2026年モデルのゴルフクラブは、これまで想像していた流れとは少し違う方向に進み始めている。その象徴的な存在が、テーラーメイドの新作「Qi MAX」アイアンだ。
今季のゴルフギアを俯瞰すると、各メーカーが強く打ち出しているキーワードは、「飛距離」や「初速」ではない。
もちろんそれらが重要でなくなったわけではないが、中心に据えられているのは「打ちやすさ」と実戦での「扱いやすさ」だ。新素材や製造技術の進化も、その多くはどうすればミスを減らし、スコアにつながる結果を残せるかという一点に向けられている。そして「Qi MAX」アイアンも、まさにその流れの中で生まれたモデルと言える。
興味深いのは、このアイアンが、従来のテーラーメイド像「初速」や「飛距離」を前面に押し出すブランドイメージとはやや異なるアプローチを取っている点にある。その違和感こそが、逆にこのモデルへの関心を強く引き寄せる。
「Qi MAX」アイアンシリーズは、果たして“試しておくべき”モデルなのか。その答えを探るために、ここから詳しく見ていこう。
テーラーメイド「Qi MAX」アイアン|想定外だった“扱いやすさ”重視への転換
ゴルフクラブの発売サイクルを冷静に見渡すと、メタルウッドを毎年刷新している主要メーカーは、実はごく限られている。
キャロウェイ、コブラゴルフ、そしてテーラーメイド。それ以外はほとんど存在しない。さらに、「初・中級者向け」アイアンとなると、そのハードルは一段と高くなる。毎年モデルチェンジを行っているブランドは、片手で数えられるほどしかない。
その中で登場した「Qi MAX」と、高弾道を重視した「Qi MAX HL」は、テーラーメイドにとって2024年の「Qi」以来となる、久々の「初・中級者向け」アイアンの刷新だ。
これは単なる新作投入ではなく、戦略そのものを見直した結果でもある。
「これは、テーラーメイドにとって明確な戦略転換だ」と、アイアン&ウェッジ部門を統括するマット・ボヴィーは語る。
アイアンはドライバーほど短期で買い替えられるクラブではない。信頼や評価を積み重ねるには時間がかかり、セット全体の完成度が問われるカテゴリーだ。
だからこそ、テーラーメイドは1年更新ではなく、2年という時間をかけて作り込む道を選んできた。
実際、同社は2022年の「STEALTH(ステルス)」以降、「初・中級者向け」アイアンに関しては一貫して2年サイクルを維持している。
この事実は、派手な新技術よりも“完成度”を重視している姿勢の表れと言っていい。
性能面では、「Qi」シリーズで掲げてきた直進性の高い飛距離性能という軸を維持しながら、鋳造アイアンでは設計上優先度が下がりやすい「打感」にも踏み込んでいる点が、今回の「Qi MAX」の大きな特徴だ。
単にやさしいだけではなく、使い続けたくなる「打感」まで含めて成立させようとしている──。
そこに、「Qi MAX」アイアンがこれまでの「初・中級者向け」アイアンとは一線を画す理由がある。ストレートな飛距離こそ、最良の飛距離
テーラーメイドが掲げる「ストレートな飛距離」という考え方は、単なるキャッチコピーではない。
その背景には、「初・中級者向け」アイアンが構造的に抱えがちな“右へのミス”に対する、明確な問題意識がある。高いボール初速を生み出すため、アイアンのフェースはたわむように設計されている。
そして構造上、そのたわみはヒール側よりもトゥ側で大きくなりやすい。
『可変フェース厚』による初速維持設計と、左右非対称なフェース形状──この2つが重なることで、トゥとヒールの反発挙動に差が生まれる。
その結果、インパクト時にはトゥが大きくたわみ、ヒールは相対的に早く戻ろうとする。
このフェースが戻る速度の差が、ボールにカットスピン(右への回転)を与えてしまうのだ。「トゥは大きくたわみ、ヒールはあまりたわまない。ヒールは反発が速くなり、その結果、ボールにはカットスピンがかかる」── マット・ボヴィー(テーラーメイド アイアン&ウェッジ部門)
この現象は、トゥ寄りにミスしやすく、インパクトでフェースがわずかに開きやすいゴルファーほど顕著に現れる。
つまり、初速は出ているにもかかわらず、結果としてボールが右方向へ出てしまう──「初・中級者向け」アイアンでよく見られる課題だ。テーラーメイドが注目したのは、単にスイートスポットを広げることではない。ヒールとトゥそれぞれの厚みと剛性の比率を制御し、フェース全体のたわみ方そのものを整えること。
