盛りだくさんなラインナップ

ピンが新しいパターシリーズ、ヘプラーを発表した。いろいろありますというだけでは控えめな表現になるだろう。

これほど多くのデザインのパターを一気にリリースするメーカーにはなかなかお目にかかれない。

そのうちいくつかは見てすぐわかるものだが、なかには形が特徴的であったとしても詳しく見てみないとわからないものもある。

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まるでテレビドラマの脚本があるかの如く興味深いパターの発表だ。

まず聞き慣れないヘプラーという名前に引っかかり、赤銅色と黒という色に目を奪われ、ピンのTR溝がどこにも見当たらないことで大きなテクノロジーの転換があったことを知るわけだ。

なんともわくわくするじゃないか。

というわけで話のネタは尽きないわけだが、まずはその名前から紐解いていくことにしよう。


 

ヘプラー:何?ではなく誰?

リック・ヘプラー(1949-2013)はピンの創設メンバーのひとり。

1966年、まだピンが法人化される前に、リックはジョン・ソルハイム(ピンの現会長兼CEO)のもと、ソルハイム家の車庫でゴルフクラブを組み立てていた。

在職期間中は数々の部署を管理した。彼はまた米国陸軍予備軍にも在籍した。〜ピンの2013年Facebook投稿より。

白状するが、最初に名前を見たとき『ヘルパー』と見間違え、「このパターがヘルプしてくれるって?わかりやすい、いい名前じゃないか」とまで思った。

そもそもパターに関してはわりと夢想しがちな質なのだ。私たちの25年にわたる結婚生活で、「いま何を考えてるの?」のアンサー(答え=Answer)はほぼアンサー(Anser)についてだってことを、妻もいい加減諦めている。

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それはさておき、ヘプラーが何やら科学的なコンセプト、たとえば『ヘプラー効果』みたいなものじゃないってことはもうわかっただろう。

とはいえ、あながち間違ってるわけでもないんだよ。

だって、ドップラー効果の名前は聞いたことがあるだろう?そのドップラーが人の名前だってことは知ってた?ヘプラーと同じく。

ピンに在職していた間、ヘプラーはありとあらゆる業務に携わった。製造からマーケティングなどなど。彼はソルハイム一家の良い友人だった。こうやって彼へ敬意を捧げることはとてもピンらしいアクションだ。



 

赤銅色と黒が隣り合わせなら大丈夫

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赤の隣が黄色だったら毒のあるサンゴヘビだから気をつけて。毒ヘビかもしれないのに一体誰が近づいて縞模様の色合いを確認するっていうんだろう。

ヘビの派手なシマシマは明白なメッセージをこちらに伝えているじゃないか。よく見ようと思って近づいたりするなよって。

ヘプラーシリーズで使われている赤銅色と黒もサンゴヘビのように人目をひくが、この場合は警告ではなく歓迎の意を表している。

では何故この色合いなのか。それは、ただ単純にピンの調査の結果、顧客に一番人気があったのが赤銅色だったからだ。

使用する色について言えること、それはただの色だってこと。赤銅色と黒のトーンは特定の金属の色というわけでもなく、つまり赤銅色は赤銅色の塗料であって赤銅色の金属ではない。

ヘプラーパターの素材はスチールとアルミニウム(詳細は後述)だから赤銅色と黒は地の色ではない。赤銅色がスチール部分にほどこされているモデルもあればアルミ部分のモデルもある。

ヘッドのデザインによって使われる金属は様々だが、色は後から好きにつけられる。

たとえば、ニューバージョンのKETSCH(ケッチ)では、黒い部分はアルミでスチールは赤銅色に塗られている。ANSER 2ではいずれの色もスチール部にほどこされている。パターの色はコスメだということだ。

ヘプラーシリーズのうちいくつかのパターについて、ひとつどうしても連想してしまうのは、今はもうないオデッセイのVERSAシリーズのカラーシステムだ。

たとえばANSER 2やZB3は、VERSAと同じくターゲットラインと垂直に色がついていて、意図的ではないかもしれないがアライメントの助けになっている。もっと大型のマレットモデルになるとVERSAとの類似点はなくなる。


 

新しいメタルとメソッド

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ほとんどのユーザーは気づかないだろうし気にもしないとは思うが、ヘプラーパターはピンが初めてアルミに圧力鋳造法を用いたシリーズだ。

素材が手元にないなら読み飛ばしてもらって構わないが、これは実に興味深く、実にピンらしい話なのだ。

圧力鋳造の利点は、エンジニアたちがそのパターの性能上最適だと思うところならどこにでもウエイトを配することができるうえ、デザインのディテールを実に正確に再現できるということ。この製法のおかげで、既存のモデルは進化を遂げ、新規モデルも2つ生み出すことができた。〜ジョン・ソルハイム。

