ミウラは、IC-601の発売を機に「伝統的なミウラのアイアン」のイメージを刷新しようとしている。IC-601は中空構造ボディーの飛距離重視タイプのアイアンだ。

ターゲットは、ミウラのアイアンを使いたいが、ミウラが得意とするマッスルバッグや上級者向けキャビティーバックを上手く使いこなせない初級~中級ゴルファーである。IC-601モデルは右利き用のみ、4番からPWの7本の展開だ。

昔からのミウラファンにとって今回のモデルは、ミウラのブランドイメージや三浦勝弘氏(創業者でチーフデザイナー)の存在は別にしても、ミウラらしさが大きく欠けているという意味で、少々理解し難いかもしれない。

IC-601はキャスト(鋳造)であり、フォージド(鍛造)ではない。キャスト(鋳造)という製法が悪いという意味ではないが、精密なキャスティングはミウラの得意分野ではなく、むしろミウラは自らを「世界で最も精密なフォージドクラブを造るメーカー」と謳うほどフォージドアイアンに注力してきた。

一般的に、鋳造アイアンは鍛造アイアンよりも下に見られるという不公平さがある。優れた鍛造技術を誇るメーカーが、鋳造にシフトするときは特にだ。

455カーペンター鋼フェースと、SUS304ステンレス鋼ボディーが作る中空構造によってソール幅を広くすることができ、それが低く深い重心位置を実現している。

カーペンター鋼は高強度、軽量、耐久性に優れた素材として知られている。そのためフェースがたわむ余地が広がり、その結果ボールスピードは増し、スイートスポットを広げ、慣性モーメント(やさしさ)を高める。

ミウラは、結果として他のどのラインナップよりも「高い打ち出し、飛距離の出る、よりやさしい」アイアンに仕上がったと述べている。

さらに、これまでのミウラとは違う点は、IC-601が台湾で造られていることだ。

日本メーカーといえば、品質にこだわる職人技術や、高度な鍛造技術、製品個体誤差をなくすためのあくなき追求などのイメージがあるが、今回は少し違うようだ(ミウラが台湾でジェネシスPP-9005の一部を製造していたことはあるが)。

ミウラは、IC-601に必要とされる高度で精密なキャスティング工程に対応できる、事実上のサテライト工場を台湾に作った。

そこで三浦氏は自ら職人達に正確なグラインド技術を教え、全ての商品がミウラの名に恥じない基準で製造されているかを確かめるために何度も台湾を訪れた。

製造後、市場に出る前に全てのアイアンは、厳しい最終検査をするために姫路市にあるミウラゴルフの施設に送られる。

北米は今でも世界最大のゴルフ市場だ。IC-601は、その北米向けの商品として戦略的に造られたアイアンである。キャスト(鋳造)は幅広いゴルファーのニーズに応えることができる製法であり、それは他のメーカーも同様の商品(ピンG700、テーラーメイドM4、キャロウェイRogue)を展開していることからもわかる。

キャロウェイやテーラーメイドが独占してきた市場で、持続的な成功を収める初の日本メーカーになり得るとミウラが考えているとすれば、その挑戦は賢い選択であり必要なプロセスだろう(もちろん批判もあるとは思うが)。

この挑戦はミウラを成功へと導くのか、それともミウラの伝統から大きく離れることで裏目に出るのか、今後が楽しみだ。