タイトリストのゴルフボールには、「Pro V1(プロV1)」などのウレタンカバーを採用したツアー系モデルとは別に、「TruFeel(トゥルーフィール)」「Velocity(ベロシティ)」「Tour Soft(ツアーソフト)」という3つのアイオノマー系モデルがある。
それぞれ異なる性能を重視したボールだが、まず興味深いのがモデルチェンジの周期だ。
ゴルフボール市場では、一定の販売規模を持つモデルが2年程度で更新されることは珍しくない。しかし近年の「トゥルーフィール」と「ベロシティ」は、実質的に約4年のサイクルでモデルチェンジされている。
その背景のひとつとして考えられるのが、モデルチェンジのたびに、はっきりと意味のある性能向上を生み出すことが以前ほど簡単ではなくなっていることだ。
特に、使用できる素材や製造コストに制約のあるカテゴリーでは、変えられる部分にも限りがある。
では、そんな条件の中で、タイトリストは3つのアイオノマー系モデルにどんな役割を与えているのか。
そして、それぞれのボールは、何を得る代わりに、何を妥協しているのか。
MyGolfSpyのテストデータから、その違いを見ていこう。

「トゥルーフィール」と「ベロシティ」は、以前よりもそれぞれの狙いが明確になっている。
現在の両モデルは、幅広い性能を少しずつ伸ばすというより、「このボールは何を重視するのか」をはっきりさせた設計だ。
「ベロシティ」なら飛距離、「トゥルーフィール」ならソフトな打感。
そうして特定の性能に狙いを絞るほど、モデルチェンジのたびに目に見える進化を生み出すことは難しくなる。開発に時間がかかるのであれば、無理に短いサイクルで変える必要もない。
ただし、この3モデルの中で少し異なる存在が「ツアーソフト」だ。
「ツアーソフト」は「トゥルーフィール」「ベロシティ」と同じタイトリストのBall Plant 2で製造されているが、この2モデルとは異なり、現在も2年のモデルチェンジ周期を維持している。
タイトリスト自身が「ツアーソフト」を、ゴルフボールカテゴリーにおける**「最も知られていない秘密」**と表現しているのも興味深い。
「トゥルーフィール」と「ベロシティ」が、それぞれ特定の性能を強く追求しているのに対し、「ツアーソフト」の狙いは少し違う。
アイオノマーカバーのボールでありながら、高性能なウレタン系ボールにどこまで近づけるのか。
少なくともタイトリストのラインナップの中では、それが「ツアーソフト」に与えられた役割と考えると分かりやすい。

そして「ツアーソフト」は、実際のテストでも興味深い結果を残している。
これまで2回のボールテストを見る限り、「ツアーソフト」はMyGolfSpyがテストしたアイオノマーカバーのボールの中でも、総合性能の高いモデルのひとつだ。
特にドライバーやアイアンなどのフルショットでは、ウレタン系ボールに迫る性能を見せている。
ただし、グリーンに近づくほど、その差は明確になっていく。
この点については、「ツアーソフト」のテストデータとともに後ほど詳しく見ていこう。
それでは、「ベロシティ」「トゥルーフィール」「ツアーソフト」の3モデルを、それぞれ詳しく見ていく。
なお、ここから記載するコンプレッション値は、タイトリストの公称値ではなく、MyGolfSpyが独自に測定した数値だ。
タイトリスト「ベロシティ」|コンプレッション90(MyGolfSpy実測)

「ベロシティ」が最優先するのは、名前の通り飛距離だ。
そのために重視しているのが、ボール初速と低スピンの組み合わせ。近年、アイオノマーカバーを採用したボールでもソフトな打感を売りにするモデルが増えているが、「ベロシティ」はその中でもかなりしっかりとした打感の部類に入る。
MyGolfSpyの実測コンプレッションは90。高めのコンプレッションを生かしてボール初速を確保し、低スピンと組み合わせて飛距離を狙うという、非常に分かりやすい方向性を持ったボールだ。
そして、その特徴はテスト結果にもはっきり表れている。
MyGolfSpyの2026年ボールテストでは、ドライバーヘッドスピード約45m/sの条件で、「ベロシティ」がトータル飛距離1位を記録した。
ただし、ここには重要な補足がある。
1位だったのはランを含めたトータル飛距離で、キャリーでは12位だった。
つまり「ベロシティ」の飛距離性能は、単純にボールが誰より遠くまでキャリーするという話ではない。低スピンなどによってランも稼ぎ、最終的な飛距離につなげるタイプと考えた方が実際のテスト結果に近い。
一方、アイアンショットでは、そこまで極端な性格ではない。
2026年のテストでは、アイアンのスピン量は全体の中間あたり。最高到達点はおおむね上位3分の1に入っている。
アイアンではスピン量が極端に少なくなるわけではなく、弾道の高さも確保されている。
ドライバーでは飛距離性能を明確に打ち出しながら、アイアンでは極端な低スピン・低弾道になるわけではない。ここも「ベロシティ」の特徴のひとつだ。

