以前、PINGの開発部門を統括するポール・ウッド氏はこう言った。
「我々PING社CEOのジョン・A・ソルハイムと社長のジョン・K・ソルハイムは、前作を上回るものができたと『100パーセントの確信』で言えない限り、絶対に新製品を発表しない。それが我々のプライドだ」。そして「皮肉な話だが、『G400 LST』が大成功したおかげで、ひどく苦労した」と。
どんなゴルフメーカーも商品を進化させたいと思っているが、ゴルフ業界では1年サイクルでその進化を問われてしまう。
どんなイノベーションでも、スケジュール次第であり、進められるのはごく小さな一歩でしかない。それは最小限の進歩だったり、時にはかなりの大きな進捗が見られることもあるが、全くなかったりすることだってある。
皆さんもご存じの通り、PINGは派手な宣伝はしない常に控えめなメーカーとして知られている。さらに見た目も至ってシンプル。2023年モデルで明るいイエローのラインを入れてきたことに驚いたくらいだ。
ド派手な真っ赤なフェースや見た目のインパクトが無くても、もちろん誇大な広告がなくても、テクノロジーを全面に押し出し訴え掛けるものが無くても売れる。これはある意味PINGへの信頼が高いと言えるのではないだろうか。
以前、「キーワード」から連想するメーカーは?というアンケート調査を10,769人に行ったところ、このような結果が出た。
下記がアンケートに協力してくれたゴルファーからの回答であり、PINGがどのくらいゴルファーから信頼されているのかが見て取れる。
・「性能」トップ(2年連続)
・「技術」トップ(3年連続)
・「誠実さ」トップ(2年連続)
・「信頼に値する」トップ
・「ポジティブキーワード」トップなど
「ネガティブ」な「キーワード」でPINGがトップに選ばれたものは何一つない。ちなみに「マーケティング」や「誇大広告」、「ごまかし」などのネガティブなキーワードから連想されるメーカーでトップだったのは「テーラーメイド」だった。
それが良いか悪いかは別として、テーラーメイドは人気が高くそれだけ多くゴルファーが手にすれば、当然高い評価だけを受けるはずもなく、調査結果においても票がその分だけ集まるというのもあるだろう。
しかしながら、ゴルファーのPINGへの印象が良いということはこれで証明できたことになる。
PINGは「興味をひくための仕掛け」などもない。だが、安定してMyGolfSpyの読者から高い評価を受けている。同じことが「タイトリスト」や「ミズノ」にも当てはまり、ポジティブな反応が多かった。
皆さんにとって、PINGはどのような存在だろうか?どんなイメージをお持ちだろうか?
そんなPINGのここ最近のモデルを振り返り、どの程度の進化を遂げているのか?また、PINGのドライバーを選ぶとしたらどのモデルがあなたに合っているのか?
まずは、「2020年モデル」から振り返って見ていこう。
名器越えを強いられた挑戦~2020年モデルPING「G425」ドライバー3モデル
まずは、PING「G425」ドライバー3モデル全てに共通するテクノロジーから。
・『TI9S+フェース』:PING独自の熱処理で生まれた高強度・極薄の反発素材”FORGED T9S+チタン”はフェースのたわみ効果により、最大初速を生み出す。
・『ドラゴンフライ・クラウン』:どのメーカーもクラウンを薄くすることで生まれた余剰重量を、他の場所に再配分する手段を持っている。PINGでは格子状の「ドラゴンフライ」構造を採用している。業界の多くがカーボンファイバーに移行している中で、PINGが「オールチタン構造」を使い続ける理由の一つは、その「軽量化構造」にある。
・『タービュレーター』:ピンの空力強化タービュレーター(突起)のあるクラウンもいくつか設計上のマイナーチェンジを加えることで「G425」へと引き継がれている。
だが空力特性は、ヘッドスピードが遅めのプレーヤーは、速いプレーヤーよりも空気抵抗低減による恩恵は少ないということは理解しておこう。
以上が共通テクノロジーだが、ほぼ前作(「G410」)を継承している。
では、他のモデルと比べて、実際にPINGがどの程度のパフォーマンスを発揮したのか?
