本間ゴルフ「TW」シリーズは、派手さはないが、データを見るたびに評価を上げてくる“静かな実力派”だ。

今年(2025年)の『上級者向け飛び系アイアンテスト』で「TW PX」が総合2位に入ったこと、そして「TW 767」ドライバーが「寛容性」で総合4位に食い込んだ事実は、その完成度を端的に物語っている。


本間ゴルフ「TW777」シリーズのドライバーとアイアンをキャディバッグに収納したイメージ写真

実際、テストデータだけを見れば、本間が非常にレベルの高いクラブを作っているメーカーであることは明らかだ。

打感、ボール初速、ミスヒット時の安定感──どれを取っても、競合ブランドと比べて見劣りする要素は少ない。

それでも、この結果が北米市場での存在感につながっていないのが、本間ゴルフの現実でもある。

性能面では十分に戦える。むしろ、数値だけならトップブランドに肩を並べるモデルも多い。

しかし、選択肢として“最初に名前が挙がる存在”には、まだなりきれていない。

言い換えれば、本間ゴルフは実力はあるのに、他のメーカーからは脅威として認識されていない。このギャップが、現在の本間ゴルフを象徴していると言えるだろう。

だからといって、「TW 777」シリーズを素通りするのは早計だ。

今回の本間ゴルフは、ラインアップの厚みと狙いの明確さという点で、これまで以上に攻めてきている。

ドライバーは3モデル展開。フェアウェイウッドは2モデル。さらに、ユーティリティウッド(いわゆるハイブリッド)の新シリーズに、アイアンは1セット。

単なるモデル追加ではなく、セッティング全体をどう組ませたいのかが見える構成だ。

唯一、人によって印象が変わる点がある。

そう、“モグラ”だ。


本間ゴルフ「TW777」ドライバーのソール構造と調整機構を確認できるクローズアップ画像

本間ゴルフ「TW 777」─ モグラの正体

モグラは、なかなか興味深い生き物だ。

地中で生活することで知られているが、実はたった1匹のモグラが1時間で最大約4.5mものトンネルを掘ることができるのを知っているだろうか。

さらに不思議なことに、モグラは左右の鼻の穴で別々に匂いを感知することができる。地中でも獲物を正確に捉え、外敵を察知できるのだ。

なぜ、こんな話をしているのか?

それは、新しい本間ゴルフ「TW 777」シリーズには 脅威的な進化を遂げた“モグラ”が描かれているからだ。


本間ゴルフの象徴的なモグラロゴを配したTW777チタンカーボンドライバーヘッド

その“モグラ”は、新しい「TW 777」メタルウッドではソールに堂々と刻まれ、「TW 777 PCG-Max」アイアンでは、トゥ側に鮮やかなブルーのロゴとして存在感を放っている。

このモチーフには、ゴールに向かって、ひたすら一直線に掘り進む存在であることや、結果を出すために、見えない場所で努力を積み重ねる──本間ゴルフは、こんな象徴性をを「TW」シリーズへの想いに重ねている。

さて、ここまで“モグラの真実”を理解したところで、本間の新しい「TW 777」シリーズを冷静に見ていこう。


本間ゴルフ TW777 PCB-MAX アイアンのバックフェースに配置されたモグラロゴと鍛造構造

本間ゴルフ「TW 777」ドライバー「777」/「777 Max」/「360 Ti」

本間ゴルフ「TW 777」ドライバーの大きな特徴は、『チタンカーボン』だ。

これは、カーボンファイバーとチタン合金を組み合わせた複合材料で、軽さと強さを両立できる。

本間ゴルフは、「TW 777」および「TW 777 Max」ドライバーの3つの素材で構成されたボディの一部に、この『チタンカーボン』を採用している。

『チタンカーボン』製ソールとカーボンリング、そして後方のカーボンボディを組み合わせることで、インパクト時のヘッドの曲げ剛性を高め、「ボール初速の向上」と「安定性」の強化につなげているという。

