MyGolfSpy の『Ball Lab(ボールラボ)』では、市場に出回るゴルフボールの品質と一貫性の調査、数値化を行っており、無駄のない最適なボール選びに役立てもらいたい。

今日取り上げるのは『テーラーメイド TP5』だ。ラボで使用する機器の概要はここに掲載した。また、テストプロセスや、「不良」ボールの定義方法、独自の「True Price」測定方法については、MyGolfSpy Ball Labのページにて確認できる。

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テーラーメイド「TP5」は、テーラーメイドが有する2つのプレミアムツアーモデルのうちの1つだ。同社は昔からPGAツアープレーヤーに裏メニューボールを提供しているが、「TP5」はローリー・マキロイや、ジェイソン・デイ、リッキー・ファウラーなどのプロも愛用している。

このレポートでは、ラボで得られた2019年テーラーメイド「TP5」の考察を簡潔に説明し、他のゴルフボールとの比較を行う。最後に、ボールの『真の価格』=『True Price』、つまり優良のボール1ダースがいくらなら妥当かを公表するつもりだ。


テーラーメイド「TP5」について

テーラーメイド「TP5」について

テーラーメイドの分類では、「TP5」の打ち出しは中程度だ。同社から販売される2種類のツアーモデルの中でも高いスピンを誇る。また、322つのディンプル、キャストウレタンカバーを備えた5ピース構造が主な特徴。

「TP5」といえば、少し変わった製造方法で知られる。コアとマントルレイヤーはアジアで作られ、それがサウスカロライナ州リバティーにあるテーラーメイドのボール工場に送られ、そこでキャストウレタンカバーをかぶせる。


テーラーメイド「TP5」 – コンプレッション

テーラーメイド「TP5」 – コンプレッション

Ball Labでの計測の結果、2019年テーラーメイド「TP5」のコンプレッションは90で、基本的にタイトリスト「Pro V1」と同じだ。マーケット全体で見ると、確実に「FIRM(硬い)」のカテゴリーに入る。

しかしツアー基準で見ると、「TP5」はツアーで使われる数少ないソフトボールの部類に入る。



テーラーメイド「TP5」 - 重量と直径サイズ

テーラーメイド「TP5」 – 重量と直径サイズ

・「TP5」サンプルボールは100%円形の基準を満たしていた。

・USGAの重量制限(1,620オンス)を超えたサンプルボールはひとつもない。

「TP5(およびTP5x)」は、これまで測定した中で一貫して一番小さいボールだった。USGAボールトラックテストには全てクリアしているが、私達の計測では10~15%の確率で不合格ボールが出た(25%未満は合格)。

また、基本的にすべて真円度の基準を満たしていたが、TPは「ポール」※1よりも「継ぎ目(シーム)」※2の方が小さい傾向にあることを指摘しておこう。

ボールの最も厚い部分は、通常「ポール」と「継ぎ目」の間の場所であることからも、「継ぎ目」と「ポール」の測定値がUSGAの最小直径である1.680インチを下回ることが多い理由がお分かりいただけると思う。

※1.極(ポール)、地球に例えると北極・南極方向

※2.継ぎ目(シーム)、地球に例えると赤道方向


テーラーメイド「TP5」-検査

テーラーメイド「TP5」 – インスペクション(検査)


中心性と同心性

「TP5」は5レイヤー(層)のため、その構造は非常に複雑だ。これにより、より細かなパフォーマンスが可能になるが、欠陥が発生する可能性も高くなる。

ひと目でコアが中心から外れていると分かったボールが3つあったが、心配する必要はない。

ところが、11%のボールに重大な欠陥や複数の欠陥が見つかったのは見逃せない。最も確認されたのは、複数のレイヤーにわたり厚さが一貫していない点だ。

あるボールには、コアとマントルの間に目に見える欠陥があり、マントルが圧縮されているのが確認された。


コアの混合

テーラーメイドが異なる2つの工場からコアを調達し(ひとつに統合しようとしているが)、それらのコアが混合されることはほとんど知られていない。

実際、青いコアに2つの色が混ざっていた。このカットパターン(や感触)から、素材の組成がわずかに異なることが分かる。コア間のコンプレッション数に差は見られなかったが、軽いコアにレイヤー構成の問題がより顕著に現れたように思える。

また、コアに小さな白い硬い材料が混ざっているボールが1個見つかった。これは単なる混合の問題で、重大なパフォーマンスの問題を引き起こす可能性はないだろう。


カバー

テーラーメイド「TP5」カバーには、特に問題や欠陥は確認されなかった。カバーに小さな欠陥が確認されたボールが1個あったが、特に懸念するレベルではない。


総合的な考察

これまでにテストした他のツアーボールと同様に、「TP5」のキャストウレタンカバーは薄く、柔らかく、概ね厚さが一貫している。グリーン周りのスピンは期待に応えるレベルであるはずだ。


一貫性

このセクションでは、「TP5」の『一貫性』について詳しく説明する。これは、これまでにテストしたすべてのモデルと比較して、サンプル内のボールが互いにどの程度一貫しているか示す目安だ。

テーラーメイド「TP5」 – 一貫性


重量の一貫性

・重量の一貫性は、平均範囲を下回る。

・重量制限を超えるボールはなかったが、他のブランドと比べると一貫性に欠ける。


直径サイズの一貫性

・「TP5」の直径サイズは、平均範囲内で一貫している。

・先に述べたように、ボールの作りは小さめ、直径の計測テストで不合格だったボールはなかったが、いくつか1.68インチの計測器を通過した。これは、ボールの最も狭い部分である「継ぎ目(シーム)」に計測器の位置を合わせた場合に特に当てはまった。


コンプレッションの一貫性

・「TP5」のコンプレッションの一貫性は、平均レベルでも上の方だ。サンプルボール全体では、コンプレッション範囲が7.5に及んだため、完璧ではないが、パフォーマンス(や打感)には影響のない、全体的に一貫している範囲だと言える。

・各ボールで測定した3点のコンプレッションを見ても、「TP5」の一貫性は平均範囲内で明らかな異常値は見つからなかった。


「TRUE PRICE」-ボールの真の価格-

『True Price』は、ゴルフボールの品質を独自に数値化した指標だ。これは、優良ボール1ダース(12個)を得るのに必要な金額を表す。

『Ture Price』は常に小売価格以上の金額になる。「Ture Price」と「小売価格」の差が大きいほど、ボールの品質が懸念される。


テーラーメイド「TP5」 まとめ

詳しいテストプロセスや「不良」ボールの定義方法、「True Price」の測定については、MyGolfSpy Ball Labページを参照ください。

テーラーメイド「TP5」 – まとめ

コンプレッション、直径サイズ、重量は全体的に平均範囲内であり、これらの測定で不適合と見なされたボールはなかったが、全く問題点がないわけではない。

私達が『不良品』とみなしたボールは全体の11%。これは決して驚くべき数字ではない。

ただし、サンプルボールの80%以上に何らかの問題が確認されたことは事実であり、大多数はマイナーな欠陥で懸念するほどではないものの、80%という数字は問題をはらんでいるのではないかという見方もある。

関係者なら反論もあろうが、実際これは他のボールテストの数字よりはるかに大きい。先に述べたように、5ピースという複雑な構造は、“ばらつき”をもたらしやすいということだ。