[table id=198 /]
※このデータは『2022年ドライバーランキング』より。(※PINGの日本発売日とアメリカでの発売日が異なるため、性能テストの年数は異なる。)
そして、この3モデルを他社のモデルと比較した結果がこちら。
[table id=205 /]
先程も述べたようにアメリカと日本での発売日が異なるため、このテストのデータは他社の2022年モデルと比較した結果となる。
MYGOLFSPY版の「ストロークス・ゲインド」について
ストロークス ゲインド:元々は2011年からPGAツアーで導入されたプレーヤー指標。コースの難易度により大きく変動する「平均パット数」や「パーオン率」等では比較できない、選手の「本当の実力」を比較するために生まれた指標。同じコースでの全選手の平均ストローク数、あるいは同程度の難易度のコースや状況における平均ストローク数と自分のストローク数との「差」で示される。
「スコアを何で稼いでいるか」という観点で、「ドライバーショット」「アイアンショット」「アプローチショット」「パッティング」それぞれのショットが、平均値より何打“少ないか(ゲイン)“を数値化している。
MYGOLFSPYの「MOST WANTED」における製品テストでは、この「ストロークス・ゲインド」の考え方をベースとして、プレーヤーではなく“商品そのものの実力”を見るため、「ドライバー」「アイアン」「パター」等、各カテゴリーの「商品の実力」を比較する指標として用いている。
データの中で、まずこの「ストロークス・ゲインド」に注目してほしい。これは上記でも説明している通り、MYGOLFSPYでは「ストロークス・ゲインド」を「商品そのものの実力」としている。
2019年発売されたPING「G410 LST」は、『2020年ドライバーランキング』の勝者であり、2017年に発売されたPINGが大成功したという「G400 LST」を見事に継承するかたちとなった。
そして、翌年(2020年)の結果「G425 LST」が3位、「G425 MAX」は4位と好成績だが、「G425 SFT」の37位という結果には何とも言いようがない。
この「SFT」に関して、更に2年後の結果を見てみると…。
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※このデータは『2023年ドライバーランキング』より。(※PINGの日本発売日とアメリカでの発売日が異なるため、性能テストの年数は異なる。)
「G425 SFT」と同じく、「飛距離」と「正確性」は30位と下位、そして「寛容性」だけが2位とトップクラスになっている。
この理由はなんだろうか?
そもそも「SFT」とはどんなモデルなのか?
「SFT」は、「G425」シリーズの中でもドローバイアスのかかった(スライス抑止)モデル。
ゴルフコースで「右サイド」を気にすることなく安心して打てる。スライスに苦戦しているなら「G425 SFT」が役に立つことは間違いなく、このモデルの「右に出る者はいない」だろう(左利きのプレーヤーは左サイド)。
とはいえ、スライサーはスライスするもの。そこでピンは「G425 SFT」の軌道をさらにコースの「左サイドへ」と持ってきた。
誰もが「スライス抑止機能」を求めているわけではないことは言うまでもないが、これは「G425シリーズ」における各モデルの明確なすみ分けを物語っている。
中でも「G425 SFT」は明らかに「スライスと闘うゴルファー用」、“永遠に”ドローモードに設定しておくことに全く抵抗がないスライサーのためのドライバーだ。
「G425 SFT」は、つかまりやすく、とにかく曲がらない、さらにやさしく真っ直ぐにフェアウェイを狙える。
だがデータを見てもわかる通り、ドロー設計は「飛距離」に影響を及ぼす。そこで気になるのがいったいどのくらいトップとの差があるのか?
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ここで、「飛距離」だけを見てみると1位とのトップの差は「26.7ヤード」。この結果をどう取るかだが、結局スライスするようでは例え1位のドライバーを使用しても結果はそう大差ないだろう。コースによってはOBになる可能性だってある。
まずは、真っ直ぐ打つこと。その後のスコアメイクができれば何の問題もない。「飛距離」を重視するのではなく、18ホールの結果が全てだと考えたら。だとしたら、PING「G425 SFT」は確実に役に立つ1本となる。また、結果を見てわかる通り、PING「G430 SFT」にも同じことが言える。
[table id=200 /]
しかし、見ての通り「ボール初速」「飛距離」と明らかな違いがある。「G430 SFT」を選ぶのか?とりあえずの対策として中古で「G425 SFT」を選ぶのか?だとしても、“永遠に”ドローモードに抵抗があるなら、いざという時の1本として持っておくのも良いだろう。
参考までに、「G425 SFT」の中古価格
どれほどの助けが必要か?
