ゴルフクラブがどんどん進化するなかで、すべてのゴルファーが「飛距離」を求めているわけではない。
見た目の美しさ、そして打ったときの心地よさ。そんな“感覚”を大切にするゴルファーも少なくない。今回がまさに、そのひとつの例といえる。
キャロウェイの新作「X Forged」と「X Forged Max」は、メーカーが“単一素材による純粋な鍛造製法”と位置づけるモデルだ。
やや宣伝文句のようにも聞こえるが、この2モデルは明らかに、最新テクノロジーよりもアイアン本来の構造や打感を重視するゴルファーに向けて作られている。

“熱烈な支持”を集めた名作が、今ふたたび
「X Forged」は、キャロウェイの中でも長年根強い支持を集めてきたモデル。その最新モデルは、まさに“原点回帰”ともいえる仕上がりだ。
2024年に日本で先行発売されたあと、2025年モデルとしてアメリカ市場にも投入されたこのアイアンは、近年のキャロウェイが展開してきたアイアン戦略とは一線を画している。
2024年4月5日発売「X FORGED アイアン」
近年の主力アイアンが「飛距離」と「寛容性」を追求してきたのに対し、「X Forged」はその真逆ともいえる“クラシック回帰”。
1020軟鉄の単一鍛造、そして日本市場で求められる伝統的なアイアン形状を意識したデザインは、まさに“硬派な一本”を求めるゴルファーに向けた仕立てとなっている。
このクラブは、万人向けではない。キャロウェイもそれをよく分かっている。
狙いを定めているのは、“純粋主義”ともいえるゴルファーたち。つまり、「球を左右に打ち分けられなければ、それは本当のゴルフじゃない」と考えるようなプレーヤーだ。

このアイアンの“核心” それは、日本的な美しさにある
「X Forged」の魅力は、鍛造製法だけじゃない。その真価は、その“佇まい”にある。
シャープなライン、控えめなオフセット、そしてコンパクトなシルエット。構えた瞬間に上級者に自信を与え、同時にハンディキャップの高いゴルファーを少しだけ不安にさせる…そんな存在感を放っている。
この形状は、現在のキャロウェイのアイアンラインナップとは明らかに一線を画す。
なかでも顕著なのが、トゥからトップラインにかけてのつながり。トゥが高く、ラインは鋭く、全体にエッジが際立っている。これは、まさに“伝統的な日本製鍛造”アイアンの特徴だ。
その美意識の背景には、アジアツアー選手たちからのフィードバックがある。彼らの声をもとに、細部のデザインに“日本らしさ”が息づいている。

これは、いま主流となっている柔らかく丸みを帯びた形状とは意図的に一線を画すデザインだ。
そのアプローチはすでに、PGAツアーやLPGAツアーのプレーヤーたちのキャディーバッグにも採用され始めている。
ヘッドはシャローなキャビティバック構造で、打点の真後ろにしっかりと重量を配置。芯を食ったときの打感を高めている。
さらに、リーディングエッジとトレーリングエッジに面取り加工を施した『トライレベル・ソール』を採用。
もともとは日本の芝に合わせて設計されたものだが、抜けの良さが高く評価され、今ではキャロウェイの他のラインナップにも採用が広がっている。スタンダードと「Max」“寛容性”と“操作性”の分岐点

スタンダードな「X Forged」は、競技志向(上級者)ゴルファーやスクラッチプレーヤー、ツアープロを主なターゲットとして設計されている。
一方、「X Forged Max」は、伝統的な形状と単一鍛造の打感を求めつつ、もう少し“やさしさ”を欲する「スコア改善型(初・中級者)向け」の選択肢だ。
ただし、「Max」という名がついていても、一般的な“最大限の寛容性”とは意味合いが異なる。
これはあくまで、キャロウェイの“単一鍛造アイアンとして”最大限の寛容性を備えているという意味であり、その寛容性が極端に高いというわけではない。

