数カ月前の「Bat Attack ZT」、そして先月発表された「Allan ZT ブラックバージョン」。これでPXGの“ゼロトルクパター”シリーズは今年で打ち止めか…そう思っていたゴルファーも多いはずだ。
だが、その予想は大きく外れることになる。
先日、PXGがゼロトルクパターのラインアップに新たな1本を追加した。その名も「Hellcat ZT(ヘルキャットZT)」。
しかも今回は“ブレード型”だ。
ゼロトルクパターといえば、これまでは大型マレットの独壇場だっただけに、ブレード形状の登場は注目に値するニュースだ。

あとは、この新たな「Hellcat ZT」が、PXGの“ゼロトルクパター=高性能”という流れを引き継げるかどうか。それが気になるところだ。
PXG「Hellcat ZT(ヘルキャットZT)」

「Hellcat ZT(ヘルキャットZT)」はブレード型のパターだが、いわゆる“ビッグブレード”に分類されるモデルだ。
このヘッド形状が初めて登場したのは、2021年のPXG「0211」パターシリーズ。当時のモデルと同様に、「Hellcat」は一般的なブレード型よりもひと回り大きなサイズ感で設計されていた。
とはいえ、今回の「Hellcat ZT」は極端に大きすぎることはなく、いわゆる“やや大きめのブレード”としては標準的なサイズ感に仕上がっている。
2021年の「0211」パターシリーズには、PXG独自のアライメント機能『Runway Reticle(ランウェイレティクル)』も搭載されていた。
これは複数のラインで構成された視覚サポートで、飛行機のパイロットが滑走路を目がけて降下するように、パッティングでも正確に狙いを定められるように工夫されていた。

PXG「Hellcat ZT」は、2021年モデルの「0211 Hellcat」と比べて、より伝統的なブレードの見た目に仕上がっている。
『Runway Reticle(ランウェイレティクル)』はシンプルな一本線のサイトラインに変更され、ヒールとトウ部分のバンパーも、中心に向かって斜めになっていた従来の形状から、直線的にスクエアなデザインへと改められている。
この変更は、見た目の面でも大きな改善と言えるだろう。
というのも、もしあの個性的な「0211 Hellcat」にゼロトルク仕様の『Sホーゼル設計』を加えていたら、全体のデザインバランスが崩れ、まとまりに欠ける印象になっていたかもしれない。
『ゼロトルクSホーゼル』設計について

多くのメーカーが“ゼロトルクパター”を設計する際は、シャフトをヘッドの重心位置に直接挿し込むことで、トルク(ねじれ)を抑える方法を採用している。
この構造により、ヘッドの重量バランスがシャフト軸の周囲で均等になり、ストローク中のブレやねじれが発生しにくくなるわけだ。
PXGは、独自の特許技術である『Sホーゼル』を採用することで、“ゼロトルク”を実現している。
この『Sホーゼル』は、見た目こそ一般的なホーゼルのようにヒール寄りに装着されているが、決定的に異なるのはその“ネックの形状”と、そこから導き出されるシャフトの挿さる位置だ。
絶妙に湾曲したデザインによって、シャフト軸が重心位置と一致するよう設計されており、それによって余計なねじれを抑える仕組みになっている。

この『Sホーゼル』は、後方かつ内側に向かって湾曲しており、シャフトがヘッドの重心を指すように配置されている。
ホーゼルからシャフトの先端をそのまま延長すれば、ちょうどヘッドの重心部分に交差するイメージだ。
「Allan ZT」や「Bat Attack ZT」と同様、この構造がもたらす最大の利点は、シャフトがパターの中央部分を遮らないことにある。
そのおかげで、PXGのゼロトルクパターは、センターシャフト型では実現が難しい、あるいは左右対称にできないような一貫したアライメントデザインを可能にしている。

とくに「Hellcat ZT」の場合、もし一般的なセンターシャフト方式を採用していたら、シャフトは短いキャビティ内のサイトライン中央に挿さることになり、そのラインは実質的に機能しなくなっていただろう。

その点を踏まえても、今回のデザインは見事だと言える。全体のシルエットは非常にスムーズで、視覚的なまとまりも抜群。
ときに“主張が強すぎる”こともあるPXGのブランディングも、この「Hellcat ZT」ではデザイン全体に自然に溶け込んでいる。
「Hellcat ZT」を実際に打ってみると

PXGのパターとして見れば、「Hellcat ZT」は構えたときの見た目がかなり“控えめ”な部類に入る。
『Sホーゼル』を除けば、伝統的なラインと形状で構成されており、ボールの後ろに自然にすっと収まる印象だ。
「ゼロトルク設計に興味があるブレード派のゴルファー」にとっては、とても扱いやすい選択肢になるはず。
打感はクリアで、インパクトの感触が手にしっかり伝わってくる。
ややソフトで控えめな打感だった「Allan ZT」と比べると、「Hellcat ZT」は心地よい打音とともに、打ち出しの強さを感じさせてくれる。

芯を外しても、打感や打音に大きな変化はない。
フィードバックが少ない点を気にする人もいるかもしれないが、実際にはヒール・センター・トウ、どこで打っても転がりの距離にほとんど差がなかった。
「Hellcat ZT」は見た目も、打ち味もブレードパターそのもの。
そこに『Sホーゼル』というゼロトルク仕様を加えても、“ブレードらしさ”をしっかり保っている点は、さすがPXGといえる。

唯一、個人的に少し気になったのは、PXG純正の「Slant 1.5 R」グリップだ。
かなり角ばった長方形の形状で、正直なところ、手にしっくりなじむ“握りやすさ”はあまり感じられなかった。
とはいえ、実際のプレーではしっかり機能してくれる。
グリップを含めた全体のバランスは非常に良く、グリップ形状が構えたときのフェースのスクエアを保つ助けにもなっている。
PXGは今回もまた、優れたゼロトルクパターを仕上げてきた。
グリップの形状に少々クセはあるものの、「Hellcat ZT」は迷わずキャディーバッグに入れたくなる一本だ。
PXGの価格設定について

PXGが創業した当初、「高すぎるクラブ」としてその価格が話題の中心だったことを覚えているだろうか?
だが今では、PXGのクラブが語られるとき、その中心にあるのは価格ではなく性能だ。
そして今回の「Hellcat ZT」は、再び“価格”に注目が集まるモデルとなった。ただし、良い意味である。
「Hellcat ZT」のメーカー希望小売価格は249.99ドル。そう、これが本当に実売価格なのだ。

「『Hellcat ZT』には、PXGが誇る最新のパッティングテクノロジーを詰め込んだ。打感は抜群、転がりはスムーズでブレがなく、そして他にはないパフォーマンスを発揮するそれでいて、この価格だ。“だったら買わない理由がないだろ?”って思ってもらえるはずだ。」PXG創設者 兼 CEO ボブ・パーソンズ
パーソンズの言うことにも一理ある。
ゼロトルクパターに興味があるなら、「Hellcat ZT」はゴルフ予算をすべて使い果たさずに試せる数少ない選択肢だ。
それなら、一度試してみてもいいんじゃない?
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