タイトリスト「AVX」ゴルフボールはやや謎が多い。

素材の構成上、「AVX」は3ピースTPUカバーのタイトリスト「Tour Speed(ツアースピード)」や、2ピースのタイトリスト「Tour Soft(ツアーソフト)」とは異なる。しかも、「Pro V1(プロV1)」シリーズの一員にならない限りは(たとえば、「Pro AVX」と呼ぶなど)、やや埋もれてしまう感がある。

かといって、「AVX」は、安くタイトリストボールを使いたいゴルファーを対象としたお得な選択肢ではない。その上ボール業界でおそらく最も認知度の高い名称「ProV1」を冠していないのだから、「Pro V1」ほどのブランド力は持ち合わせないだろう。

ざっと「AVX」の印象を述べたが、一体「AVX」とはどのようなボールなのか?


「AVX」の始まり

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「AVX」は2018年に、「ProV1」と「ProV1x」の次なる第三選択肢として導入された。その目的は、「低スピン/低弾道で、全体的にソフトな打感」のボールを提供すること。

参考のため、「Pro V1」は「中弾道/中スピン」と謳われるが、「ProV1x」はどちらかと言うと「高弾道/高スピン」だ。

確かに、ボール性能としてはニッチであり、この記事を読んでいるほとんどのゴルファーにおそらく適さないだろう。ただし、「Pro V1x Left Dash(プロV1xレフトダッシュ)」と同様、「AVX」の弾道、スピン量、打感を望むゴルファーが少なからず存在し、その人達に向けて作られている。


タイトリスト「AVX」の弾道、スピン、打感

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同社がボールフィッティングに3つの特徴的な基準を用いるのはご存知だろう。これらはタイトリスト独自というわけではないが、モデル間の違いを説明しやすい。

さらに、ボールの弾道(飛び)やスピン性能、打感はすべて、ゴルフボールの製造においては従属変数となる。

つまり、1つの要素(スピン)を変更すると、弾道や打感、あるいはその両方が変わってしまう。これはゴルフボール製造の難しさを語っている。

ゴルフボールの設計では、時間やお金などの有限のリソースと同様、片方の選択をすることで失う価値がある。例えば、手元の5ドルでアイスクリームを1個買うと決めたら、他のものを買う機会を逃すことと同じ。話をゴルフボールに戻そう。

「柔らかいコア素材」を使うと、多くのゴルファーが望むようにドライバーで「低スピン」を生み出すことが可能になる。しかし、「ボール初速」はコアが柔らかいほど遅くなってしまう。

その結果、エンジニアは、十分な飛距離を出すために、ディンプルパターン、マントル層、およびカバーの厚さを工夫しながら、スピンと弾道を調整することになる。

意外かもしれないが、ある種のボールがすべてのゴルファーに合うパフォーマンス属性を持っていることはない。ゴルファーはそれぞれ違うのだ。「フリーサイズ」的な考えは、安いレインコートなら良いが、ゴルフには不向きなのだ。


タイトリスト「AVX」第三世代

「新『AVX』では、『AVX』を好むゴルファーが求めているものにフォーカスした。すなわち、グリーン周りのスピン性能を強化しながらも、ゴルファーが好む驚くほどの飛距離性能とフィーリングを向上させた。」とは、ゴルフボール製品管理ディレクターのフレデリック・ワデル氏。

ゴルファーの願いをさらに代弁すると、ティーショットからの飛距離はもっと欲しいところだが、グリーン周りのスピンは失いたくない。ついでに言えば、ショートゲームでのスピンも欲しい。

想像するのは簡単だ。

「これを実現するために、私達が取り組んだのはウレタンカバーを柔らかくし、ショートゲームのパフォーマンスを向上すること。同時に、初速改善のために新たなコア構造を採用し、安定した弾道と大きな飛距離を得るためエアロダイナミクスデザインを改良した。」と、ワデル氏。

ここで重要なのは、ゴルフボールはすべての要素が互いに関連しており、直接パフォーマンスに影響を与えるということ。





タイトリスト「AVX」コア

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新「AVX」はコアを刷新し、ロングアイアンでのスピン量を抑えながら、初速が出るように設計されているとのことだが、ちょっと待って欲しい。

これまで、「AVX」のような“低コンプレッションボール”に採用される“ソフトコア”は基本的に初速が出ないと再三聞いてきた。さらに私たちの測定によると、新「AVX」は現バージョンよりも3〜4ポイント柔らかい。これに対する解決策としてタイトリストが開発したのが、中心が柔らかく、外側に移るにつれて徐々に硬くなる「段階的コア」。

