「ELYTE(エリート)」シリーズのフェアウェイウッドとユーティリティでキャロウェイが目指しているのは、ドライバー同様、優れた製品を創り出しそれをさらに磨き上げることだ。言うは易く行うは難し。掲げる目標としては立派だが、実現は容易じゃない。
ただ、キャロウェイの強みは、それぞれのカテゴリーを独立したものとして設計するアプローチにある。
多くのブランドが、フェアウェイウッドやユーティリティをドライバーの小型版として設計し、主要機能の一部だけ取り入れた無難なデザインにとどまる中、キャロウェイはその枠にとらわれない。この独自の設計哲学こそが、「ELYTE」シリーズを唯一無二の存在へと押し上げている。
さて、この主張を裏付ける証拠はあるのだろうか?
考察すべきは次の3つだろう。
・アップデートされた『タングステン・スピードウェーブ』
・『スマートソール』
・改良された『Ai 10x FACE』
では、さらに深堀していこう。
「ELYTE」において、『エアロダイナミクス(空力特性)』や新素材についてはあまり言及されていない。
ドライバーにおいては、空力効率は大きく重視されるポイントになっているが、ヘッドが小ぶりなことに加え、表面面積が少ないフェアウェイウッドとユーティリティは、なにを施さずとも既に空力特性が優れている。それよりも注目すべきは、キャロウェイが今年掲げる“テーマ”だ。今年のデザインは、前作「パラダイム Ai Smoke」シリーズを測定可能な形で明確に上回る進化を目指し、複数のテクノロジーを掛け合わせた相乗効果に焦点を当てている。
主要素1:「Ai 10x FACE」
そろそろ「Ai」という言葉に飽きを感じている人もいるかもしれない。単なるマーケティングのスローガンを繰り返すよりも、「Aiが実際にどんな役割を果たしているのか」を知るほうがずっと興味深いだろう。
では、その具体的な効果や進化を見ていこう。
キャロウェイはフェース構造にAIを活用する際、コンピューター上で「コントロールポイント」を用いて、最適なフェース形状を導き出している。各ポイントは、コンピューターモデリングによって導き出された最適値に基づいて、厚みを増減し調整される。
この「10x」とは、「ELYTE」が「パラダイム Ai SMOKE」と比較して活用できるコントロールポイントの数が「10倍」であることを意味する。論理的には、より高度なフェースであれば、より優れた性能をもたらすはず。そこでキャロウェイは、ボール初速のわずかな向上と弾道のばらつきの縮小(つまり正確性)を挙げている。また、『Ai 10x フェース』により、フェース面のより広い範囲で、フェース中央でのコンタクトと同等またはそれに近い打ち出し条件をもたらすという。主要素2:「タングステン・スピードウェーブ」

「Ai 10x フェース」の効果のひとつとしてボール初速の向上を挙げたが、ここで最も大きな役割を果たしているのは『タングステン・スピードウェーブ』だ。
これは、クラブのソールに取り付けられた35グラムのウエイトでフェースの近くに配置されている。参考までに、従来のモデルの重量は14g、つまりウエイトは2倍以上アップとなり、これにより以前よりも重心位置を前方に配置できるようになっている。ご存知のように、重量をフェース近くに配置することはボール初速の向上には有効だが、「寛容性」に悪影響を及ぼす可能性がある。
キャロウェイのエンジニアは『タングステン・スピードウェーブ』を『Lカップフェース』の溶接部の前に配置することで、このトレードオフを最小限に抑える設計をした。この配置により、『C300スチールLカップフェース』のソールヒンジ部分がより大きくたわむようになり、フェース中央より下で打ったショットでのボール初速が向上する。実際、キャロウェイのテストでは、『ステップソール』設計と組み合わせることで、「ELYTE」フェアウェイウッドは、フェース中央より下でヒットしても (約0.0015~0.0020インチ)、フェース中央でヒットした「パラダイム Ai Smoke」を上回るボール初速を記録している。
これは、たかだか10分の1マイル/時のボール初速の話だが、だとしても特筆に値する。「ステップソール」