ただし、他のアイオノマーカバーのボールと同様、「ベロシティ」の設計上のトレードオフはグリーン周りではっきりと表れる。
MyGolfSpyのテストでは、アプローチでインパクトした際にボールがフェース上をやや上方向へ移動する傾向が見られた。こうした挙動もあり、グリーン周りのスピン量は少ない。
実際、2026年の35ヤードウェッジテストでは、「ベロシティ」のスピン量は48モデル中で最も少なかった。
さらに、このテストでは打ち出し角も全モデル中で最も高かった。つまり、グリーン周りでは高めに打ち出され、スピンで強く止めるタイプのボールではない。
グリーン周りでスピンを使ってボールを止めたいゴルファーにとっては、これだけで「ベロシティ」を選択肢から外す理由になり得る。
しかし、「ベロシティ」が最優先しているのは、あくまで飛距離だ。
そして、すべてのゴルファーがグリーン周りで高いスピン性能を必要としているわけでもない。
ボールをスピンで止めるショットより、ランニングアプローチ(転がしを多く使って寄せる打ち方)を好むゴルファーなら、「ベロシティ」の低スピンという弱点を受け入れやすい。
つまり、「ベロシティ」を選ぶうえで重要なのは、単純に「スピンが少ないからダメ」と考えることではない。
飛距離を優先する代わりに、グリーン周りのスピン性能をどこまで妥協できるか。
そこが、このボールとの相性を判断するポイントになる。
タイトリスト「トゥルーフィール」|コンプレッション70(MyGolfSpy実測)

「トゥルーフィール」は、ある意味で「ベロシティ」と対照的なボールだ。
「ベロシティ」が飛距離を最優先するのに対し、「トゥルーフィール」が重視しているのは、その名前が示す通り“ソフトな打感”だ。
ただし、市場にあるボールの中で最も柔らかいというわけではない。
MyGolfSpyの実測では、「トゥルーフィール」のコンプレッションは70。コンプレッション90の「ベロシティ」と、MyGolfSpyの測定では最も柔らかい部類に入るキャロウェイ「Supersoft(スーパーソフト)」の、ほぼ中間に位置する。
では、この柔らかい領域でのコンプレッション20程度の差を、実際にどれだけのゴルファーが打感の違いとして感じ取れるのか。
正直なところ、そこははっきりしない。気になるゴルファーもいれば、ほとんど違いを感じないゴルファーもいるだろう。
重要なのは、タイトリストが極端な柔らかさだけを追求しているわけではないことだ。
究極のソフトさを少し譲る代わりに、ボール初速と飛距離を確保する。これが「トゥルーフィール」のトレードオフだ。
MyGolfSpyのテストでは、多くの条件で「トゥルーフィール」のドライバー飛距離は全体の中間あたりだった。しかし、ヘッドスピードが遅くなるほど、テストしたボールの中での飛距離順位は相対的に上がっていく。
実際、ヘッドスピード約38m/sのテストでは、ドライバーの総飛距離で4位、アイアンのキャリーで3位という結果だった。
つまり、「トゥルーフィール」は単に柔らかさだけを求めたボールではない。
ヘッドスピードが比較的遅めで、ソフトな打感を好みながら、飛距離もできるだけ確保したいゴルファーにとっては、有力な選択肢になり得る。

「トゥルーフィール」には、もうひとつ注目したい特徴がある。
弾道の高さだ。
MyGolfSpyがヘッドスピードの速い条件で行った7番アイアンのテストでは、「トゥルーフィール」がテストした全ボールの中で最も高い最高到達点を記録し、落下角も最も大きかった。
さらに、アイアンのスピン量も、よりコンプレッションの低いボールと比べると一段高い傾向にある。
つまり、ソフトな打感を重視しながら、アイアンでグリーンを狙うショットでは、高い弾道と大きな落下角、そしてある程度のスピンによってボールを止めたいゴルファーにとって、有力な選択肢になり得る。
ただし、グリーン周りまで来ると話は変わる。
他のアイオノマーカバーのボールと同様、グリーン周りのスピン量は少なく、ショートゲームでスピンを使って止めたいゴルファーにとっては弱点になり得る。
とはいえ、MyGolfSpyの35ヤードショットのテストでは、「トゥルーフィール」がタイトリストの3つのアイオノマー系モデルの中で最も高いスピン量を記録した。
「ベロシティ」ほど飛距離性能に特化したボールではない。
ソフトな打感を軸にしながら、アイアンでの高さやスピン、飛距離とのバランスも取ろうとしている。
そこが「トゥルーフィール」の特徴だ。
タイトリスト「ツアーソフト」|コンプレッション88(MyGolfSpy実測)

