2026年モデルとして注目を集めるのは「Phantom(ファントム)」シリーズだが、だからといって今回追加された3つのスコッティ・キャメロン「スタジオスタイル(Studio Style)」を軽視するのは早計だ。

むしろこの拡張は、「スタジオスタイル」というシリーズの完成度を一段引き上げる動きと捉えるべきだろう。

昨年復活した「Studio Style(スタジオスタイル)」というネーミングは、パター市場において確かにインパクトのある出来事だった。

過去の記憶に触れる瞬間は、ゴルファーの感情を強く刺激する──それは間違いない。

しかし、「スタジオスタイル」の本質はネーミングの復活にあるわけではない。

シリーズの価値を決定づけたのは、新たに採用された
『Studio Carbon Steel(SCS/スタジオ・カーボン・スチール)フェースインサート』だ。

この『SCSフェースインサート』は、
・「テリリウム(Teryllium)」
・初代「スタジオスタイル」
といった、キャメロン史に残る名作パターを知るゴルファーの記憶を強く呼び起こす存在だった。

もちろん、ノスタルジーだけでパターが評価されるわけではない。
最終的に問われるのは、ボールを転がすための性能だ。

その点で『SCS』は、過去を懐かしむための存在に留まらず、近年のキャメロンパターの中でも、心地よい打感を備えた完成度の高さを示している。

そして今回、その「スタジオスタイル」に3つの新モデルが加わる。
選択肢は、確実に広がった。

その中には、すでに“懐かしさ”をまとった「スタジオスタイル」に、さらに別の記憶を重ねてくるような1本も含まれている。


「Studio Style」パターの打感を決定づける『SCSフェースインサート』

スコッティ・キャメロン「Studio Style」パターのヒールからトゥにかけての形状とエッジ処理

改めて強調したいのは、
2026年モデルとしてシリーズを拡張するに値する理由は、『SCSフェース』にあるという点だ。

一部のゴルファーはテリリウムやジャーマンステンレスを期待していたかもしれないが、スコッティ・キャメロンの設計チームは「柔らかさ」においてカーボンスチールが最適だと判断した。

カーボンスチールは、錆びやすく扱いに気を使う素材だ。
それでもなお、打感を最優先するゴルファーやパター愛好家から長年支持されてきた。

使用後にオイルを塗る、あるいは経年による変化を受け入れる──
それほどまでに、この素材の打感には代えがたい価値があった。

多くの削り出しパターは、耐久性と耐候性の理由からステンレススチールへ移行した。深いミーリング(削り出し加工)で柔らかさを出すことはできたが、カーボンスチール特有の柔らかさを再現するのは難しかった。


打感の「柔らかさ」は打音で決まる

スコッティ・キャメロン「Studio Style」パターのフェース面。SCSフェースインサートと精密ミーリングのディテール

私自身、最初にカーボンスチールとステンレススチールの打感の違いを説明されたときは、正直なところ腑に落ちなかった。

「鋼なのに柔らかい?」──そう感じるのは、ごく自然な反応だと思う。
なにしろ、どちらも同じ“スチール素材”であることに変わりはないのだから。

極端な話をすれば、カーボンスチール製のパターでも、ステンレススチール製のパターでも、板に釘を打ち込める。

それほど、物理的な硬さという点では大きな差はないということだ。

実際、地元のコミュニティカレッジで冶金学(メタラジー/金属材料学)の夜間クラスを何年も受講し、
ロックウェル硬度、ブリネル硬度、ビッカース硬度、モース硬度といった、金属の硬さを測る指標について学んできた。

そこで理解したのは、一見すると同じ「鋼」に見える素材でも、硬さや反応の仕方には確かな違いがあるということだ。
そしてその違いは、パターでは打感や打音の差として、はっきり表れてくる。

パターの打感を決めているのは、金属の硬さだけではない。
重要なのは、インパクト時に生み出される音だ。

人は、パターがボールに当たった瞬間に耳に入る音のトーンを、無意識のうちに「柔らかい」「硬い」という感覚に置き換えている。

つまり、打感とは“耳で感じている部分”が想像以上に大きい。


スコッティ・キャメロン「Studio Style」パターのクラウン部分に施された象徴的なロゴと仕上げ

形状、素材、ミーリング(削り出し)加工など、打音のトーンに影響を与える要素はすべて、結果として打感にも影響する。

甲高い「カチッ」という打音は硬く感じられ、より抑えられた打音は柔らかく感じられる。

要点をまとめると、カーボンスチール素材に、防錆ニッケルコーティング、
そして見た目にも印象的なチェーンリンク・ミーリング(鎖状パターンのフェースミーリング)を組み合わせたことで、
「スタジオスタイル」パターは、インパクト時に柔らかく落ち着いた打音と、心地よい打感が生み出されている。

少し理屈っぽくなったが、ここからは新しい「スタジオスタイル(Studio Style)」モデルをチェックしていこう。


スコッティ・キャメロン「Studio Style Fastback 2」/「Studio Style Fastback 2 Long Design」パター

スコッティ・キャメロン「Studio Style」パターのネック形状とアドレス時の見え方。安定感のある構えやすい輪郭

この2モデルは、同一ヘッド形状をベースにしながら、役割を明確に分けた設計になっている。

どちらも2025年に登場したミッドマレット形状の「Fastback(ファストバック)」を採用し、
プランバーネック(クランク形状のネック)を組み合わせていることから、モデル名には「2」が付けられている。

