4モデルに絞られたラインナップだが、「ORIGIN（オリジン）」シリーズを侮ってはいけない。イーブンロール（Evnroll）が培ってきたパターテクノロジーの“核心”が、この新シリーズに凝縮されているからだ。
MyGolfSpyのテストでも、イーブンロールは常に高い評価を獲得してきたブランドだ。とくに「ER2」は、『Most Wantedパター』で何度も頂点に立ち、実力を証明してきた。
その背景にあるのが、フェース面全体で転がりのロスを抑え、距離感と方向性のばらつきを最小限に抑える『スイートフェイスグルーブ（溝）』だ。
この溝は芯を外しても「ボール初速を均一化」し、「距離を安定」させるだけでなく、「方向のズレもターゲットラインへ補正」してくれる。まさにミスヒットの影響を限りなく小さくするためのテクノロジーといえる。
実際、『スイートフェイスグルーブ（溝）』は“ミスヒットによる距離・方向の誤差を補正するフェーステクノロジー”の基準ともいえる存在で、多少打点がブレてもカップ近くに寄る──その再現性を多くのゴルファーが体感している。
イーブンロールを象徴するその中核テクノロジーが、今回『スイートフェイス（SweetFace™）2.0』として進化した。
「ORIGIN（オリジン）」シリーズの4本すべてにこの新溝が搭載され、打点がズレた際の距離の誤差や方向のブレを、従来よりも確実に抑える設計となっている。言い換えれば、イーブンロールが誇る“ゴルフ界で最も甘いフェース”が、さらにやさしく、さらに実戦的になったということだ。
ラインどりに自信が持てない、距離感が安定しない──そんな悩みを抱えるゴルファーにとって、「ORIGIN（オリジン）」シリーズは確かな武器になり得る。
『スイートフェイステクノロジー』刷新のリスク
『スイートフェイスグルーブ（溝）』の刷新は、イーブンロールにとって大きな挑戦であり、同時にリスクも孕んだ決断だ。
というのも、従来の『スイートフェイスグルーブ』はすでに性能が確立され、多くのゴルファーから絶対的な信頼を得ている。
もし新しい形状がその基準に届かなければ、ブランドの強みが揺らぎ、長年築いてきたユーザーを失う恐れもある。いわば“ニューコーク問題”のような事態を避けたい理由は明白だ。
しかし、進化を止めれば技術競争の中で取り残される。各社がフェース面の補正技術を加速させる中、同じ溝を出し続けるだけでは優位性を保てない。
そこでイーブンロールは、『スイートフェイス（SweetFace™）2.0』の開発に踏み切った。
彼らの説明によれば、この新溝は初代を「3つの主要な性能領域で上回る」とされ、ブランドの核となるテクノロジーをさらに一段押し上げる狙いが込められている。イーブンロール『スイートフェイス2.0』─ より柔らかく、より速く、より真っすぐへ
『スイートフェイス（SweetFace™）2.0』は、従来の『スイートフェイスグルーブ（溝）』を“ソフト・ファスト・ストレート”の3領域で進化させた最新仕様だ。
「打感」、「ボール初速」、そしてミスヒット時にラインへ戻す「方向補正力」──パッティングの成否を左右する要素を総合的に底上げしている。まず、溝の深さを浅くしたことでインパクト時の接触面積が減り、フェースがよりソフトな感触となった。加えてフェース自体を厚くした構造が、柔らかさの中に芯のある打感を作り出している。
浅い溝は「ボール初速の向上」にも直結する。フェースに“まとわりつく”時間が短くなるため、インパクト後すぐにボールが前へ転がり出し、距離のバラつきも抑えられる。
もちろん、可変パターンによるオフセンターヒット時の距離補正機能はそのまま継承されている。そして最大の進化点が、新採用の『パラボリックウェーブパターン』だ。ヒールやトゥに当たった際でも、溝の厚みの変化がボールをセンター方向へ押し戻し、意図したライン上に乗せる補正力が従来よりも強化されている。
📝補足：『パラボリックウェーブパターン』は、フェース面の溝の形状を“放物線状（パラボリック）に波状へ変化させた”新しいデザインで、ミスヒット時にボールをターゲットラインへ戻すための“方向補正力”を高める狙いがある。
どこかで見た“この波模様” ─ その記憶の正体
新しい『スイートフェイス（SweetFace™）2.0』を初めて見た瞬間、どこかで見覚えのある形状だと感じた。