これによって、カットスピンの発生を抑え、方向性まで含めた安定性を引き出そうとしている。「私たちの特許は、ヒールからトゥにかけての柔軟性の配分を制御する点にある」── マット・ボヴィー
この効果が最も表れやすいのが、フェース反発の大きいロングアイアンだ。
「Qi MAX」アイアンが目指しているのは、ミスヒット時でも初速を保つことだけではない。方向性まで含めて“ストレートな結果”を残すこと──そこに、従来の「初・中級者向け」アイアンとの明確な違いがある。
番手ごとに異なるフェース設計
セット内の各アイアンフェースは、すべて同じ考え方で作られているわけではない。
むしろ「Qi MAX」アイアンでは、番手ごとに異なる役割を前提に、フェースの働き方そのものが作り分けられている。多くの「初・中級者向け」アイアンでは、『可変フェース厚』を採用する際、トゥ側もヒール側も薄く設計するのが一般的だ。
芯を外したときでもボール初速を落とさない──それが主な狙いである。しかし、テーラーメイドの「Qi MAX」は、その“一般的な設計”をあえて外している。トゥ側に、あえて厚みを持たせているのだ。
「剛性のバランスを取るために、トゥはヒールよりも厚くする必要がある」と、マット・ボヴィーは説明する。「ヒール側は、かなり薄く設計されている」
ここで重要なのは、“どちらを硬くするか”ではなく、フェース全体の剛性バランスだ。ヒール側は構造上反発が出やすく、トゥ側は大きくたわみやすい。
この差を放置すると、インパクト時のフェースの戻る速さにズレが生じ、結果として余計なスピンや方向ズレを招きやすくなる。「Qi MAX」ではトゥ側に適度な厚みを持たせることで、この左右差を抑え、インパクト時のフェースの反応を均一化している。ロングアイアンでは、フェース剛性を適切にコントロールすることで、低ロフトでもボールを上げやすくすることが重要になる。たとえば5番アイアンのロフト角が21度という設定であれば、その意味はより大きい。一方で、ロフト角が大きくなるミドルアイアンでは、狙いが変わる。
ここでは、ボール初速の最大化と、スイートスポットの拡大が重要になる。
そしてショートアイアンになると、さらに役割は明確だ。
「ショートアイアンでは、実際には打ち出し角を抑えスピン量を増やす方向にコントロールしている」と── マット・ボヴィー
「そのほうが、操作性が高まり、止まりやすく、結果的にプレーしやすくなるからだ」つまり「Qi MAX」アイアンが目指しているのは、単にミスに強いアイアンでも、ただ飛ぶアイアンでもない。
番手ごとに“求められる結果”を逆算し、フェースの剛性と反発の特性を細かく作り分けること。
その積み重ねによって、「初・中級者向け」アイアンでありながら、「真っすぐ飛び、狙った距離で止まる」という、実戦的な結果を引き出そうとしている。なぜ「打感」が重要なのか
テーラーメイドは、最も熱心な顧客11,000人に対し、「初・中級者向けアイアンに何を求めているか」を尋ねた。上位2つの回答は予想どおり、「飛距離」と「寛容性」だった。
しかし、3番目に大きな支持を集めたのが「打感」だった。残念ながら、「打感」と「初・中級者向け」アイアンは、これまであまり結びついてこなかった。
「フェースが大きくたわむ設計は、どうしても“カチッ”とした音になりやすい」とボヴィーは言う。「打感というのは、実は“音”そのものなんだ。ただ、それを多くのゴルファーは理解していない」
アイアンを芯で打ったときに感じるフィーリングは、「音の高さ(周波数)」「音の大きさ(エネルギー)」「音が続く長さ(持続時間)」この3つの要素の組み合わせによって決まる。
この3つのうち、2つが噛み合わなければ、音は不快になり、それがそのまま「悪い打感」として伝わってしまう。
打点位置も重要だ。
テーラーメイドのデータによれば、「初・中級者向け」アイアンを使うゴルファーが、ごく小さなセンターエリアでヒットする確率はわずか10%。約7割のショットは、そこから大きく外れている。
「もしセンターだけが気持ちよく感じる設計なら、4回に1回しか良い打感は得られない」とボヴィーは言う。「大半のショットでは、正直、気持ちよくないはずだ」
「Qi MAX」アイアンの打感を改善するため、テーラーメイドは「良い音が出るセンター打点」を、フェース全体のより広い範囲へと広げる必要があった。