ウェッジについて考える頻度ほど、フェアウェイウッドの重要性を意識することは少ないかもしれない。それでも、キャロウェイの開発手法は実に理にかなっている。
ウェッジの性能を最大限に引き出すために正しいグラインドが不可欠であるように、フェアウェイウッドと芝とのコンタクトを改善することは、ツアープロからアマチュアゴルファーまで幅広いプレーヤーに確かなメリットをもたらす。キャロウェイによると、『ステップソール』によってソールの接触面積が57%削減し、フェース中央より下でのヒットが25%も減少するという。
言い換えると、クラブの芝との接触面積が小さくなるほど、より高効率なコンタクトが可能になり、打点がフェース中央に近づくということだ。高い人気を誇る一方で、特定のゴルファー層に向けた「APEX Utility Wood」は、同様のソール設計を採用している。その成功を受け、キャロウェイは今季のフェアウェイウッドにもこの設計を取り入れた。ゴルファーにとって「寛容性」の定義はさまざまだが、私にとってそれは、ショットを可能な限り理想に近づけるもの。そのためには、ゴルファーがインパクトの質を向上できるような素材、重量特性、設計要素は欠かせない。

「ELYTE」フェアウェイウッド4モデル(実際は5モデル)
「ELYTE」フェアウェイウッドのラインナップは、ドライバーを踏襲している。
キャロウェイ「ELYTE(エリート)」フェアウェイウッド

キャロウェイは名前から「MAX」を外したものの、「ELYTE」は依然として、幅広いゴルファーにとって理想的な選択となるだろう。シリーズの中で、弾道バイアスとアドレス時の見た目に関して最もバランスが取れており、扱いやすさと構えたときの安心感を与える。
「ELYTE」フェアウェイウッドの番手/ロフト角は、3/15度、3HL/16.5度、5/18度、7/21度、ヘブンウッド/20度、9/24度、11/27度。調整機能の『オプティフィットホーゼル』は、3/15度と3HL/16.5度だけに搭載されている。
シャフトは、「VENTUS GREEN 5 for Callaway(S, SR, R)」、「TENSEI GREEN 60 for Callaway(S)」。
グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。価格は¥67,100(税込)で、発売は2025年2月7日(予定)となっている。※下記はアメリカのスペック
純正シャフトは「Project X Denali Charcoal」とMCA「Vanquish PL」。プレミアム品のAretera「EC1 Blue」を追加料金100ドルで選ぶこともできる。
キャロウェイ「ELYTE X(エリートエックス)」フェアウェイウッド

ここで言う「X」とは、すなわち「D(ドロー)」のこと。「ELYTE X」は標準の「ELYTE」よりもシャローなフェースとわずかに大きいヘッド形状が特徴の「ドローバイアスモデル」だ。ただ、「ELYTE X」を完全なドローバイアスモデルと位置づけるのは避けたい。
なぜなら、ドローを意識していないゴルファーでも、ヒール寄りの重心設計による安定感や飛距離の恩恵を受けることができるからだ。「ELYTE X」の番手/ロフト角は、3/15度、3HL/16.5度、5/18度、7/21度。
シャフトは、「VENTUS GREEN 5 for Callaway(S, SR, R)」、グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。
価格は¥67,100(税込)で、発売は2025年2月7日(予定)。『アジャステブル(調整)機能』の搭載は、3/15度、3HL/16.5度のみ。※下記はアメリカのスペック
標準シャフトは「ELYTE」と同様だけど、MCA「Vanquish」にはRも追加されている。
キャロウェイ「ELYTE MAX FAST(エリートマックスファスト)」フェアウェイウッド

「MAX FAST」フェアウェイウッドは、全体的に軽量なクラブを求めるゴルファー向けに設計されたモデルだ。
「ELYTE X」に、21グラムの「WINN」グリップ、40グラムのMCA「Vanquish」シャフト(*日本仕様のスペックは下記に表示)、そして軽量化されたヘッドを採用することで、クラブ全体の重量を抑えヘッドスピードの向上をサポートする。さらに、この軽さによってスイング中の扱いやすさが向上し、よりスムーズな動きと正確なショットが期待できる。「ELYTE MAX FAST」の番手/ロフト角は、3/16度、5/19度、7/22度、9/25度。全て『アジャステブル(調整)機能』の搭載はなし。
*シャフトは、「LIN-Q GREEN 40 for Callaway(S, SR, R)」、グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。価格は¥67,100(税込)で、発売は2025年2月7日(予定)。*左用モデルの展開はなし。
キャロウェイ「ELYTEトリプルダイヤモンド」フェアウェイウッド