まるで中が柔らかいクッキーのようなコアだ。次に、『ハイフレックス・ケーシングレイヤー(柔軟性の高い高速ケース層)』でコアを覆う。このレイヤーの目的は、ロングアイアンとハイブリッドでの初速を上げ、スピン量を減らすことだ。


タイトリスト「AVX」カバー

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キャストウレタンカバーは、同社のR&Dが開発した独自の配合で、前世代「AVX」のカバーよりもわずかに薄くなっている。ポイントは、薄いカバーが硬い「ケーシングレイヤー(ケース層)」を覆っていること。そして、「硬いレイヤー上に柔らかいレイヤー」の発想は、スピン性能を促す。

2ピースボール(ハードコア/ハードカバー)がツアーレベルのグリーン周辺でのスピンコントロールを提供できないのはそのためだ。そのため、ショートゲームのスピン量を増やすには、「より柔らかく/薄いカバー」や、「より硬いマントル/ケーシングレイヤー」、またはその両方が必要なのだ。

「スピン」性能の向上を謳った、同社の設計目標を聞いたことがあるかもしれない。基本的に、X軸がドライバーのスピンを示し、Y軸がウェッジのスピンを示す、よくあるXY座標を思い浮かべて欲しい。

ふたつの線を急勾配にするには、2者間の差を大きくすることで可能になる(より少ないドライバーでのスピン量、より多くのウェッジでのスピン量)。


タイトリスト「AVX」エアロダイナミクス

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エアロダイナミクスを活用したディンプルパターンについては、「弾道」を理解しておく必要がある。難しいことは何もない。ゴルファーのショットを真後ろから見ると、ボールは上にあがり、左右に動き、弾道の頂点に達したら落下する。横から見ると、さらにショットの弾道全体を見ることができる。

たとえば、7番アイアンの高さ(弾道の頂点)が105フィート(約32m)だと理解するのは、データとしては重要だ。しかし、弾道全体に対してどこで弾道の頂点に達するのか?

そして、落下角度にどのように影響し、グリーンを捕らえるストッピングパワーにどのように影響するのか?

これが、「打ち出し角」と「スピン量」だけに固執する時代遅れの考え方と、総弾道の価値を理解することの大きな違いである。

新しい『348カテナリーディンプルデザイン』は、「AVX」の低弾道用に設計されている。同社によると7つのディンプルサイズを駆使した新しいパターンにより、更なる「飛距離」と「一貫したボールの飛び」が実現するという。

昨年、タイトリストは「新ディンプルパターン」を搭載した新たな「Pro V1」と「Pro V1x」をリリースした。これは、2011年以来初めてのディンプル数の変更となった。(「Pro V1」には388個のディンプル、「Pro V1 x」には348個のディンプル)新「AVX」の348個のディンプルパターンも、これらを探求するプロセスから生まれた。

主に品質と設計の観点から、「AVX」は「ProV1」の仲間の一員だと私は思っている。


タイトリスト「AVX」のターゲット

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「AVX」や「Pro V」と名のつくものを含むツアーボールラインナップは、8対2の法則が当てはまる。つまり、中~高スピンを好むゴルファーの約80%が「ProV1」または「ProV1x」のいずれかに適するのに対し、低スピンを好む20%が、「Pro V1x Left Dash」か「AVX」のどちらかに当てはまる。

したがって、「AVX」は「ProV1」よりも低い弾道とスピン量が欲しいゴルファーのための「ProV1」の代替品ということになる。

一方「Pro V1 Left Dot」はどうなのか、と思っている方もいるだろう。完売しているという事実に加えて(オークションでは1ダース250ドルで売られているが)、「Pro V1 Left Dot」と「AVX」は同じではない。

弾道とスピン特性でいうと、「Left Dot」は「ProV1」と「AVX」の間に位置する。

さらに、「Pro V1 Left Dot」は毎週PGAツアーで使用されるボール。「AVX」はそうではない。これは、「Pro V1 Left Dot」が「AVX」よりもややスピン量が多く、硬いためだ。

「Left Dot」のスピン特性は、弾道を低く、グリーン周りでより多くスピン量を必要とするゴルファーに役立つ。かといって、「Pro V1 Left Dot」が2022年後半または2023年のどこかで小売市場に登場したとしても、ツアーボールのラインナップが5つになるとは断言できない。

つまり、5つのモデル間のパフォーマンスの差異が明確であるかどうかということだ。


価格と販売予定

タイトリスト「AVX」は、ホワイトとイエローの2色が揃う。

価格は49.99ドルで、2月4日に発売。(アメリカ)

※日本発売日は3月4日