ドライバーの思想は、セカンドショットへどう引き継がれたのか──
「JPX ONE」フェアウェイウッドとユーティリティに、ドライバーで語られた“ナノアロイの物語”がそのまま続く──そう期待していたなら、少し拍子抜けするかもしれない。
結論から言えば、フェアウェイウッドとユーティリティに「ナノアロイ」は採用されていない。
理由はきわめて現実的だ。
「ナノアロイ」や「カーボン」といった「チタン」以外のフェース素材は、その効果を明確に引き出すために、ある程度のフェース面積を必要とする。
フェース面積が小さくなるフェアウェイウッドやユーティリティでは、得られるリターンに対して、コストや設計上の制約が見合わない──ミズノはそう判断した。
その結果、「JPX ONE」フェアウェイウッド&ユーティリティの構成は、ドライバーよりもシンプルで分かりやすいものになっている。
派手な仕掛けで目を引くのではない。実戦で使われる状況を見据え、必要な部分を磨き上げる。
このシリーズが選んだのは、そうした“現実的な設計の方向性”だ。
「ドライバーありき」という現実
フェアウェイウッドが、あたかも“ドライバーのおまけ”のように扱われる──正直、気持ちのいい話ではない。
だが現実として、多くのブランドはドライバーを起点にメタルウッド全体を展開している。
店頭ではまずドライバーが主役となり、その評価や販売動向が、フェアウェイウッドやユーティリティの流れを左右する。その構図はいまも大きくは変わっていない。
だからこそ今回の「JPX ONE」フェアウェイウッド&ユーティリティは、目新しさや話題性を追うのではなく、実戦で差が出る“細部の作り込み”に力を注いでいる。
その細部を一つひとつ見ていくと、設計の合理性だけでなく、価格設定の意図も見えてくる。
「JPX ONE」フェアウェイウッドとユーティリティの構造
設計の方向性自体は、これまでの流れを踏襲している。
その中で、ミズノのフェアウェイウッドを語るうえで欠かせない主要テクノロジーが、『CORTECH CHAMBER(コアテックチャンバー)』だ。
この“スルースロット構造(フェース下部に設けられた空間構造)”は、「高比重ステンレススチールウエイト」と「高弾性TPUエラストマー」を組み合わせ、フェースにかかるストレスを分散。インパクト時に必要なたわみを引き出すことで、オフセンターヒット時でも初速と「寛容性」を維持しやすくしている。
今回の「JPX ONE」では、この『コアテックチャンバー』がアップデートされた。内部の金属パーツとボディの間隔が見直され、とくにヒール側とトゥ側で拡張されている。
センターヒット時の「ボール初速」が劇的に伸びるわけではない。
だが、センターの性能を犠牲にすることなく、オフセンターヒット時の「ボール初速」と「寛容性」を底上げする──ミズノが重視したのは、“飛ぶかどうか”ではなく、“結果が揃うかどうか”という設計思想である。
この“結果の安定性”こそが、「JPX ONE」フェアウェイウッド&ユーティリティにおける改良の主目的と言える。
軽量クラウンと重量配分
クラウンには、重量わずか9gの超軽量コンポジット素材を採用している。
重心より上に位置する不要な重量を削減し、その分をヘッド内部のより効果的な位置へ再配分する設計だ。
視覚的に分かりやすいのは、ヘッド後方に装着された標準8gウエイトだろう。
ただし実際には、軽量化によって生まれた余剰重量の多くが、『CORTECH CHAMBER(コアテックチャンバー)』の構造を成立させるために使われている。
結果として、オフセンターヒット時でもフェースが適切にたわみ、初速と「寛容性」を保ちやすい重量配分が実現している。
フェース構成の違い
ボディ素材には「SUS630ステンレススチール」を採用。
フェースインサートには、ミズノ伝統の「MAS1C鍛造フェース」が組み合わされている。
ここで、フェアウェイウッドとユーティリティには明確な設計の違いが設けられている。
・フェアウェイウッド:バリアブル・フェース厚(可変厚フェース)
・ユーティリティ:フェース厚8mmの均一設計
用途や想定される打点位置の違いを踏まえた、合理的な切り分けと言える。
さらにフェアウェイウッドでは、リーディングエッジをわずかに丸めている。
見た目に大きな変化はない。
だがラフや傾斜地といった多様なライでも、ヘッドが芝に潜り込みすぎるのを抑え、インパクトの入射角を安定させやすくするための設計だ。
「JPX ONE」のロフト展開と調整機能
ミズノは、メタルウッド市場ではいまだ“挑戦者”の立場にある。
だからこそ「JPX ONE」という名称が示す通り、各カテゴリーにつき1モデルのみという、割り切った展開を選んだ。
低スピン特化モデルやドローバイアス設計など、対象を絞り込んだ派生モデルは用意されていない。
その代わりに注力したのは、“標準モデル”としての完成度を徹底的に高めることだ。
調整機能によってロフトやライ角をカバーしつつ、基本設計はあくまで万人にとって扱いやすい方向へまとめる。
ラインナップを増やして選択肢を広げるのではなく、1モデルの完成度で勝負する──それが「JPX ONE」の戦略である。
「JPX ONE」フェアウェイウッドは、3番(15度)、5番(18度)、7番(21度)、9番(24度)の4ロフト展開。
ミズノには現時点でミニドライバーは存在しないが、より低く直進性のある弾道を求めるゴルファー向けに、ロフト15度の3Tも用意されている。
一方、「JPX ONE」ユーティリティは、3番(19度)、4番(22度)、5番(25度)、6番(28度)の4モデル展開。
フェアウェイウッド、ユーティリティともに、複数のライ角設定と±2度のロフト調整が可能な「Quick Switch Adapter」を搭載している。
最後に
ミズノは、メタルウッド市場で存在感を高めようとしている。
そのための最も現実的なアプローチは、まずゴルファーにドライバーを試してもらう理由を提示することだ。
その点で、ナノアロイという技術ストーリーは十分な説得力を持つ。
奇をてらった発想ではない。だが設計思想は一貫しており、「なぜそうしたのか」を論理で説明できる強度がある。
市場シェアを前向きに動かす“きっかけ”としては、決して悪くない材料だ。
もっとも、どこまで数字を伸ばせるかとなれば話は簡単ではない。
販売の大半をキャロウェイとテーラーメイドが占め、さらにPING、タイトリスト、コブラが続く──この構図は容易には崩れない。
だからこそ、もしミズノがこのカテゴリーで目に見えるシェアを獲得するとすれば、それはパフォーマンスへの評価であり、加えて、多くの競合より50〜100ドル抑えた価格設定も追い風になる可能性はある。
では、その流れは「JPX ONE」のフェアウェイウッドやユーティリティとどう関係するのか。
直接的な影響は限定的かもしれない。
ただし、ナノアロイが「JPX ONE」ドライバーへの関心を高め、その延長線上で“同じ思想で統一されたセッティング”を求める層が現れる可能性はある。
派手な主役ではない。
だが、ドライバーをきっかけに流れが生まれたとき、このフェアウェイウッドとユーティリティは、単なる脇役ではなく、シリーズ全体の完成度を支える存在として、確かな役割を担う。
価格と発売時期
・「JPX ONE」フェアウェイウッド:349.99ドル
・「JPX ONE」ユーティリティ:279ドル
先行販売は1月12日から。店頭発売は1月22日を予定している。
※本記事内の価格およびスペック情報は米国市場向けの内容となる。日本国内での展開や詳細については、ミズノ公式ホームページで確認してほしい。




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