フジクラの「Ventus TR(ヴェンタス TR)」は超ヒット商品である「Ventus」シャフトシリーズのアンコールに応えたものだ。

「Ventus」は2020-21年シーズン、PGAツアーで最もプレーされたドライバーとウッドのシャフトとなった。また、専門店のクラブフィッターからや、メーカーのカスタムオプションとしても支持された。

さらに、テーラーメイド「SIM2」および「STEALTH(ステルス)」の純正オプションとして、フジクラ独自の『VeleCore(ヴェロコア)テクノロジー』非搭載の「Ventus」シャフトが採用されたことを考えても「Ventus」の人気の程がうかがえる。

つまり、「Ventus」の名前を使用することには明確な価値があるということだ。たとえその実態が少々怪しげなものであっても。


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それはさておき、「Ventus」のバイアス層(シャフト軸に対し斜め方向に巻いたカーボン層)への「超高弾性70tカーボンファイバー」の採用は、シャフトがクラブヘッドの寛容性向上に寄与できるかどうかを考えさせるものだった。

パラダイムシフトの転換とまではいかなかったかもしれないが、「Ventus」のおかげでゴルファーがクラブ全体を部品の集合体としてではなく、ひとつのシステムとして見るようになったのは確かだ。

明らかな欠点がない製品をどのように改善するか?特に、選り好みの激しいプロゴルファーからの一貫したメッセージが「より良くしてほしいけど、何も変えるな」という場合はどうだろう?

製品の発売は必ずリスクを伴うものだ。ただしフジクラ「Ventus TR」は既存の「Ventus」モデルの後継ではない。たとえるなら、行きつけのアイスクリームショップが新しいフレーバーを追加するようなものだ。


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フジクラ「VENTUS TR」の新機軸

「Ventus」を「Ventus」たらしめているのは『VeloCore』だ。また「Ventus TR」では、バイアス層に積層された「超高弾性70tカーボンファイバー」も依然として主要なテクノロジーとなっている。

『VeloCore』と言われて新しい在宅トレーニング法を思い浮かべそうな人のためにここでおさらいしておこう。

「Ventus TR」は初代「Ventus」に搭載されたテクノロジーをすべて採用しつつ、中間部の捩れ剛性を高める改良を加えている。

余談だが、「トルク」とは、シャフトの捩れに対する抵抗力を表す指標のこと。しかし、他のシャフト測定基準と同様、各社がトルクを測定するプロセスに統一性はない。


フジクラ「VENTUS TR」の素材

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ツアープレーヤーやフィッターの間では、初代「Ventus Blue」は、一部のプレーヤーにとってスイング中に少々もたつきを生じる可能性があるということで意見が一致している。そこでフジクラは研究所に戻り、3Dモーションキャプチャーシステム「ENSO」を使って、改良の余地を検証した。

簡単に言うと、フジクラは超軽量の開繊クロス材を採用して、シャフトの手元から中間部の剛性を高めた。カーボンシャフトを重くして硬くすることは容易だ。

しかし「Ventus TR」においては、それは課題ではなかった。開繊クロス材はフラットな織物構造で、空隙に樹脂が溜まる余地が少ないのが特徴だ。

フジクラは、「Ventus Blue」と比較して「Ventus Blue TR」では捩れ剛性を10%向上させたとしている。素材面において「Ventus TR」の残りの部分は、初代「Ventus Blue」と同じものだ。





「VENTUS TR」性能面の利点

フジクラによると、「Ventus TR」は切り返し時のシャフトの変形が少なく、ゴルファーに「安定性」をもたらすという。「安定性」という言葉は、一般的にポジティブでありながら具体的ではないという点で便利な言い回しだ。

しかしフジクラは、「Ventus TR」は、ボール初速、打ち出し角、スピン量、打ち出し方向など、あらゆる意味において安定性が高くなったと自信を持って言い切っている。


「VENTUS TR」が向いているのは?

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フジクラ「Ventus TR」のターゲットとして最も可能性が高いのは、「Ventus Blue」または「Black」を使用していて、その中間のシャフトを求めているゴルファーだ。別の言い方をすれば、より硬い「Ventus Blue」またはより柔らかい「Ventus Black」ということになる。

「Ventus Black」は特別に硬いプロファイルで、特にアグレッシブに(あるいは半暴力的に)切り返すタイプのゴルファー以外は相当硬く感じるだろう。

「Ventus TR」は「Ventus Black」よりもわずかにスピンがかかるため、より高い弾道を生み出しつつ、切り返しではよりソフトな感触となるはずだ。

反対に、「Ventus Blue」の全体的な打ち出しの感じは気に入っているものの、手元部分にもう少し剛性が欲しいという場合にも「Ventus TR」が合う可能性大だ。

誤解のないように言っておくが、「Ventus TR」は「Ventus Black」ほど手元側の剛性が高くないため、厳密には「Ventus Black」の手元/中間部に「Ventus Blue」の先端を有するとは言えないが、極めてそれに近い仕上がりにはなっている。


私見

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「Ventus TR」にフジクラの主力シャフトに対する現在の考え方を垣間見ることができる。

トルクプロファイルを変更した「Ventus」モデルを増やすことで、フジクラは「Ventus」シリーズのさらなる拡充を図っている。

可能性としては、フジクラが「Ventus」の基本型(Blue/Black/Red)にそれぞれいくつかの「TR」バリエーションを提供できるということ。これによりフィッターは、より多くのゴルファーの様々なスイング特性に対処できるようになる。

比較するなら「Ventus」は、主要な「曲げ剛性分布」に基づいて10以上のシャフトを提供しているグラファイトデザインの「AD Tour」シリーズのようなものになる可能性がある。

3Dモーションキャプチャーシステム「ENSO」の評価に基づき、2021年はドライバーに「Ventus Black」の6Xシャフトを使用してきた。その上で、まだ試し始めたばかりの「Ventus TR」のほうがスイング全体における感触は勝る。私にとってはほんの少しの違いが大きな違いとなるのだ。

紙の上では、「Ventus TR」はスピン量増によりほんの少し打ち出し角が高くなる程度だ。しかし、「Ventus Black」で得られるのが私にとって必要最低限の打ち出し角とスピン量であることを考えると、「Ventus TR」が何らかのメリットをもたらす可能性はある。乞うご期待。


価格および発売時期

「Ventus TR」の小売価格は350ドル。既存の「Ventus Blue」「Black」「Red」モデルと同じ。

「Ventus TR」はフジクラの正規販売店を通じて入手可能。