2012年にキャロウェイはベンホーガンブランドを売却したが、Apexを含む様々なホーガンの商標を決して手放さなかった。その2年後、キャロウェイはApexをリニューアルし、Apexアイアンを発売した。

これは、一体成型フォージド(鍛造)のApex Proアイアンと並び、フォージドアイアンの美しさと、飛距離を重視したフェース構造のメリットを組み合わせたモデルだ。

キャロウェイは、それを「上級者向けハイテクフォージドアイアン」とした。

その後キャロウェイは2016年にその2モデルをアップデートして、Apexアイアンにはカップフェーステクノロジーを追加した。キャロウェイによると、これは市場で最も飛ぶフォージドアイアンだという。

Apex Proは、バックフェース下部にウェイトホールを設け、タングステンウェイトをセットすることでCG(重心位置)を最適化しており、「上級者向けの究極のフォージドパフォーマンスアイアン」として販売された。

なぜこのような歴史を紹介したかというと、キャロウェイは2019年のApexを「究極の上級者向けディスタンス系フォージドアイアン」、Apex Proを「先進的な飛距離性能を備えたツアーパフォーマンスフォージドアイアン」と謳っているからだ。

市場にあふれているような誇大広告はさておき、何が変わったのか、何が変わっていないのか、そしてそれらが何を意味するのかを解き明かそう。

キャロウェイ 2019年 APEX APEX PRO アイアン

 

APEX

初代Apexは、「中級者向けアイアン)と「やさしいキャビティーバックアイアン」の間で揺れ動いていた。

2016年にカップフェーステクノロジーを、2019年に様々な新技術を追加したことで、キャロウェイは飛距離の最大化とフォージドアイアン特有の柔らかい打感や打音を求める上級者(ハンディキャップが1桁かそれ以下)をターゲットにするようになった。

 

言葉を選ばずに言うと、このアイアンは大成功を収めたテーラーメイドのP790に対するキャロウェイの答えだ。

 

キャロウェイ開発部門のアラン・ホックネル博士は「時代を超越したプレミアムで緻密な外観」と説明しているが、1025フォージドカーボンスチールを使った新Apexの目的は、特にショートアイアンでボールスピードとコントロール性の両方を向上させることだ。

キャロウェイ 2019年 APEX APEX PRO アイアン

キャロウェイの360テクノロジーは十分な飛距離を生み出すが、薄いフェースには内部からのサポートがほとんどなく空洞なので、「カチッ」という感じの打音になってしまう。

これは、エンジニアが柔らかいフォージドカーボンスチールボディーを使用する意図に反する。

そのためキャロウェイは、ボールスピードやフェースのたわみを制限することなくクラブの打音と打感を改善するために、アイアンのキャビティーに液体状のウレタン・マイクロスフィアを注入している。

キャロウェイは中空キャビティーを造ろうとしているわけではないが、そのコンセプトはPXGのCOR2やテーラーメイドのSpeedFoamテクノロジーに似ている。

ただし、一部のメーカー(ピン、タイトリスト、ミズノ)は、キャビティーを完全に中空にしておくのが最善だと考えている。

またキャロウェイは、2017年のEpicアイアンや、昨年のRogueで採用したMIM(メタルインジェクションモールディング)をApexにも取り入れている。

さらに、重心をロングアイアンで低く、ショートアイアンで高くするために、形状やサイズ、密度(スチールとタングステンの比率)を番手ごとに変えている。

キャロウェイ 2019年 APEX APEX PRO アイアン

ディスタンス系フォージドアイアンで最も重要なのは、フェースの薄さだ。2019年発売のアイアンがそうであるように、薄いほど優れている。

しかし、フェースがたわみすぎると、スピン量が極端に少なくなる可能性がある。キャロウェイはこの問題を解決するために、スピンコントロールVFT(可変フェース厚)を採用している。

360カップフェーステクノロジーは飛距離を伸ばし、VFTは飛距離の一貫性を維持するもの、と考えるとわかりやすい。安定的に打てるようになってはじめて、飛距離が意味を持つという理屈だ。

2016年の Apexアイアンの最大の難点は、ショートアイアンの外観が他の番手と合っていないことだった。そのため、2019年モデルのショートアイアンの形状は、よりコンパクトになり、より上級者好みになった。

