新たな“パタートルク”の方程式とは?
ゼロトルクパターの流行に、置いてけぼり感を覚えていないだろうか?
試してみたものの、どうもしっくりこなかった…そんなゴルファーも少なくない。「ゼロトルク」がすべての人に合うわけではない。
そもそもゴルフクラブにおけるトルクとは…。もともとはシャフトの「ねじれ量」を表す専門用語。
今回のパター記事ではインパクト時のフェースの回転(開閉)傾向を指している。
★補足
・高トルク(数値大)
インパクト中にフェースが「自然に開閉」しやすく、アーク型のストロークに向く
→ 「操作性」は高いが、フェースコントロールは繊細になる傾向
・低トルク(数値小/ゼロトルク)
フェースの開閉が抑えられ、ストレート軌道のストロークに向く
→ 安定性は高まるが、人によっては打感や距離感の出し方が合わない場合も…。
では、本題に入ろう!
今回登場するのは、トゥーロンゴルフの新しい『Formula(フォーミュラ)』シリーズ。もしかしたら、あなたが探していた理想のマレットがここにあるかもしれない…。
予め伝えておくと、今回のトゥーロン「Formula」シリーズは、シャフトの差し込み位置を変えることで、1つのヘッド形状から異なるトルク特性を作り出しているのがポイントとなっている。
このシリーズは、同じマレット形状をベースにした3モデル構成。
最初の2本は、現代的なマレットとしては比較的オーソドックスな仕様だ。
「Formula CS」はセンターシャフト設計でフェースバランス仕様。一方、「Formula 90」はゼロトルク設計に、トゥーロンらしい凝った造り込みを加えて仕上げられている。
3本目のモデルは、かなり異色の存在だ。正直なところ、「Formula 45」のようなパターは、これまでに見たことがない。
ゼロトルクを試してしっくりこなかった人でも、この「Formula 45」なら“運命の1本”になるかもしれない。
トゥーロン『Formula(フォーミュラ)』シリーズ 基本構造

各モデルの詳細に入る前に、『Formula(フォーミュラ)』シリーズ全体に共通する特徴を押さえておこう。
トゥーロンのクオリティの高さは、もう多くのゴルファーが知るところだろう。 量産モデルから、極めて凝った作りの『Small Batch(スモールバッチ)』まで。トゥーロンは、そのクラフトマンシップに絶対の自信を持っている。
『Formula』シリーズでは、トゥーロンは「性能面」だけでなく、精密なミーリング加工や「見た目の美しさ」にも徹底的にこだわっている。
レースカーから着想を得たペイントパターンや、『Deep Diamond Mill(ディープ・ダイヤモンド・ミル)』フェースパターンなど、細部への配慮が随所に光る。

『Formula(フォーミュラ)』シリーズは、トゥーロン「Miami(マイアミ)」の形状を新たにアレンジしたモデルだ(この形状は、かつてのトゥーロン「Daytona Beach(デイトナビーチ)」から進化したもの)。
見た目の美しさはもちろんだが、「Formula」パターはあくまで実戦向けに設計されている。
たとえ“トルク”のストーリーを抜きにしても、『Face-Forward Weighting(フェース・フォワード・ウエイティング)』や、「構えたときに目標方向を合わせやすい形状」、そして高いMOI(慣性モーメント)といった、パッティングを支えるテクノロジーがしっかり詰め込まれている。実際、この3モデルはいずれもMOI(慣性モーメント)が6,000以上という数値を誇り、ミスヒットに強い、高い「寛容性」を発揮する。
つまり、芯を外しても方向や距離のブレを最小限に抑えてくれるのが、「Formula(フォーミュラ)」パターの大きな強みだ。

忘れてはいけないのが、ザンダー・シャウフェレがトゥーロンの『Deep Diamond Mill(ディープ・ダイヤモンド・ミル)』フェースを搭載したパターで、複数のメジャー大会を制しているという事実だ。
このフェースは、やわらかさの中にも、フェースから手に伝わる明確なフィードバックがあり、距離や方向をコントロールしやすい打感と、スムーズで安定した転がりをもたらしている。
最終的には、「Formula(フォーミュラ)」の物語は“トルク”が主役になるだろう。
だが、それ以外のあらゆる要素においても、このパターは間違いなくトゥーロンらしさを備えている。
「Formula(フォーミュラ)」のトルク特性

