正直に言おう。

最近、ミズノのドライバーについて真剣に考えたことはあっただろうか。
──おそらく、しばらくなかったはずだ。

だが、その印象は変わるかもしれない。

各メーカーが新たなテクノロジーを次々と投入する中で、
ミズノの新作「JPX ONE」ドライバーは、どこか異質だ。

派手さはない。
だが、確実に興味を引く存在である。


ミズノ JPX ONE ドライバー 2026年モデルのヘッド全体デザイン

派手なキャッチフレーズはない。
分かりやすい一言もない。

だが、その中身は確かに興味深い。

このドライバーを理解するには、設計思想から素材構造、さらにはナノメートル単位の領域にまで踏み込む必要がある。
理屈の話になるのは避けられない。

しかし、それでも読み進める価値はある。

なぜなら、これは単なる素材変更の話ではない。
「ナノアロイ」という選択が、ボールとフェースの関係そのものに踏み込もうとしているからだ。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのクラウン形状とヘッドシルエット

ミズノはなぜ動いたのか

ミズノを「革新的なドライバーメーカー」と捉えているゴルファーは、決して多くないだろう。
少なくとも、この十数年を振り返れば、その印象は自然だ。

ただし、ミズノが常に保守的だったわけではない。

1990年には世界初の純チタンドライバー「Ti-110」を投入。
2004年にはチタンメタルウッドとして初めてカーボンクラウンを採用した「MP-001」を発表した。
さらに2008年には、可変式ウエイトを備えた「MP600」で、調整機能という新しい流れを作っている。

技術的な先進性という点で、確かな実績を持つメーカーだったことは間違いない。

それでも2010年以降、ミズノのドライバーは毎年登場する数多くのメタルウッドの中に埋もれてきた。
性能が劣っていたわけではない。
だが、市場での存在感を示しきれなかった──それが実情だ。

この状況を変えるため、ミズノは“今の市場に合わせた”アプローチに踏み切る。
徹底した調査だ。


立体溝構造を備えたミズノ JPX ONE ドライバーのソールディテール

「メタルウッド市場に、どう向き合うべきかを改めて整理したかった」
「感覚的には分かっていたことを、きちんと文書化したかった」
── ミズノUSA ゴルフディレクター、クリス・ヴォーシャル


その調査から、ミズノは3つの結論にたどり着く。

1つ目は、小売店やフィッターへのメタルウッドのフィッティング支援を強化すること。
2つ目は、目に見えて“伝わる”テクノロジーに注力することだ。

ミズノは、誇張や派手な言葉で押すメーカーではない。
だからこそ、視覚的に理解できる分かりやすさが必要だった。

そして3つ目が、価格戦略の見直しである。
取り組みを加速させるには、思い切った判断が欠かせなかった。

その答えが、2023年に登場した「ST-230」シリーズだ。
翌年にはラインアップを拡充。
さらに2024年半ばには価格を299ドルに設定するという、異例とも言える決断を下した。


