今やゴルフ界では、「ミニドライバー旋風」が巻き起こっているのはご存じのとおりだ。

2024年末から2025年にかけて、ミニドライバーはプロからアマチュアまで幅広く注目を集める存在となっている。使い勝手の良さはもちろん、これまで試したことがないクラブという“新鮮さ”も人気の理由だ。

PGAツアーのハワイ大会では、タイトリスト「GT280」ミニドライバーが登場。その直後には、PXG初のミニドライバー「シークレットウェポン」、キャロウェイの「ELYTE Mini」、そしてコブラの2番ウッド試作モデル「The Deuce」も登場し、話題に火をつけた。

このカテゴリーの盛り上がりは、2023年のテーラーメイド「BRNRミニ」の成功によって一気に加速したといえるだろう。

そして現在、マスターズの開幕を迎えたこのタイミングで、ミニドライバーはもはや「ちょっと面白い選択肢」ではなく、オーガスタ・ナショナルを攻略するための“実戦的な武器”として真剣に語られ始めている。


ゴルフコースでミニドライバーを使用してティーショットを放つプロゴルファー。スイングのインパクト直後を捉えた一枚で、クラブの動きと飛び出すボールが鮮明に描かれている。

なぜオーガスタ・ナショナルとミニドライバーは相性が良いのか?

現代の多くのトーナメントコースでは、ティーショットでとにかく飛距離を稼ぐことが重視されている。いわば、「思い切り振って、あとはボールを見つけに行けばいい」というスタイルが主流だ。

しかし、オーガスタ・ナショナルは例外。ティーショットにある程度の“寛容さ”はあるが、ドライバーを思い切り振って押し切れるようなコースではない。(実際、ブライソン・デシャンボーがそのスタイルに挑戦したが、結果は芳しくなかった。)

さらにこのコースには、ティーショットで“ドロー”が求められるホールが複数あり、それが現代のプレーヤーたちが多用する“パワーフェード”との相性の悪さにつながっている。

また、このタイプのホールには、フェアウェイを突き抜けたくはないが、コーナーを回ってセカンドショットにつなげるために、ある程度の距離は必要という場面も多い。

つまり、「飛ばしすぎてもダメ、足りなくても困る」という絶妙なティーショットが求められるホールがいくつもあるのだ。

たとえば、No.2、No.10、No.7、そして有名なNo.13などは、ドローでコーナーを攻め、次のショットを打ちやすくするための「位置取り」が求められるホールだ。

こうした場面で力を発揮するのがミニドライバーだ。3番ウッドでは距離が足りず、フルサイズのドライバーでは右から左への“ターン”が難しいシチュエーションで、その中間を埋めてくれる最適な選択肢となる。

実際、マスターズの舞台でミニドライバーを投入する選手が増加中。トミー・フリートウッド(BRNR Mini)、アクシャイ・バティア(Elyte Mini)、キーガン・ブラッドリー(BRNR Mini)、アダム・スコット(BRNR Mini Copper)、セルヒオ・ガルシア(BRNR Mini)といった面々が、ミニドライバーをバッグに入れている。

さらには、ジャスティン・トーマスも数週間前のベイヒルでミニドライバーを試している姿が目撃され、2025年はさらに多くの選手がミニドライバーをテストしている状況だ。

「飛ばしすぎず、狙った場所に落とす」というプレッシャーが続くオーガスタにおいて、ミニドライバーは“間違いなく武器になるクラブ”として再評価されている。


オーガスタでミニドライバーが効果を発揮する場面

アクシャイ・バティアは、オーガスタ・ナショナルのいくつかのホールで「ELYTE Mini」を使用する予定で、特に狭いフェアウェイが特徴のパー4・7番ホールではその効果を期待している。

「ティーショットは木々に囲まれていて、フェアウェイは左から右に大きく傾斜しています。風も舞っていて、たいてい右から吹いてくるんです」とバティア。「だから、自分の場合は完璧なドライバーを、小さな狭い抜け道に通して打たないといけない。しかも、しっかり曲げる必要はあるけど、曲がりすぎてもダメ。左に引っかけたら右の林に突っ込んでしまう。かといって3番ウッドだと、2打目が左足下がりからの打ち上げになるんです」

ミニドライバーを使うことで、バティアは無理に大きくボールを曲げなくても、十分な距離をフェアウェイに運べるという自信を持てるようになった。また、普段はあまり使わない持ち球とは逆の、安定したドローを打てる感覚も得られている。

バティアがミニドライバーで打つキャリーは約270ヤード、ボール初速は約74.2m/s前後。ミスヒットした際でも、スピン量は4,000rpmを下回っており、このクラブの性能の高さがよくわかる。

「オーガスタ・ナショナルでは、このクラブを使うには絶好の週だと思っています」とバティア。「木が密集しているティーショットが多くて、僕のようにボールを大きく曲げるプレーヤーにとっては、このクラブが弾道を少しだけ抑えてくれる。3番ウッドより少し距離も出るし、例えば8番ホールなんかは良い例。セカンドが急な打ち上げになるホールで、右打ちのプレーヤーなら、3番ウッドでドローをかけてスピンを抑えるという攻め方もできるんです。」

ツアープロの間でミニドライバーの使用率は確実に上がってきている。バティアが語るその理由を聞けば、それが理にかなっていることがよくわかる。

一方で、一部の選手は別の選択肢を取ることもある。