「SFT」程スライサー向けのフル装備ではないが、「G425 MAX」でも十分な「スライス矯正効果」がある。
「G425 MAX」は『2022年ドライバーランキング』の勝者!その要因は、「正確性」トップ、「寛容性」でトップクラスだったことだ。テスターからマットブラック仕上げは人気だったが、多くのテスターが「打音」が少し大きすぎると感じたようだ。
「G425 MAX」ドライバーは「G400 MAX」と「G410 PLUS」のいいとこ取りをした、というのが一番わかりやすい説明だろう。「高MOI」を前者から、「調整機能」を後者から受け継いだ。
肝心なのは、「G425 MAX」はピン「G425」シリーズの中で最も「寛容性」の高いドライバーというだけでなく、同社がこれまでに開発した中で最も「寛容性」が高いドライバーだということ。
ここ数年、多かれ少なかれ「MOI(慣性モーメント)」で業界をリードしてきた企業として、クラブ全体のMOI値が10,000 g-cm2を超えていながら、ヘッド左右のMOIをUSGAの定める上限ギリギリにおさめるというのは、とんでもない快挙だ。
ドライバー市場で最も需要の高いカテゴリー向けに設計された、オーソドックスな形状のドライバーでそれをやってのけるとは、まったくもって訳がわからない。
ここで注目してほしいのは、「G425 MAX」と「G430 MAX」のデータだ。
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これは、『2022年ドライバーランキング』勝者「G425 MAX」を『2023年ドライバーランキング』のテストに加えた結果、30モデル中「G425 MAX(2020年モデル)」が総合的に「G430 MAX(2022年モデル)」を上回っているということ。
ただ1つ気になる「飛距離」を除いて、どちらを選ぶのか?「飛距離重視」でないゴルファーなら一目瞭然。「2022年NO.1ドライバー」さらに「スライス矯正効果」付きの「G425 MAX」だろう。
「G425 MAX」なら“永遠に”ドローモード設計ということもなく、「易しさ」と「正確性」を兼ね備えた間違いなくオススメの1本と言える。
だとしても、「G425 MAX」と「G430 MAX」の差は1つ。「飛距離」も必要な要素で、すべてにおいて安定したモデルが良いとなれば、「G430 MAX」も選択肢の1つ。あとは見た目の違いだろう。
参考までに、「G425 MAX」の中古価格
では次に、『Most Wanted(ランキング)』で2回頂点(2018年・2020年)に輝いている「LST」モデルについて。
異なる方法でもたらされる低スピン量~「G430 LST」ドライバー
2017年に発売されたPING「G400」シリーズで、「G400 LST」が『2018年ドライバーランキング』で頂点となったその2年後、『2020年ドライバーランキング』で再び「G410 LST」がそのパフォーマンスを継承し王座に君臨した。
その後の結果は、2022年「G425 LST」が10位、そして今年、2023年は13位という成績だった。この順位だけ見ると良くないように思えてしまう。
そこで「LST」シリーズのデータを比較してみよう。
[table id=202 /]
見ての通り「ボール初速」「キャリー」「飛距離」が確実に進化を遂げていることがわかる。この2022年モデルの飛躍的に向上している理由は、「G430 LST」のクラウンに軽量のカーボン素材を採用した、『カーボンフライ・ラップ・テクノロジー』を搭載したことにある。
PINGの非常に高いMOI設計は、後方の重いウエイトによってもたらされているため、「カーボンファイバー」の使用に適していない。面長形状と組み合わされた重いウエイトは、クラブにストレスを加え、追加されたそのストレスによって「カーボンファイバークラウン」がボディから“分離する危険性”があるのだ。
PINGの競合他社の多くがカーボンクラウン“分離問題”に頭を悩ませてきたことは周知の事実だろう。
PINGはそのリスクよりも保守的なアプローチを取り、今のところ「G430」ドライバーシリーズにおいてはカーボンファイバークラウンを「LST」のみに限定している。
その理由は、「G430 LST」のヘッド体積が「MAX/SFT」の460㏄に対して440㏄と小ぶりで、形状が小さいほどクラウンが分離するリスクが少なくなり、より剛性の高い構造になるからだ。