記憶の糸をたどりながら手元のパター資料を漁ってみると、2014年の「ゲリン・マスター ミルド ツアースペック（Guerin Master Milled Tour Spec）」ブレードが出てきた。そこには、今につながる“波状の溝”が確かに刻まれていた。
もちろん、この溝がそのまま『スイートフェイス2.0』になったわけではない。当時はまだ『スイートフェイスグルーブ（溝）』もイーブンロールというブランド自体も存在していない。
しかし、“転がりを補正するためにフェース面を波状に変化させる”という発想が、すでにゲリン・ライフの頭の中にあったことは間違いない。
長年パターづくりを続けてきたデザイナーが、こうしたアイデアを温め続け、いま「2.0」として結実させた。その点に、今回の進化の深みがある。
📝補足：「ゲリン・ライフ」はイーブンロールの生みの親であり、現代パター設計をリードしてきた革新的デザイナー。
（それにしても、自分の記憶がまだしっかり働いていたと確認できたのも少し嬉しかった。）
以上が、『スイートフェイス2.0』のルーツにまつわる小話だ。では、ここからは「ORIGIN（オリジン）」シリーズの新モデルを見ていこう。
イーブンロール「ER2」 ─ ORIGINでさらに磨かれた“結果の出るブレード”
イーブンロールの中で最もタイトルを獲得してきた名器「ER2」。その形状を基盤に、現代的な精度と打感へ磨きをかけたのが、今回の「ORIGIN ER2（オリジンER2）」だ。
この「ER2」がラインアップ入りしたことに驚く必要はない。MyGolfSpy のパターテストでは、長年にわたり「ER2」が “最も結果を残す1本” として評価され続けてきた。
シリーズにおける立ち位置は、パターデザインの定番である「Anser（アンサー）」や「Newport（ニューポート）」に相当し、イーブンロールの販売を牽引する象徴的存在でもある。
ただし、「ER2」は往年の名器とは違い、比較的近年生まれたモデルだ。その人気はノスタルジーではなく、「入るパター」としての実力がゴルファーに認められた結果 だ。
実際、「ER2」はラインに乗せやすく、距離が揃いやすい。幅広ブレード形状ながら安定した転がりを生み、ショートパットからロングパットまで幅広く対応できる。
だからこそ多くのゴルファーが 「ER2」 を信頼し、使い続けている。
そして今回の 「ORIGIN ER2」では、『スイートフェイス2.0』を搭載することで、その“入る安定感”がさらに際立った。
もし「新溝がER2の良さを壊してしまうのでは？」と心配しているなら、むしろ逆だと言いたい。ターゲットへ構え、打ち出した方向へそのまま転がっていく“点を狙って打つ感覚”は健在で、フェースの打感は従来モデル以上に心地よい。
「ER2」の本質はそのままに、より精密で、よりやさしく進化したモデル。それが「ORIGIN ER2」だ。
イーブンロール「ORIGIN ER5」 ─ ウイングを研ぎ澄ました高安定マレット
センターキャビティ（中央のくり抜き）を排し、そのぶんヘッド外周に重さを集めたことで、安定性を高めたウイング型マレットが「ORIGIN ER5」だ。
現代的な“ウイング型マレット”を、よりシャープで機能的な方向へ振り切った1本。初めてこの形状を見たとき、思わず“長い牙”のようだと感じた。
一般的なファング型パターよりも細く、長く伸びたウイング。その印象をより強めているのが、フェース後方にフランジを持たないデザインだ。
余計なボリュームを排したことで、「ER5」は見た目のシャープさと構えたときの集中力を両立している。
アドレスすると、その意図がより明確になる。
ターゲットラインと平行に伸びる外側の角度、長いサイトライン──これらの視覚要素が自然と視線をフェース中央へ集め、打ち出し方向のイメージを作りやすくしてくれる。さらに、「ORIGIN」シリーズ共通で『交換可能ウエイト』を搭載。
ヘッド重量・バランスを自分好みに調整できるため、ストロークのテンポを合わせたいゴルファーにも扱いやすい仕様といえる。
ウイングマレットに“正確さ”と“シャープさ”を求めるなら、「ER5」はシリーズ随一の完成度だ。
イーブンロール「ORIGIN ER8」 ─ スクエアバックで狙いやすく、柔らかく転がるマレット
「ORIGIN『ER8』」は、丸みのあるマレット形状にスクエアバックの要素を融合させた、コンパクトで上品な1本。
フルレングス（ヘッド後方まで一直線に伸びる）のサイトライン（目標方向を示すガイドライン）と、新しく整えられた輪郭が構えやすさを高めている。
