PGAツアーの2024年シーズンがこの日曜に終わり、125名が2025年のシード権を獲得した。

今季は「ザ・RSMクラシック」が「フェデックスカップ・フォール」のフィナーレとして選手たちがシード権を争う最後の舞台となった。

ところが来季は(ツアー上層部により最近承認された)フィールドサイズが縮小され100名しか2026年のシード権が与えられないため、違った様相を呈することになるだろう。

「ツアーのシステムがどうなるのかもう一度教えて」という方は、「安心してください、システムは何度も変わってますよ」。

レギュラーシーズンは1月から始まり8月の「ツアー選手権」で終了する。「フェデックスカップ・ポイントレース」のトップ50は翌シーズンのシグネチャーイベント出場権を確保。一方で、それ以外のプレーヤーは秋に以下の様な状況となる。

ポイントランク51〜70位のプロたちもツアーカード自体は確保するが、「シグネチャーイベント(昇格大会)」(※出場人数が通常の半分程度にしぼられ、賞金額・フェデックスカップポイントが増額される試合)でプレーするためにポイントを稼ぐというオプションが与えられる。

というのも「フォールシーズン」終了時にトップとなった2人は、「シグネチャーイベント」全てでプレーできるから。今年、この枠にハマったのがマーベリック・マクネリとマッケンジー・ヒューズだった。

そしてポイントランク71位以下は、上位125位(来年からは100位)に入るための熾烈な戦いが待っている。

ここでこの枠に入ればシード権を獲得。「シグネチャーイベント」以外のほぼ全ての大会でプレーすることが可能になる。

では、トップ125に入らなかった場合はどうなるのかというと、これはランキング次第となる。

ポイントランク126〜150位は準シードとなり、下位カテゴリーの大会で一定数の出場機会を得られるが、125位以内のプロに比べるとその数は限られる。

またこうしたプレーヤーたちは「Qスクール」に出場することも可能だ。最終ステージは12月中旬で、トップ5に入れば来季のシード権を獲得できる。

そして、準シードもないプレーヤーは、翌シーズンに出場権を取り戻すべく下部の「コーンフェリー・ツアー」に挑むことになるわけだ。

また、125以内を逃してもフル参戦する権利を確保する「裏技」を持つプレーヤーも存在する。例えば、生涯賞金ランキングで上位にいる選手は、一度だけ特別免除を受けてシード権を行使することが可能だ。

さらに、優勝すれば2年間のシード権が自動で付与されるという仕組みもある。125位以下になっても、シード権保持者として残れるというわけだ。

「すごく分かりにくいよ」って?その通り、PGAツアーのシステムは複雑なのだ。

ではここからは、今季の「フェデックスフォール」終了時点でトップ125に入れなかった注目選手をピックアップする。


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シード権を逃したフランチェスコ・モリナリ。(GETTY IMAGES/Carmen Mandato)


1. Zac Blair ザック・ブレア~ユタのマエストロ~

ブレアは「RSMクラシック」で、1打差で予選落ちし125位のボーダーラインにわずか3ポイント足りずにシーズンを終了した。123位からスタートして順位を3つ落とし圏外になるなんてゴルフの神様も少し意地悪だ。

彼が設計を手がけたサウスカロライナ州の「ザ・ツリーファーム」では木々が優雅に揺れているけど、ブレアのキャリア“ツリー“は次シーズンの風向き次第。「Qスクール」を突破しない限り、来季はスポンサー枠を探すことになる。

それでも、この34歳、ユタ州出身でツアー累計800万ドルを稼ぎ出してきた実力者。ゴルフ人生はまだまだこれから。さて、次のラウンドでどんなドラマが待っているのか?