ミズノ JPX ONE ドライバーの立体ソール設計と後方重量配分

「ミズノのウッドを売るには何が必要か、と小売店に聞くと、返ってくる答えはいつも『もっと安く』だった」

ヴォーシャル氏は、当時をこう振り返る。

「正直、関税が引き上げられた時期には、売れば売るほど赤字になるモデルもあった」


価格を下げるという判断は、単なる販売戦略ではなかった。
明確なリスクを伴う決断だった。


では、その戦略は機能したのか

一般的にドライバーは、発売2年目に売上が大きく落ち込む。
だがミズノの「ST」ドライバーは違った。

2024年と比べて、2025年の販売数は6倍に伸びている。

価格戦略が後押ししたのは間違いない。
だが、価格だけで支持が広がるわけではない。

ミズノは「ST」ドライバーの完成度に確かな手応えを持っていた。
さらにフィッティング環境を整えたことで、その性能が正しく伝わる土台ができたと考えている。


「3年目のモデルをフィッティングカートに載せ続けるのは、大きな投資だった」

そう認めつつ、こう続ける。

「経済的に合理的とは言えない。だが、ミズノのドライバーを“当たり前にフィッティングする”環境を作ることが目的だった」



ミズノ「JPX ONE」ドライバーに専用ヘッドカバーを装着するシーン。光沢感のあるクラウンデザインが特徴。

ミズノはこの5年間、市場トップと肩を並べる水準まで、「ボール初速」と「寛容性」を引き上げることに注力してきた。

だが、そこにはまだ“決定打”がなかった。

最後に残された課題は、
革新性があり、意味を持ち、そして目に見えて伝わるテクノロジーをどう生み出すか──
その一点だった。

USGAによる初速規制は存在する。
それでも、ドライバーの性能にはまだ改善の余地がある。

進化は劇的ではない。
だが、確実に積み重なっていく。

その前提に立ったとき、ミズノはひとつの問いに行き着いた。


「チタンフェースが何をもたらすのかは分かっている。
カーボンフェースについても同様だ。
ボール側にはウレタンとアイオノマーがあり、それぞれがインパクト時にどう反応するのかも理解している」


素材の特性も、その挙動も、すでに共有された知識だ。
多くのメーカーが、同じ前提条件の中で設計を行っている。

だからこそ、浮かび上がったのは次の問いだった。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのクラウン形状と投影面積。芝の上に置いたアドレス時のヘッド外観。

