・フェースを開いたらボールが曲がりすぎる:

 → 少し左に振るか、フェースの開きを控えめにすればOK。

・ショートしすぎて届かない:

 → ロフト角を増やしたまま薄い当たりになるとキャリーは大きく落ちる。芯でとらえる意識と、毎回同じセットアップを心がけよう。

・ダフリが出る:

 → あらかじめ体重を6:4で前足寄りにかけ、ボール先のターフを払うイメージで振ると安定する

・距離の変化がバラつく:

 → 複数の工夫を混ぜないこと。一度に一つの調整だけを集中して練習しよう。

・コースで自信がなくなる:

 → 練習場では毎回違うターゲットを狙う「ランダム練習」を取り入れれば、プレッシャー下でも信頼できるショットが打てるようになる。



まとめ ― 距離コントロール上達へのヒント

飛距離コントロールは、すぐに身につくスキルではない。

集中した練習と、いろいろ試してみる柔軟さが欠かせない。

実際、ラウンドから遠ざかると真っ先に衰えを感じるのも、この感覚だ。

距離感を磨くには、感覚と調整のバランスを身につけることが大切。

それぞれの工夫がキャリーにどう影響するかを理解すれば、「中途半端な距離」でも自信を持って対応できるようになる。

時間をかけるだけの価値があるトレーニングだ。