そのために採用されたのが、トップラインとヘッド下部をつなぐ『スタビライゼーション・バー』と、そこまで拡張された『エコー』制振ポリマーだ。これにより、音の高さ(周波数)を維持しながら、音量を抑え、余韻を短くすることが可能になった。
その結果、軽すぎず、鈍すぎない──弾けるようで芯のある打感が生まれている。「Qi MAX」アイアンが目指したのは、ただ飛んで、ただやさしいだけの「初・中級者向け」アイアンではない。
多くのショットで“気持ちよく打てること”まで含めた、実戦での使いやすさの向上だ。
テーラーメイド「Qi MAX」アイアン|やさしさを感じさせない外観設計
テーラーメイドが「Qi MAX」で目指したのは、やさしさを前面に押し出さない、「初・中級者向け」アイアンだ。
多くのゴルファーは、性能面では寛容性や高弾道を必要としていても、見た目まで「いかにも初・中級者向け」に見えるクラブを使いたいわけではない。
「“aspirational”という言葉以外に適切な表現が思いつかないが、見た目は競技志向者(上級者)向けアイアンのようでありながら、実際にはそうではない──そんなルックスが求められている」── マット・ボヴィー
確かに新しい「Qi MAX」と「Qi MAX HL」は、少なくとも私の目には、2年前の「Qi」よりもはるかに洗練されて見える。
ただし、それをマット・ボヴィーが表現した“aspirational(憧れ的な)”と呼ぶかどうかは、正直なところ微妙だ。
だが、少なくとも3回、マット・ボヴィーはそう表現した。
その意味では、「Qi MAX」は、初代「Qi」と比べて“aspirational”という表現にかなり近づいたと言える。
全体的にコンパクトで、トップラインは薄く、ブレード長は短く、オフセットも抑えられている。モノトーンを基調とした配色も相まって、確かに“それっぽさ”はある。
一方で「Qi MAX HL」は、より高弾道と高い寛容性を求めるゴルファー向けに明確に設計されたモデルだ。
フェース面積は大きく、ブレードは長め。ソール幅は広く、トップラインも厚く、オフセットも増やされている。ミスヒットに対する許容範囲を、構造そのものから広げていることが分かる。加えて重要なのが、全番手でロフト角が3度寝かされている点だ。これにより、ボールは自然と上がりやすくなり、キャリーの安定感も高まる。
「上げたいのに上がらない」という悩みを、スイングで無理に補う必要がない設計だ。
それでも、見た目の方向性はあくまで「Qi MAX」と共通している。
やさしさを強調した外観ではなく、「やさしいクラブを使っている」と周囲に伝わってしまうような見た目を避けている。テーラーメイドが「Qi MAX」シリーズで重視しているのは、単にミスに強いことでも、数字上の性能だけでもない。
構えたときに違和感がなく、打ったときの打感が安定し、結果として「安心して振っていける」こと──その積み重ねが、ショット全体の安定につながるという考え方だ。やさしい。だが、それを理由に選ばれたクラブに見えない。「Qi MAX」シリーズは、その微妙なラインを意識的に突いてきている。テーラーメイド「Qi MAX」/「Qi MAX HL」アイアン|スペック・価格・発売情報
日本国内での最新情報、製品仕様、標準装備シャフトやロフト設定などの詳細は、テーラーメイド公式サイトで確認できる。
※これより以下は米国で公開されているスペック・価格情報となる。日本仕様とは一部異なる可能性があるため、詳細は国内公式情報を参照してほしい。
テーラーメイド「Qi MAX」アイアンスペック/性能傾向一覧
| 番手 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | PW | AW | SW | LW |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ロフト角(°) | 18.5 | 21 | 24 | 28 | 32.5 | 37 | 42.5 | 48 | 54 | 58 |
| ライ角(°) | 61.5 | 62 | 62.5 | 63 | 63.5 | 64 | 64.5 | 64.5 | 64.5 | 64.5 |
| オフセット(mm) | 5.1 | 4.7 | 4.3 | 3.9 | 3.4 | 2.9 | 2.4 | 1.9 | 1.4 | 1.3 |
