ゴルフボールの進化といえば、「ボール初速」が真っ先に語られる。
だが、今回のテーラーメイド「TP5」「TP5x」が掲げた軸は、そこではない。

最大の焦点は、新たに導入された『マイクロコーティング』工程だ。
狙いは、目に見えないレベルで生じていた“ばらつき”を抑え、同じボールを打てば同じ弾道が得られる状態をつくること。

テーラーメイドが強調するのは、単なる「速さ」ではない。
“予測しやすさ”という、再現性そのものだ。


テーラーメイド「TP5」ツアー系ゴルフボールとウェッジ。グリーン周りでのスピン性能を示すイメージ

一見すると基本構成は変わらない。
5ピース構造のツアーボールが2モデル展開され、「TP5」はソフトな打感とグリーン周りでのスピン性能を重視。「TP5x」は高い「ボール初速」と低スピン設計による強い弾道で「最長飛距離」を狙う。

だが今回のアップデートは、単なる性能バランスの微調整ではない。

テーラーメイドが手を入れたのは、コアやマントルといった内部構造だけではなく、ボール表面の“仕上げ工程”そのものだった。

そこから浮かび上がったのが、多くのゴルファーが意識してこなかった「弾道の再現性」に関わる問題だ。

テーラーメイドは今回、「TP5」「TP5x」をこれまでで最も再現性の高いツアーボールだと位置づける。
狙っているのは“最大値”ではなく、“揃うこと”だ。

今シーズンのゴルフボール市場では、すでに塗装精度が一つのテーマになっている。
その流れに対し、さらに踏み込んだ技術的アプローチが示された形だ。

これは単なるモデルチェンジではない。
ツアーボールの評価基準そのものを、静かに変えようとする提案でもある。


テーラーメイド「TP5」と「TP5x」のツアー系ゴルフボール比較

ゴルファー起点の設計から、10万通りの検証へ

テーラーメイドのゴルフボール開発における基本姿勢は変わっていない。
ゴルファーのフィードバックを起点に、屋内外のテストを重ね、実物試作を通じて微調整を行う。その流れは今も設計の軸にある。

だが「TP5」「TP5x」では、検証のスケールが大きく変わった。
工具を起こす前の段階で、コア径、レイヤー厚、素材配合、剛性分布といった要素の組み合わせを、10万通り以上検証できるデジタルプロトタイピング環境を構築しているという。

これは単なる机上のシミュレーションではない。
長年の実物試作データ、素材特性、空力テストの蓄積を反映させた上で、設計の方向性を絞り込むためのツールだ。

特に5ピース構造を採用するテーラーメイドのボールは、3ピースや4ピース構造よりも調整可能な要素が多い。
性能を引き上げる余地が広い一方で、わずかなズレが弾道バランスを崩すリスクも抱える。

だからこそ、事前段階での膨大な検証が意味を持つ。
今回の「TP5」「TP5x」は、その中から“再現性”という方向性を明確に選び取った設計と言える。


「TP5」──ソフトな打感に、実用的な初速をプラス

ーラーメイド「TP5」2026年モデルのツアー系ゴルフボールとパッケージデザイン

「TP5」でまず注目すべき変化は、飛距離性能の引き上げだ。
テーラーメイドは今回のモデルを、歴代「TP5」の中で最も速い設計と位置づけている。

従来の「TP5」は、ソフトな打感とグリーン周りでのスピン性能を重視するモデルだった。
一方で、フルショット時の「ボール初速」や「トータル飛距離」では「TP5x」に一歩譲るという立ち位置でもあった。

2026年モデルでは、同社史上最大サイズのツアーコアを採用。
コア体積を拡大することでエネルギー伝達効率を高め、フルショット時の「ボール初速」向上を狙っている。

ポイントは、初速性能の引き上げと打感のバランスだ。
レイヤー構成全体を見直すことで、従来の「TP5」が持つ柔らかさやウェッジでのスピン特性を維持しながら、ドライバー領域の性能を底上げする方向性が示されている。

空力面では再設計された「Tour Flight Dimple Pattern」を採用。
揚力と抗力のバランスを見直し、吹き上がりを抑えながらも十分な「最高到達点」を確保し、グリーンで止めやすい「落下角度」を安定させる設計だ。

過去のロボットテストでは、「TP5」は打ち出し角が比較的低めながら、最高到達点が高くなりやすい傾向が見られていた。
今回のモデルでは、その弾道特性を踏まえ、「最高到達点」と「落下角度」の関係をより安定させる方向で調整が行われている。