「ツアーソフト」がMyGolfSpyの注目を集めたのは、2025年のボールテストだった。
ボールテストでは毎回、予想とは違う結果を見せるモデルがいくつか出てくる。それが必ずしも良い意味とは限らない。
しかし、「ツアーソフト」は違った。
アイオノマーカバーのボールとは思えないほどの性能を、いくつものテストで見せたからだ。
これまでのテストから得られた印象を端的に言えば、「ツアーソフト」はドライバーやアイアンなどのフルショットでは、ツアー系ウレタンボールにかなり近い性能を見せる。
MyGolfSpy実測のコンプレッションは88。これは「プロV1」とほぼ同じ領域にあり、多くのフルショット条件でも、コンプレッション90前後のウレタンカバーのボールに近い挙動を示した。
もちろん、コンプレッションが近いからといって、性能まで同じという意味ではない。
そして、「ツアーソフト」とウレタン系ボールの違いは、グリーンに近づくほど明確になっていく。 フルショットでは小さかった差が、ウェッジ、そしてグリーン周りのショットになるにつれて大きくなるからだ。
それでも、これまでのテスト結果を踏まえれば、「ツアーソフト」はMyGolfSpyがテストしたアイオノマーカバーのボールの中でも、総合性能の高いモデルのひとつと言っていい。

MyGolfSpyがこれまで5回にわたって行ってきた大規模なボールテストでも、同程度のコンプレッションであっても、モデルによって性能には明確な違いがある。
それを踏まえたうえで興味深いのが、「ツアーソフト」のテスト結果だ。
多くのテスト条件で、「ツアーソフト」の数値は上位のウレタン系ボールと比べても大きく見劣りしない。少なくともグリーンに近づくまでは、データだけを見てアイオノマーカバーのボールだと判断するのが難しいほどだ。
ドライバーでは、3段階すべてのヘッドスピード条件で、「ツアーソフト」はテストしたアイオノマー系ボールの中でも、ボール初速が速く、弾道も高い部類に入った。
さらに、ヘッドスピードの速い条件で行った7番アイアンのテストでは、スピン量6,700rpmで全体6位。ほかのヘッドスピード条件でも、高いアイアンスピン性能を見せた。
これは「ツアーソフト」を考えるうえで重要な結果だ。
アイオノマーカバーでありながら、フルショットではウレタン系ボールに迫るスピン性能を発揮する。
「ツアーソフト」が一般的なアイオマー系ボールとは少し違う存在であることが、ここにも表れている。

ただし、アイオノマーカバーを採用することによるトレードオフは、ウェッジショットではっきりと表れる。
フルショットのサンドウェッジでは、一般的なアイオノマー系ボールより高いスピン量を記録したものの、平均的なウレタン系ボールには届かなかった。
そして、グリーンにさらに近づくと、その差はもっと明確になる。
35ヤードのウェッジテストで、「ツアーソフト」のスピン量は4,231rpm。アイオノマー系としては健闘しているものの、上位のウレタン系ボールとはまだ大きな差がある。
2026年のテストでは、グリーン周りのスピン量は48モデル中42位。さらにテスト全体で見ると、ウレタンカバーのボールはアイオノマーカバーのボールより、グリーン周りで平均約1,250rpm多くスピンしている。
ドライバーやアイアンではウレタン系ボールに迫る性能を見せていた「ツアーソフト」も、グリーンに近づけば、アイオノマーカバーであることの代償がはっきりと表れる。
2025年のテスト後、私は「ツアーソフトにウレタンカバーが使われていたら、プロV1になっていただろう」と書いた。
もちろん、「ツアーソフト」と「プロV1」が同じボールだという意味ではない。
むしろ重要なのは、その違いだ。
「ツアーソフト」に足りないのは、ウレタンカバーだからこそ得られるグリーン周りのスピン性能。
フルショットでは、その差は驚くほど小さい。しかし、ショートゲームでは無視できない。
では、「ツアーソフト」はどんなゴルファーに向いているのか。
ドライバーからアイアンまでウレタン系ボールに近い性能を求めながら、ツアーボールほどの価格を払わない代わりに、グリーン周りのスピンをある程度妥協できるゴルファー。
そこが、「ツアーソフト」というボールの立ち位置だ。
品質という、もうひとつのポイント