「ボールとドライバーの“相互作用”そのものを変えることはできないのか。
既知の条件を、どうすれば乗り越えられるのか」


その問いは、単なる発想では終わらなかった。
やがてロボットテストへと発展し、最終的に「ナノアロイ」という答えへとつながっていく。

──ここから先は、少し踏み込む。


ナノアロイが生まれた理由|初速はどこで失われているのか

「ドライバーがボールに当たった瞬間、ボール初速という結果がどう生まれるのか──
その仕組み自体は、すでに把握している」

「では、チタンドライバーフェースとウレタンカバーボールの“間”に何かを介在させることで、
その相互作用を変えることはできないのか?」── クリス・ヴォーシャル氏


ミズノが着目したのは、その“間”だった。

最初に行われたのは、ロボットによる基礎検証だ。
使用したのは「ST 200」ドライバー。
ボール初速は約69.3m/sに設定された。

フェース全面にウレタンシートを貼り、
意図的に1mmの厚みを加える。


「ウレタンを使った理由は、カーボンコンポジットフェースにはウレタン層が存在するからだ」

「厚さはわずか1mmだったが、ボール初速は低下した」

── クリス・ヴォーシャル氏


厚みを足せば、通常はエネルギーは失われる。

だが、この実験は“確認”にすぎなかった。


ミズノ JPX ONE ドライバーのクラウンに配置されたJPXロゴ

次に試されたのは、ナイロン素材だった。

そして、ここで予想外の結果が出る。

厚みは増している。
にもかかわらず、ボール初速がわずかに上がったのだ。

常識とは逆の現象だった。

そこでミズノは、自社の野球用バットに使われている素材へと目を向ける。
ナイロン系ポリマーブレンド──「ナノアロイ(Nanoalloy)」だ。


「さらに初速は伸びた。劇的とは言えないが、約69.3m/sから約69.4m/sへの変化だった」

「重要なのは、厚みが増しているのに初速が上がったことだ」

「フェースとボールの“間”で、明らかに異なることが起きていた」── クリス・ヴォーシャル氏


0.1m/s。
数字は小さい。

だが、設計の常識を覆すには十分だった。

ミズノは野球の世界では名の知れたバットメーカーだ。

その立ち位置は、かつてミズノゴルフがドライバー市場で置かれていた状況と重なる。
長らく業界の中心にいたわけではない。

だが、グリップとカーボンバレル(カーボン製打撃部)をつなぐ部分に
「ナノアロイ(Nanoalloy)」を採用したことで評価は一変した。

平均的と見られていたバットは、
高性能モデルとして認知される存在へと変わる。

実際、昨年のNCAA(全米大学体育協会)ベースボールトーナメントでは、
ホームラン数上位25チームのうち10チームがミズノ製バットを使用していた。

素材が、評価を変えた。


空力と構えやすさを意識したミズノ JPX ONE ドライバーのクラウン形状

「このテクノロジーがカーボンバット由来だと聞くと、カーボンフェースだと思われがちだが、そうではない」

「見た目はカーボンのように見える。だが、これはカーボンではない」


ヴォーシャル氏は、誤解を避けるように強調する。


カーボンではなく「ナノアロイ」

誤解されやすいが、ここは極めて重要なポイントだ。

「JPX ONE」に採用されているのはカーボンフェースではない。
あくまでチタンフェースを基盤とし、その上にナノアロイ層を組み合わせた構造である。

見た目はカーボンを思わせる。
だが、その正体はまったく異なる。

これは素材変更ではなく、フェースとボールの“相互作用”を再設計するための選択だった。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのフェース面拡大と打点エリア設計

構造はシンプルだ。

通常のチタンドライバーフェースの上に、厚さ1mmのナノアロイ層をエポキシで接着している。

複雑な多層構造ではない。あくまでチタンを基盤とした設計だ。

そしてミズノは、この構造の耐久性に強い自信を示している。


ナノアロイとは何か

ナノアロイは、日本の素材メーカーである東レが開発したナイロン系ポリマー素材だ。

アトランタにあるミズノの新フィッティングセンター「The Foundry」を訪れた際、壁に掲げられていた問いがある。

「次は何ができるのか?」

その答えのひとつとして示されていたのが、この「ナノアロイ」だった。

単なる新素材ではない。
“既存の前提を崩すための選択肢”として提示された素材だった。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーの開発年表。2021年から2026年にかけての進化と“WORLD'S FIRST DRIVER”を示すプレゼン資料。

東レのナノアロイは、独自のポリマーベースのナノ構造体だ。

ポリマー同士が、100〜200nm(ナノメートル)という極めて微細なレベルで混合されている。

1ナノメートルは10億分の1メートル。
人の髪の毛の太さはおよそ80,000〜100,000nm。
DNAの幅は約2nmだ。

つまり、目に見える構造とはまったく別次元のスケールで制御されている素材ということになる。


ナノレベルの構造が生む「性質の違い」

このナノ単位での混合によって、通常のポリマーでは両立が難しい特性が引き出される。

ミズノ「JPX ONE」では、厚さ1mmのナノアロイ層が標準的なチタンフェースに接着されている。

指で軽く叩けば、感触は硬く、ソリッドだ。

だが高速でボールと衝突した瞬間、その特性は一変する。

ナノアロイは弾性を増し、エネルギーを受け止めながら柔軟にたわむ。


インパクト時に何が起きているのか

「チタンフェースはインパクトで圧縮されると、ボールが当たる部分を中心にたわみ、同時にクラウンにも一定の変形が生じる」

「しかしフェースにナノアロイが加わると状況は変わる」

「インパクトゾーンのたわみがより大きくなるだけでなく、左右方向やクラウンにまで、より広い範囲で変形が広がる」── クリス・ヴォーシャル氏


ここがポイントだ。

フェースの“中央だけ”が動くのではない。
構造全体がよりダイナミックにエネルギーを扱うようになる。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーを正面から撮影した製品画像