もしこれがうまくいけば、カーボンが最終的に他のPINGドライバーにも採用されるようになるだろう。
PINGの低スピンモデルは、他のほとんどのメーカーとは異なるものだ。「G425 LST」は、いくら低スピンを実現するためといっても「MOI(易しさ)」を犠牲にすることはない。
スピン率を適度に少なく、「寛容性」を比較的高く保つというのがPINGの取り組みであり、プレーに好影響を与える範囲で低スピンの状態を作り出すことを目指している。
では、他社と比べてどの程度の「スピン量」なのか?『2023年ドライバーランキング』から低スピンモデルの「スピン量」「トータル飛距離」「寛容性」だけを比較して見てみよう。
[table id=201 /]
このデータを見てみると、「低スピン」で「寛容性」があり、且つ「飛距離」重視として選ぶなら、スリクソン「ZX5 LS MK II」が圧倒的、そして次に「寛容性」を取るならPING「G430 LST」、「飛距離」を取るならテーラーメイド「STEALTH 2 PLUS」となるだろう。
もし低スピンモデルをお探しなら、このデータをひとつの参考にしてほしい。
参考までに、「G425 LST」の中古価格
まとめ
「G430」ドライバーシリーズおいて、PINGは初めて3モデルのドライバーすべてに『可変式ウエイト』を搭載している。このウエイトにより、フィッターは、弾道調整機能を駆使してフェード(スライス)またはドロー(フック)を軽減できるようになった。
さらに、“スピン量”と“一貫性”を組み合わせた『スピンシステンシー・テクノロジー』を搭載した初のPINGドライバーとなる。
また、ドライバーのフェースには必ず「バルジ」と「ロール」というものがあるが、「ロール」は上から下への湾曲、「バルジ」はヒールからトウへの湾曲のことを示す。
これらの湾曲のおかげで、オフセンターヒット時にもボールは効果的にクラブの重心方向に向かった回転がかかるようになっている。
ロールに関しては、フェース下部に当たればスピン量は多くなり、フェース上部に当たればスピン量が少なくなる。
PINGは、この「バルジ&ロール設計」を3モデルにそれぞれ異なる「バルジ&ロール形状」を採用している。これは、「LST」と「SFT」ユーザーではおそらくボールへのコンタクト方法が異なっているということへの対応だ。
均一なロールは基本的に「半円」であるのに対し、PINGの「G430」のような「一貫したスピン量重視」の設計ではより「卵形」に近くなる。トップよりも下部の方がより緩やかにロールするのが特徴となっているのだ。
この設計の意図は、インパクト位置による「スピン量のばらつきを抑える」こと。スピン量が安定すれば「飛距離」も安定するというわけだ。そして『スピンシステンシー』は、「飛距離」と「寛容性」の両方に作用するという。
PINGは、エンジニアが重心位置やMOI、フェース曲率を微調整した場合の影響をシミュレーションできるようにする予測モデルも開発したという。
これにより特定のゴルファー、あるいはより狭い範囲のターゲットゴルファーに合うようにクラブを調整することが可能になるかもしれない。
冒頭でもお伝えしたように、「前作を上回るものができたと『100パーセントの確信』で報告できない限り、絶対に発表しない。」というPINGのビジョンは正しく、ランキングの順位は別として、それがしっかりと結果に表れている。
2021年に「直近で購入したドライバーのメーカーは?」というアンケートで、いちばん多かった「テーラーメイド」に続いたのは「PING」だった。そしてその後に「キャロウェイ」「タイトリスト」と続いた。
PINGは、テーラーメイドのような派手さも圧倒的な存在感も、キャロウェイのような華やかさもない。
PINGにあるのは、ゴルファーからの圧倒的な「信頼性」だ。そして、「PING」というメーカーを一言で表すなら、「控えめで真面目な実力者」だろう。
PINGのビジョンが変わらない限り、この信頼性は決して失われることはないだろう。
PING「G425」や「G430」詳しい内容、更にランキング記事に関しては下記のリンクを参考にしてほしい。
また、「PING」はフィッティングにも力を入れており、きちんとしたフィッティングを受けることができる。その点も参考にすると良いだろう。
「PING」はフィッティングに関してはこちら




