アイアンに関して、性能さえよければ見た目にはそこまで拘らないというゴルファーが結構いる。

さらに、メンバーコースに所属している熱心なゴルファーには見た目が気に入らなくても一向に構わないという者も多い。

目一杯やさしく打てるテクノロジーが詰まったアイアンで、ギリギリ耐えられる見た目のものを選べというのが定説ではある。

解釈のしかたによるとはいえ。

コブラ歴代のやさしいアイアンは、その層にずっとアピールしてきた。

性能に関して言えば、昨年のF9スピードバックアイアンは、ワンレングスモデルも番手ごとに長さの違う従来のモデルも、MyGolfSpyの2019年度『Most Wanted』にてトップクラスの結果を出している。

見た目はどうなんだって?F9の特徴的な四角い見た目は明らかに他の製品とは一線を画していた。ユニークかつ大胆。とりあえず、違っていることが重要なのだ。

ゴルファーというものは、他と違うものが好きな人種なのだから。

そのF9スピードバックに改良を加えた2020年のスピードゾーンアイアンでは、アベレージからハイハンデのゴルファーが求める三種の神器、ミスへの寛容性と打感と飛距離性能がさらに向上した。

見た目はほとんど前作と変わらない。

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欲しいもの 対 必要なもの

コブラの統計によると、ハンデ10~25のプレーヤーが最も求める機能では、打感と正確性が1位2位を占め、ミスへの寛容性が3番目、飛距離がその次、そして操作性と続いた。

え?ほんとに?という感じだろう。

「皆いずれにしても飛距離はついてくると思っているようだ。それで、まず打感となったのだろう」と、コブラの研究開発部門の責任者、トム・オルサヴスキー氏。「それか、本音を言っていないだけなのか。見分けるのは難しい」。

どこのメーカーも、結局のところは飛距離性能だとわかっている。打感でも正確性でも操作性でもない。勝つのは月まで飛んで戻ってくるようなアイアンなのだ。

そもそも飛距離性能に加えて、寛容性、正確性、打感をも兼ね備えたアイアンなど、ネッシーなみに非現実的だ。しかしコブラはスピードゾーンでそのネッシーを現実のものにできたと信じている。

「ウエイトの再配分により、さらに低重心にできることはわかっていた」とオルサヴスキー氏。

「そしてゴルファーが再現性を求めていることも。つまりロングアイアンをやさしく打てるようにする必要があった。また、反発係数の高いアイアンの課題は常に打音と打感だ。鍛造のようにソリッドな打感を求める一方、飛距離性能や寛容性など、他のあらゆる要素も全部欲しいと思っているのがゴルファーという人種なのだ」。


 

ゾーン・ディフェンス

コブラいわく、F9スピードバック アイアンでは、約33gのタングステンウエイトをトゥ&ヒールに配し、ボックス型の形状にすることで、従来のブレード全長とトップラインを維持しつつ、飛距離性能と寛容性で新境地を開いた。

また、独自の2層構造のソールを採用することで、芝の抜けを改善し、さらなる低重心を実現した。

今年の『Most Wanted』を見ると、あらゆる面においてそれらの目論見は成功し、最も優秀なアイアンのひとつとして存在感を示したことがわかる。

スピードゾーンはそこからいくつかの技術的向上を遂げたが、そのうちのひとつは慣れるのに少し時間がかかるかもしれない。

コブラのマーケティング部門によると、スピードゾーンには5つのゾーンが搭載されている。

ライトゾーンとスタビリティゾーン、パワーゾーン、フィールゾーンとスピンゾーンだ。なかでもライトゾーンは好みが分かれるところだろう。

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アイアンのトップラインというものは、オールドトムモリスとヤングトムモリスが初めて親子で闘った時代から実はたいして変化していない。

ところが、スピードゾーンのトップラインは全く別物なのだ。カーボンファイバーの縞模様がふたつ、トップラインとトップラインの真下に配されている。

カーボンファイバーはスチールに比べて40%軽量なので、この設計により重量を3g落とすことが可能になった。

「トップラインの構造は基本的にアイビーム(I型)だ」とオルサヴスキー氏は言う。「重量を考えると結構硬い。カーボンファイバーを用いれば硬さを保てるので、ブレなどの望ましくない動きも抑えられる」。

カーボンファイバーのトップラインは4番~7番アイアンに搭載されている。確かに見た目はだいぶ変わる。

コブラいわく、トップラインにカーボンファイバーを用いたのはゴルフ史上初の試みだという。

もう一度言うが、とかくゴルファーというものは、他と違うものが好きな人種なのだ。

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F9のボックス型のヒール&トゥ形状はスピードゾーンでも健在、前作よりさらに低重心になり、寛容性も増した(スタビリティゾーン)。