たわみ、コンプレッション、ボール初速

ここが少し難しい。

「なぜ、それでボール初速が伸びるのか?」

そう思うのは当然だ。

同じヘッドで、同じボールを、同じヘッドスピードで打っている。
条件は変わっていない。

それでもナノアロイを採用したフェースでは、インパクトの瞬間、ボールが当たった一点だけでなく、フェース全体により大きなたわみが生じる。

では、その違いはどこから生まれるのか。


「インパクトで使えるエネルギー量には限りがある」

「変形しているのはナノアロイの層だ。その結果、ゴルフボール側の変形が抑えられている」── クリス・ヴォーシャル氏


ここが重要だ。

通常、インパクト時のエネルギーの一部は、ボールが潰れることで吸収される。

ナノアロイは、その“潰れ”の一部をフェース側で引き受ける。

どんなボールでも、よりコンプレッションの高いボールに近い挙動を引き出している。

つまり、ボールが無駄に潰れすぎない状態を作っているということだ。

ボール内部で失われるエネルギーが減れば、その分が「ボール初速」として戻ってくる。

原理はシンプルだ。

エネルギーの使い方を変えているのである。


低重心・深重心設計を採用したミズノ JPX ONE ドライバーのソール形状

ここで話はつながる。

コンプレッションが高いほど、「ボール初速」は伸びやすい。

言い換えれば──
ボールが“無駄に潰れすぎない”状態を作っているということだ。

フェース側でエネルギーを受け止め、ボール内部でのロスを減らす。

その分が、初速として戻ってくる。

原理は昔から変わらない。

硬さは、速さにつながる。


ナノアロイフェースの構造的な違い

最初のロボットテストでは、標準的なチタンフェースの上に厚さ1mmのナノアロイシートを重ねる形で検証が行われた。

いわば“後付け”の実験だ。

一方、ミズノ「JPX ONE」の実製品は違う。

チタンフェースとチタンボディという基本構成は維持しながらも、ナノアロイフェースを前提とした設計がなされている。

単にシートを貼っただけではない。
ナノアロイの特性を最大限に活かすため、フェース構造そのものが最適化されている。


「ナノアロイフェースが行っているのは、ボール側が担っていた変形量の一部を引き受けることだ」

「それと同時に、鍛造チタンフェース側の変形も、わずかに抑えられている」── クリス・ヴォーシャル氏


つまり、ボールだけに頼らないエネルギー設計へと変わっている。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのフェースデザインとインパクトエリア

CT値とCOR値の上限|本当に“限界”は決まっているのか?

結論から言えば、上限は定められている。

CT値(特性時間)は、USGAが「ボール初速」を管理するための主要指標だ。

インパクト時、ボールがフェースに接触している時間をマイクロ秒単位で測定し、フェースのたわみ量を相対的に評価する。

規定上限は239マイクロ秒。
製造公差として18マイクロ秒が認められており、実質的な上限は257マイクロ秒となる。

かつてはCOR(反発係数)が主指標だった。

上限は0.830。
約45m/sで打ち込んだ際、跳ね返り速度が約37m/sを超えてはならない、という規定だ。

現在もCOR規定は存在する。
だが、実際の管理指標として運用されているのはCT値である。

ここからが重要だ。

押さえるべき点は2つある。

1つ目は、CT値とCOR値は単純な比例関係ではない。
CTが上がれば、必ずCORも上がる──
そうした単純な連動ではない。

2つ目は、ルールの枠内には、設計上の“余地”が存在する。

実際、テーラーメイドがカーボンフェースを採用した際、USGAはウレタンコーティング層を含む構造に対応する新たな補正ルールを設けた。
規制は固定されているように見える。

だが、その解釈と構造次第で、設計の可能性は完全に閉ざされているわけではない。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーとティーアップしたゴルフボールのイメージカット

ナノアロイは「コーティング」なのか?


「ナノアロイは、コーティングではない。
だがUSGAのルール上では“コーティング”として扱われている」

「ナノアロイはまったく別の素材であり、独立した層だ。
テーラーメイドがカーボンフェースへ移行した際、USGAはウレタン層を含む構造に対応するため“コーティング補正係数”を設けた」── クリス・ヴォーシャル氏


その結果、ルールの枠内に設計上の“余地”が生まれた。

ナノアロイもまた、その解釈の中に位置づけられている。


JPX ONEが狙った“別のアプローチ”