 

価格と販売予定

標準シャフトはTrue TemperのElevate。価格はスチールシャフトが1,399ドル、カーボンは1,499ドルだ。

 

APEX PRO

Proという名前から想像できるように、このアイアンのサイズと形状はApexとは一線を画している。

さらに特筆すべきは、飛距離を伸ばすテクノロジーがツアーライクな小さなキャンバスに詰め込まれていることだ。

キャロウェイは、非常に精巧な技術をもって360カップフェース、VFT、ウレタン・マイクロスフィア、MIMなど、飛距離に貢献するあらゆるテクノロジーをこのアイアンに取り入れている。

それはまるで、3ヵ月の旅行の荷物を詰め込んだ、機内持ち込みサイズのスーツケースのようだ。

キャロウェイ 2019年 APEX APEX PRO アイアン

繰り返すが、MIMは重心を正確な位置に配置するためにあり、ウレタン・マイクロスフィアは内部からのサポートとして機能しているが、フェースのたわみ(つまりボールスピード)を制限することはない。

キャロウェイは、最高のボールスピードを得るために3~6番アイアンにはVFTと360カップフェースを使用したが、8番では反発を少し緩めたフェースを使っている。

なぜなら、飛距離はロフト角に左右されるし、一般的にツアープロや競技志向のアマチュアにとって飛距離や弾道をコントロールしながら正確なショットを打つスキルは重要だからだ。

7番アイアンは転換点として、6番アイアンと8番アイアンのギャップをうまく埋めるためにトーンダウンしたカップフェースを使用している。

またキャロウェイは、3~7番アイアンがApexで、8番からウェッジまでがApex Proというコンボセットを発売する。

これは、ゴルファーが自由にアイアンを選べるアラカルトスタイルのコンボセットではない。

Apex Proは、Apexと異なるソール形状やキャンバー、ロフト角にすることで「抜け」を良くし、Apexの「飛距離の階段」にマッチするように仕上げてあるからだ。

前モデルでは発売から数か月後に数量限定の「ブラックエディション」が出たが、今回は発売から約30日後にすべてのApexモデル(コンボセットを含む)で「Apex Smoke」バージョンが出る予定だ。

追加料金は1本当たり20ドルであり、SmokeバージョンのTrue Temper ElevateシャフトとApex Smokeのメダリオン(円形模様)が含まれる。Big Berthaアイアンと同じく、仕上げはブラックPVDになるだろう。

しかし、その摩耗のしやすさを考えると、微妙なところだ。消費者は1セット当たり約200ドルのプレミアム価格を支払わなければならないが、このような仕上げを「プレミアム」と表現するべきではない。

実際、MyGolfSpyは、「PVD仕上げにした途端に、それはプレミアムとは呼べなくなる」と言っている。

キャロウェイ 2019年 APEX APEX PRO アイアン

 

スペック・価格・販売状況

キャロウェイ 2019年 APEX APEX PRO アイアン

価格は1,399ドルだ(スチールシャフト)。

Apexの復活に伴い、キャロウェイは、2019年もNo.1アイアンブランド(ドルベースの小売金額シェア)として君臨し続ける可能性が高い。

どの基準に照らしてもApexは大いなる成功を収めており、マーケットの勢力図が大きく変わることはなさそうだ。

2019 年のApexとApex Proにマイナス面があるとすれば、自分自身の成功の犠牲になるかもしれないことだ。

2017年、マーケティング担当のハリー・アーネットは、ヘッド1個当たり250ドルのEpicアイアンを「我々が製造できるなかで最高のパフォーマンスを発揮するクラブ」と形容した。

キャロウェイの宣伝文句通り、2019年の Apexシリーズは2年前のEpicアイアンを上回り、キャロウェイの最新技術の粋を集めたクラブだと消費者が信じるなら、Epicの代替品を市場に投入することは、不誠実とは言わないまでも、かなり難しいと言わざるを得ない。

これによって、状況が異なる海外市場で超プレミアム製品(Epic Starまど)のリリースが見送られる可能性があるのだ。

しかし、さしあたってApexとApex Proは、キャロウェイがアイアンラインの主役であるというシナリオ通り、マーケットに十分な影響をもたらすだろう。

ApexとApex Proの発売日は、2019年1月25日だ。