「Formula」パターシリーズは、ヘッド形状こそ非常によく似ているが、その“トルク特性”は大きく異なる。
シャフトの差し込み位置を3カ所で変えることで、トゥーロンは3種類のマレットそれぞれに異なるトルクレベルを持たせることに成功している。
まずは2本のスタンダードモデルから見ていき、最後に“異色”の1本を紹介しよう。
「Formula(フォーミュラ) CS」

「Formula CS」は、そのままトゥーロンの2025コレクションに加えても違和感のないモデルだ。
見た目は、特に構えたときの印象が「2025 Miami(マイアミ)」のセンターシャフト版といったところ。
ひっくり返してソールプレートを見れば、その形状は「Miami」と同じで、より滑らかな仕上がりになっているのがわかる。

トルク特性で見ると、「Formula CS」は低トルクかつフェースバランス仕様。
フェースバランスのパターはもともと過度なフェース回転が起こりにくいが、それでもわずかなトルク回転は存在する。
この自然なヘッドの回転が、フェースバランスのマレットパターに慣れているゴルファーにとっては、違和感のないフィーリングを生む。

3モデルすべてに共通する面白い特徴として、アライメントライン(目標方向を合わせるライン)がボディ中央ではなく、フェース寄りに配置されている点がある。
外側の2本のラインはどのモデルも同じだが、中央のラインはシャフト位置によって長さが変化する。
その中で、「Formula[CS]」はシャフトが最も前方に配置されているため、中央のラインが最も短くなっている。




Formula(フォーミュラ) 90

「Formula」シリーズのもうひとつの“現代的スタンダード”モデルが、ゼロトルク仕様の「Formula 90」だ。
トゥーロンは、ゼロトルク設計でよく採用される“シャフトをヘッド重心部に挿入する”という手法を用い、この構造によってシャフト軸周りの回転をほぼ完全に排除している。
「Formula 90」のトゥハング(フェースの傾き度合)は基本的に“トゥアップ(フェースが上を向く状態)”だが、他の角度でもバランスを取ることが可能だ。
トルクがほぼないため、360度の回転範囲の中で、ほぼどの位置でも安定して静止できる。

「Formula(フォーミュラ) 90」は、3モデルの中で最もシャフト位置が後方にあり、その構造により中央のターゲットラインが最も長く取られている。
シャフトにはわずか0.7度の前傾がつけられており、通常のパターグリップで構えることができる。
標準のヘッド重量は370g、ロフト角は3度、ライ角は70度。
ロフト角は±1度、ライ角は±2度まで調整が可能だ。






「Formula(フォーミュラ) 45」

この記事の冒頭を読んだ時点で、「Formula 45」の説明まで一気に飛ばした人もいるかもしれない。
その気持ちはわかる。ゼロトルクパターを手に入れたものの、結局手放した経験があるなら、次こそは長く付き合える“相棒”を探しているはずだ。「Formula 45」は、トルクに新たなアプローチを取り入れたモデルで、あなたの新しいパッティングパートナーになるかもしれない。

「Formula(フォーミュラ) 45」のホーゼル挿入位置は、「Formula CS」より後方、「Formula 90」より前方にある。
ホーゼルの挿入位置はトルク特性を左右するため、この配置により「Formula 45」のトルクは2モデルの中間に位置し、トゥハング(フェースの傾き度合)も同様に中間的な設定となっている。(“これはトルク界のジャニス・ブレイディだ”と言いたいところだが、この古いドラマのネタは分かる人が限られるだろう…)ジャニス・ブレイディは、アメリカの人気シットコム*『The Brady Bunch(ブレイディ・バンチ)』に登場する架空の人物(笑)
パターの歴史を振り返ると、多くのモデルはトゥハングが水平(フェースバランス)か、もしくは水平より下に傾く設定になっている。
最近登場した多くのトルクバランスパターは、トゥを真上に向けることで、トゥハングの幅を広げている。 “トゥアップ”自体は新しい設計ではないが、これほど一般的になったのは今が初めてだ。

「Formula(フォーミュラ) 45」のトゥハングは、水平から45度上向きという設定。 もはや“ハング(垂れ下がり)”と呼べるのか分からないほどで、下ではなく上に向いているからだ。
むしろ「45度のトゥフロート」と呼んだ方が正確かもしれない。
なぜトゥーロンは45度トゥハングのパターを作ったのか?