ミズノ「JPX ONE」のCT値は約220。

規定上限である257マイクロ秒には、まだ余裕がある。

つまり狙いは、CT値を限界まで押し上げることではない。

ナノアロイの採用によって、耐久性を犠牲にすることなく、チタンフェースを最大で約10%薄く設計することが可能になった。

フェースが薄くなれば、中央だけでなく、より広い範囲でCOR上限(0.830)に近い反発性能を引き出せる。

狙いは“数値”ではなく、“面”だった。

高反発エリアを広げること。


軽量化がもたらす“もう一つの効果”

フェースはヘッド内で最も重量のある部位だ。

これを約10%軽量化できれば、その分の余剰重量を最適配置できる。

結果としてMOI(慣性モーメント)は高めやすくなる。

高MOIであり、かつ高CORエリアが広い。

フェース中央に依存しない初速設計が可能になるということだ。

例えばトゥヒット時でも、ねじれ(トルク)は抑えられ、初速の低下は最小限にとどまる。

速さを“点”ではなく“面”で支える設計。

それが「JPX ONE」の思想である。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのフェース構造とテクノロジー表現

ミズノ「JPX ONE」「JPX ONE Select」ドライバーの実像

ここまでの説明が少し込み入っていたのは事実だ。

だがミズノは、キャッチフレーズで話を単純化するメーカーではない。

今回触れてきた技術背景も、「JPX ONE」がどんな思想で設計されているのかを理解するためには欠かせない要素だった。

理屈はここまでにしよう。

実際のドライバーは、どう仕上がっているのか。

ここからは「JPX ONE」と「JPX ONE Select」の実像を見ていく。


2モデル構成の「JPX ONE」シリーズ

新シリーズは「JPX ONE」と「JPX ONE Select」の2モデル構成だ。

「JPX ONE」は、最も幅広いゴルファーを想定した標準モデル。

一方の「JPX ONE Select」は、寛容性を確保しつつ、より操作性を意識した設計。やや上級者寄りの位置づけになる。


ヘッド形状と重心設計の違い

両モデルともヘッド体積は460cc。

だが、形状と重心設計には明確な違いがある。

「JPX ONE」は上下方向をやや抑え、前後方向に長さを持たせたシルエット。 ヒールからトゥ方向にも幅を持たせ、重心はやや深めに設定されている。

安定性を重視した設計だ。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのソール全体とヘッド体積デザイン

対して「JPX ONE Select」は、フェースがややディープ(フェース高が高い)で、前後方向・ヒールトゥ方向ともに引き締まった形状を採用する。

搭載テクノロジーは共通だが、想定するプレーヤー層に合わせてヘッド形状と重心設計が作り分けられている。

より操作性を意識した設計だ。


高CORエリアの広さが示すもの

ミズノによる2025年モデルとの比較テストでは、「JPX ONE」は同クラス内で最も広い高CORエリア(高反発エリア)を持つとされる。

その面積は、テーラーメイド「Qi35 MAX」より約32平方ミリ広い。

一方の「JPX ONE Select」も、「Qi35 MAX」と比べて約14平方ミリ小さいだけにとどまる。

さらに、キャロウェイ「ELYTE トリプルダイヤモンド」やタイトリスト「GT3」と比較すると、約130平方ミリも広い高CORエリアを確保している。

狙いは明確だ。

“点”ではなく、“面”で初速を支えること。


見た目とナノアロイフェース

外観にも変化は現れている。

ソールデザインにはタイトリスト「GT」シリーズを思わせる造形が見られる一方、フェースに採用されたブルーのナノアロイ層は強い存在感を放つ。

視覚的にも、「これまでのミズノとは違う」と感じさせる仕上がりだ。

改めて強調しておきたい。

このフェースはカーボンではない。

あえて誤解を招きかねない外観を選びながらも、違いを一目で伝える。

それは単なるデザインではない。

ミズノの意思表示である。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのソール構造とバックウエイト配置