丸型マレットと聞くと、私が辛口の評価をすると思う人もいるかもしれない。だが正直に言えば、この「ER8」は今回のラインナップの中でも“最も転がしやすい”と感じたモデルだ。
（これだから、どんなパターも実際に転がしてみるべきなのだ。）
特筆すべきはフェースから伝わる打感だ。
『スイートフェイス2.0』の繊細なフィーリングと、「ER8」独自のヘッド形状が見事に噛み合い、柔らかく伸びるような転がりを生み出してくれる。
そして、「ER8」の肝となるのがスクエアバック形状。
丸型ヘッドに対して後方を四角く整えることで、アドレス時の目線が中央の矩形部分に自然と集まり、ラインの取りやすさが格段に向上している。私自身、曲線よりもこの“中央の四角いエリア”がターゲットに合わせやすかった。この「ER8」は、パターデザインの奥深さを改めて感じさせる1本だ。
同じ丸型マレットでも、後方をスクエアにするだけで印象は大きく変わり、全く違うタイプのゴルファーに刺さるモデルへと生まれ変わる。
イーブンロール「ORIGIN ER10」 ─ 大型ヘッドが生む圧倒的な安定性と直進性
「ORIGIN ER10」は、フルサイズの高MOIマレット。
「6061アルミニウム」の削り出しボディに、「303ステンレススチール」製のウエイトウイングを組み合わせた構造が、シリーズ随一の安定性を生み出す。本来“劇的に違う見た目”という言葉は、この「ER10」のために取っておくべきだったかもしれない。
それほど、このデザインは攻めている。だが、そこがイーブンロールらしさでもある。イーブンロールは、マレットデザインの常識を押し広げるブランドだ。
ゼロトルクモデル（「S2R」/「S2S」）しかり、過去の実験的なモデルしかり、二桁番号に入ると、とくに“もう一歩先を攻めた”形状が登場する傾向がある。
「ER10」もまさにその系譜。
見た目のインパクトだけでなく、重量配分と直進性に徹底してこだわった、イーブンロールの挑戦的なマレットだ。
「ORIGIN ER10」は、「マルチマテリアル構造（異なる素材を組み合わせたヘッド構造）」を活かした高MOIマレットだ。
外側のボディには「6061アルミニウム」、そして中央を貫くウイングには比重の高い「303ステンレススチール」が使われている。
一般的なマレットは、外周に重いステンレス、中央に軽いアルミを配置して慣性モーメント（MOI）を稼ぐが、「ER10」はその逆。
一見すると“常識外れ”とも言える構造だが、ここにイーブンロールらしい発想がある。
高MOIを生んでいるのは、中央のステンレスウイングがヘッド後方のコーナーまで伸びる形状。
これにより、重さが要所へ効率よく配置され、大型ヘッドらしい圧倒的な安定性が生まれる。アルミフェースならではの“ややしっかりとした打感”。ステンレスの柔らかな乗り感とは違うものの、球離れが速く、打ち出しの方向性をイメージしやすい。
結果として「ER10」は、奇抜に見えて理にかなった重量設計を備えた、安定性特化の大型マレットという位置づけになる。
2026年パターテストが楽しみ⛳『ORIGIN』は覇権を握るのか？
「ORIGIN」シリーズが新たに加わり、イーブンロール（Evnroll）の2026年ラインアップは一気に厚みを増した。
もし新採用の『スイートフェイス2.0（SweetFace™ 2.0）』がメーカーの言う通りに進化しているなら、来年のテストで「ORIGIN」パターを軽視する理由はほぼない──それほど期待値は高い。ここに『V-Series』、ゼロトルク設計の『ZERO』、そしてツアー仕様のカウンターバランスモデルまで並ぶのだから、いまのイーブンロールは“フルラインアップの完成形”と言っていい。
もちろん、今回の『ORIGIN』4モデルは 右打ち・左打ちの両方に対応。選択肢の幅はしっかり確保されている。
さて、あなたはどの「ORIGIN」に心を動かされた？
長年「ER2」をエースパターとして使ってきたゴルファーほど、「そろそろ世代交代のタイミングか？」というざわつきを感じ始めているはずだ。もし新しい『SweetFace™ 2.0』が本当に“さらにスウィート”な転がりを生み出すなら──その予感は、思った以上に早く現実になるかもしれない。
新しい『ORIGIN』の全ラインアップは、Evnroll.comでチェックできる。
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