スコッティ・キャメロン「Phantom(ファントム)」マレットパターは、2年ごとの定期的なアップデートを迎えた。
大きく印象が変わるような刷新ではない。だが、その中身は確実に進化している。
『Studio Carbon Steel(SCS/スタジオ・カーボン・スチール)フェースインサート』の採用は、誰もがすぐに気づく変化だろう。
一方で、ヘッド形状や細部の設計には、数多くの改良が盛り込まれている。
ただし、それらは決して「地味な変更」ではない。
むしろ、実際のパッティングにおいてこそ効いてくる、実用性を重視した調整だ。
新しいフェースを備えた「Phantom」パターは、確かに分かりやすい進化点だ。
しかし、今回のアップデートの本質は、そこだけに留まらない。
『Studio Carbon Steel(SCS)』フェースインサートの採用
今回の「Phantom(ファントム)」パター刷新において、最も視覚的に分かりやすい進化が
『Studio Carbon Steel(SCS/スタジオ・カーボン・スチール)フェースインサート』の採用だ。
これまでの「Phantom」シリーズは、2025年後半に登場した「オンセットセンター(OC/ゼロトルク)」モデルの『チェーンリンクフェース』を除き、基本的に『ディープミルドフェース』設計が採用されてきた。
『ディープミーリング』は確かに柔らかさを演出するが、『SCSフェース』がもたらす打感とは作り方の方向性が異なる。
SCSフェースの柔らかな打感は、カーボンスチール素材そのものと、チェーンリンク・ミーリングパターンの組み合わせによって生まれている。
2026年「Studio Style」モデルを解説した際にも触れたが、「柔らかさ」の印象は、インパクト時の打感と音の両方によって決まる。
さらにSCSフェースに施された『チェーンリンクパターン(鎖状に連なるフェースのミーリング加工)』は、ボールのディンプルとかみ合いやすく、初速のばらつきを抑える。その結果、ストロークに対してボールの転がりが揃いやすく、距離感を合わせやすくなっている。
単なるフェース交換では終わらない
新しい「Phantom」に『SCSフェースインサート』を採用すること自体は、チーム・キャメロンにとって迷う余地のない判断だった。
だが、それを実現するのは、簡単なことではなかった。
インサートを組み込む以上、フェースの一部を削り、面一(フェースとインサートの表面を段差なく揃える)に収める必要がある。
これはインサートパターに共通する工程であり、作業の出発点に過ぎない。
問題は、その「削り」がパターに与える影響だった。
フェース素材を取り除くことで、打感だけでなく、打音、さらにはヘッド全体の剛性バランスまで変わってしまう。
キャメロンらしい打音と打感を取り戻すため、フェース以外の部分でも追加の素材除去が行われ、
振動を抑えるダンピングパッド(振動吸収材)の追加、
さらには内部トラス構造(内部補強フレーム)の採用にまで手が入れられている。
これらの改良はすべて内部構造の話なので、外から見て分かるものではない。
「SCSフェースを入れた」という一文の裏側には、
単なるフェース交換では済まされない、打音・打感・剛性を再構築する工程が存在している。
ヘッド形状に加えられた、見えにくいが重要な調整
左:2025年モデル「Phantom 7.2(ファントム 7.2)」/右:2026年モデル「Phantom 7.2(ファントム 7.2)」
2026年「Phantom(ファントム)」パターでは、形状にも重要なアップデートが加えられている。
ただし、それは一目で分かるような変更ではない。
2024年モデルと細部を見比べて初めて気づく、実用性を重視した調整だ。
まず目に留まるのが、フェース高さだ。
フェースは従来よりも高く設計されており、これはツアープレーヤーのフィードバックを反映したもの。
フェースが高くなることで、インパクト時に適正なダイナミックロフト(実際にボールに当たるロフト)を作りやすくなり、意図せずアッパーに当たるミスを防ぎやすくなる
フェースの曲率にも調整が加えられた。
従来の「Phantom」はトップエッジがフラットだったが、新モデルではわずかなカーブが設けられている。
フェース中央が最も高く、ヒールとトゥに向かって緩やかに低くなる形状だ。
この中央に向かう曲線は、視線をターゲットラインと適切なインパクト位置へ自然に導く効果がある。