曲げ剛性とは、力が加わったとき──つまりインパクト時の衝撃を受けた際に、どれだけ「たわみにくいか」を示す特性のことだ。

この構造が、本間独自の『鍛造SJ221チタンフェース』と組み合わさることで、フェースの反発力を効率よく使い、「ボール初速」を引き出す“レバー”として機能する。


本間ゴルフ TW777 ドライバー。チタンカーボン構造を採用したヘッドデザイン

本間ゴルフ「TW 777」ドライバー


まず、本間ゴルフ「TW 777」ドライバーは、ヘッド体積460ccを採用。

ソール前方に3.5g、後方に20.5gのウエイトを配置することで、スピン量や弾道の高さを細かく調整できる設計になっている。

前後のウエイト配分を見ると分かるとおり、このモデルは極端な低スピン狙いでも、単なる高弾道志向でもない。

弾道を自分のヘッドスピードや打ち出し条件に合わせて整えたいゴルファーに向けた、スピン量と弾道の高さを細かく調整できる設計だ。

一方、「TW 777 Max」は、より「寛容性」を重視したモデルだ。ただし、いわゆる“10K MOI競争”に本格的に参戦しているようには見えない。

ヒールとトゥには入れ替え可能なソールウエイトが配置されているが、どちらのウエイトも、外周かつ後方に限界まで寄せた位置に配置されており、左右のミスへの強さと、打点ブレ時の安定感を優先している。

さらに、後方には本間ロゴ入りの固定式リアウエイトを搭載。

重心位置をできるだけ深く、後ろに下げることで、打ち出しの安定とミスヒット時のロス軽減を狙っている。

「TW 777 360 Ti」は、本間ゴルフがミニドライバー市場に投入するモデルだ。

ヘッド体積は360ccで、ミニドライバーの中では最大級。そのサイズゆえ、フェアウェイから使いこなせるのは、かなり度胸のあるゴルファーに限られるだろう。

このモデルは、オールチタン構造を採用。カーボンを使わず、打感の一体感と初速の出方を重視した設計が特徴だ。

注目すべきは、3つの調整式ソールウエイト。

中でも、トゥ側の外周に配置されたウエイトは明確な意図を持っている。

左への強いミス、いわゆる“引っかけ”や“チーピン気味のフック”を抑え、フェースの返りすぎをコントロールするための配置だ。

つまり「TW 777 360 Ti」は、単なる“短いドライバー代わり”ではない。ティーショットで方向性を重視しつつ、フック傾向をケアしながら強く叩きたいゴルファーに向けた、かなり尖ったミニドライバーと言える。

フェアウェイからも使えるかどうか──それは、このクラブを選ぶゴルファー自身の腕前次第。

だが、ティーアップして使う限り、その存在感は間違いなく“ドライバー級”だ。


本間ゴルフ「TW777」ミニドライバーのコンパクトなヘッド形状とソール構造を示す画像

本間ゴルフ「TW 777 360 Ti mini」ドライバー


本間ゴルフ「TW 777」フェアウェイウッド&ユーティリティウッド

本間ゴルフは、新しい「TW 777」フェアウェイウッド2モデルを、伝説的なパーシモン製「LB-GET」フェアウェイウッドの系譜を受け継ぐモデルだと位置づけている。

最近のゴルファーにとって、「LB-GET」という名前は正直なところ馴染みが薄いかもしれない。

1980年代、ホンマは大型のパーシモンヘッドにLB(ローバランス)技術と、重量を低く配置し芝との接触を滑らかにするGET(重力エネルギー転送)ソールを採用したことで名を馳せたようだ。

当時としては珍しい、大きめのヘッドサイズも重要なポイントだ。

ヘッドを大きくすることで、重心を低く、そして後方に配置しやすくなり、結果として打点のズレに強いクラブが生まれた。

今回の「TW 777」と、より大型で「寛容性」を高めた兄弟モデル「TW 777 Max」は、いずれもその伝統を受け継いでいる。

両モデルに共通するのが、『カーボンクラウン×複合ウエイト×カップフェース』という構成。

カーボンクラウンで余剰重量を生み出し、タングステンとアルミニウムのウエイトで重心を最適化。

フェースには『C300チタンカップフェース』を採用し、それを「SUS630ステンレススチール」ボディがしっかりと支える。

注目すべきは、ソールの『交換式ウエイト』設計だ。

2つのウエイトのうち、16gの重いウエイトを前方に配置することで、インパクト時のスピン量を抑え、「ボール初速」を引き出しやすくしている。

このセッティングは、ただ球を上げやすくするためのものではない。初速を落とさず、前に強く伸びる弾道を狙うための、明確な意図を持った配置だ。

「TW 777」は「操作性」と「初速」を重視したいゴルファー向け。

「TW 777 Max」はヘッドサイズと重心設計によって、より高い「寛容性」を求めるゴルファー向け。

いずれも共通しているのは、フェアウェイから「しっかり当てて、前に強く伸びる弾道」という、本間が長年大切にしてきたフェアウェイウッド像を、今の形で体現している点だ。