そして改良された鍛造製のPWRSHELLフェース。厚みは場所によって異なり、フェース上部は、ボールが当たる下部に比べて35%薄くなっている。

フランジがF9より少し大きくなったため、スピードチャンネル溝の拡大も可能になった。

「そう言われて見るとビックリするだろう。細長いスロットにしか見えないから」とオルサヴスキー氏は言う。「正確には、スロットのように機能するものだが、スピードを得るためには柔軟性が必要だ。ワイドにできればより良いものができるはずだ」

F9では、アイアンをボックス型にすることにより、33gのタングステンをヒール&トゥに組み込むことが可能になった。だが、スピードゾーンでは、重心を下げるという名目でその全てのタングステンが消えた。

「アイアンの重心を地面から16mm以内にするのは至難の業だ」とオルサヴスキー氏。「昔ながらのブレードの大きさでそれをやってのけたアイアンはほとんどない。17mmあたりで慣性モーメントが2600だったF9はかなりいい線まで行った」。

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ヒール&トゥのタングステンウエイトはF9の慣性モーメントに寄与したが、オルサヴスキー氏いわく、タングステンを取り去ってカーボンファイバーのトップラインにしたことで、慣性モーメントを多少犠牲にしたものの重心を下げることに成功した。

「F9のタングステンはヒール&トゥという両端に施されてた。そして両端は湾曲している。そのためタングステンでは最良の重心位置を得られなかった。タングステンを取り去って重量を中央に持ってくるためになにを犠牲にするか。それが約100ポイントの慣性モーメントだった」。

オルサヴスキー氏によると、慣性モーメントにおいては、スピードゾーンは2019年の競合(ローグ、ローグX、ビッグバーサやM6)と同等の数値であるが、こと重心位置に関していえば、そのどれよりも1〜2.5mmも低い。それがどれほど重要なことなのか。

ボールのセンターラインが地面から16mmのところにあるとすれば、15mmの重心位置はかなり魅力的な数字だ。

「スピードを生み出すのは、フェースであり重心位置だ。したがって低重心の恩恵は計り知れない。闘いは、誰が最も高い数値を叩き出すか。我々はそこで勝利したいのだ」。

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グッド・バイブレーション

やさしいアイアンのターゲット層が、打感が一番大事だと言っていたのを覚えているだろうか。

まあ、それが本音ではなかったとしても、コブラは打感についても、コ・モールド・メダリオンにより鍛造17-4ステンレスのフェースよりも向上させた。ターゲット層が使用する4〜7番アイアンにおいて、ミスヒット時の振動を抑える役割を果たすものだ。

フェース裏側下部には熱可塑性エラストマーフォームを、フェース裏側上部にはアルミニウムフォームを配し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーのインサートで補強されている。

F9と同じく、スピードゾーンのヘッドもスピン量を最適化させるためにCNCミルド加工が施されている。

4〜6番アイアンではV溝でスピン量を軽減、7番アイアン〜ピッチングではU溝でスピン量を最適化することでアプローチショットのコントロール性を向上させている。

また、アプローチ、サンドウェッジでは従来のウェッジ溝を採用している。

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その他、F9から継承したのがプログレッシブ・ホーゼルだ。ロングアイアンでは短めのホーゼル、ショートアイアンでは長めのホーゼルを採用して弾道コントロールと重心の最適化を図っている。

ロフトはどうか。もちろんストロングロフトではあるが、ターゲット層のハンデが10〜25であることを考えれば、それは妥当であるし、競合の数字とも大差はない。

「なにはともあれ、競合のやさしいアイアンのなかで、最も低い重心を実現させたのはコブラです」とオルサヴスキー氏は言う。

コブラから提供された、スピードゾーン6番アイアンとロフトの近いローグXを比較したデータによると、スピードゾーンのほうが5ヤード飛んでいたが、それは驚くことではない。ローグXに比べて微妙に低いスピン量であったが、最高到達点や下降角は変わらなかった。

「競争の激しいこの分野で、アイアンを売るためには、どこかで闘わなければならない」とオルサヴスキー氏。

「打席(数値)での闘いこそ、勝たねばならぬところ。他の闘いは簡単に勝敗をつけられるものではないので。我々の技術はいかに低重心を実現させ、それを実用的なものに仕上げるか、つまり、高く上がって柔らかく着地しながらも、飛距離で他に引けをとらないものを作れるかなのだ」。


 