適切なフェアウェイウッドを見つけるには、目的とうまくマッチさせることが重要だ。
「ELYTEトリプルダイヤモンド」を競技志向者(上級者)や飛ばし屋向けと考えられるのは自然だが、このモデルにはそれ以上の可能性がある。確かに「ELYTEトリプルダイヤモンド」は「ELYTE」フェアウェイウッドモデルの中で最も小ぶりでスピン量が少なく、ディープフェースによる高い操作性が特徴だ。しかし、この設計は特定のプレーヤー層だけでなく、「正確性」や「操作性」を求めるゴルファーにとってもメリットをもたらす。しかし、「ELYTEトリプルダイヤモンド」の番手/ロフト角は3/15度、5/18度、7/21度の3種類のラインナップで展開されており、それぞれのフェアウェイウッドが果たす役割を慎重に検討することが求められる。
例えば、飛距離が重要な3番ウッドでは、低弾道と低スピンは必ずしも理想的ではないかも知れない。だが、一方でロフト角のある番手には、これらの特性が打ちやすさや弾道コントロールの向上に寄与する場合がある。シャフトは、「TENSEI GREEN 60 for Callaway(S, SR)」、グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。価格は¥67,100(税込)で、発売は2025年2月7日(予定)。『アジャステブル(調整)機能』の搭載は3/15度のみ。
※下記はアメリカのスペック
純正シャフトは、MCA「Tensei 1K Black」、「PX Denali Charcoal」、Aretera「EC1 Blue(追加料金100ドル)」だ。
キャロウェイ「ELYTE TITANIUM(エリート チタニウム)」フェアウェイウッド
なんだって?そう、キャロウェイ「ELYTE」フェアウェイウッド5番目のモデルは、チタン構造を採用している。これによって大幅に余剰重量を確保できる。
「トリプルダイヤモンド」の性能特性 (低弾道で低スピン) を標準の「ELYTE」のヘッド形状と組み合わせており、言い換えれば、「ELYTE TITANIUM 」は「トリプルダイヤモンド」を少し大きくしたバージョンと考えるのが妥当だろう。このモデルは主に、ティーショット用のフェアウェイウッドを探しているゴルファーにとって非常に魅力的だ。また、フェアウェイからのショットでも低スピン弾道が得られるため、風に強い安定した飛距離を得られる。
一方で、フルチタン構造を採用しているため、製造コスト面で価格が上がるのはお約束。今回のモデルでは、追加費用は100ドルだ。※キャロウェイ「ELYTE TITANIUM(エリート チタニウム)」は『CALLAWAY SELECTEDSTORE』 限定製品。
番手/ロフト角は、3/15度、5/18度がラインナップ。
シャフトは、「TENSEI GREEN 60 for Callaway(S, SR)」、グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。
価格は¥88,000(税込)で、発売は2025年3月7日(予定)。全番手に『アジャステブル(調整)機能』を搭載。キャロウェイ「ELYTE」ユーティリティ