実測テストで見えた差

最終製品を用いた実測テストでは、ボール初速が少なくとも約0.3m/s(0.7mph)向上する結果が確認された。

初期のロボットテストは既存ドライバーのフェースにナノアロイ層を重ねた条件だったが、今回の数値は実製品構造で得られたものだ。

ミズノはもともと数値を控えめに示す傾向がある。 実際の効果はヘッドスピードや打点位置によって変わるだろう。

率直に言えば、2025年モデルをすでに使用しているゴルファーにとって、この差だけで即座に買い替えを決断するほどの劇的な変化とは言い切れない。

だが、2021年以前のモデルを使っているなら話は変わる。

フェース中央だけに依存せず、フェース全体で初速を維持しやすい設計思想。

その積み重ねを含めて、ミズノ「JPX ONE」は一度打って確かめる価値のあるドライバーだ。

数値以上に、“設計の方向性”が変わっている。


ミズノ「JPX One」「JPX One Select」:スペック・価格・発売日

ロフト設定と調整機能

ミズノ「JPX ONE」は、シリーズの標準モデルに位置づけられる。

ロフト角は9度/10.5度(レフティ対応)/12度を用意。 すべて±2度のロフト調整が可能だ。

一方の「JPX ONE Select」は、操作性を重視した設計のモデル。

ロフト角は9度/10.5度を展開(9度はレフティ対応)。 こちらも±2度のロフト調整機能を備えている。


ミズノ「JPX ONE」ドライバーのフェースデザインと溝構造

純正シャフトラインアップ

ミズノは今回も、純正シャフトの選定に明確な意図を持たせている。

主な選択肢は以下の3モデルだ。

・三菱ケミカル「TENSEI 1K Black」
・三菱ケミカル「TENSEI 1K Blue」
・Project X「Denali Frost Blue」

単なる“無難な標準装着”ではない。 弾道傾向とターゲット層を明確に意識した構成だ。


TENSEI 1Kシリーズ

「TENSEI」シリーズには、三菱ケミカルの「1Kカーボンファイバー」が採用されている。

従来のカーボン繊維よりも薄く、均一性に優れた構造が特徴。 余計な挙動を抑え、安定感のあるフィーリングを生み出す。

・「1K Black」:低弾道・低スピン設計。先端剛性が高く、叩いていきたいプレーヤー向け
・「1K Blue」:中弾道・中スピン設計。幅広いヘッドスピード帯に対応しやすいバランス型

“標準でBlackが選べる”という点は、ある程度しっかり振れる層を視野に入れている証でもある。


Denali Frost Blue

「Denali Frost Blue」は中弾道・中スピン設計。

手元側の安定性を重視した挙動が特徴で、切り返しでシャフトが暴れにくい。

基本特性は標準モデルの「Denali Blue」と同じだが、フロストブルーの外観を採用している点が異なる。

性能差というより、仕様上のバリエーションと考えていい。


軽量シャフトの選択肢

USTマミヤ「Helium NanoCore」もオプションとして用意されている。

超軽量設計により高弾道・高スピンを打ち出しやすく、ヘッドスピードがやや遅めのゴルファーや、振り抜きやすさを重視する層に適したシャフトだ。


グリップ

純正グリップには、ゴルフプライド「Tour Velvet Cord」(グレー)が採用されている。

しっかりとしたコード入り仕様で、手元の安定感を重視するセッティングだ。


NANALLOYフェースを搭載したミズノ JPX ONE ドライバーの打面

価格と発売日

かつて299ドルという価格設定が話題になった時期もあった。 だが、そのフェーズはすでに終わっている。

ミズノは、アイアンでもドライバーでも「価格の安さ」を主軸にするブランドではない。

新たに登場するミズノ「JPX ONE」「JPX ONE Select」の価格は599ドル。

大幅な改定ではあるが、主要メーカー各社の最新ドライバーと比較すれば、依然として抑えた水準に位置づけられる。

先行販売は1月12日から。 店頭発売は1月22日を予定している。

※本記事内のスペックおよび価格情報は米国市場向け。 日本国内での展開や詳細は『ミズノ公式ホームページ』で確認してほしい。


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