10年前に買ったユーティリティ、まだバッグに入ってる? 実は、それってあなただけじゃない。

新しいクラブにどんどん替えていくタイプのゴルファーもいれば、「これが合うから」と使い続ける人もいる。ちなみに僕も後者。だから気持ちはよくわかる。

ツアープロの世界では、毎年最新ギアに切り替えるのが当たり前…なんてイメージがあるかもしれない。でも実は、意外と“古株”を愛用し続けている選手も少なくない。プロの世界で“古い”というと、2シーズン前のモデルでも該当する。

ここでは、そんな“まだ手放せない1本”を、ツアープロの例とともに紹介していこう。


ジャスティン・ローズ(テーラーメイド「M6」 フェアウェイウッド)

M6フェアウェイウッドのヘッド。ハニカムパターンと『SPEED POCKET』構造が特徴。

テーラーメイドの「M6」フェアウェイウッドが登場したのは2019年。そんな“やや懐かしめ”のモデルを、ジャスティン・ローズはいまだに愛用中だ。現在のセッティングは15度の3番ウッドと21度の7番ウッド。

これまでさまざまなフェアウェイウッドを使ってきたローズだが、「M6」は2022年の時点でもバッグに入っていた。

一時は15度と18度の組み合わせだったこともあるが、2025年のセッティングは15度&21度。

ロフト角の調整はしても、モデルそのものは譲らない。それがローズにとっての「M6」だ。


パトリック・カントレー(タイトリスト「915F」3番ウッド&「TS2」7番ウッド)

Titleist TS2 フェアウェイウッド。高初速と直進性を追求した黒基調の洗練モデル。

パトリック・カントレーがいまだに使い続けているのが、2014年後半に登場したタイトリスト「915F」3番ウッド。

2017年からずっとセッティングに入っており、もはや彼の“相棒”と言っていい存在だ。

さらに、2018年発売の「TS2」7番ウッドも長年の定番モデルとしてバッグに収まっている。

「3番と7番、両方ともタイトリストのクラブを使っているけど、どちらも少し前のモデルなんだ。でも、ずっと使ってきたから信頼感があるし、特にこういうクラブは一度惚れ込むと、なかなか手放せないものなんだよ」と、カントレーは2024年のPGATour.comのインタビューで語っている。

さらに彼はこんなエピソードも披露してくれた。「フレッド・カプルスが、レディース用の3番ウッドを何年も使い続けていたって話を聞いたことがある。7番や3番ウッドって、いったん惚れたらバッグから抜くのがほんとに難しくなるんだよね。」

やっぱり“クラブの相棒”って、一度ハマったらなかなか替えられない。それはプロも同じ。あなたのバッグにも、まだまだ現役な“名器”が眠っているかもしれない。


ジャスティン・トーマス(タイトリスト「915Fd」5番ウッド)

Titleist 915F 3番ウッド。センターウエイトとアライメントが特徴のツアーモデル。

もう一人の“タイトリスト愛好家”、ジャスティン・トーマスも、古めの「915Fd」5番ウッドを手放していない。ロフト角は18度のモデルだが、実際には19.5度に設定して使っている。

多くのプロと同様、ドライバーは最新の「GT2」にアップデート済みだが、フェアウェイウッドについてはそう簡単に替えていない。

ちなみに、3番ウッドもタイトリストのやや古い「TS3」を使い続けている。


松山英樹(COBRA「KING RADSPEED TOUR」5番ウッド)

コブラ「RAD SPEED」ツアーモデルのフェアウェイウッド。低重心で高初速設計。

コブラ「KING RADSPEED TOUR(キングラッドスピードツアー)」は、2021年に登場した低スピン設計のフェアウェイウッド。その5番ウッドをバッグに入れているのが、松山英樹だ。

彼のクラブセッティングは“ミックスバッグ”の典型で、使用ブランドはスリクソン、テーラーメイド、コブラゴルフ、クリーブランド、タイトリスト、イオミック(グリップ)と、なんと6社に及ぶ。

「一つのブランドに統一しないといけない」と思っているなら、松山のセッティングから学べることは多いかもしれない。


ジェイソン・デイ(テーラーメイド「STEALTH」 7番ウッド&「Itsy Bitsy Spider Limited Red」パター)