ピンではエンジニアリング(工学・技術)が用品を進化させる。これまでのドライバーからパターに至るまで全ての製品でそのことは立証されている。

ほとんどの人が知ることはないだろうが、アルミヘッドのパターを創るためにピンが圧力鋳造法を開発したからこそ、これらのパターの製造が可能になったのだ。

ピンパターに限らず市場で見かけるアルミ製パターの多くは、6061アルミニウムからできている。アルミの採用によりデザインの幅は大きく拡がるが、ミルドの製作過程は時間を要しコストもかかる。

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ピンの新しいアルミシステムは、液状のアルミニウムを使用するモールド(鋳型)製法。どちらかというとスチールの鋳造パターで使われる製法だ。

ピンはこのシステムの研究開発に莫大な資金を投入したはずだが、これによりパターの完成までに要する時間は短縮され、ミルド製法のアルミパターに比べてコストも抑えられる。

この新しい鋳造システムだと、約20秒に1つのパターヘッドが出来上がる。対してパターをアルミの塊からミリングするのにかかる時間は30分以上だ。

今のところ、ミルドとキャスト(鋳造)の製法の違いによる特性の大きな相違点は何もないようだし、この製法のおかげでデザインの自由度が得られたことにピンは大いに盛り上がっている。

また、アルミ素材の採用により、デザイナーは慣性モーメントや重心位置の扱いにおいてもかなりの自由度を得た。

ピンは、50年にわたり革新的なキャストスチール製品を創造し続けてきた。キャストアルミニウムの登場により、彼らのデザインにどのような変化が現れるのかが楽しみだ。


 

改良された可変長シャフト

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昨年のSIGMA 2シリーズでピンは全く新しいタイプの可変長シャフトを採用した。ピンは以前から何年も可変長シャフトを提案していたが、銀色の大きなロックシステムは美しさに欠け使いづらく、あまり人気が出なかった。

SIGMA 2の調整システムはかなり革新的で、広範囲にわたって長さ調節が可能になり、調整器具もグリップ部にうまく格納された。グリップの穴に専用レンチを挿してくるっと回すだけで正しい長さに設定できる。

これはゴルフショップにとってはかなりの朗報だった。パター用の長さの違うシャフトを何本も取り揃える必要がなくなったわけだから。

調整機能に関しては実際の評判も上々だったが、シャフトが少し柔らかすぎると感じたユーザーも散見された。それを受けてピンは新たなバージョンの可変長シャフトを開発した。

メカニズムは引き続き目に見えないところに格納したまま、カーボン素材に変化を施すことによって、より硬く耐久性も向上した新たな可変長シャフトを生み出した。


 

多種多様なヘプラーのヘッド

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今回のシリーズはヘッド選びが楽しそうだが悩ましくもある。

人気の定番モデルは、ユーザーの需要と、売れればまた新しいパターを作る資金源になるというメーカーの思惑によって、毎年ラインナップに含まれるわけだが、毎度毎度同じヘッドを出すのはユーザーにとって新鮮味に欠けるし、賭けてもいいがパターエンジニアにとっても同じだと思う。

ヘプラーシリーズの9種のヘッドは、クラシックなものから、クラシックタイプの現代版、新しいデザインのものまでバラエティに富んでいる。

ブレードタイプの割合が少なめとはいえ、これであらゆるゴルファーのストロークタイプに対応できるはずだ。いくつか個人的に興味をひかれたモデルを紹介する。


 

ヘプラー KETSCH

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これまでKETSCHと私のグリーン上での相性はいまひとつだったが、MOST WANTEDでの高評価によりちょっと見直しているところだ。

初代KETSCHとその後継モデルたちの特徴は、そのアライメント効果にある。KETSCHのアライメントシステムにより、自分を含めたほとんどのゴルファーが正しくパターを構えられるようになる。

KETSCHの底部に、新素材の開発によってピンが何を成し遂げたかが見てとれる。

初代KETSCHは中央部にスチールのソールプレートが配されたアルミのボディだったが、ヘプラー KETSCHはほぼその真逆。

重心位置を低く保つためスチールは今も底部にあるが、それに加えて、慣性モーメントを大幅に上げるために周辺部にも使われている。

ヘプラー KETSCHに搭載した新素材のおかげで、ピンはパターの慣性モーメントを自在に操れるようになった。大げさじゃなく。

ヘプラー KETSCHの慣性モーメントはVault 2 KETSCHの倍、またMOST WANTEDの栄冠に輝いた初代KETSCHと比べると88%アップしている。

