先週の金曜日(5/13)のニュースで、ディフェンディングチャンピオンであるフィル・ミケルソンがPGAチャンピオンシップ(全米プロゴルフ選手権)を辞退すると発表された。

ミケルソンは一時姿を消し、これまでのレガシーを守ることができなかった。

プロゴルファーに詳しい人なら、ミケルソンが自身の最後を自分で決めることは想像できるだろう。以前、彼の本を出版したアラン・シプナック氏とのインタビューで、ミケルソンから侮辱的な発言が飛び出したのは有名な話だ。

サウジアラビアが支援する「LIV(リブ)・ゴルフ・インビテーショナルシリーズ」へのコメントでは、彼らが非人道的な独裁政権だと認識し、恐ろしいとしながらも支持を示した。

同じPGAツアープロや世間から激しいバッシングを受けた後、彼はプレーヤーのためにPGAツアーの再編成を目指すべく「LIVゴルフ・インビテーショナル」を活用するという意図だったとして、それらのコメントを撤回したが、うまくはいかなかった。

ファンや仲間と作り上げたすべての功績や信用を失った末、彼はスポンサー契約もまでも失った。


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「サウジの人権侵害を知った上でなぜこう考えるのか?それは、PGAツアーを再構築する一度きりのチャンスだからだ。」

-フィル・ミケルソン





この世間の反発により、サウジアラビアの新鋭ツアーに大きな注目が集まったが、すべてがネガティブなものだった。にもかかわらず、このツアーに参加することに興味を示すプレーヤーは少なからずいる。

一方のPGAツアーは、いかなるプレーヤーも手放すことはないと回答。最初のサウジトーナメントは、6月9日から11日までイギリスのセンチュリオンクラブで開催される予定だ。

しかし、49歳のイングランド代表リチャード・ブラントのように、自分の意思を堂々と表明する者もいる。「追放されるなら、追放されるまで。私のキャリアは過去のことだ。」と彼はBBCラジオに語った。

サウジツアーをある種のシニアツアーと位置付けるような発言もあったが、ブランドの行動はまさにそれを裏付けているようだ。

彼は8つのトーナメントで合計2億5,500万米ドルもの賞金総額があるLIVインビテーショナルに出場する唯一の理由として、“魅力ある収入”を挙げている。それは、他の選手も同様だ。彼らは家族のために経済的保証が欲しいと言う。ではその資金はどこから来るのか。

ここで切っても切り離せないのが、2018年にサウジアラビア政府がワシントンポスト特派員ジャマル・カショギ氏を殺害した事件だ。米国大使館を含め実際これを認める人はほとんどいない。そこで使われるのが、「スポーツウォッシング」であり、サウジマネーなのだ。

「スポーツウォッシング」とは、アムネスティ・インターナショナルが作った造語で、政府がスポーツ、イベント、チームに資金を投じ、利用して、自分たちのイメージを向上させようとすることをいう。これは、利他的な活動を装った政治的な手口であり、スポーツ自体の成長を望む人には支持されない。

ブランドを含むリー・ウェストウッドやセルジオ・ガルシアからも分かるように、それは人間の品位よりも富に重きを置く人達に支持されるものだ。特に、シェーン・ローリーの「私は政治家ではなくゴルファーだ。行って仕事をするだけだ。」というコメントを聞いて心が痛くなった。

以前数千万のお金をギャンブルで失ったと噂されていたミケルソンは、彼らの巧みな仕組みに惹かれた可能性がある。彼やグレッグ・ノーマンのような人々にとって、他の魅力があるのだろう。


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グレッグを50年知る者にとって、彼の頭の中は自分のことだけだ。

-ウェイン・グラディ


傲慢(過度のプライド)の塊で知られるノーマン氏こそ、LIV(リブ)の最高経営責任者だ。

ちょうど先週、カショギ氏の事件について尋ねられた彼はこう言った。「いいか、我々はみな間違いを犯してきた。過去の間違いから学び、今後どのように活かすか、だ」(上記の「スポーツウォッシング」の定義参照。)

さらに彼は、サウジアラビアの「LGBTYQコミュニティ」に対する差別についての質問には、「正直、ゲイの友達がいるかどうかは分からない。」と答えをはぐらかした。

ミケルソンのように、ノーマンはチャンピオンになることで利己心と巨大なエゴを偽装しようとしたが、成功しなかった。

「グレッグを50年知る者にとって、彼の頭の中は自分のことだけだ。」と、オーストラリア人プロゴルファーのウェイン・グラディはFacebookに投稿している。「彼は30年間(PGA)ツアーを壊そうとしていた。今日あるPGAツアーの歴史を作り上げてきた偉人たちに敬意を払わないのは、あってはならないことだ。恥を知るべきだ、グレート・ホワイトシャーク(ノーマンの愛称)。」

悲しいことに、グラディのような人は少なく、グレート・ホワイトシャークに群がる小魚が多すぎる。

小魚どころか「クラゲ」といった方が適切か。後者は、骨のないいくじなしだからだ。