ワンレングスの躍進

コブラがブライソン・デシャンボーと共にワンレングスに本気で取り組みだしてから3年の月日が流れたが、いまだにこの分野にいるのはコブラとブライソンだけだ。

これが何かを物語っているように思えるが、何なのかはよくわからない。

「競合との競争はつまり、マーケットシェアに現れる数字だ。コブラのマーケットシェアが8%くらいだとして、ワンレングスもそこに含まれていると考えると、決して大きな数字ではない」とオルサヴスキー氏。

「それで構わない。(ワンレングスでは)我々だけが選択肢なのだから。我々がアイアンメーカーの6位以内に入っていて、さらにワンレングスを作っている唯一のメーカーとなると、他のメーカーたちの考えはこうだろう。『ああ、うまくいってないんだな』。あるいは、『自分たちが作る必要はないな』と。でもそれでいいのだ」。

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ワンレングスはコブラのアイアン売り上げの半分を占める。

ここに非常に興味深い顧客からのフィードバックがある。まず、過去1年以内に、ワンレングスの購買者は若年化している。

2018年には18〜34歳未満のワンレングス使用率は11%にすぎなかったのが、1年後にはその数が倍増し22%となった。

彼らに、なぜワンレングスを選んだのかを尋ねると、23%が新しくて他と違うからと回答した(同回答は2018年には16%)。

また、19%がはっきりとブライソンが使っているからと答えた(同回答は2018年には8%しかなかった)。明らかに18年の終わりから19年初頭にかけてのブライソンの活躍が変化をもたらしている。

さらに、満足度でいうと、2018年には73.6点(100が満点)だったのが、2019年には前作について87点をつけている。

なかでも元テーラーメイドとキャロウェイユーザからの満足度が高く、元ピンとタイトリストユーザーもワンレングスを好んではいるものの、前の二者に比べると支持率は少し下がる。

データの提供元がコブラであることを差し引いても、いくつか明言できることがある。

まず、F7ワンレングスの登場以来、毎年満足度を上げていることから、コブラはワンレングスを進化させているということ。

次に、ワンレングスの購入者が若年化しているということから、ワンレングスが初心者の味方だというイメージが浸透しているということ。

2018年には、55〜74歳のゴルファーがワンレングス購入者の48%を占めていた。しかし1年後、その数字は38%にとどまったのだ。

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ワンレングスは未だにニッチ商品であるが、コブラにとってそのニッチは非常に大きいものだ。

オルサヴスキー氏は言う。「問題は、もし競合が現れたらどうなるかということ。ワンレングスのコンセプトの正当性を証明する助けになって、需要を増やすことになるのか。あるいは、シェアを奪われるのか」。

だがそこには大きな壁がそびえている。競合他社には、ワンレングスでツアーを闘うブライソンがいないのだ。


 

スペック、価格および選択肢

標準のスピードゾーンアイアンにはKBS Tour 90 スチールシャフトが装着されている。

これはターゲット層にぴったりな軽量かつ高弾道をもたらすシャフトだ。フレックスはSとR。カーボンシャフトはUST Recoil ESX 460。

フレックスはS、RとAがある。ARCCOSセンサー内蔵のブラックラムキンコネクトが純正グリップとなる

ワンレングスでは、プログレッシブ・シャフト・ウエイト・システムを採用。

シャフトのたわみ特性は同じ感覚でありながら、ロングアイアンでは軽めに、ショートアイアンでは標準重量、ウェッジでは重めに作っている。

そのため、4〜6番アイアンではKBS Tour 80を、7〜9番ではTour 90、そしてピッチングとアプローチウェッジにはより重いKBSのウェッジ用シャフトを採用している。

カーボンシャフトでは、4〜9番アイアンにRecoil ESX 460シャフト、ピッチングとアプローチウェッジにはより重いRecoil ESX 480を装着している。

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ブルーラムキンクロスラインコネクトが純正グリップだ。

前述の通り、スピードゾーンのロフトはストロングだが、この部門ではそれがスタンダードだ。

5番アイアンで21度(ワンレングスは22度)、7番ではいずれも27.5度、ピッチングウェッジはいずれも42.5度となっている。

スピードゾーンアイアン7本セット(4番アイアン〜ピッチングまたは5番アイアン〜アプローチウェッジ)は、スチールシャフトで799ドル、カーボンで899ドル。

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メンズ、レディスともに(アイアン以外の)コンボセットも販売する。男性用は5番ハイブリッドに6番アイアン~アプローチウェッジまでをカーボンシャフトで899ドル。

通常版もワンレングス版も用意がある。レディスはハイブリッド2本にアイアン5本のセットで999ドル。

オンライン、実店舗ともに2020年1月17日より発売。


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