本間ゴルフ「TW777」フェアウェイウッドのヘッド形状とソールデザインを写した製品画像

本間ゴルフ「TW 777」 & 「777 Max」フェアウェイウッド


「TW 777 Max」フェアウェイウッドは、見た目どおり明確に“やさしさ重視”の設計だ。

ヘッドサイズを大きくしつつ、後方スカート部分に固定ウエイトを配置することで、重心を低く、そして深く設定している。

一方、「TW 777」ユーティリティウッド──いわゆるハイブリッド──にも、『GETソール』と『C300チタンカップフェース』が採用されている。 さらに、ハイブリッドとしてはやや意外なことに、カーボンクラウンも搭載。

本間によれば、重心は(ハイブリッドとしては)深く低い位置に設定されており、ボールを上げやすくして「キャリーの飛距離」を伸ばしたい、中〜高ハンディキャップのゴルファーを想定した設計だという。


本間ゴルフ「TW777」ユーティリティウッドのヘッドデザインと構えた際のシルエット

「TW 777」フェアウェイウッドは、『調整式ホーゼル』を採用。

一方で、「TW 777 Max」フェアウェイウッドと「TW 777」ユーティリティウッドは、『ボンデッドホーゼル(固定式)』を採用している。


本間ゴルフ「TW 777 PCB Max」アイアン|情報量が物語る設計思想

はっきり言って、「TW 777 PCB Max」アイアンは情報過多だ。構造、素材、名称、コンセプト──一つひとつを拾っていくだけでも、なかなかのボリュームになる。

冗談抜きで、この10年で登場したアイアンの中でも、最も“用語が多い”部類に入るかもしれない。

ここから先は、言葉の多さに惑わされず、中身だけを一つずつ分解して見ていく必要がある。


本間ゴルフ「TW777 PCB-MAX」アイアンのヘッド形状と鍛造デザインを並べた製品画像

「TW 777 PCB Max」はやさしさ重視のアイアンだ。

位置づけとしては、「初・中級者向け」アイアンに軸足を置きながら、ミスへの不安が大きい「初心者」の領域にかなり近いところまで踏み込んでいる。

本間ゴルフは、「TW 777 PCB Max」に2種類の異なるスチールを使った『可変肉厚カップフェース(フェースの部位ごとに厚みを変えたカップ構造)』を採用している。

まず、5番から8番アイアンのフェースには、高強度の「AM355Pステンレススチール」を使用。この素材は、一般的によく使われる「17-4ステンレススチール」よりも高く、フェースを薄く設計しやすい。

その結果、ミドルアイアン〜ロングアイアン寄りの番手で「ボール初速」をしっかり引き出すことが狙える。

一方で、9番アイアン〜サンドウェッジのスコアリングアイアンでは方向性を切り替えている。

採用されているのは、本間独自の「ES235」。鍛造を前提とした低〜中炭素鋼で、打感の安定性と距離コントロールを重視した素材だ。

この使い分けが示しているのは、長い番手では「初速」と「やさしさ」、短い番手では「距離感」と「コントロール」という、実戦的な役割分担。

「TW 777 PCB Max」は、ただ飛ばすためのアイアンではない。

番手ごとに“何を助けるべきか”をはっきりさせ、そのために素材レベルから作り分けている。


本間ゴルフ TW777 PCB-MAX アイアンのアドレス時フェース形状とトップライン

さらに「TW 777 PCB Max」は、やさしさ重視の設計でありながら、構えたときの見た目にも手を抜いていない。トップラインの厚みが気になるゴルファーのために、本間ゴルフは『Honma CUT』という処理を採用している。

