「GT1」フェアウェイウッドの登場時、その目的は明確だった。

ヘッドスピードが中程度のゴルファーが、ボールを高く上げやすくするために設計された、軽量モデル。それが「GT1」だ。

もちろん、『可変式ウエイト』によって、より一般的なフェアウェイウッドのスペックにも調整できるようにはなっている。

だが、本来の役割は明確で、従来モデルではスピン量や打ち出し角が足りずに苦しんでいたゴルファーをサポートすること。それが「GT1」のミッションだった。


芝の上に置かれた「GT1」フェアウェイウッドと、黒・赤・白の専用ヘッドカバー。ツアー仕様らしいデザインが印象的

ところが、少し“異変”が起きた。

2月、タイトリストはPGAツアーの選手たちに、ロフト14.5度のプロトタイプ版「GT1」をひっそりと提供し始めた。

すると、予想外のことが起きた。タイトリスト自身も驚くほど多くの選手が、このモデルをキャディーバッグに入れ始めたのだ。

今では、ツアーで使用されているタイトリストのフェアウェイウッドのうち、約20%が「GT1」になっている。

その“魅力”は、一度打てばすぐにわかった。

「GT1」はヘッドが浅めに設計されており、芝の上からでもとにかく打ちやすい。

一見すると、これはアマチュアゴルファー向けの特徴のように思えるが、実際にはツアープロたちにも好評だ。

というのも、アドレスしたときに、「これなら確実にボールが上がる」と感じさせる見た目になっているからだ。


タイトリスト「GT」ドライバーとTitleistボールが並ぶ構図。アドレスに入る直前の臨場感あるシーン

ロフトにまつわる“裏話”

この話には、ちょっとした“ニュアンス”がある。

一見すると、「たった0.5度ロフトが立っただけの新バージョンを追加するなんて妙だ」と思うかもしれない。

だが、実は今年1月に紹介した表示ロフト15度モデルは、リアルロフト(実測ロフト)で見ると実際には16.5度近くある。

ロフト表記を“操作”するのは、ゴルフクラブ業界ではよくある手法だ。

メーカーは、実際のロフトを変えることでゴルファーのパフォーマンスを引き出しつつ、プレーヤーが“見て安心できる”数字をクラブに刻印する。

たしかに、正直とは言いづらいやり方かもしれない。だが、現実には「13度」や「13.5度」、「16度」や「16.5度」といった数字が刻まれていると、それだけで構えてしまうゴルファーは多い。

たとえ、そのロフトの性能が彼らのゴルフを助けてくれるとしても、だ。

今回の“見せかけのロフト”をめぐる事情は、少し複雑な状況を生んでしまった感もある。

とはいえ、それも仕方のないことかもしれない。なにしろ今回登場した「GT1 3Tour」は、タイトリストのもともとの戦略にはなかった“想定外の製品”なのだから。

その予想外の成功に、タイトリスト自身も驚いた。

だが、おそらく次に「GT1」の新モデルが登場する1年半後には、このツアーバージョンが最初からラインアップに加わっていることだろう。


芝上に置かれたタイトリスト「GT」ドライバーのアドレス時の見た目。シンプルなトップラインと美しいクラウンデザインが特徴

「GT1 3Tour」を検討すべきゴルファーとは?

もしあなたが、たとえヘッドスピードに関係なく、フェアウェイウッドが苦手な競技志向者(上級者)や平均的なゴルファーであれば、「GT1 3Tour」は一度試してみる価値がある。

フェース高を抑えた形状と、ツアー仕様のウエイト配分。この組み合わせが想像以上に幅広い対応力を生み出している。

やさしくボールを上げやすい構えやすさに、求めていた性能がしっかりと詰め込まれているのだ。

本来は中ヘッドスピードでスピン不足に悩むゴルファー向けに作られたモデルを、ツアープロが積極的に使い始めている。

それはつまり、私たち一般ゴルファーも注目すべきサインだと言えるだろう。


「GT1 3TOUR」フェアウェイウッドを手に持った状態で撮影。洗練されたソールデザインと3番の表示が確認できる

「GT1 3Tour」フェアウェイウッド スペック

「GT1 3Tour」は、長さ43インチ、ロフト角14.5度、ヘッド体積180cc。標準のウエイトは11gと3gで、出荷時は重いほうのウエイトが前方に配置されている。

これによりスピン量を抑え、風に強い中弾道のボールが打ちやすくなる設計だ。


シャフトラインアップ・発売情報・価格

VENTUSやTOUR ADなどの人気シャフトが並ぶ比較画像。素材や特性が異なる各種モデルが確認できる

「GT1 3TOUR」 FAIRWAY METALの詳細はタイトリストホームページより。

2025年8月8日発売


※下記はアメリカ仕様のスペック

「GT1 3Tour」フェアウェイウッドの標準シャフトは、他の「GT」フェアウェイウッドと同様のラインアップとなっている。


• 「PX Denali Red」:高弾道モデル

• 「Mitsubishi TENSEI 1K Blue」:中弾道モデル

• 「PX HZRDUS Black」:中〜低弾道モデル

• 「Mitsubishi TENSEI 1K Black」:低弾道モデル


それぞれ求める弾道特性に合わせて選べる、バリエーション豊かなシャフトがそろっている。

「GT1 3Tour」では、プレミアムシャフトとしてGraphite Design Tour AD VF/Tour AD DI/Tour AD UBが用意されている。

そのほか、追加カスタムシャフトのラインアップも多数対応可能となっている。

販売価格は、標準シャフト装着モデルが399ドル、プレミアムシャフト仕様は599ドル。

「GT1 3Tour」は現在、フィッティングおよび先行予約受付中。

詳細は、Titleist.comにて確認できる。