アドレス時に目を引くのは、シルバー×ブラックのコントラストバンドだ。

アライメントを取りやすくすると同時に、視覚的にヘッドの安定感を強調するこのデザインは、

ストロークタイプを選ばない、汎用性の高いアライメント設計と言える。


スコッティ・キャメロン「Studio Style FASTBACK 2」パターのソールデザイン。ステンレス削り出し構造とウエイト配置

標準の「Fastback 2(ファストバック・ツー )」は、一般的なレングス(メーカー出荷時の標準的な長さ)と重量設定で、多くのゴルファーが違和感なく構えられる仕様。

一方の「Fastback 2 Long Design(ファストバック・ツー ロング・デザイン)」は、
・38インチのロングレングス
・17インチグリップ
・25gのタングステンウエイト(ソール装着)
という構成を採用したカウンターバランスモデルだ。

シャフトも標準モデルより硬めに設定されており、ストローク中の安定感とヘッド挙動の再現性を重視した設計になっている。

なお、ブラックアウト仕様の「Fastback 2」を求めるなら、昨年登場した「Xperimental(エクスペリメンタル)」モデルが選択肢になる点も覚えておきたい。

この2モデルはいずれも、右用・左用の両方がラインアップされる。


スコッティ・キャメロン「Studio Style Santa Fe」パター

スコッティ・キャメロン「Studio Style」パターのバックフェース。円形ウエイトとバランス設計のディテール

ここで触れておきたいのは、懐かしさが二段構えになっている点だ。

このパターを見て、「これはNewport 1.5(ニューポート1.5)じゃないか?」
そう思ったゴルファーは多いはずだ。

その認識は間違っていない。

ただひとつ違うのは、「Santa Fe(サンタフェ)」という名前こそが、フローネックを備えた「Newport」に、元々使われていたネーミングだったという事実を知っているかどうかだ。

確かに、「Newport 1.5」という数値ベースのネーミングは、現代のゴルファーにとって、パターの構造を理解しやすい。」
Newport形状に0.5ネック(フローネック)──その意味は明快だ。

それでも私は、「Santa Fe」という名前のほうが好きだ。

数字やルールが増えすぎると、キャメロンの掲げる「Art of Putting(パッティングの芸術)」という美学が、少し薄れてしまう気がする。

……とはいえ、こんなことを語っている自分自身が、過剰分析の代表例であることは自覚している。
実際、新しいゴルフバッグについて1万語も書いたことがあるのだから。

それでも、理屈を忘れたい瞬間はある。

「Santa Fe」という名前のパターを手に取り、ネック番号も、硬さの理屈も気にせず、
ただグリーンでボールを転がす──
そんな時間が、ゴルフにはあっていい。

なお、このモデルは右用のみの展開となる。

残念ながら、左利きのゴルファーには用意されていない。


大型リリースではないが、意味のある拡張だ


今回の3モデル追加は、スコッティ・キャメロンの歴史を塗り替えるような大型リリースではない。
だが、それでも意味のある、そして純粋に楽しめる拡張であることは確かだ。

最も重要なのは、この3つの新しいヘッドが、2025年の「Studio Style」ではカバーしきれなかったゴルファーに、新たなフィッティングの選択肢を提供している点だ。

「Fastback」のフィッティングオプションは、今や非常に幅広い。

・フェースバランスの「Fastback」
・わずかなトゥハング(フェースの傾き度合)を持つ「Fastback 2」
・深いトゥハングの「Fastback 1.5」
・ゼロトルク設計の「Fastback OC」

ストロークタイプや好みに応じて、選択肢が揃っている。

価格は昨年と据え置きで、
標準レングスの「Studio Style」シリーズ各モデルは$499、
「Studio Style Fastback 2 Long Design」は$549(+$50)だ。

※日本国内での価格や発売時期については、
『タイトリスト公式サイト』での案内を確認してほしい。
発売は2月より順次予定されている。


スコッティ・キャメロン「Studio Style」パターに採用されたSCSフェースインサートのミーリングパターン

正直に言えば、「Santa Fe」は私のストロークに完璧に合うモデルではない。
それでも、このパターを手に取り、ボールを転がしたくなる。

1本のエースパターだけを使い続けるタイプのゴルファーには、この感覚は分かりにくいかもしれない。
だがコレクターなら知っている。

すべてのパターがスコアのために存在するわけではないということを。

最近のラウンドでは、ゼロトルクのマレットパターを使うことが多い。
それでも、「ただ楽しむため」に芝の上に出すパターが、手元には残っている。

「Studio Style Santa Fe」は、私にとって「Laguna 1.5(ラグーナ1.5)」と同じ立ち位置になるだろう。

飲み物を片手に、暖かな午後のグリーンで、理由もなくボールを転がす──。

雨の降る冬の日に、そんな時間を想像するだけでも、十分に魅力的だ。