これはフェース上部に精密な切削で傾斜をつける加工で、トップラインを実際よりも薄く見せるためのものだ。

また、「TW 777 PCB Max」は、いわゆるピッチングウェッジという区分にこだわっていない。

アイアンセットは5番から11番までをラインアップし、その後にアプローチウェッジとサンドウェッジへとつながる構成になっている。


番手 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 AW SW
素材・製法 ボディ:「S25C」
フェース:「AM355P」(#5〜#8)/「ES235」(#9〜#SW)
ロフト(°) 22.0 25.0 28.0 32.0 36.0 41.0 46.0 51.0 56.0
ライ角(°) 61.5 62.0 62.5 63.0 63.5 63.5 63.5 63.5 64.5
オフセット(mm) 3.5 3.5 3.0 3.0 2.5 2.5 2.0 2.0 2.0

本間ゴルフ「TW 777」シリーズ|スペック・価格・発売情報

本間ゴルフは、伝統的に“自社完結型”のクラブ作りを続けてきたメーカーだ。

「TW 777」シリーズも例外ではなく、基本はグリップからシャフト先端まで自社設計。ただし、すべてではない、というニュアンスも残している。

注意点として、このシリーズは右利き専用。

左利きモデルは用意されていない。

シャフト構成を見ると、本間の狙いがはっきりする。

「TW 777」ドライバー、「777 360 Ti」ミニドライバー、そして通常モデルの「777」フェアウェイウッドには、「Vizard Blue(ヴィザード ブルー)」シャフトを標準装着。

一方で、「TW777 Max」ドライバー、「777 Max」フェアウェイウッド、「777」ユーティリティウッドには、より軽量な「Vizard for TW 777」を組み合わせている。

フレックス(シャフトの硬さ)は、「Vizard Blue」には重量帯の異なる「5S」と「6S」、のみ、「Vizard for TW777」には「R」「SR」「S」が良いされている。

これは、中ヘッドスピード帯を中心に据えた明確なターゲット設定だ。

ロフト構成も分かりやすい。

「TW 777」「TW 777 Max」ドライバーは9度と10.5度を基本とし、「777 Max」には12度を追加。

「TW 777 360 Ti」ミニドライバーは11.5度のみの設定だ。

3モデルすべてに『調整式ホーゼル』を搭載している点は評価できるが、操作性はやや独特。

慣れは必要だが、ロフトやライの微調整ができる実用性は確かにある。

価格設定は、本間らしくプレミアム帯。

ドライバーは98,000円(税抜)、ミニドライバーは78,000円(税抜)となっている。


本間ゴルフ TW777 シリーズのドライバーとフェアウェイウッドのヘッドデザイン比較

番手構成を見ると、「TW 777」と「TW 777 Max」の狙いの違いがはっきりする。

「TW 777」フェアウェイウッドは、3W(15度)、4W(16.5度)、5W(18度)、7W(21度)という細かく刻まれた構成。

特に4W(16.5度)を用意している点からも、距離の階段をきれいにつなぎたいゴルファーを意識していることが分かる。

一方、「TW 777 Max」フェアウェイウッドは、3W・5W・7Wの3本構成。

番手を絞ることで選択をシンプルにし、やさしさと分かりやすさを優先したラインアップだ。

ユーティリティウッドは3Uから6Uまでをカバーし、ロフトは19度〜28度を3度刻みで設定。

フェアウェイウッドとアイアンの間を無理なく埋められる構成で、ロングアイアンが苦手なゴルファーでも距離のつながりを作りやすい。

価格は、フェアウェイウッドが58,000円(税抜)、ユーティリティウッドが48,000円(税抜)。

本間らしいプレミアム感はありつつも、構成と役割を考えれば納得感のある設定と言えるだろう。

「TW 777 PCB Max」アイアンのシャフト構成は、明確に役割分担されている。

「Rフレックス」には、軽量な「Vizard for TW 777」カーボンシャフトを採用。振りやすさと打ち出しのしやすさを重視し、ボールを高く運びたいゴルファーをしっかりサポートする。

一方、「Sフレックス」では、日本シャフト「N.S. PRO 950GH Neo」スチールシャフトに切り替わる。これは、ロフトが立ったアイアンでもスピン量を確保するために設計されたシャフトだ。

標準の5本セット(6番〜10番アイアン)の価格は、カーボンが140,000円(税抜)、スチールが125,000円(税抜)。

5番・11番アイアン、アプローチウェッジ、サンドウェッジは単品購入が可能で、価格はカーボンが1本28,000円(税抜)、スチールが25,000円(税抜)となっている。

もちろんその料金にはモグラも含まれている。

現在、プレセールが開始されている。

詳細は本間ゴルフの公式サイトを参照してほしい。