ウェッジでの打感やスピン性能を重視しつつ、ティーショットでの「トータル飛距離」に物足りなさを感じていたゴルファーにとって、今回の「TP5」は有力な選択肢になり得る。


「TP5x」──さらなる「ボール初速」と低スピン設計

テーラーメイド「TP5x」2026年モデルのツアー系ゴルフボールとパッケージ

TP5シリーズの中で、「TP5x」はこれまで通り、初速と飛距離性能を重視するモデルだ。
テーラーメイドは今回の「TP5x」を、歴代モデルの中でも最も「ボール初速」性能を高めた設計と位置づけている。

その中心にあるのが、マントル層の見直しだ。
新素材の採用と硬度調整によって、ドライバーやロングアイアンでの「ボール初速」を引き上げつつ、「スピン量」を抑える方向へと設計されている。

さらに、コアとマントルを一体で機能させることで、インパクト時のエネルギー伝達効率を高めながら、スピン量の管理精度を向上。
狙いは、風の影響を受けにくく、「最高到達点」と「落下角度」が安定する強い弾道だ。

グリーン周りでのスピン量は「TP5」ほどではない。
その代わり、フルショット時の「トータル飛距離」と「ショット範囲(左右のばらつき)」の安定性に重きを置いた特性が明確に打ち出されている。


見えない問題をどう解決したのか──塗装が性能に影響する理由

テーラーメイド「TP5x」ゴルフボールのディンプル構造とロゴを捉えた接写画像

新素材や空力設計の見直しだけでも、「TP5」と「TP5x」は十分な改良が加えられている。
だが、今回もっとも注目すべき変化は、コアやマントルではない。

焦点となったのは、ボール表面の塗装工程だ。

テーラーメイドの社内テストでは、従来の「TP5」を用いた検証の中で、構造や素材が同一であるにもかかわらず、弾道挙動に差が生じるケースが確認されていたという。

あるボールは「最高到達点」が高くなり、あるボールは「トータル飛距離」が伸びず、また別のボールでは「ショット範囲(左右のばらつき)」が拡大する。
計測機器上の初期数値に大きな差が見られないにもかかわらず、実際の飛行中の挙動が揃わない現象があったとされる。

これは決して前例のない話ではない。
MyGolfSpyのボールテストでも、個体差に起因すると考えられる弾道のばらつきが確認されるケースはこれまでにも報告されてきた。

原因を探るため、テーラーメイドは屋外テストだけでなく、画像解析や超微細計測設備を用いた表面解析にも取り組んでいる。

顕微鏡レベルの観察によって浮かび上がったのが、塗装工程における微細な差異だった。
ディンプル内部やエッジ部分に生じるわずかな塗装厚の違いが、空気の流れに影響を与えている可能性が示唆されたという。

こうして焦点は、ボール内部構造ではなく、「塗装が弾道に与える影響」へと移っていった。


テーラーメイド「TP5」ストライプデザインとパターのアドレス位置

調査の結果、浮かび上がってきたのは、これまで十分に議論されてこなかった要素だった。

従来の塗装工程そのものが、弾道の安定性に影響を与えている可能性があるという指摘だ。

一般的なゴルフボールは、白色塗料を重ね、その上からクリアコートを施す複数工程で仕上げられる。
高度に管理された工程ではあるが、成形工程のように金型精度で完全に固定できる性質のものではない。

塗料はわずかに流動し、ディンプル内部やエッジ部分で塗装厚に差が生じることがある。
その結果、ディンプル形状の微細な差異が生まれる可能性がある。

こうした差異が空気の流れに影響を与え、空力特性にわずかな変化をもたらす。
その積み重ねが、「最高到達点」や「ショット範囲(左右のばらつき)」の再現性に影響している可能性が示唆された。

影響が小さい場合もある。
しかし条件次第では、無視できない差として現れることもあるという。

社内検証では、ほぼ同条件下で打たれたボールでも、最終的な落下地点や「ショット範囲(左右のばらつき)」に差が生じるケースが報告されている。
具体的な数値は公開されていないが、ツアーボールとして看過できないレベルのばらつきだったとされる。