さらに、ソール形状も見直された。
特にジャスティン・トーマスをはじめとするツアープレーヤーからの要望を受け、アドレス時にパターがボールの後ろでフラットに座るよう、より平坦なソール形状が採用されている。
こうした形状変更はいずれも微調整に見えるが、結果として「Phantom」パターは、より完成度の高い実戦的なモデルへと進化した。
モデル数は絞り、ネック形状の選択肢を広げた
今回は「Phantom 11」パターを使っていたプレーヤーにとっては残念なお知らせだ。
このモデルは2026年ラインアップには含まれていない。
2026年の「Phantom」パターシリーズは、「5」「7」「9」の3モデルのみで構成される。
ただし、ネック形状(ホーゼル)の選択肢まで含めて考えると、実際に用意されているパターの本数は、前回のリリースと同じになる。
つまり、ヘッド形状は厳選し、その代わりにネック形状の選択肢を増やすことで、ストロークタイプや好みに対応する幅を確保しているということ。
プランバーネックのような定番仕様は継続しつつ、
ダブルベント仕様の「Phantom 7」や、「Phantom 5 OC(オンセットセンター)」といった新たな構成も追加された。
注目すべきは、「ジェットネック」の進化だ。
形状は見直され、従来よりも長く、傾きは抑えられている。
それでも、オフセットとトゥハング(フェースの傾き度合)は従来と同じ。
見た目と構えやすさを変えながら、ストローク特性は維持している点が興味深い。
結果として、モデルの数は減ったが、実際のパターの選択肢は変わらない。
それでは、各モデルを見ていこう。
2026年 スコッティ・キャメロン「Phantom 5」パター|ネック別の違いを整理
私は以前から、「Phantom 5(ファントム 5)」を、スコッティ・キャメロンにおけるマレットへの“移行モデル”のような存在だと考えてきた。
ブレード型からマレット型へ移行したという話を聞くと、多くの場合、最初に試しているのが「Phantom 5」だからだ。
実際、私がいつもラウンドしている4人組のひとりも、昨年11月にまさにこの移行を経験し、コースに「Phantom 5.2」を持って現れた。
「Phantom 5」は、ツアーでも一般のゴルファーの間でも人気の高いモデルだ。
ジャスティン・トーマスが最も有名な使用プロだが、マックス・ホーマ、ジャスティン・ローズ、ラッセル・ヘンリーも、このヘッドでツアー優勝を果たしている。
その人気ゆえか、2026年モデルの「Phantom 5」パターは、シリーズの中で最も多くのネックオプションが用意されている。
形状は同じでも、ネックの違いによってストローク特性は変わる。
・ミッドベンドシャフトの「Phantom 5」:
トゥハング(フェースの傾き度合)は最小限
・プランバーネックの「Phantom 5.2」:
自然なフェースローテーションを持つ
・ジェットネックの「Phantom 5.5」:
トゥハングが最も大きく、強めのアーク(弧)に対応
意外な追加として、今回は「Phantom 5 OC(オンセットセンター)」パターもラインアップに加えられた。
このモデルの存在は、キャメロンが「OCネック」を、特別なカテゴリーではなく、数あるネックオプションのひとつとして捉えていることを示している。
残念ながら「Phantom 5 OC」パターの実機写真はないが、昨秋に登場した「Fastback OC」でのネック取り付け方法を見れば、イメージはつかめるだろう。
「Phantom 5」というヘッド形状が気に入れば、ストロークに合わせてネックで最適解を選べる。
それが、このモデルがマレットへの移行モデルとして選ばれ続ける理由だ。
2026年 スコッティ・キャメロン「Phantom 7」パターシリーズ
もし「Phantom 5」のウイング形状が控えめすぎると感じるなら、「Phantom 7」パターはより好みに合うはずだ。
このファング(牙)形状は、クラシックな存在感をしっかりと備えている。
「Phantom 5」と同様に、「Phantom 7」パターも複数のネックオプションで展開される。
「Phantom 7.2」と「Phantom 7.5」は再びラインアップに加わり、新しいシリーズの設計基準に合わせてヘッド形状が調整されている。
注目すべき変更点は、小数点なしの「Phantom 7」パターに採用された新構成だ。