| クラブ長さ(インチ) | 39.125 | 38.50 | 37.88 | 37.25 | 36.75 | 36.25 | 35.75 | 35.50 | 35.25 | 35 |
| バランス(スチール) | D1 | D1 | D1 | D1 | D1 | D1 | D1 | D1 | D2 | D3 |
| バランス(カーボン) | D0 | D0 | D0 | D0 | D0 | D0 | D0 | D0 | D1 | D2 |
| 利き手 | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH |
| 性能傾向 | ||||||||||
| 重心位置:低 / 打ち出し角:高い / スピン量:中 / ボール初速:最速 / 寛容性:高い | ||||||||||
テーラーメイド「Qi MAX」アイアンは、4番アイアン〜サンドウェッジ(SW)までをラインアップ。
右利き・左利きの両方に対応し、右利き用のみ58度のロブウェッジ(LW)がオプションとして用意されている。一方、「Qi MAX HL」は、5番アイアン〜サンドウェッジ(SW)までの構成で、こちらも右利き・左利きに対応。ロブウェッジの設定は用意されていない。
テーラーメイド「Qi MAX」アイアン|シャフト仕様(標準)
◈ 標準スチールシャフト
KBS「Max 85 MT」
・フレックス:S / R
◈ 標準カーボンシャフト
「REAX」(テーラーメイド × KBS共同開発)
・75g|Sフレックス
・65g|Rフレックス
・55g|Aフレックス
グリップ仕様(共通)
◈ 標準グリップ
・SuperStroke(旧Lamkin)「Crossline 360 Black」
テーラーメイド「Qi MAX HL」シャフト&グリップ仕様
◈ 標準スチールシャフト
・KBS「Max Lite」
◈ 標準カーボンシャフト
・「REAX HL」(軽量仕様)
◈ 標準グリップ
・「Crossline 360」軽量バージョン
テーラーメイド「Qi MAX HL」アイアンスペック/性能傾向一覧
| 番手 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | PW | AW | SW |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ロフト角(°) | 23.5 | 27 | 31 | 35.5 | 40 | 44.5 | 50 | 55 |
| ライ角(°) | 62 | 62.5 | 63 | 63.5 | 64 | 64.5 | 64.5 | 64.5 |
| オフセット(mm) | 5.2 | 4.8 | 4.3 | 3.7 | 3.2 | 2.8 | 2.2 | 1.4 |
| クラブ長さ(インチ) | 38.50 | 37.88 | 37.25 | 36.75 | 36.25 | 35.75 | 35.50 | 35.25 |
| バランス(スチール) | C9 | C9 | C9 | C9 | C9 | C9 | C9 | D0 |
| バランス(カーボン) | C7 | C7 | C7 | C7 | C7 | C7 | C7 | C8 |
| バランス(ウィメンズ) | C0 | C0 | C0 | C0 | C0 | C0 | C0 | C1 |
| 利き手 | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH | RH/LH |
| 性能傾向 | ||||||||
| 重心位置:中〜低 / 打ち出し角:最も高い / スピン量:多め / ボール初速:速い / 寛容性:最も高い | ||||||||
価格と発売情報
※以下は米国市場向けの情報となる。
テーラーメイドの「Qi MAX」および「Qi MAX HL」アイアンは、いずれも7本セット構成で展開される。
◈ スチールシャフト仕様:$1,099.00
◈ カーボンシャフト仕様:$1,199.99
予約受付はすでに開始されており、米国での店頭発売日は1月29日となっている。
詳細なスペックや標準装着シャフト、については、TaylorMade公式サイトを確認してほしい。
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