キャロウェイは、「ELYTE」ユーティリティ3モデル(スタンダードの「ELYTE」、「X」、「MAX FAST」)をこれまでで最も調整可能なモデルと位置付けており、最大13ヤードの弾道補正が可能だ。
交換可能なヒールとトゥウエイトに加え、『オプティフィットホーゼルシステム』搭載により、ライ角を± 2度、ロフト角は± 1度調整できる設計になっている。各モデルの基本的な特徴は、「ELYTE」ドライバーとフェアウェイウッドと共通している。そのため、標準の「ELYTE」ユーティリティは、ニュートラルな弾道と中程度のヘッドサイズを備えた中心的なモデルだ。
特筆すべきは、標準のウエイト構成がヒールに13g、トゥに3g配置されている点。スライス傾向を減らしフェードバイアスを強くしたければ、13gのウエイトをトゥ側にシフトすれば良い。さらに「ELYTE」ユーティリティは、「ELYTE」アイアンと「ELYTE HL」ロングアイアンの代替品としても機能するように設計されている。「ELYTE」ユーティリティよりわずかに大きい「ELYTE X」ユーティリティは、ドローバイアスが強く、少し大きめのヘッド形状を特徴としている。また予想通り、フェースが高く設計されており、「ELYTE X」アイアンと組み合わせるのに適している。
最後に、「ELYTE MAX FAST」ユーティリティは3モデルの中で最も軽量で、スイングしやすいクラブを求めるゴルファー向けに設計されている。
このモデルは、打ち出し角とスピン量増加の恩恵を受けたいゴルファー向け。テーマに注目するとわかるように、「ELYTE MAX FAST」アイアンの完璧にマッチする設計となっている。・【「ELYTE」ユーティリティのスペック】
番手/ロフト角は、3H/19度、4H/22度、5H/24度がラインナップ。
シャフトは、「VENTUS GREEN 5 for Callaway(S, SR, R)」、「N.S.PRO 850GH neo(S)」。
グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。価格は¥57,200(税込)で、発売は2025年2月7日(予定)。
『アジャステブル(調整)機能』を搭載。・【「ELYTE X」ユーティリティのスペック】
番手/ロフト角は、3H/18度、4H/21度、5H/25度、6H/29度、7H/31度がラインナップ。
シャフトは、「VENTUS GREEN 5 for Callaway(S, SR, R)」、「Fujikura MC 70 for Callaway(S)」。
グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。価格は¥57,200(税込)で、発売は2025年2月7日(予定)。
『アジャステブル(調整)機能』を搭載。・【「ELYTE MAX FAST」ユーティリティのスペック】
番手/ロフト角は、3H/18度、4H/21度、5H/24度、6H/27度、7H/30度、8H/33度がラインナップ。
シャフトは、「LIN-Q GREEN 40 for Callaway (S, SR, R)」。
グリップは「GOLF PRIDE CLUBMAKER」 ブラック/グリーン バックライン有り。価格は¥57,200(税込)で、発売は2025年2月7日(予定)。
『アジャステブル(調整)機能』を搭載。詳細は、キャロウェイホームページにて。
私見

キャロウェイはメジャーブランドであり、多くのカテゴリーで常に1位2位を争っている。そのため、2025年に「ELYTE」シリーズがキャロウェイの市場地位を大きく変えることはないだろう。
ブランドとしての売上は数十億ドルになるだろうし、主要カテゴリー全体で市場シェアをキープするか、さらにアップさせる可能性もある。それを踏まえつつ予想するなら、ユーティリティは期待を上回る成績を収める一方、フェアウェイウッドはやや期待を下回る結果になるのではないかと思う。そして、2つある明らかな抜けについて一言物申したいことがある。まず1つ目は、ロフト角の大きいフェアウェイウッドに『オプティフィットホーゼル』を採用していないことだ。
キャロウェイなりの理由があるのはわかるが、消費者目線で言わせてもらうと、ツアープロや競技志向アマチュアが高ロフトのフェアウェイウッドを使い続けることは明らかだからだ。業界で推すほどフィッティングが重要なら、調整可能な『アジャスタブルホーゼル』を搭載したフェアウェイウッドは、もはや必須の装備と言ってもいいわけだ。そして2つ目の問題は、「ELYTE」ユーティリティの調整機能が向上したこと自体は喜ばしいが、#2/16度がラインナップにあればもう少しましだったと思う。
もちろん、収益の大部分を占める売れ筋のスペックでないことは重々承知しているけど、最初の問題がなければ、この2つ目の問題もそもそも存在しなかっただろう。価格と発売日
※下記はアメリカの情報。
キャロウェイ「ELYTE」、「ELYTE X」、「ELYTE MAX FAST」、「ELYTEトリプルダイヤモンド」フェアウェイウッドの価格は349.99ドル。「ELYTE Ti」は449.99ドルとなっている。
キャロウェイ「ELYTE」、「ELYTE X」、「ELYTE MAX FAST」ユーティリティの価格は299.99ドル。
1月17日より先行販売開始、フェアウェイウッドは1月24日、ユーティリティは2月7日に店頭販売が開始される。*「ELYTE Ti」フェアウェイウッドは2月21日から販売。
昨年モデルもお忘れなく
新しい「ELYTE」シリーズのリリースにより、「パラダイム Ai SMOKE」のフェアウェイウッドとユーティリティが大幅割引中だ。
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