トゥーロンがこの設計に着手した背景には、「パターデザインの領域で、まだ誰も踏み入れていない分野を見つけた」という発見があった。
45度“トゥアップ”のパターは、他のメーカーでは作られていない。
現代のパターで、これほどの角度でトゥが上を向くモデルは見たことがない。
もしかすると過去に作られた例はあるかもしれないが、おそらくピン(PING)だろうし、もしそうなら相当昔の話だ。
さて、本題に戻ろう──。
果たして、45度トゥハングのパターは必要なのか?
純粋な科学的探究心には大賛成だ。もしトゥーロンが「Formula(フォーミュラ) 45」を完全に実験目的で作ったのなら、その姿勢を支持したい。
とはいえ、トゥーロン一家が非常に頭脳明晰であることは確かだが、彼らは研究機関ではなく、ビジネスを営んでいる。
このモデルを作ったのは、市場に“空白地帯”を見つけたからだ。
「Formula 45」は、「フェースバランスパター」(トルクほぼゼロの回転が少ないタイプ)と「ゼロトルクパター」(完全に回転を排除したタイプ)の間をつなぐ“中間モデル”として誕生した。
もし今フェースバランスパターを使っていて、「もう少しトルクを減らしたらどうなるか」を試してみたいなら、「Formula 45」を手にしてみるといい。
より多くのゴルファーが「Formula(フォーミュラ) 45」にたどり着くのは、逆方向からだろう。
ゼロトルクパターを購入したものの、「自分には合わない」と感じたゴルファーは少なくない。
ゼロトルクパターが最適解となる人もいるが、全員に合うわけではない。
もしかすると、最高のパッティングをするには、ほんのわずかなトルクが必要なのかもしれない。
そんなときは、あなたはすでに「Formula 45」の領域に足を踏み入れている。
この「Formula 45」が市場でどんな評価を受けるのか、非常に興味深い。
新しいタイプのパターの先駆けとなるのか、それとも…。


「Formula(フォーミュラ)」パターを実際に転がしてみて

ここ数週間、「Formula」パターを実際に転がしてみたが、その結果は非常に興味深いものだった。
見た目は非常によく似ている3モデルだが、シャフト位置の違いがプレーに大きな影響を与えることがわかった。
ひとつ気づいたのは、シャフト位置が後方になるほど、アライメントの効果が高まるということだ。
特に「Formula 90」が構えたときにボールをフレーミングする感じはとても気に入っている。
どこかPING「Ketsch(ケッチ)」のアライメントを思わせる部分があり、それは決して小さな賛辞ではない。
「Formula CS」でもアライメント効果はしっかり機能するが、中央ラインが長い「Formula 45」や「Formula 90」の方が、その効果はさらに高まる。
3本すべてのモデルは、インパクト時に純粋な打感を味わえる。これはゼロトルク仕様の「Formula 90」でも同じだ。
ゼロトルクパターを使ったことがある人なら分かると思うが、トルクを排した設計では打感が失われがちになることもある。
トゥーロン「Formula」が生み出す、やわらかくも手応えのある打感は、思わずパター練習をしたくなるほどだ。

「Formula(フォーミュラ) 90」を転がしてみて
自分のストロークに合うトルク特性という点では、「Formula 90」が最も高いパフォーマンスを発揮してくれた。
これは予想通りだった。というのも、この1年の大半をL.A.B. Golf「DF3」でプレーしてきたからだ。
長く「DF3」を使ってきたこともあり、「Formula 90」は構えた瞬間から馴染みやすかった。
さらにうれしい誤算として、「Formula 90」は自分の「DF3」よりもわずかにフェースの弾き感が強いと感じた。
自分のミス傾向は方向性は合っているのにショートすることが多いので、このちょっとした初速アップはありがたい驚きだった。
参考までにサイズ感を言うと、「Formula 90」は「DF3」よりやや小ぶりで、その大きさはL.A.B. Golf「OZ.1」に近い。