つまり、効果的なアライメントシステムを手に入れたうえに、やさしさも激増したということか?一見の価値はある。


 

トムキャット 14

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ピンは、よく新製品発表で変わり種のデザインを入れてくるメーカーだ。2014年はKETSCHがそうだった。今回その役回りはトムキャット 14だ。

ぱっと見、平行線が引かれたスパイダーっぽいデザインだがもちろんそれだけではない。ピンはこのパターにいくつかの実験的な要素を取り入れているのだ。

名前の「14」はトップに配された14個のサイトドットから来ている。定規で測ればわかるが、ドットの配置はフェース面側からパター後部に向かうにつれ間隔が狭くなっている。

これは滑走路の着陸灯からヒントを得たものだ。着陸灯は地面に等間隔に置かれているにもかかわらず、離陸着陸時にはそれぞれの間隔が異なって見え、これにより操縦士がターゲットを見分けやすくしている。

とはいえ、それがパッティング向上にも有効なのか?

ピンの視標計測データによると答えはイエスだ。しかし、このドットについては実際に使用したユーザーの反応を見てみたい。

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トムキャット 14は、同量のスチールとアルミニウムで構成されており、シリーズ中最も慣性モーメントの大きいモデルとなっている。新たな鋳造製法によりデザインの自由度が拡大した恩恵がまさにこれだ。

トムキャット 14がゴルファーたちにどのように受け止められ、MOST WANTEDでどのような結果を出すのか非常に興味深い。

大きく見た目の違うものが馴染むには時間がかかるということを認識しつつも、ピンも同じく興味深く見守っていることだろう。

うわさによると、ほとんどのゴルファーは実際にボールを転がしてみた後のほうがより好感度が上がるらしい。

実際にトムキャット 14を使ってみた自分も「うわさは正しい」と思う。「変わってるけど上手くいく」というのが最初の感想だ。


 

グルーヴィー(溝アリ)じゃないんだよベイビィー

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ヘプラーシリーズの最大の驚きは、フェースがみんなツルツルだってこと。そう、TR溝はどこにもない。ヘプラーのフェースはTR溝以前のピンのパターフェースに近い。

しかしなぜ溝が消えたのか?

ピンはたくさんの時間とお金をかけて我々にTR溝こそが救世主だと教えてきたじゃないか。なのにそれがなくなったなんて。

この新たなフェースデザインは、ピンがより硬めの打感と異なる打音を求めた結果生まれたものだ。パターフェースに何かの素材をつけると柔らかくなったと感じる。

素材を増やせば柔らかさも増す。きっとどこかで柔らかくなりすぎたと感じたのだろう。

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そう感じたのは何人かのツアープレーヤーたちだ。彼らはフラットフェースのほうが操作性も手応えも良いと感じた。

実験によって実証可能なものなのかよくわからないが、ピンはTR溝アリのSIGMA 2と溝のヘプラーで実験したという。

その結果、ストロークス・ゲインド(パット貢献度)の数値はどちらのフェースでも大差ないものの、モニターのスコアのまとめかたには相違が見られた。ヘプラー使用者は攻めの姿勢が強く、ワンパットも多いが3パットもするという傾向。

対してSIGMA 2使用者はワンパットはそこまで多くないが、セカンドパットで残る距離は統計的にみてフラットフェースのそれよりも短かった。

結果に大きな違いが見られなかったので、ヘプラーの慣性モーメントの大きさがTR溝がないという損失を補ったというのが妥当な仮説だろう。

まとめると、いずれのフェースも結果に繋がるものだが、その過程はそれぞれ異なる。なのでゴルファーのスタイルによってどちらが合うか分かれることになるだろう。


 

SIGMA 2の後継ではなく補完するもの

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ヘプラーについてもうひとつ言えるのは、ヘプラーはSIGMA 2の後継モデルではなく、並行して販売するものだということ。これにより、打感の好みに応じてユーザーが選択できることになる。

そう聞くと、ショップはピンのパターコーナーを拡大しなければならないと思うかもしれないが、可変長シャフトのおかげで揃えるべきシャフトの本数が減るので安心してほしい。

ヘプラーに対する個人的な感想は、これぞまさにピンの実験哲学を体現したものだということ。

ピンはヘプラーで全く新しい製造法を用い、複合素材により新たなデザインを生み出し、さらに前進するため明らかに効果的なテクノロジーを捨て去った。

結局のところ、我々はみな高校で習った科学的方法における実験段階の真っ只中にいるということなのだろう。とにかくデータを集めたいと思う。

ヘプラーシリーズは小売店にてプレオーダーが可能。

ANSER 2とZB3、PIPER Cのメーカー希望小売価格は245ドル、その他は270ドルで注文可。


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