ボールの性能については、実際に打てば違いを感じ取れるゴルファーもいるだろう。あるいは、「自分には違いが分からない」と判断することもできる。
しかし、ボールそのものの品質や、1球ごとのばらつきを見極めるのは簡単ではない。
そこでMyGolfSpyが行っているのが「Ball Lab」だ。ゴルフボールを実際に切断・測定し、構造や製造上のばらつきなどを調べることで、市販されているボールの品質と一貫性を評価している。
ここで重要なことを明記しておきたい。
現行の「トゥルーフィール」「ベロシティ」「ツアーソフト」については、まだBall Labで検証していない。
したがって、ここから紹介する内容は現行3モデルそのものを評価した結果ではなく、約5年にわたるBall Labの過去データから見えてきた傾向だ。
そのひとつが、価格と品質の関係である。
これまでの測定結果では、ゴルフボールの価格と品質には強い相関が見られる。
もちろん、高価なウレタン系ボールでも品質上の問題が見つかることはある。しかし、Ball Labの品質ランキング下位には、アイオノマーカバーを採用した低価格モデルが多く見られてきた。
メーカーによれば、その背景には製造上の難しさもあるという。ソフト系ボールに使われる柔軟性の高いコア素材は扱いが難しく、製造時のばらつきにつながりやすい。また、アイオノマーのカバーも均一に成形するのが簡単ではない可能性がある。
つまり、価格の違いは飛距離やスピンだけの問題ではない。1球ごとの品質や一貫性も、ボール選びでは無視できない。
その中で、タイトリストは興味深い結果を残してきた。
これまでBall Labで測定したタイトリストのアイオノマー系モデルは、いずれも品質評価で平均以上だった。 さらに、タイトリスト製ボールの中で評価が低かったモデルでさえ、ウレタン系を含めた業界全体の基準では平均以上だった。
もちろん、これは現行3モデルの品質を保証するものではない。それでも、タイトリストがこれまでどの程度の品質と一貫性でボールを製造してきたのかを判断する材料にはなる。
その背景のひとつとして考えられるのが、製造体制だ。
タイトリストは、これらのアイオノマー系ボールを自社工場のBall Plant 2で製造している。一方、低価格帯のボールでは、外部の工場に製造を委託しているメーカーも少なくない。
自社工場で製造しているからといって、それだけで品質が高いと決まるわけではない。 ただし、製造工程を自社で管理できることは、品質や1球ごとの一貫性をコントロールするうえで強みになり得る。
少なくとも、これまでのBall Labの結果を見る限り、低価格帯のボールでも製造品質を大きく犠牲にしてこなかったことは、タイトリストの強みのひとつと言えそうだ。

3モデルは、結局どんなゴルファーに合うのか
MyGolfSpyの2026年ボールテストでは、ボールの価格が高くなるほど、グリーン周りのスピン量も増える傾向が見られた。
言い換えれば、価格を抑えたボールで差が出やすい性能のひとつが、ショートゲームでのスピンだ。
そのため、グリーン周りのスピン性能を最優先するなら、この3モデルだけでなく、ウレタンカバーのボールまで含めて検討した方がいい。
では、「トゥルーフィール」「ベロシティ」「ツアーソフト」は何が違うのか。
「ベロシティ」は、グリーン周りのスピンを妥協する代わりに、飛距離を優先するボール。
「トゥルーフィール」は、ソフトな打感を軸にしながら、比較的ヘッドスピードが遅いゴルファーでも飛距離を確保しやすく、アイアンでは高い弾道も期待できる。ただし、こちらもグリーン周りのスピンには限界がある。
そして「ツアーソフト」は、ドライバーからアイアンまでウレタン系ボールに近い総合性能を見せる一方、グリーン周りのスピンを妥協するボールだ。
つまり、タイトリストは同じようなボールを価格だけ変えて3種類用意しているわけではない。
3モデルにはそれぞれ異なる設計思想があり、その代わりに受け入れなければならない妥協点も違う。
だから、ボール選びで考えるべきなのは、「どれが一番優れているか」だけではない。
自分は、どの性能なら妥協できるのか。
飛距離を最優先するなら「ベロシティ」。
ソフトな打感と飛距離、弾道の高さのバランスを求めるなら「トゥルーフィール」。
フルショットでウレタン系に近い総合性能を求めるなら「ツアーソフト」。
そして、グリーン周りのスピンまで妥協したくないのであれば、「プロV1」「Pro V1x(プロV1x)」「Pro V1x Left Dash(プロV1x レフトダッシュ)」「AVX」といったウレタンカバーのモデルまで選択肢を広げることになる。
価格を抑えたボールを選ぶことは、単純に「性能の低いボールを選ぶ」ことではない。
大切なのは、自分のゴルフに必要な性能は何か、そして何なら妥協できるのかを知ることだ。
「トゥルーフィール」「ベロシティ」「ツアーソフト」の違いは、まさにそこにある。