「Formula(フォーミュラ) CS」を転がしてみて
“生涯の相棒”にはならなかったが、「Formula CS」はグリーン上で非常に優れたフェースバランスのマレットだった。
他の2モデルほどトルク特性が派手ではないため、注目されにくいのではないかと心配している。
しかし、それではこのモデルの優れた性能が埋もれてしまう。
センターシャフト&フェースバランスのマレットが好きなら、一度は試してみるべきパターだ。狙いやすく、驚くほど安定感がある。
もしこれがトゥーロンの2025コレクションの一員だったら、間違いなく目立つ存在になっていただろう。
しかし、この低トルク3兄弟の中では、やや無難すぎて注目を集めにくいかもしれない。
「Formula(フォーミュラ) 45」を転がしてみて
「Formula 45」には、正直ちょっと戸惑わされた。 スイングしたときのフィーリングは大好きだし、「Formula 90」と比べると、より“パターらしい”感覚がある。
ゼロトルクパターで成功するためには、パターに任せる感覚が大切だ。「Formula 90」では、その方法で大きな成果を得られた。

「Formula(フォーミュラ) 45」は、少しだけ“ハンドル操作”を求めてくるパターだ。 大げさな操作ではないが、多少は自分で向きをコントロールする必要がある。
イメージとしては、ゴルフカートの運転席で親の膝に座った子どもがハンドルを握るような感じ。大きく曲がるわけではないが、形式上は“運転している”状態だ。
自分の場合、「Formula 90」と「Formula 45」の違いは安定性にあった。「Formula 90」の方が距離感と方向性の精度が高かったんだ。
おそらく、自分がすでに“ゼロトルク生活”に慣れているからだろう。
打感の好みでいえば「Formula 45」を選ぶが、スコアカード上では「Formula 90」に軍配が上がった。

「Formula(フォーミュラ) 90」と「Formula 45」の打感があまりにも違ったので、思わずショップに戻ってバランスを確認した。
絶対に「Formula 90」の方が重いと思っていたが、実際にはまったく同じだった。このときから、「Formula 45」にはトゥーロンが何か新しい発見をしているのではないかと思い始めた。
自分に合うのは「Formula 90」だが、わずかなトルクを必要とするゴルファーには「Formula 45」がぴったりフィットするはずだと確信している。
果たして、どれだけのプレーヤーが「Formula 45」で理想のパッティングを手に入れるのか、とても楽しみだ。
「Formula(フォーミュラ)」パター 総評

もしトゥーロンが「Formula 90」だけを発表していたら、話題性はそこまで大きくならなかったかもしれない。
誤解しないでほしい。このモデルは素晴らしく、今まさに自分のバッグに入っている。
もしポルシェの“ペイント・トゥ・サンプル”のウルトラバイオレット仕様があれば、おそらく一生使い続ける…はずだ。
(いや、うそだ。自分は1本のパターにそこまで一途ではいられないタイプだから。)
「Formula CS」、そして特に「Formula 45」を加えたことで、このシリーズはより重要で興味深いリリースになった。
トゥーロンは、単なる流行に便乗するのではなく、“トルク”というテーマを掘り下げようとしている。
「Formula(フォーミュラ) 90」だけを作っても、大量に売れたかもしれない。
だが、そこに他の2モデルを加えたことで、パターデザインの知識を広げ、ゼロトルクが合わないゴルファーにも選択肢を提供している。
現時点(2025年8月13日)では、日本での発売に関する公式な情報は確認されていない。
しかし、恐らく8月末~9月には発売されるだろう。国内正規ルートでの入荷状況次第では、地域や店舗によって取り扱い開始時期が前後する可能性がある。
※下記はアメリカ仕様の情報。
予想どおり、「Formula(フォーミュラ)」パターは決して安くはない。トゥーロンゴルフはそもそも低価格ブランドではなく、ベース価格は650ドル。
ブラックシャフトを選ぶ場合は+20ドル、38インチのカウンターバランス仕様を選ぶ場合は+50ドルとなる。
すぐに手に入れたいなら、オンライン注文も可能だ。
まず試してから決めたいなら、Golf Galaxyなどの大手ゴルフショップで見つけられるはず。
できれば3モデルすべてを置いている店舗を探し、実際に転がしてみるのがおすすめだ。
そうすれば、自分のストロークにどれだけのトルクが必要なのかを直接体感できるだろう。
詳しくは toulongolf.com でチェックし、「Formula」パターを注文できる。
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