2. ウェズリー・ブライアン~二つのフィールドで活躍する超人気兄弟ユーチューバー~

YouTuberとしての顔も持つブライアンは、プロゴルファーのシビアな現実をまざまざと体感した。125位で「RSMクラシック」に参戦したが、結果は一打足りずに最終ランクで128位まで後退。まさに天と地との差。

ブライアンがプロゴルフ以外にYouTubeでバズってる(「ブライアンブラザーズゴルフ」というチャネルで人気のユーチューバーでもある)のははラッキーだけど、シード権を逃したことは残念なはずだ。

だが、彼のゴルフ人生はまだ18ホールどころか36ホールも残っているかもしれない。

サウスカロライナ州出身で34歳のブライアンは、これまでに500万ドルちょっとの賞金を稼いでいる。

もし兄のジョージが「Qスクール」を突破したら?PGAツアーで兄弟ユーチューバー対決が実現!なんてそんな展開があれば「ミヤネ屋」も放ってはおけないだろう。期待して待っていよう。


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Wesley Bryan

@wesleybryangolf

24年は、ファンタスティックなシーズンの結末としては残念…。

応援してくれてありがとう!2024年は間違いなく最高だった。励ましてくれたみんなには感謝してもし切れないよ。

ここからはジョージが「Qスクール」を突破することに集中だ!


3.フランチェスコ・モリナリ~イタリアの伊達男~

フランチェスコ・モリナリは、2018年の全英オープン優勝でゴルフ界に鮮烈な“イタリアン旋風”を巻き起こした。

しかし、タイガー・ウッズが復活劇を遂げ優勝した2019年マスターズの最終日でスコアを崩したあたりから失速。

モリナリの存在感は徐々に、“まるでエスプレッソが薄まったカフェアメリカーノのように“薄れていった…。

最後にトップ10入りしたのは2022年1月、そこから約3年。まさかゴルフ界にも「イタリア時間」が流れてされているのか?と思わせるほどの長い沈黙。

今季の成績はトップ125どころかトップ150にすら届かない。

42歳となった現在、キャリアで稼いだ賞金は1,800万ドル以上だが、これは生涯賞金ランク108位で、これだと特別資格もない状況。ある意味再起動をかけた新しい計画が必要なのかもしれない。

今後の選択肢はDPワールドツアーで再び“ヨーロッパの風”を感じるか、レギュラーツアーでのスポンサー推薦に期待するしかない。とは言え、モリナリなら、またグリーン上でスマートにカムバックする姿を見せてくれるのではないか?と期待してしまう。

次はどんな「イタリアの情熱」を披露してくれるのか、期待しようじゃないか!


4. ジミー・ウォーカー~不屈の旅人~

2016年の全米プロ覇者のジミー・ウォーカーも、モリナリと似た様な状況でゴルフ人生の後半戦で迷いの森に突入中。「フェデックスカップ」のポイントランクでは233位と低迷。かつての栄光を知るファンからすると、「あのウォーカーが?」と驚くような状況だ。

それでも、彼はしぶとく「DPワールドツアー」でプレーし、時折その名をリーダーボードに滑り込ませる存在感を見せている。

2022年に引退すら考えたウォーカーだったが、昨季は生涯賞金ランク(50位以内)の資格で参戦。まるで「俺を忘れるなよ」とばかりにグリーン上で奮闘。彼は現在45歳、これまでに稼いだ賞金は2,700万ドル以上。

その数字は多くのゴルファーにとって夢のようだが、フルタイムでのツアープレーヤーとしてのキャリアは終盤を迎えようとしているのかも知れない。

それでもウォーカーは、これまでのキャリアで見せた意地と粘りを忘れるわけにはいかない。次はどんな奇跡のラウンドを見せてくれるのか?「まだまだ終わっちゃいない」と、彼がグリーン上で最後の輝きを見せる日を楽しみに待ちたいところだ。


5. キャメロン・チャンプ~ホップ・ステップ・チャンプ!~

飛ばし屋としての名を馳せたキャメロン・チャンプのキャリアはまさに一筋縄ではいかない。ツアーで3勝を挙げたものの、これまで世界ランキングで60位以内に入ったことがなく、この記事の執筆時点で400位以下という、くすぶりまくってる状況。