従来のスパッドネック(小ぶりな一体型ネック形状)はそのままに、シャフトがダブルベント仕様へ変更されたことで、トゥハング(フェースの傾き度合)は抑えられ、アドレス時の見え方もより安定感のあるものになっている。
この変更も、ツアープレーヤーの要望を反映した結果だ。
操作性と構えやすさのバランスを見直し、実戦での再現性を高める狙いが見て取れる。
現時点では「Phantom 7」にオンセットセンター(OC)仕様は用意されていない。
この点については、2027年の「Phantom」シリーズ拡張での登場に期待したい。
2026年 スコッティ・キャメロン「Phantom 9R」パターシリーズ
昨夏に登場した「Phantom Black」リリースによって、ゴルファーは刷新された「Phantom 9」パターを初めて目にすることになった。
丸みを帯びた新しい「Phantom 9.2」パターは、シリーズの中でも、ブレードからマレットへ移行する際の最適解のひとつと言える。構えたときのフェース周りはブレードに近く、特にプランバーネックと短いサイトラインを備えた「Phantom 9.2R」は、その印象が強い。
新しい「Phantom 9」パターは、構えたときはブレードのように見えながら、特性はマレットらしい安定性を持たせる──それが設計当初からの狙いだった。
実際、「Phantom 9.2R」を“009マレット”と呼ぶ声を、私は何度も耳にしている。
スコッティ・キャメロン「009」ブレードにまつわる評価や背景を知っていれば、業界内でこの呼び方が使われるのは、それだけ完成度が高いということだ。
「Phantom 9」パターシリーズのネックオプションは2種類のみだ。
「Phantom 9.2R」はプランバーネック、「Phantom 9R」はミッドベンドシャフトを採用している。
個人的には、短いサイトラインを持つ「9.2R」よりも、ヘッド全幅に伸びるサイトラインを備えた「9R」の見え方の方が好みだ。
マレットに慣れたゴルファーほど、こちらの安心感を評価するだろう。
将来的には、「9.2R」にもサイトラインを長くした仕様を選べるカスタムオプションが、キャメロン・カスタムショップで用意されるかもしれない。
そうなれば、ブレード派とマレット派の垣根は、さらに低くなるだろう。
新しいスコッティ・キャメロン「Phantom」シリーズの総評
正直に言えば、この新しいシリーズに関しては、『Studio Carbon Steel(SCS)フェースインサート』が採用されたと知った時点で、すでに気持ちは固まっていた。
私はこのフェースの打感が好きだし、「Studio Style」パターは、自分のストロークに対して狙った距離感をしっかり出してくれた。
昨年秋に試した際には、「Phantom 11 OC」の『チェーンリンクフェース』は、キャメロンのマレットの中で最も打感が良いフェースだと感じていた。
しかし、新しい「Phantom 7.2」で何度か練習し、実際のラウンドも重ねるうちに、「Phantom 11 OCにも、この新しいSCSフェースが入っていれば」と思うようになった。
そう感じるようになった時点で、キャメロンチームには脱帽せざるを得なかった。
今回の「Phantom」シリーズで、彼らはすべてのパターメーカーが目指していることを成し遂げている。
新しい「Phantom」パターは、見た目も打感も非常に優れており、多くのゴルファーが従来の「Phantom」から新モデルへ乗り換えることになるだろう。
メーカーにとっては、これはパターの販売本数増加を意味する。
一方でゴルファーにとっては、「決して替えるつもりはなかったパター」よりも優れた1本を手にすることになる。
もし旧モデルの打感の方が好みであれば、そのまま使い続ければいい。
私には、あえて旧モデルに留まる理由が思い浮かばないが、その信念は尊重したい。
以下の価格や発売情報は米国仕様のものとなる。
新しい「Phantom(ファントム)」パターを求めるなら、2月27日から店頭に並ぶ予定だ。
価格は$499(Phantom 5 OCは$549)。
日本国内での価格や発売時期については、『タイトリスト公式サイト』での案内を確認してほしい。
日本では、3月より順次発売予定とされている。




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