外観上は判別できない。
だからこそ、この問題は「見えない問題」と位置づけられている。


マイクロコーティング──ゴルフボールの「仕上げ」を変える新技術

テーラーメイド「TP5」の均一なペイント仕上げを示す拡大イメージ

弾道のばらつきを生んでいた要因に対し、テーラーメイドが提示した解決策が「マイクロコーティング」だ。

これは単に塗装を薄くする技術ではない。
塗料の粒子サイズ、噴霧状態、硬化条件、塗装量までを精密に管理し、塗装工程そのものを再設計するアプローチである。

狙いは、ディンプル形状への影響を最小限に抑え、表面全体をより均一な状態で仕上げることだ。

顕微鏡レベルでの比較では、従来塗装ではディンプル底部とエッジ部分の間に塗装厚の差が確認されるケースがあったとされる。
マイクロコーティングでは、そうした偏りが抑制されているという。

ロボットテストでは、外観上は同じボールであっても、塗装状態の違いによって弾道挙動に差が生じることが確認された。

テーラーメイドが重視したのは、飛距離やスピン量の“最大値”ではない。
毎回、同じ弾道が得られるかどうか──その再現性である。

社内テストでは、外観が同一の3種類のボールを比較している。
マイクロコーティング仕様の「TP5」、ディンプル底部に塗料が溜まった状態のボール、そして噴霧ムラによって塗装が不均一になったボールだ。

弾道測定器上の初期数値はほぼ同一だった。
しかし実際の飛行データでは、「最高到達点」「トータル飛距離」「ショット範囲(左右のばらつき)」に差が生じたとされる。

ツアーボールとしては看過できないレベルのばらつきが確認されたことが、今回の技術開発の背景にある。

マイクロコーティングが目指しているのは、こうした差を可能な限り排除することだ。
同じ条件で、同じスイングをすれば、同じ弾道が返ってくる。その信頼性こそが、今回の進化の本質と言える。


テーラーメイド「TP5」ゴルフボールをドライバーで打つ瞬間のイメージカット

ツアーの現場を超えた検証

テーラーメイド「TP5」ゴルフボールがバンカーに止まるシーン

ツアープロからのフィードバックは、これまでもテーラーメイドの開発において重要な役割を担ってきた。
今回の「TP5」「TP5x」では、検証対象をツアープレーヤーだけにとどめず、一般ゴルファーと日常的に接しているスタッフプロにも広げている。

彼らから寄せられた評価は概ね共通している。
飛距離のばらつきが抑えられ、「ボール初速」が安定していること。
さらに、風の中でも「最高到達点」と「落下角度」が揃いやすく、弾道の再現性が高いという点だ。

特に、高スピン設計の「TP5」であっても過度な吹き上がりが抑えられ、「ショット範囲(左右のばらつき)」が安定するという評価が多く聞かれたという。

テーラーメイドにとって重要なのは、ツアープロが評価することそのものではない。
異なるコンディションでプレーする上級アマチュアや競技志向のゴルファーにおいても、同様の結果が得られるかどうかだ。

再現性が担保されて初めて、性能は意味を持つ。
「TP5」「TP5x」は、飛距離やスピン量の最大値を追うのではなく、性能を揃えるという方向性を明確に打ち出している。

毎回ティーアップするたびに、同じ挙動を示すこと。
それこそが、今回の進化の核心にある。


発売情報・カラー・価格

テーラーメイド「TP5x」ツアーボールのロゴとアライメントマーク

発売情報・カラー・価格

「TP5」「TP5x」は、ホワイト、イエロー、pix、ストライプ、MySymbolの各仕様が用意される。

予約販売はすでに開始されており、一般販売は2月12日から開始予定だ。

標準仕様はホワイト、イエロー、pix、そして「TP5/TP5x ストライプ」。

ストライプモデルには再設計された『360° Tour ClearPath Alignment™』を採用。
視認性を高めたフィードバックラインと追加されたパフォーマンスドットにより、グリーン上でのアライメント精度向上を図っている。

価格はホワイト/イエロー/pix/ストライプ仕様が1ダース57.99ドル。

室内用ローンチモニター計測に対応したTRKR仕様や、NFL・大学公式デザインなどのスペシャルモデルは1ダース64.99ドル。

MySymbol仕様は米国限定で、価格は1ダース62.99ドルとなる。

なお、上記は米国市場向けの情報です。
日本での仕様・発売日・価格の詳細は、テーラーメイド公式サイトをご確認ください。


テーラーメイド公式「TP5/TP5x」ゴルフボール 製品情報