「X Forged Max」は、スタンダードモデルと同じ基本構造をベースにしながら、より大きなヘッドサイズと、ヒールおよびトゥ部分に深く刻まれたポケットを備えている。
この“ダブルポケット構造”によって、スイートエリアと外周部の中間にあたるエリアの重量を削減し、インパクトエリアの真後ろや低いヒール・トゥ側に再配置することが可能となった。
その結果、より深いキャビティ構造となり、高弾道を生み出しながらも、鍛造ならではの打感を損なわない仕上がりを実現している。
ソール幅もスタンダードモデルより広めに設計されており、それでもなお『トライレベル・ソール』の設計は継承。低重心化により、球の上がりやすさにもつながっている。
この設計により、スタンダードモデルとのコンボセットにも適応でき、シングルピース鍛造の見た目を保ちつつ、より幅広いゴルファー層にフィットするアプローチとなっている。

打感へのこだわり
キャロウェイが「X Forged」シリーズで掲げた開発目標は、“これまでで最もソフトで、最高のフィーリングを持つキャロウェイアイアンを作ること”。
その言葉どおり、1020軟鉄の単一鍛造構造が、競技志向(上級者)が求める繊細なフィードバックを生み出す。
芯をとらえたショットと、わずかに外したショットの違いを“感触で判断したい”というゴルファーにとって、この手応えは、どんな飛距離テクノロジーにも代えがたい価値を持つ。

どんなゴルファーに合っている?
「X Forged」は、明らかに「競技志向(上級者)向け」のモデル。
ハンディキャップが一桁前半の上級者やハンディキャップ0のゴルファー、ツアープロ、そして常に芯でとらえることができるシリアスなアマチュアを想定して設計されている。
一方で「X Forged Max」は、見た目の美しさや鍛造の打感に惹かれながらも、多少の打点ブレに対する“やさしさ”を求める「スコア改善型(初・中級者)」やハンディキャップ一桁中盤のゴルファーにとっても、選択肢となり得る存在だ。
キャロウェイのアイアンラインナップ全体の中で、この2モデルがどこに位置づけられるのかも押さえておきたい。
「APEX」シリーズは、飛距離やボール初速といったパフォーマンスを重視した「競技志向(上級者)飛び系」のモデルとして展開されている。
それに対して「X Forged」シリーズは、より伝統的なアプローチを採用。
最新のテクノロジーよりも、クラフトマンシップや設計思想の美しさに価値を見出すゴルファーに向けて仕立てられている。

結論:これは“原点”に立ち返ったアイアン
「X Forged」と「X Forged Max」は、クラシックな形状と伝統的な構造を求めるゴルファーが、今も確かに存在するというキャロウェイの“理解”の証でもある。
次々と新技術が投入される現代のゴルフ業界において、あえて“基本”に立ち戻ったこの姿勢は、ひとつの歓迎すべき方向性だろう。
このアイアンが、誰にとってもスコアを劇的に縮める“万能クラブ”になるわけではない。
だが、その違いを感じ取れる腕と感性を持つゴルファーにとっては、ショットの精度とフィードバックの質がスコアアップへの後押しとなるはずだ。
最先端のテクノロジーではなく、上質な素材と精密な製造、そして時代を超えるデザインこそが最高のクラブを生む。
そう信じているなら、「X Forged」はまさにその答えかもしれない。
“昔ながらのものづくり”は、今もなお通用する。
ゴルフクラブに必要なのは、常に新しさだけではない。そんな事実を、あらためて思い出させてくれる一本だ。

スペック・価格・発売情報
◆「X Forged」:
・番手:4番〜PW
・標準シャフト:True Temper Dynamic Gold Mid(115g/Sフレックス)
・標準グリップ:Lamkin Crossline
※上記はアメリカ仕様の情報。
日本仕様「X Forged」の詳細は、キャロウェイホームページより。
◆「X Forged Max」:
・番手:5番〜PW
・標準シャフト:True Temper Dynamic Gold Mid(100g/R・Sフレックス)
・標準グリップ:Lamkin Crossline
※上記はアメリカ仕様の情報。
日本仕様「X Forged Max」の詳細は、キャロウェイホームページより。
2025年7月18日発売

セット構成の違いを活かせば、コンボセットの可能性も広がる。
たとえば、ロングアイアンにスタンダードの「X Forged」を、スコアリングアイアンに「X Forged Max」を組み合わせる。あるいはその逆も選べる設計だ。
※下記はアメリカ仕様の情報。
価格はどちらのモデルも1本あたり220ドル。7月7日より予約開始、7月25日から一般販売がスタートする。
詳しくは CallawayGolf.com をチェック。
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