テーラーメイド「Stealth」3番ウッド。黒と赤のコントラストが印象的。

ジェイソン・デイは、テーラーメイド「STEALTH(ステルス)」7番ウッドを使用中。そして見逃せないのが、2016年ツアー限定モデルの「Itsy Bitsy Spider(イッチービッチー スパイダー)」パターだ。

この「Itsy Bitsy Spider(イッチービッチー スパイダー)」パターは、デイが約10年にわたってバッグに出し入れしてきた“相棒”。

そして2025年、再び彼のバッグに復活している。誰しも一度は、ガレージの片隅に眠っていたパターを取り出して試してみたくなるもの。

ジェイソン・デイもきっと、そんな「もう一度信じてみたくなる一本」に賭けているのかもしれない。

性能やテクノロジーだけじゃない。そのクラブに積み重ねた経験こそが、スコアを支える何よりの武器になる。


ルドビグ・オーベリ(タイトリスト「TSR2」ドライバー&テーラーメイド「STEALTH 2」フェアウェイウッド)

ルーキーイヤーから注目を集めるルドビグ・オーベリは、タイトリスト「TSR2」ドライバーを発売当初から愛用中。本人もタイトリストの動画内で、「このクラシックな見た目が本当に気に入っている」と語っている。

さらに、フェアウェイウッドはテーラーメイド「STEALTH 2」の3番&7番をバッグにセット。

テーラーメイド「Qi10」や「Qi35」といった最新モデルが次々登場するなかでも、やはり“Stealth 2世代”のフェアウェイウッドは、多くのプロにとって信頼の選択肢になっているようだ。


ロバート・マッキンタイア(テーラーメイド「AEROBURNER」フェアウェイウッド)

テーラーメイド AeroBurner 3番ウッド。大胆な赤いロゴが印象的な飛距離重視モデル。

見ていて楽しいプレーヤー、ロバート・マッキンタイア。その魅力がさらに増すのが、バッグの中にいまだ入っている“2015年モデル”のテーラーメイド「AEROBURNER(エアロバーナー)」フェアウェイウッドだ。

このクラブは、2024年の「RBCカナディアンオープン」と「ジェネシス・スコティッシュオープン」という2つの勝利にも大きく貢献。発売からかなりの年月が経っていても、どうやら“まだまだ使える一本”らしい。


ニック・テイラー(タイトリスト「TSi3」 ドライバー&テーラーメイド「SIM2 MAX」 5番ウッド)

Titleist TSi3 ドライバーのソールクローズアップ。重量調整スライダー搭載の高性能モデル。

2020年に登場したタイトリスト「TSi3」は、今もニック・テイラーにとっての“エースドライバー”。PGAツアーで5勝を挙げている彼が信頼を寄せる一本だ。フェアウェイウッドでは、18度のテーラーメイド「SIM2 MAX」5番ウッドを使用中。

そして、3番ウッドは最近になってようやく新調。長年使っていたタイトリスト「TSi2」から、ついにテーラーメイド「Qi10」へと乗り換えた。長年の相棒に別れを告げ、新たな武器で挑む構えだ。


トニー・フィナウ(NIKE「VAPOR FLY PRO」 3番アイアン)

ナイキ「Vapor Fly」アイアンのクラブヘッド。カーボン調のバックフェースが特徴的。

トニー・フィナウが今も手放さずに使い続けているのが、2016年モデルのNIKE「VAPOR FLY PRO(ヴェイパーフライ プロ)」3番アイアン。グラファイトデザインの「TOUR AD DI HYBRID 105 X」シャフトを装着し、ロングアイアンというよりは“ユーティリティ的な役割”を担ってバッグに残っている。

興味深いのは、このクラブだけが異質な存在であること。他のアイアンはPINGの「BLUEPRINT S(ブループリントS)」シリーズを使用しており、セットとしては揃っていない。それでもフィナウにとって、この3番アイアンは“唯一無二の存在”。何年経っても手放せない、信頼の1本といことだ。


まとめ:クラブにも“定位置”がある

ツアープロたちのバッグを見ていて、ひとつだけハッキリしたことがある。それは、フェアウェイウッドが意外と長く使われ続けるクラブだということ。

ドライバーは比較的すぐに新モデルへスイッチされるし、パターも愛用期間は長い傾向にある。けれど、フェアウェイウッドはそれらを上回る“粘り強さ”でバッグに居座るケースが多い。

クラブが進化しても、変わらない信頼がそこにある。あなたはどうだろう?

今も変わらず、戦い続けている一本があるだろうか。