「フェデックスカップ」のポイントランクは175位に終わり、大会で最後にトップ10入りしたのは1年以上前。2021年の「3Mオープン」に勝利を収めて今季までの出場権を手に入れていたものの、先行き不透明になった29歳のチャンプの未来は誰にも分からない。

29歳のチャンプのキャリアは、ドライバーの飛距離は爆発的なのに、成績はくすぶりまくりという、そんな歯がゆいところがもどかしい。彼が次にどんな大波を起こすのか、誰にも予測がつかない所がキャメロン・チャンプの面白さでもある。


6. ゲーリー・ウッドランド~超一流のフィジカルの持ち主~

2019年の「全米オープン」覇者、ゲーリー・ウッドランドにとって、2024年はまさに苦境のシーズンとなった。ウッドランドのランキングは140位にまで落ち込み、来季は生涯獲得賞金ランク34位による一度だけ使える特別免除で参戦することになるだろう。

とは言え、ウッドランドはこの資格を使う予定の他のプロほど迷走しているわけじゃない。ラスベガスの大会ではトップ10入りを果たし「フォールシーズン」でも安定して予選通過を重ねている。その実力はまだ健在だ。

40歳になったカンザス州出身のウッドランドが、果たして2025年に調子を取り戻すことができるのか?その行方に注目が集まる。


7. ザック・ジョンソン~勇猛でクレーバーなライダーカップ主将~

メジャー2勝を誇るザック・ジョンソンは、2021年以降トップ10入りがなくてもいまだにツアーにフル参戦し続けている。その堅実な実力は確かで、生涯獲得賞金ランキングは16位に位置し、現役プレーヤーとしてツアーに出続けられるだけの実績を持っている。

しかし、48歳となったジョンソンは、そろそろチャンピオンズツアー参戦を視野に入れているかも知れない。

メジャーやライダーカップでの成功を経て、次のステージに向けて動き出すタイミングが近づいているのだろうか。その決断がどうなるのか、ゴルフファンとしては注目したいところだ。


8. ウェブ・シンプソン~松山との激闘、のちマブダチ~

39歳のウェブ・シンプソンはここまで4,500万ドル以上を稼ぎ、生涯獲得賞金ランキングは19位と輝かしい実績を持っている。ツアー優勝回数は7回、トップ10フィニッシュはなんと84回を数える実力者。

しかし、昨季はランキング160位となり、ノースカロライナ州出身のシンプソンが「無駄にできる時間はない」という現実が突きつけられている。

トップ10は15ヶ月間も遠ざかり、世界ランキングは338位まで降下。これまでの実績で大会には参戦できるものの、その状況が永遠に続くわけではないことは確か。

一方、シード権をキープした選手たちの中には、最終戦で劇的な巻き返しを見せ124位に浮上したジョエル・ダーメン、復調の兆しを見せた109位でシーズン終了したマット・クーチャー、そしてランキング100位で存在感を見せたダニエル・バーガーといった選手たちが、シンプソンにとっても刺激となる存在になるだろう。

シンプソンがこれからどう立て直して、再びトップ10に戻ることができるのか、その行方が気になるところだ。


まとめ

来季のシード権争いは、まさにサバイバルゲーム。かつての栄光を誇る名プレーヤーたちが、現状維持か?それとも新たな挑戦に向かうのか?その行く末は誰にも予測できない。

いくら素晴らしいキャリアを持っているとしても、ツアーの厳しい現実に勝つためには勝利を積み重ね、常に上を目指し続ける必要がある。

もしかすると、来季これらのプレーヤーたちが再び活躍し、私たちの前で“新たな伝説”を作るかもしれない。しかし、もしもトップ125に残れなかったとしても、ゴルフの世界では常に“逆転劇”が待っていることを忘れないで欲しい。

明日のヒーローは、今日の苦境を乗り越えた者たちの中にしか生まれない。来季のPGAツアーをどうぞお見逃しなく!